クローズアップ現代

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No.35182014年6月23日(月)放送
四国遍路1400キロ 増える若者たち

四国遍路1400キロ 増える若者たち

四国遍路 1400キロ 自分自身と出会う旅

四国遍路の起点、徳島県です。
長谷川佑貴さん、26歳。
5月の大型連休を利用して大阪からやって来ました。



白装束を着て気持ちを切り替え、2泊3日の区切り打ちに向かいます。
長谷川さんがお遍路に来たきっかけは、去年(2013年)、心身の調子を崩し療養生活を送ったことでした。
大学卒業後金融関係の会社に入りましたが対人関係が苦手で、日常に息苦しさを感じていたといいます。

長谷川佑貴さん(26)
「しゃべりかけないで欲しい。
壁をつくった、人に対して。
とにかくお遍路したかった、何かにすがりたかった。」

遍路を始めて3日目。
徳島の遍路道で、最も難所と呼ばれる山道を登ります。

長谷川佑貴さん(26)
「ちょっときつい。」

自然の中で自分の限界と向き合う。
長谷川さんの日常にはない体験です。

「大丈夫ですか?」

長谷川佑貴さん(26)
「大丈夫です。
遍路ころがし(遍路道の難所)。」

一息ついたところで、ほかのお遍路さんと出会いました。

長谷川佑貴さん(26)
「ずっとペース同じですよね、旅は道づれじゃないですけど。」

男性
「もう年やからマイペースで。」

長谷川佑貴さん(26)
「いやいや、速いですよ。」

遍路を通して、長谷川さんは自分自身の中に小さな変化が起きているのを感じていました。

長谷川佑貴さん(26)
「自分で壁をつくってたのかなと思う。
その壁自体、このお遍路を通してどんどん崩れていってますけどね。
人との触れ合いとか関わりっていうのはすごい大切ですよね。
じゃあ、行ってきます。」

四国遍路を旅した多くの若者たちが、長谷川さんと同じようになんらかの変化を体験したと語っています。

21歳の男性
“一期一会の連続”
“自信をもらう遍路になりました”

遍路で出会った人々によって、諦めかけていた教師への夢を取り戻したという女性もいます。

遍路の一体何が若者たちの背中を押すのか。
遍路の移り変わりを40年以上見続けてきた大日寺の住職、真鍋俊照さんです。
真鍋さんは、歩き遍路という行為に加え、地元に残る習慣がその要因ではないかといいます。

子ども
「こんにちは。」

地元の人は、白装束などを身に着けたお遍路さんに食べ物などを分け与える「お接待」を行います。
お遍路さんは弘法大師の代わり。
訪れた若者も無条件に受け入れるという文化が、四国には残っているというのです。

大日寺 真鍋俊照住職
「(お接待は)両手でもって慈悲深く迎えてあげる、そういう行為。
舞台装置みたいなものが遍路の八十八か所には必ずある。」



高知の海沿いで出会ったのは赤木亮太さん、18歳。
岡山の高校を卒業してすぐ四国遍路に来て、1400キロを歩こうとしていました。
赤木さんは、思春期のころから自分にはいいところがないと思いがちで、受験の面接でもうまく話せませんでした。
そのひとつき後、遍路の旅に出たのです。

赤木亮太さん(18)
「やっぱり自分に自信がないですし、このまんまじゃいけないなと思って。
こっちに来たら、なんかいろいろ変われるかなと思って。」


高知の遍路道は、4県の中でも一番長い380キロ。
次の札所まで3日かかる場所もあるという過酷な道です。

赤木亮太さん(18)
「なんか(足が)ズキズキしている、歩いたら。
振動がきたら痛い。」

いくら歩いても、海ばかり。
ここで脱落するというお遍路さんも少なくないといいます。

次の愛媛県は一転、険しい山々が連なる道。
赤木さんが歩き始めて34日目。
愛媛で最も険しいといわれる山道に挑んでいました。



高知では、足を気にしながら歩いていた赤木さん。
愛媛では休憩せずに歩き続けていました。
ごつごつした山道を一定のテンポで進んでいきます。

男性
「速いな、やっぱり若さだな。」

赤木さんが自分のことを話し始めました。

赤木亮太さん(18)
「慣れてきて、余裕が出来て、いろいろ考えられるようにはなったかなと思います。
帰って、どうやってこれから1年過ごそうかなとかまあ、まだどうしようかは出てないんですけど、一応ちょっとずつ考え始めました。」

翌日、赤木さんは休憩所で休むことにしました。
地元の人が自宅の一部を開放してお遍路さんにお接待を行っている場所です。

女性
「お疲れたでしょう。」

赤木亮太さん(18)
「はい。」

女性
「おにぎり作ってあるからね、食べていきなさい。」

赤木亮太さん(18)
「ありがとうございます。」

見も知らぬ人に食事をごちそうになるのは、遍路に来るまで経験したことがありませんでした。
休憩所の主人は、自分の昼食に用意していた材料で赤木さんの分の食事も作り始めました。

女性
「お食べ。」

赤木亮太さん(18)
「ありがとうございます。」

この休憩所でほかのお遍路さんと親しくなりました。

男性
「若いの、半分。」

赤木亮太さん(18)
「いや、ほんま食べられません。」

男性
「食べな。」

赤木亮太さん(18)
「もうおなかいっぱいなんすよ。」

四国遍路、最後の県・香川に入りました。
赤木さんが歩き始めて42日目。
女体山の10キロ以上にわたる長く緩やかな上り坂。
四国遍路、最後の難所です。
この山を越えれば最後の札所です。

1400キロを歩き切りました。
結願(けちがん)です。
赤木さんの長い旅が終わりました。



赤木亮太さん(18)
「実際、歩きで回ることもできてるので、そんな無理に自分のいいとこ見つけようとか考えなくても、今のまんまで頑張ってればいいのかなっていうのは思えるようにはなりました。」

四国遍路 1400キロ 歩き続ける若者たち

ゲスト真鍋俊照さん(大日寺住職 四国大学教授)
ゲスト福島明子さん(作新学院大学教授)

●赤木さんの言葉をどう聞いた?

真鍋さん: いやあ、なかなかああいう結論めいたことをはっきり言えるっていうのは、すごいなあと思う。
今の若い人にしてはね。
なかなかあれ言えませんよ、ああいう肯定的なね。
自分を肯定してそして高めていくっていう意欲が、遍路をやって、ありありとうかがえますよね。

●お遍路を歩いたあと自分をありのまま受け入れられたのはなぜ?

福島さん: そうですね、お遍路さんは、最初から自分の心を見つめるとかいうことではなくて、まずはその、必死で歩いて限界を感じますよね。
体を酷使して、その中でだんだん自分の体が出来てきます。
最初に自分の体と向き合って、お遍路を歩く体が出来たときに、赤木さん自身がおっしゃってましたけれども、余裕が出来たと。
そして自分のことを考えられるようになったというふうにおっしゃってましたよね。
そうした中で、また周りからお接待を受けていきます。
お接待は、どこかの誰だからというわけではなくて、歩いている人に等しくなされる行為ですよね。
そうしたお接待の中で、受け入れられていると。
自分自身も見つめるし、地元の方からも受け入れられていると。
そういった中で、自分を肯定して自己受容できていったのではないかなというふうに思います。

●長谷川さんは他人と関わることが大事だと思えるようになったと語ったが?

真鍋さん: そうですね。
お接待っていうのはこれはもう昔からありまして、そしてこれ仏教の1つの、遠くから来た人に対する、稀人(まれびと)といいますかね、そういう人を大事にしたいと。
それで平等に利益、御利益を与えたいと。
それはもう差別をすることなく、小さいお子さんも、おじいちゃんおばあちゃんも、全部に施すというのが目的なんですけれども。
やっぱりそれは、始めた若い人なんかはすごく新鮮に感じますね。
「よう来たね」っていうひと言で、もうそれでなんか感性がびびっと来るんじゃないですか。
それがいわゆる来た方の所属している社会というか生活空間の中では、ないからということなんでしょうけれども、ここではそういう舞台装置が意図的に1000年にわたってあるわけですから、それが自然に出てきて、人を迎える気持ちっていうものが今おっしゃったような流れにつながるんじゃないでしょうかね。

●ご自身もお遍路を歩いた体験を持ち、取材を続けているが?

福島さん: そうですね。
お遍路さんは毎日40日、50日の間お接待を受け続けます。
その中で1対1でお返しすることはできないんですけれども、自分がお遍路から帰ったらこれをほかの人にお返ししようという気持ちが生まれてきます。
それがごく自然と、日常生活の中で困っている人を助けるとか、親切にするということができるようになると思います。

●お遍路を歩いたあと、どんなことが残っている?

真鍋さん: それはもう今でもはっきり言えることですけど、工夫するっていうことの意味を学びましたね。
私が歩いたころっていうのはともかく標識もなくてほとんどもう、迷って、迷って目的地に着くんですけど、その連続ですけど、だからどうしたらあそこへたどりつけるかっていう、そういう工夫の連続。
それからそれに始まって、いろいろ仕事でも人生観でも、工夫をする手立てを自分で見つけ出す。
自分の力、手でもって見つけ出すということが非常に大事だなということを学びましたね。
それがまあ、今日にずっと続いていますけど。

●お遍路を通して現代社会のどういう点が見えてくる?

福島さん: 先ほどのVTRを拝見して、私の調査の経験からも、お遍路でつながりの回復がなされるんではないかというふうに感じます。
(つながりが回復する?)
まずは自分の体と向き合って、体と心がつながるという経験。
それから地元の方のお接待を受ける中で、地元の方とお遍路さんのつながり。
それからお遍路さんどうしのつながり。
さらには自然豊かなお遍路の中を歩く中で、地に足をつけて歩いて、山や川や海を歩いて、自然とのつながりというものも感じられます。
そういった、さまざまなつながりを回復することができるということですね。
今の社会は成果主義であったり合理主義ですので、何かができたからすばらしい、とか何かができないからもう少し頑張って、とか条件の世界ですが、このお遍路では無条件に受け入れられて、そしてつながりを回復していけると。

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