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No.35472014年9月8日(月)放送
学びを変える? ~デジタル授業革命~

学びを変える? ~デジタル授業革命~

学力向上に期待 最新のデジタル教材

今年(2014年)5月、ICT教育に関する展示会が開かれました。
いずれは4兆円ともいわれる市場を巡って、教科書メーカーや大手電機メーカーなど600社以上が集まりました。



注目を集めたのはデジタル教科書。
端末には全科目の教科書データが入り、簡単に動画や音声を再生できます。
再生速度を変えられるため、自分のレベルに合わせた学習ができます。

体育では動きをカメラで撮影。
手本と重ね合わせて比較することでコツが分かります。




こちらは数学。
タブレット端末を教科書にかざすと3Dの立体図形が表示されます。
紙の教科書では分かりにくかった問題でも、直感的にイメージすることができます。

先生は生徒が答える過程をリアルタイムで確認し、生徒の理解力を把握します。
複数の生徒の解き方を比較することで、柔軟な発想や多角的なものの見方を学べます。


すでに多くの先進国はICT教育に本腰を入れ、情報を活用する力、問題を解決する力、自律的に行動する力などが身につくと期待しています。
日本は経済の持続的な成長を維持するために、2020年までにデジタル機器の1人1台体制を実現させ、ICT教育の本格化を目指しています。

文部科学省 情報教育課 豊嶋基暢課長
「ITそのもの自身のスキル、考え方を身につけるのが重要。
IT、コンピューターとかネットワークの仕組みを理解しながら、それを活用した上でいろんな産業と結びつけることができる新しい価値の発想、考え方、そういうものを生み出すというのが特に重要だと思います。」

デジタル授業スタート 手探りの現場

全国に先駆けICT教育を大規模に始めた自治体があります。

教師
「タブレットを開いてください。」

佐賀県では、県立高校の新入生およそ7,000人全員がタブレット端末を購入しました。
少子化に直面する佐賀県。
学力の向上や地域の活性化に、ICT教育が極めて有効だと考えたからです。

佐賀県 教育委員会 福田孝義副教育長
「ICTというのは時間と空間を超えることができますので、例えば中央の大学の先生、中心部の先生の授業をネットを通じて交流することができますので、そういった意味では広がりは十分出てくると思います。」

この日、英語の授業で初めてデジタル教科書を使いました。

教師
「辞書ガイド、発音ガイドというところ、そこを開いてほしいんですけど、タップしてください。」

生徒
「できない。」

生徒
「ダウンロードされてない。」

教科書のデータが一部の生徒の端末に入っていませんでした。
慣れないタブレットの操作に戸惑う生徒もいました。

生徒
「わかんない先生、これイライラする。」

こうしたトラブルが起こると授業が中断。
頻繁になると生徒や教師のやる気がそがれます。


佐賀県立佐賀東高等学校 西村聖子教諭
「本当に使おうと思ったら、いろいろな機能があるはず。
それが使えないと私たち自身の意欲もそがれてしまう。」



タブレット端末を授業で有効に使うにはどうしたらいいのか。
先生たちの模索が始まっていました。
数学を教える副田洋さんは、独自の教材を夜遅くまで残って作りました。

佐賀県立佐賀東高等学校 副田洋教諭
「教材を配布します。」




生徒
「来た来た。」

生徒は、先生から送られた課題を解き始めます。

生徒
「できた。」

生徒
「これ楽しくてできる。」

生徒
「楽しいです。」

つまづくことが多い数学の授業でも、生徒たちは楽しく課題に取り組んでくれました。

佐賀県立佐賀東高等学校 副田洋教諭
「生徒の声にもあったように『楽しい』とかいうことばプラス、『わかった』って言葉がまだ生徒から出てきてないので、改善しないといけない。」

学びを変える? デジタル授業革命

ゲスト尾木直樹さん(教育評論家)

●ICT化は教育を大きく変える可能性がある?

これはやっぱり日本の場合、さっきも出てきましたけど、子どもたちが、学校がああやって使っているのが8.1%しかなくってね、世界との差がものすごく大きいわけですよね。
やっぱり、これをなんとかしなきゃいけないだろうと。
なんとかしなくてもここまできちゃったのは、やっぱり日本の場合、教育体制が一斉授業で、先生が一方的に注入教育をやってきたということで、その必要性もあまりなかったような感じがするんですよ。

だけれども、やっぱりこれからは個別教育で、それで一人一人の個性をどう伸ばしていくのか、興味・関心を伸ばしてね、問題解決型の力をつけるだとか、探究心をつけるとか、そういうのが中心的に重要だっていうことは明らかなわけですから、それにうまく活用させるというのでは、そのタブレットの使用というのも、これは重要なテーマにはなってきてるかなと、可能性はあると。
あくまでも可能性だっていうふうに思いますけれども、ありますね。

●教材をダウンロードできず、やる気がそがれるような光景も見られたが?

だからあれだったら、タブレットが魔法のつえだって思ってたらとんでもなくて、あくまでやっぱりツールであってね、それを使いこなせなかったら、やっぱりいらいらしちゃうとか、先生も意欲がなくなるって、これは本末転倒ですよね。
そこをどう防いでいくのかっていうのが、かなり大きなテーマになって、僕が見てきた先進国の中なんかでは、例えばオランダですけども、先生方のサポートを丁寧にする教育サポートセンターっていうのがあるんですよ。
そこはもう本当にあらゆる教材がそろっていて、そこのセンターの職員が先生方をサポートするために、授業の中にまで入ってきてくれたりとか、もう本当に充実してるの。
(機械のトラブルがあったときも助けてくれたりする?)
もちろんやってくれますね。
(日本は今、どうなっている?)
日本はやっぱり、先生の丸投げみたいな感じで、一人一人の力量だとか、それに任されてしまってるっていうところがあって、先生方は大変な負担感が大きいと思います。

●教育を通して子どもたちをどう育てるべきか、どんな目標が設けられている?

これはOECD=経済協力開発機構の定義でいいますと、21世紀型の学力っていうのを言っておられるんですね。
それ、5つからできてるんですよね。
1つは発想力と言われています。
それから論理力と、それから批判的な思考力、単なる思考力ではなくて、批判的っていうのが付くところがみそなんですけれども、それから表現力。
それからグローバルなコミュニケーション能力、空気を読む力ではなくてね。
そこの5つが、これは21世紀型の学力っていうふうに定義されて、世界各国は頑張ってきたんですよね。

デジタル授業 先進国 見えてきた課題

4年前からおよそ2,200億円もの予算を投じてICT教育の普及を進めてきた韓国。
2015年までに1人1台のタブレット端末の導入を目指してきました。

ICT教育モデル校の1つ、ボラメ小学校。
全学年の、ほぼすべての教科でタブレット端末を使った授業を行ってきました。
しかし、子どもの学力に目立った成果は現れていないといいます。


こうした現状に批判の声を上げるのが、韓国の教師4,000人により結成された団体です。

教師
「タブレットだと、わかったつもりになっているだけで頭に何も入ってないでしょう。」

教師
「確かに子どもは授業が楽しかったと言うかもしれませんが、内容は身についていない。
それがICTの限界です。」

多額の費用に見合う成果が上がらないと、ICT教育の全面的な見直しを政府に求めています。
さらに、タブレット端末に依存しすぎると能動的に学ぶ姿勢が失われると指摘する専門家がいます。

教育評論家 クォン・ジャンヒさん
「資料を検索すると早く結果が得られますよね。
でもそれは誰かの力で得られたもので、自分のものではありません。
他の人が解決したものを借りると、問題解決能力が落ちてしまうのです。」

韓国では、子どもが1年間に読む本の読書量が2011年、過去最低を記録。
タブレットやスマートフォンに依存しすぎたことで、みずから学ぶ意欲が薄れたのではないかと指摘されています。

教育評論家 クォン・ジャンヒさん
「子どもたちが本を読まなくなってきているのが、本当に深刻な問題です。
ICT教育はごく一部にして、もっと自分の力で学ぶ機会を増やすべきです。」

こうした批判を受け、去年(2013年)、政府は国内に144校あったICT教育実践モデル校のすべてで見直しに踏み切りました。
これまで小学校ではタブレット端末を全学年のほとんどの教科で使っていましたが、3年生と4年生の理科と社会に限定しました。


韓国教育学術情報院 教育情報企画部
ジョン・スンウォン部長
「これまで通りICT教育を推進していくべきかどうか、非常に悩ましい問題です。」

可能性どう引き出す デジタル授業

ICT教育に過度に依存せず学習効果を高めるにはどうすればいいのか。
4年前から模索を続けてきた学校があります。

教師
「タブレットを出してください。」

タブレット端末を導入した当初、すべての授業で活用できると考えていました。

広尾学園 教務開発部統括部長 金子暁教諭
「導入の時から、どういう活用のあり方ができるのか考え続けてきたけれど、 一斉授業の中にそれを無理やり組み込んでいくのは無理があるなと。
学ぶ時のスタイルが変わっていかないと、本当の意味でのICTの活用はない。」

そこで、この学校では少人数で学ぶグループ学習を中心にタブレット端末を使うようにしました。

教師
「自分の頭の中と、教科書とノートとネット上と、他人の頭の中を使って解いてみましょう。」

自分の考えをタブレットで可視化し、ほかの生徒に教えたり教えられたりすることで理解が深まるというのです。

教師
「正解!
さあ、分かった人は周りに教えてあげましょう。」

休み時間でもタブレット端末は学びのツールです。
授業で気になったことや興味を持ったことを個別の学習で調べ、好奇心や探究心を高めています。

生徒
「先生が教えてくれなかったことがウェブ上にあったので、理解が(深まった)。」

生徒
「歴史の授業では、詳しく調べたり自分の知らなかったところに行ったり(できる)。」

高校1年の下村基さんです。
下村さんが興味を持っているのは、体をどんなに切られても再生するプラナリアです。

広尾学園 高校1年 下村基さん
「プラナリア自体は前から知っていたけど、再生する、すごいなだけで終わっていて。」

しかし、ICTを使った授業で論文検索サイトを知り、最先端の論文を数多く入手。
翻訳をしながら論文を読み進めるうちに生物の再生に関わる遺伝子について興味が広がるようになりました。

広尾学園 高校1年 下村基さん
「ざっと目を通すのに2週間くらいかかって、そこから深く読んで1週間くらいです。
読み切って理解できた部分が面白くて、達成感がすごい。
次も新しい論文がでたら読みたい。」

やる気を引き出す? タブレット教材

●韓国ではなぜ問題解決力の低下などが起きた?

これは本当に貴重な体験ですよね。
僕も先進国で、最もいけいけどんどんの時に視察に行ったんですけれども、すごい反省されてるんだなというので驚きましたけれども。
やっぱり先生もおっしゃってましたけど、分かったようなつもりになって、検索能力は高まってるんだけれども、それを一緒に思考していくだとかいうことができてなくて、他人の成果をなんというか軽く、ちょっと借用しちゃってるだけで、考える力はついてないというのは、確かですよね。
だから、深い反省だなと思って、これは日本なんかも教訓にしなきゃいけないなというふうに思いますね。

●教科書の図形が3次元で見えるなど、非常に楽しいのでは?

おもしろいし、絵だから非常に分かりやすいですよね。
だから、もし僕が使うんだったらですけれども、自分の頭で考えてみなさいという時間をちゃんと設定して、どう?っていうのを2、3人聞いてみたりして、じゃあこの映像ではどうなってるだろうっていうので、参考にするとかね、補強していくとか、やっぱりあくまでも、補強の1つのツールにしかすぎないなって思うんです。
だからもともと、授業の構想能力が非常に高くて、そんなICTに依存しなくても、上手な授業ができる先生が使うと、ものすごくいきてくると思いますね。
(どのタイミングでこのタブレットを使えばいいのかということを構成できる人?)
そう。
その授業構想力がない先生が、だから授業にあんまり自信がないよと、目先のこんな楽しさでごまかそうっていうのは失礼な言い方ですけど、なんとか引きつけようというような、これは甘いと思いますね。

●生徒が問題を解く過程も分かり、先生にとってはありがたい?

そうですよね。
それでいろんな達成パーセンテージから、みんな、ぱってたちどころに分かるわけです。
でも、それは分かってるつもりであって、同じ答えとか導き出した子でも、本当に苦悩の末に導いたのか、あるいは直前まで違うことを考えてて、この答えが出てきたのかとか、いろんなことが分からなくて、表情が見えないと。
やっぱり教育の基本というのはフェイス・トゥ・フェイスなんですよ。
表情を読み取って、生徒を理解している先生方の前提というのがあって、初めて、おお、おもしろいの考えたねってひと言が出ると、タブレットは生きると思いますけどね。
(タブレットばっかり見てしまうと…。)
見えなくなっちゃうんです、生徒の表情が。
つまり、先生の生徒理解力、授業を通しての生徒理解力が落ちてしまうっていう、そういう弱点も持っているってことを、ちゃんと心得ないといけないかなと思いますよね。

●どんな授業に一番生かせると思う?

授業でいうと、やっぱり理科、社会、それから英語っていうところかなと思いますね。
僕は国語だったんですが、国語、なかなか難しいわ。
韓国のデータ見ても、国語に生かせたっていうのは、2%ぐらいしかおられなくて、ほっとしたんですけどね。
(いろんなことを議論するツールとして使うには有効ではないかという声もあるが?)
そうですね。
同じタブレットっていうのは大きな画面ですから、それで同じの見ながら、グループ学習だとか、それからその学習歴も全部蓄積されてきますからね、情報を共有することも簡単だし。
だから、うまい具合に使い手になれるような子どもたちの日常生活も、子どもが主人公のような、ちょっとオーバーに言えばですけどね、そういう学校生活、先生と子どもとの信頼関係がある、子どもをちゃんと尊重している先生のまなざしがあるだとか、そういう学校全体の文化といいますかね、これが豊かでほのぼのとしたものでないかぎり、道具だけ、タブレットだけ導入すればうまくいくっていうのは、僕はかなり安易かなと思いますね。

●能動的に学ぶには学校全体の空気が必要?

空気が必要だし、それからすでにそのタブレットを使う前から、そういう探究型の授業をやってるかとか、探究型の問いかけだとかいうのを先生方が大事にしていて、生徒たちもそれに慣れてるだとかね、そういうことがあって、そこにタブレットが入ってきたら、これは鬼に金棒だと思います。
だから、先ほどの生徒は非常に優れているなと思いました。
全国的に見ると、やっぱり探究型の授業に力を入れておられて、いい成果を上げてる学校が点在してるんですよ。
そういう学校がこういうのを使われれば、もう本当にすごい伸びるだろうと思いますけどね。

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