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No.35562014年9月25日(木)放送
おなかいっぱい食べたい ~緊急調査・子どもの貧困~

おなかいっぱい食べたい ~緊急調査・子どもの貧困~

緊急調査・子どもの貧困 「食」すらままならない

今回、子どもの貧困について調査を行ったNPO法人フードバンク山梨です。
企業や農家などから寄贈された食品を、支援が必要な家庭に無償で提供する活動を続けています。
活動を始めて6年。
これまで1,000世帯以上を支援してきました。

NPO法人 フードバンク山梨 代表 米山けい子さん
「今回は(農家から)かぼちゃをいただいたので、少しずつみなさんに煮て食べていただけるように。」

支援を受けるのは行政などから紹介を受けた世帯です。
多くは収入が生活保護の水準を下回っていますが、さまざまな事情から生活保護は受けていません。

NPO法人 フードバンク山梨 代表 米山けい子さん
「中1のお子さんと中3の女の子。」

最近は子育て世帯が増え、支援の対象となる人の4割を子どもが占めています。


NPO法人 フードバンク山梨 代表 米山けい子さん
「この身の回りにものすごく身近にいるってことも感じまして、非常に悪い状況で成長して、子ども時代を過ごしてしまう心配があります。」


子どもたちはどのような生活を送っているのか。
NPOは、子どものいる269世帯を対象に実態調査に乗り出しました。

NPO法人 フードバンク山梨 代表 米山けい子さん
「こんにちは、お邪魔します。」

この日訪ねたのは、7歳から17歳まで4人の子どもを育てる母子家庭です。
収入や食費、日々の食事の内容など、支援を受けるまでどんな生活だったのか詳しく聞いていきます。

澤村さん(仮名)
「ほとんど買えない、自分では買えない。」

NPO法人 フードバンク山梨 代表 米山けい子さん
「子どもたちも、おなかすいてたね。」

澤村さん(仮名)
「すいていたと思います。」

調査に協力した澤村さん(仮名)です。
3年前に離婚。
パートで毎日働いていますが、収入は生活保護基準を下回っています。
一度は生活保護の申請を考えました。
しかし、通勤に欠かせない車を手放さなければならず、諦めました。

澤村さん(仮名)
「これはフードバンクからいただいた。
お米が一番うれしいです。」



助けとなっているのが、NPOから2週間に1度送られてくる6キロのお米です。
浮いたお金で、以前はほとんど購入できなかった野菜などを買えるようになりました。
この日のメインはオクラを入れた納豆です。

「いただきます。」

もらい物のきゅうりを漬物にして出すなど、なんとか栄養のバランスを取ろうと努力しています。
しかし、育ち盛りの子どもたちにとっては十分とは言えません。

子ども
「みそ汁はおかわりないんだよね?」

澤村さん(仮名)
「ないです。」

澤村さんの場合、パートで得る収入は平均10万円。
児童扶養手当など合わせると月収は18万円ほどです。
一方、家賃や光熱費、奨学金の返済など、毎月固定で出るお金はおよそ14万円。
差し引くと、4万円ほどで5人家族の食費をやりくりしなければなりません。
非正規雇用の仕事は月によって働く時間が短くなることもあり、収入が減った分はどうしても食費が圧迫されるといいます。
最も厳しい時には、主食のお米さえ買えないこともあります。

次男(15歳)
「お年玉を正月にもらったんですけれど、それをみんな回収して米はお年玉を使って買ってくるみたいな感じで。
あまりおかずも食べないで、一膳よりちょっと少ないみたいな。
おなかがすいたって感じです。」

澤村さん(仮名)
「どこで切り詰めるかといったら食費で調整するしかないんで、ご飯ぐらいは『おなかいっぱい食べてもいい』って言ってあげられたらいいなと思いますけど。」

子どもの「食」の貧困 体と心が脅かされる

今回NPOではアンケート結果について、栄養学が専門の村山伸子教授と分析を行いました。
そこから浮かび上がってきたのは貧困の厳しい現実でした。



今回調べた支援世帯では1人当たりの1日の食費は329円。
300円にも満たない家庭が半数近くに上りました。

新潟県立大学 村山伸子教授
「一食にすると100いくらですからね。」

NPO法人 フードバンク山梨 代表 米山けい子さん
「3回食べるとなると厳しい状況ですね。」

食事の内容も、米や麺など主食のみというケースが多く、おかずなど栄養のバランスが取れた食事を1日に1度もとっていない家庭が8割以上に上ったのです。
栄養不足で体重が減った、貧血で倒れたなど、子どもたちの健康にまで影響が及んでいることが明らかになりました。

新潟県立大学 村山伸子教授
「体にまで現れてしまうということがすごく問題です。
もっと発達・発育する時期に食べなきゃいけないものがある。
(親も)分かっているけれどできない。」


さらに今回の調査では、貧困が子どもの体の健康だけでなく、学校生活や友人関係など社会的な基盤を揺るがしていることも見えてきました。
17歳になる澤村さんの長男は、中学のころから不登校になりました。
学校では友達が普通に楽しんでいることに参加できず、孤立することが多かったと言います。

長男(17歳)
「遊んでいてファストフードをみんなが買うけど、俺は買わないで見ているだけというか。
買えている人たち、他の友達がうらやましくて自分が情けない、惨めみたいな感覚でした。」

広がる子どもの貧困。
NPOではこの調査の結果をもとに、行政や学校現場と連携して早急な対策につなげようと考えています。

NPO法人 フードバンク山梨 代表 米山けい子さん
「こういう食生活の中で成長してきているのは、私たちが活動している中でも衝撃だった。
社会がもっと力を尽くしていく時にきているのではないかと思います。」

“ちゃんと食べたい” 広がる子どもの貧困

ゲスト新保幸男さん(神奈川県立保健福祉大学教授)

●育ち盛りの子どもの体と心への影響は?

そうですね、一緒にファストフードに行って、自分は食べることができない。
一番食べたいはずの自分が食べることができない、同じように、友達と同じようにすることができないというのが、自分に対する自己肯定感を下げるということに影響を与えてるんじゃないかなと感じます。
(学業や今後の進路にも影響する?)
自分の意見を言っても認められないんじゃないかとか、それから自分は他の人よりも劣っているんじゃないかとか、そういうふうに思ってしまいがちなんだろうと思います。

●昔は自分たちも同じだったという人もいるのでは?

でも今はちょっと時代が違いますね。
その点で言うならば、昔は同じように空腹であった、それを分かち合うことができたと思うけども、今は周りがみんな、ある程度の生活をしている、自分だけがなぜ?って思うんだろうと思います。

●生活保護を受ければ状況は改善される?

例えば、状況はまず改善されると思います。
ですけども、例えば車の保持はできないだとか、貯金はしにくいだとか、そういうことについてネックになります。
ですから、児童扶養手当の範囲内で自分たちで頑張って生きていこうというふうな思いを、皆さんがなさるんだろうというふうに考えます。

●生活保護を受けた場合、かかるコストはかなり違う?

かなりのギャップがあります。
ですから、児童扶養手当、現行の児童扶養手当に対して、特に多子に対して加算をするというものをすることによって…。
(大勢お子さんがいらっしゃるということ?)
そうですね。
そこに加算をすることによって、自分の力で生きていこうということについて、前向きにバックアップすることができるんだろうというふうに思います。

●子どもの貧困対策に対する大綱、食に関する支援は?

記述はされています。
ですけれども、具体的な制度として明記されてないと思います。
学ぶということについてはいろいろ書いていただいて、それは大成功だろうと思います。
ですけども、学ぶための条件としての食べるということについて、もう少し具体的に、私たちは制度化していく必要があるだろうというふうに思います。
(学ぶための条件とは、エネルギー?)
そうですね、エネルギーでもあるし、食べるということによって自信がつくということにもつながるだろうと思います。

子どもの「食」どう支える 始まった地域の挑戦

栃木県大田原市。
2年前から、子育て支援の一環として小中学校の給食費無料化に踏み切りました。

子ども
「いっぱい野菜があって、色んな味があっておいしい。」

1人の給食費は年間およそ5万円。
市は小中学校の子ども6,000人分の給食費、2億7,000万円を負担しています。
多額の財源が必要となるため、当初、議会では慎重な意見が相次ぎました。
「低所得者にはすでに給食費などの就学援助があり十分ではないか」「教室のクーラーの整備が優先ではないか」など、今すぐ取り組む必要がないとの声が上がりました。
しかし、経済的に困窮する家庭が増える中、すべての子どもが安心して学び、食べられる環境を作るべきだと判断したのです。

栃木 大田原市 津久井富雄市長
「一番大切なのは、しっかりとしたお子さんを作っていく。
(給食の無料化も)1つの手段として子どもさんたちをしっかりと育てていく。
そういう地域であって、国でなければならないんじゃないか。」

結果的に、保護者の多くから経済的に助かったという声が寄せられています。
学校現場でも子どもの心の負担を減らす効果があったといいます。
これまで、給食費を滞納する家庭には子どもを通じて督促をせざるをえませんでしたが、その必要がなくなったからです。

大田原小学校 大室充子教諭
「(給食費の)集金が友だちより遅れるとか、出せないのは子ども心にさびしいと思う。
何の心配もしなくていいという意味では、平等でおいしく食べられると思います。」

対策を行政だけに任せるのでなく、貧困状態にある子どもを地域住民で支える取り組みも始まっています。
東京都豊島区ではNPOが中心となって、毎月2回、地域の子どもなら誰でも入れる食堂を開いています。
食材は寄付や助成金で賄い、調理は地域の主婦たちのボランティア。
子どもたちは手伝いをすると無料で食べることができます。

「いただきます。」

栄養バランスの取れた食事をおなかいっぱい食べられる上、みんなで食卓を囲む楽しさを味わえる場所になっています。

NPO法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク
代表 栗林知絵子さん
「一緒にご飯を食べるというのは、体だけじゃなくて心にも栄養がいくし、その子の肥やしというか、エネルギーになるんじゃないかと。」

この食堂に来ることで救われたという少女がいます。
12歳のみきさん(仮名)です。 小学2年生のころから学校に行けなくなったみきさん。
母子家庭であることを友達にからかわれたことがきっかけでした。
母親はパートで働いていますが生活は苦しく、食事は1日1食だけです。
しかし、誰にも相談できず家に引きこもる日々が続いてきました。

みきさん(仮名・12歳)
「つらくて悲しくなったりとかして、ママが本当にやつれていたので言えなくて、苦しかったです。」

そんなみきさんを変えてくれたのが、子ども食堂との出会いでした。

みきさん(仮名・12歳)
「こんにちは。」

この日のメニューはちらしずし。
みきさんは盛り付けを手伝います。

女性
「海苔(のり)先にのせるんだった、海苔(のり)先にのせないと暗くなっちゃうからね。」

みきさん(仮名・12歳)
「そんなことないですよ、大丈夫ですよ全然。」

みきさんは、ここに来て初めて食事を一緒に食べる楽しさや、地域の人たちとのつながりを感じることができたと言います。

みきさん(仮名・12歳)
「料理を作るのも楽しいんですけれど、友達と遊んだりすることが一番の楽しみです。
前は暗かったので、本当に変わったと思います。」

みきさんは今、新たな目標を見つけ、少しずつ学校に通い始めています。

どう支援する 子どもの貧困

●みんなで食事をすることで自信がついた?

表情がね、変わってますよね。
とてもすてきなことですよね。
NPO団体の試みによって、あれだけ変わるんだということを、まざまざと感じさせられます。
こういうものがあちこちに増えていくといいなと、まず思いますね。

●給食無償化の取り組み、どう見る?

まず、給食という仕組み、これは日本が誇るべき大切な財産だろうと思います。
給食というものによって必要なエネルギーと栄養素が得ることができる、これをまず大切にするということについて、とてもすてきな取り組みだろうというふうに思います。
大切にする際に、貧困の家庭の子どもも、そうじゃない家庭においても、同じような状態で食事が食べられるという状態を用意することは、どの子どもにとっても、プラスに影響があるだろうというふうに思います。
(議論もある?)
無償化を巡って、いろいろ議論があることは確かです。
例えば、貧困家庭であるならば、経済的な助成はすでに行われているのではないかという議論もあるのかもしれません。
ですけれども、1つの試みとして、意味のある試みだろうというふうに思います。

●貧困対策を行う上で、食をどう位置づけていくべき?

食というものは、学んだり、体を動かしたり、それから友達づきあいをするための、まず一番の根っこの所にあるのだろうと思います。
食べるということによって、学ぼうという意欲が湧いてくるし、学んだときに、学びが深まるというふうに思います。
食べることによって友達と一緒に同じようなことができる、そして自信がついてくる。
そのことによって学びが進み、将来、自分の進路を積極的に前向きに選んでいくことができるようになるだろうと思います。
食というのは、根にあるものだろうというふうに思います。

●各地で行われているNPO活動などに対する支援は十分?

経済的にNPO団体を支えるという仕組みが、まず1つあります。
それと同時に、NPO団体が持ってるノウハウを生かすためには、あまり制度で縛らないということもあるんだろうと思います。
ですから経済的には、寄付的な仕組みを導入していくということも、これからどんどん必要になってくるというふうに考えます。

●国はどう取り組むべき?

まず学ぶということが大切だということは、大綱の中で明確に打ち出されています。
学ぶための条件について、食があるということについては、もう一歩踏み込んでもいいのではないかなと思います。
これから各自治体がいろんな計画を作ります。
子ども子育て支援に関する、新制度の仕組みを作っていきます。
その中で、食べるということをぜひ盛り込んでいただきたい。
これが今、必要なことだろうと思います。

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