クローズアップ現代

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No.35582014年9月30日(火)放送
急増 代理出産 ~規制と現実のはざまで~

急増 代理出産 ~規制と現実のはざまで~

急増 代理出産 海外に渡る日本人

来月(10月)、代理出産のために海外に渡る夫婦です。
開業医の夫の後を継ぐ子どもが欲しいと、2人は4年前から不妊治療を続けてきました。
しかし、年齢とともに妊娠は難しくなるばかり。
その上、妻は高血圧で、妊娠しても母子ともに命の危険があると医師から告げられました。

代理出産を依頼した妻
「真っ暗になりました。
普通に妊娠して出産できるってことがかなわないんだなって。」

どうしても子どもを諦めきれなかった夫婦。
インターネットで見つけた日本人の業者の仲介で、中南米での代理出産にかけることにしました。
卵子は現地の20代の女性医師から提供を受けることにしました。

代理出産を依頼した妻
「優秀な方だなと思って、そこが良かったです。」

まず夫の精子と女性医師の卵子で受精卵を作ります。
それを現地の代理母に移植し、出産してもらうのです。
かかる費用は、およそ800万円。
女性医師や代理母、仲介業者などに支払います。

代理出産を依頼した夫
「別の国にね、頼っていくしかないですからね。
希望の光だと思います。」

代理出産を依頼した妻
「授かれば、大事に将来の跡継ぎとしてしっかり育てていきたい。」

およそ40年前、アメリカで初めて行われた代理出産。
今では、20近い国や地域に広がっています。
アメリカでは渡航費なども含め費用は2,000万円を超えることもあります。
それに比べ、途上国では数百万円。
依頼者が増え続けています。
中でも最近日本人の依頼が増えているのが、近くて医療技術も高いとされるタイです。

急増 代理出産 タイで何が…

バンコクから車で6時間。
タイ北部にある人口850人の地区です。
ここは地元で「代理母村」と呼ばれています。

地区長
「この家も代理出産をやっていたんだよ。」

20代から30代の女性の、実に5人に1人が代理母を経験しています。
依頼者の多くが日本人だといいます。
その1人に話を聞くことができました。
ブッパーさん、31歳です。
60代の日本人女性の依頼を受け、去年(2013年)女の子を出産しました。
依頼主の女性は、どうしても子どもを諦めきれなかったと話していたといいます。
2人の子どもがいるブッパーさん。
夫婦で農場で働いて得られる収入は月1万円ほどです。
周囲の女性たちが次々と代理母になり、報酬を得ている姿を見て決断しました。

代理母を経験した ブッパーさん
「我が家の収入だけでは、とても暮らしていけません。
子どもを食べさせるだけでも多くのお金が必要ですから。」

報酬は、およそ100万円。
年収の7年分です。
念願の中古車も購入しました。
さらに3ヘクタールの土地も手に入れ、トウモロコシを栽培するつもりです。

代理母を経験した ブッパーさん
「他人の子どもを出産するなんて良い仕事だとは言えません。
でも代理出産をしなければ、農地は一生手に入らなかったでしょう。」

バンコクで10年前から生殖医療の仲介をしている日本人男性です。
日本人向けに代理出産を手がける業者が、ここ数年で急増したといいます。

医療コーディネーター 横須賀武彦さん
「倍数で言うと5~6倍っていうことですけど。
日本語で問い合わせをして、日本語で回答してもらえる窓口が増えた。」

代理出産ビジネス 相次ぐトラブル

代理出産のビジネス化が進む中で、トラブルも相次いでいます。
今年(2014年)、代理母を引き受けたクックさんです。
受精卵の移植後、毎月バンコクの病院で検査を受けるよう仲介業者から求められました。
病院まではバスで片道6時間。
妊娠5か月だった先月、そのバスの中で急激な痛みに襲われ、出血。
救急車で病院に搬送されましたが、流産しました。
仲介業者とは、その後連絡が一切つかなくなり、報酬も一方的に打ち切られました。
クックさんは今も流産の後遺症で下半身に痛みとしびれがあり、病院に通っています。
仲介業者からはその治療費も支払われていません。

代理出産で流産した クックさん
「痛みのせいで重いものが持てなくなり、仕事もできなくなりました。
こんなつらい思いをするなら、最初から代理母になるべきではありませんでした。」

代理出産を巡るトラブル。
日本人が巻き込まれるケースも増えています。
30代の夫婦です。
妻には生まれたときから子宮がなく、子どもを授かるには代理出産しかないと考えました。

インターネットでたどりついたのは、ある仲介業者のホームページ。
高い成功率をうたっていました。

代理出産を依頼した妻
「自分で産めるなら自分で産みたい。
それができないので、お願いです、させてくださいっていう気持ち。」

複数の受精卵を業者に渡した夫婦。
数週間後、業者からメールが届きました。

“代理母は妊娠しなかった”

詳しい説明を求めても納得のいく回答はありませんでした。
これまでに振り込んだ金額は230万円。
返金されるはずの費用も支払われず、メールを送っても返信はありません。

代理出産を依頼した妻
「本当に絶望で、夢を捨てて、何に向かっていけばいいのかわからない。」

急増 代理出産 規制と現実のはざまで

ゲスト吉村泰典さん(日本産科婦人科学会監事)

●多くの依頼者が日本人という現実、どう見る?

以前は、代理出産といいますと、アメリカに行ってることが多かったんですが、このように東南アジアに行って、たくさんの人たちが代理懐胎で海外で依頼しているということを私も聞いて、びっくりしましたね。
そもそも代理出産というのは、医学的な点が非常に大きいんですね。
妊娠・出産というリスクを他人に負わせていいのかという医学的な問題点、あるいはまた、母体を商品化するという倫理的な問題点もありますね。
そして経済的に弱い立場の女性の搾取につながるのではないかと、子どもの売買にもつながるのじゃないかという、さまざまな問題点があるということですね。

●長い間、生殖医療に携わっている立場から見てどう感じる?

私はですね、はじめ10年程前は、代理出産は産婦人科医の立場から本当に反対をする立場にあったわけですけれども、このように、生殖グローバリゼーションの時代になってきて、日本で禁止をしても海外で行うというようなことが、普通に行われるようになってくるということになりますと、やはり代理出産に関しましては、なんらかのことを、わが国でも決めていかなければならないのではないかという考え方に変わってきましたね。
(これも医療といえる?)
それはですね、本当にこれは、本当に医療とはいえないというふうに私は思うんですけれども、現実に産まれてくる子どもがあるということを考えますと、なんらかの手だては、私は必要なのではないかと思いますね。

●自民党のプロジェクトチームが、議論のたたき台となる案を出しているが?

10年前に、厚生科学審議会というようなところで議論されていたわけです。
この10年間何もされなかった、いろいろな状況の中で、自民党のプロジェクトチームは、病気などで子宮のない人、あるいは先天的に子宮を持っていない人、そして卵子とか精子に関しては夫婦のものを使って、代理出産は行っていいですよということ、そしてもう1つ、報酬は無償であるということ(案)を決めたわけですね。

●これから議論をどの段階からスタートすべき?

やはりですね、この是非論からまず、私はいうべきじゃないかなと思います。
それは国会というような立法府でですね、まず代理出産をしていいのかどうかということを決めていただいて、その後、やはりガイドライン作り、どのような症例に対して、限定的に代理出産を行っていくのかということを決めていくことが、私は必要なのではないかというふうに思います。
(報酬を受け取るべきか、無償ですべきか、そういった点でも議論は大きく分かれる?)
そうですね。
だからやはり無償で、40週間もの間、代理妊娠・出産をしてくれるのかどうか、ここら辺も非常に大きな問題点に、私はなってくると思いますね。

“代理出産大国”アメリカ 命をめぐる葛藤

およそ7割の州で代理出産が認められているアメリカ。
代理出産を望む人のための説明会が各地で開かれています。
参加者の中には、独身の人や同性愛のカップルも増えています。



会社経営の独身女性
「代理出産で子どもをもうけ、1人で育てたいです。」




代理出産でアメリカ国内で産まれる子どもは、この10年ほどで3倍近く増え、年間およそ2,000人に上っています。
代理出産を巡るトラブルも増え、専門の弁護士まで現れています。

アンドリュー・ポルチマー弁護士
「私は代理出産の問題を担当する、生殖医療弁護士です。」

この事務所で扱う代理出産の訴訟や契約手続きは、年間450件に上ります。
特に増えているのが、胎児に病気が見つかった場合どうするかという問題です。
医療技術の進歩によって胎児の状態が早期に詳しく分かるようになったことが背景にあります。

アンドリュー・ポルチマー弁護士
「代理母と依頼主の間で、子どもを産むべきかどうか意見が食い違い、争うケースが増えているのです。」



そうした問題に、3年前、代理母として直面したヘザーさんです。
シングルマザーだったヘザーさんは、生活費を得ながら人の役にも立てると考え、250万円の報酬で代理母を引き受けました。

代理母を経験した ヘザー・ライスさん
「超音波検査の画像です。」

依頼主の夫婦の受精卵を移植したヘザーさん。
妊娠4か月で受けた検査で胎児の脳に重い障害があることが分かり、依頼主から中絶するよう求められたのです。

代理母を経験した ヘザー・ライスさん
「『この子を殺すなんてできない』と依頼主に言いました。
私の子どもではありませんが、命に責任があると考えたのです。」


ヘザーさんと依頼主は弁護士を介して話し合ったものの、平行線のままでした。
胎児は大きくなり、結局、ヘザーさんは男の子を出産しました。
脳に障害があった男の子は依頼主の夫婦に引き取られましたが、今、どのように暮らしているか分からないといいます。

代理母を経験した ヘザー・ライスさん
「あの子の事を思うたびに胸が締めつけられます。
わたしが命を与えたのですから。」

アメリカではこうしたトラブルを防ぐために、代理母と依頼主の間で交わす契約書が年々詳細になっています。

3年前、代理出産で双子をもうけたロミンスキーさん夫妻です。
この仲介業者のもとで、契約書の内容を1年かけて9回書き直しました。



胎児に病気や障害が見つかった場合、どう対応するか。
母体に危険が迫るなど、どのような状況になったら子どもを諦めるのか。
項目は、60以上に及びました。
出産を第三者に託すことの難しさを痛感した夫婦。
最終的に、子どもにどんな障害があっても受け入れると決めたといいます。

キム・ロミンスキーさん
「自分で産むなら考える必要もない、難しい問題ばかりでした。
夫婦でとことん話し合ってたどり着いた結論です。」



仲介業者 メリッサ・ブリスマンさん
「どれだけ詳細な契約を結んでも、全ての問題を防ぐことは不可能です。
人の命に関わる問題ですから。
当事者が良く話し合い、理解し合うことが大切なのです。」

急増 代理出産 命とどう向き合う

●代理母と依頼者の間のトラブルについて

出生前の検査ができるようになってくると、中絶を強要するとかですね、要するに引き取らないとか、いろんなことが起こってきている中で、こういった契約をされる、代理出産の契約をされるときに、障害のある子もちゃんと育てるんだと、そういうようなことをはじめに契約を取り交わすということも、私は意味のあることではないかなというふうに思いますね。
(依頼する側は深く考えさせられる?)
そうですね。
要するにこのプロセスを大切にするということにつながっていくと思いますね。
(代理母を頼むということは、どういう責任をまた自分も負うのかと?)
そうですね。
やはり、リスクがあるということをやはり教育、啓発することがすごい大切だというふうに思うんですね。
やっぱり倫理的な問題、医学的な問題、双方において大きな問題があるということを、やはり代理出産をする前に、クライアントの夫婦、あるいは代理出産をしていただく方に教育していくことが、私は大切なのではないかというふうに思いますね。
(妊娠というのは予知できない危険があるが…。)
そうなんですね。
やっぱりリスクというのは、予知できないということが非常に大きな、代理出産では問題となってくると思いますね。

●日本で議論をしていくうえで、最優先に考えなければならないことは?

そうですね、クライアントの出産、クライアントの夫婦が出産するということに対しては、クライアントが納得すればいいわけですから。
(依頼する側ですね。)
そうですね。
しかし産まれてくる子どもということは、産まれてくる子どもは、代理出産の場に立ち会うことはできないわけですね。
要するに代理出産をする時に立ち会うことができない。
そういうことになってくると、社会が子どもの利益というものを代弁してやるということが、私は大切なんではないかなというふうに思いますね。
権利を主張できない子どもの新しい命、これに対してどう向き合っていくかということを、代理出産も考えるよい機会になるのではないかなというふうに思いますね。

●子どもの立場から見ると、一体誰が自分の母親なのかというケースも出るのでは?

やはり、そういった問題点もあります。
ですから、やはりこれは産んだ女性が母親であるということを、まず法的な地位を安定させてあげるということが、私は子どもにとって大切なことではないかというふうに思いますね。
(そういった議論も、これから併せて行っていかなければならない。)
ですからやっぱりこういった事態を招いたというのは、女性が25歳から35歳という生殖年齢で子どもさんを産めるような環境作りということも、社会も考えていく必要があるように、私は思います。

●代理出産がグローバルに広がった大きな要因には、社会的問題がある?

私はそのように思いますね。
社会もそういったことを、どうしてこういった問題が起きてきたかということを、考える必要が、私はあるように思います。

●何人の子どもが海外で代理母のもとで産まれているのか?

統計もありません、実態は全く不明ですね。
ですから、この辺も大きな問題だと思いますね。

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