クローズアップ現代

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No.35042014年5月28日(水)放送
転勤できない社員続出 ~企業・個人の模索~

転勤できない社員続出 ~企業・個人の模索~

転勤がつらい 2,000人の声

番組が転勤について聞いたアンケートです。
2,000人を超える視聴者から意見が寄せられました。
“仕事に就いてから38年、転勤回数15回”。
この男性は、定年間際の今も単身赴任中です。
“転勤うつになる一歩手前だった”。
この女性は、夫の転勤についていくために仕事を辞め、経済的にも精神的にも消耗したと言います。
「終身雇用と引き換えに辞令1つでどこへでも」だった従来の転勤。
今、そんな転勤が難しいとする社員が増えています。

ああ転勤人生 介護でどうなる

金融機関に勤める栗林浩昭さんは入社して30年。
名古屋や千葉など全国8つの支店を回ってきた転勤族です。
しかし、4年前、心臓の持病を抱えた母親を自宅に引き取り介護することになりました。
転勤は厳しいと思ったそのやさき、会社である制度が始まりました。

転勤を一時的に免除する特例制度。
これによって最大5年、転勤が免除されることになりました。

栗林浩昭さん
「今後の母親の介護というところで、(転勤を免除される)時間をいただいたというのは、本当に助かったと思っています。」

離職ストップへ 転勤見直す企業

栗林さんが勤める金融機関は全国に152支店。
転勤は4、5年ごとにあります。
この制度を導入したきっかけは、女性社員の離職率の高さでした。

全社員に行ったアンケートです。
「将来、離職の要因になりうるものは?」との問いに対して女性だけでなく男性も転居・転勤を第一に挙げたのです。



日本政策金融公庫 常務取締役 紀村英俊さん
「おやめになるということは、企業にとって非常に大きな損失になりますから、その意味では離職の防止という観点、それが非常に重要だと。」


そこで社員の多様な事情に配慮しようと結婚、出産、育児や介護を理由とした転勤を一時的に見合わせる特例制度を整えました。
男女を問わず申請でき、賃金や昇格にも影響ありません。

ユニークなのが結婚特例。
若手の男性社員に人気です。
結婚後2年は転勤が免除。
この男性はようやく共働きの妻と同居することができました。

男性
「やはり一緒に住みたかったというのはありますね。
幸せだと感じています。」

これらの転勤免除制度を利用している社員は300人近く。
懸案だった離職率は改善しました。
しかし、新たな課題も見えてきました。
希望の勤務地が想定以上に大都市に偏っていたのです。

「(転勤を免除される人が)今後増えてくると、すべての人の希望がかなえられるかどうか。」

今後一層増えると見られる転勤免除の要望と全国への人事配置をどう両立させるか。
さらなる制度の見直しを進めています。

転勤する?しない? ある社員の選択

こうした転勤を一時免除する取り組みが企業に広がり始める中、社員の側も働き方の選択を迫られています。

大島資正さん
「起きて。」

東京都に住む大島資正さんは2人の幼い子どもと暮らしています。

子ども
「あっ、ママの顔。」

パソコンの向こうにいるのは、関西に単身赴任している妻の季子さんです。

大島季子さん
「たっくん、食べてる?
食べてないじゃん。」

季子さんが単身赴任を始めたのは先月(4月)。
インターネットをつないで一緒に朝ごはんを食べるのが日課です。

大島季子さん
「こっちもじゃあ1日がんばろうっていう大切な時間ですね。」

妻の転勤を後押ししたのが資正さんでした。
出産後、仕事を抑え気味だった妻にとって転勤はキャリアアップの機会。
自分が家事・育児を引き受け、妻を全力で支えようと考えたのです。
一方、自分は、働き方に制約が出ることを会社に相談し極力残業なしで働いています。

大島資正さん
「正直なところ(会社には)申し訳なく思いますけど、定時の時間内で結果をだすということに集中するしかないと思っています。」


関西に単身赴任中の季子さんは飲料メーカーに勤めています。
出産後、しばらくは内勤で働いていましたが、転勤をきっかけに、再び営業の最前線に立つようになりました。
子どもが、まだ幼いのにあえて、この時期に季子さんが転勤を決断したのは会社が女性社員の育成に大きく力を入れ始めたことと関係があります。
会社は、女性のリーダーを7年後までに現在の3倍、300人にするという数値目標を掲げたのです。
子育て中の女性といえども転勤などによりさまざまな経験を積んでほしい。
そこで個人の事情に合わせ、転勤の時期を選べる制度を作りました。
最大5年の転勤回避措置です。

キリン 人事部 多様性推進室 神元佳子室長
「その人の抱えている事情を最大限配慮したうえで、ご家族の協力があり、本人ががんばりたいという気持ちがあって、会社もこの人にぜひこういう経験をしてほしいということがあれば転勤もあり得る。」

季子さんは悩んだ末、今は制度を使わず転勤を受け入れることにしました。
転勤回避の権利を使うなら今ではなく将来、子どもが勉強や友達関係で悩みを抱えがちな時期にしたい。
その分、今は転勤を受け入れてでも仕事に力を入れたほうがよい。
そう考えたのです。

大島季子さん
「仕事をやりたい、がんばりたいというところと、一方で母親として妻として家族とこういう風に過ごしたいというところ、どっちかなっていろいろ悩みながら。
まずはチャレンジしてみて、どのくらい家族に影響があるのか。
まずトライしてみる。」

季子さんは毎週末、東京の自宅に帰ります。

大島季子さん
「一週間で一番楽しみ。
わくわくしてます。」

大島季子さん
「ただいま。」

大島季子さん
「ママが帰ってきたのとぶたまんとどっちがうれしい?」

子どもたち
「ぶたまん…。」

「かんぱーい!」

大島季子さん
「乾杯!
1週間お疲れさま、ありがとう。」

新しい家族の形を自ら選んだ大島さん夫妻。
この生活はあと3年ほど続く見込みです。

「転勤してよかったと思いますか?」

大島季子さん
「それはちょっとどうですかね。
やっぱり一緒にいるのが、家族としては幸せだと思います。
結局選んだので、会社に押しつけられたわけじゃなくて、自分が選んだことなので。
自分もいい経験を仕事でさせてもらえたなという姿で、単身赴任の生活が終われたらいいかなと思います。」

転勤できない!? どうする企業は 社員は

ゲスト今野浩一郎さん(学習院大学教授)

●転勤を自ら決めた女性 どう見るか?

今の女性もそうなんですが、全体的にいろんな意味での家庭の事情等で制約のある社員が増えているんですね。
そうすると、制約っていうのは非常に多様ですので、したがって、多様な事情を会社と話して、それで、会社は会社で事情がありますから、会社と相談をして、それでどういう仕事をする、どういうキャリアを取るかということを、しなくてはいけない時代になってきてますので、私、そういうのはよく働いている人は、賢い交渉人になれって言うんですけど、そういう形で、選んでいって、それで例えば転勤もそうですが、仕事もそうですが、キャリアもそうですが、チョイスをしていくということが求められる時代になってきたと。
したがって、先ほどのVTRも結局、そういう形でチョイスをされた事例かなというふうに見てましたけど。

●転勤制度は限界にきているのか?

少なくとも、見直さざるをえないような状況になってきていると。
1つは今、言ったように制約を持った社員たちが増えてきているということがあります。
もう1つは、特にホワイトカラー系の社員ですが、キャリアの作り方が変わってきているということがあります。
昔であれば、多くの人たちが管理職に向かって、幅広い能力を持つためには、幅広い経験をする。
そのために、みんなで転勤をするという人事政策が取られてきましたけども、今は多くの人たちがエキスパートです。
専門性を生かしたエキスパートで生きるっていうことになってきていますので、そうすると、そういうことに合わせて、転勤政策も変えざるを得ないという状況になっていると。
そういう意味で、転勤政策は見直しかなというふうに思いますけど。

●特例や免除期間の制度導入 そうした企業は働く側からどう見える?

それは先ほど言いましたように、制約を持っている社員が増えてるわけですから、そうすると、制約と折り合いをつけながら働くということが、当然必要になってきますので、そうすると、折り合えないと働けないということになりますから、そうすると、会社からすると、折り合えないで辞められれば、優秀な人材を失うっていうことになりますから、ですから、働く側からもそうですが、雇う側からも同じようにそういう制約を持った人たちが働きやすいような状況を作るということが非常に重要で、その点からも、転勤の見直しということが必要になってくるんだろうと思いますけど。

●上司はいい聞き手にならなければいけない?

そうですね。
先ほど言いましたように、個人の事情と会社の事情をすり合わせるということですから、それはやっぱり、昔以上に話し合わなきゃいけないじゃないですかね。
(男性で転勤も受け入れる、昔の人事は楽だった?)
それはいろいろあるでしょうけど、人を配置するっていう意味では、楽だったんじゃないでしょうかね。

●転勤の制約のない人が転勤 不公平感が生まれるのでは?

そういう点については企業も少しずつ制度的な対応していて、1つの典型的な例は、転勤のない社員というタイプを作って、普通、勤務地限定社員と言いますが、それと転勤のある社員とタイプを分けて、それで処遇すると。
そのときに転勤のある社員は、転勤ってやっぱり負荷がかかりますから、それに対して配慮をしなきゃいけないので、その分だけ少し2つのタイプの社員で賃金差をつけるという政策で、大体大企業の場合だと、1、2割ぐらいの賃金差をつけるというのは多いと思いますけど。

広がる“脱・非正規” 転勤のない正社員へ

全国に2,600店舗を展開する外食チェーンです。
宮城県の石巻店で店長を務める及川満枝さんです。

及川満枝さん
「おはようございます。」

及川さんは15年前からこの店でパートや契約社員として働いてきました。
子育ては一段落しましたが、高齢の両親と同居しているため転勤はできないと、正社員になることは諦めていました。

及川満枝さん
「こんにちは。
いらっしゃいませ。」

ところが契約社員で店長を務めていた今年(2014年)1月、会社の方針によりほかの店への転勤がない店舗限定の正社員になりました。
全国チェーンの企業ながら転勤なしで正社員として定年まで働けることになったのです。

及川満枝さん
「何か寂しいですね、1人で。
いつもいっぱいいるのに。」


「いっぱい食べる娘がいない。」

基本給は全国転勤がある社員より25%少ないですが、正社員になったことで通勤に使う自動車の保険など福利厚生が充実。
責任もありますが、やりがいは増したと言います。

及川満枝さん
「転勤があるから(正社員になるのを)諦めている方もたくさんいらっしゃると思うんですよ。
転勤しなくて、もしここで働いて正社員になれたら、すごいラッキーですよね。」

この制度ができたきっかけは、非正規の契約社員の訴えでした。
正社員と同様の仕事をしているのだから、収入や雇用も同様にしてほしいというのです。
今、外食産業では人材の囲い込みが激化しています。
地域に根ざした優秀な人材を確保するために、転勤のない店舗限定の正社員という制度が必要でした。

すかいらーく 人財企画グループ 匂坂仁ディレクター
「従業員がきちんとバックボーンができて、安心して働けるようになれば、人件費の部分が上がったとしても最終的によい店作りができて、たくさんのお客様に支持されるようになれば、十分に回収できるものだと考えています。」

転勤なしの正社員店長になった及川さん。
地域の知り合いから売り上げアップにつながる情報をいち早くキャッチ。
独自のサービスを展開しています。

例えば、近所の主婦が誕生会や子ども会の会合向けの場所を探していると聞き、貸し切りスペースを設置しました。

「ファイト、オー!」

こうした企画を実現するために欠かせないのがパートのスタッフの力です。

及川満枝さん
「高校生が喜んでくれるような何かを考えればいいんだよね。」

パートスタッフ
「デザートよりはポテトがいいね。」

パートのスタッフにとって及川さんは社員の店長といえど、つきあいが長く気心が知れた存在。
抜群のチームワークを生かして全国有数の業績を誇っています。

及川満枝さん
「宮城エリア1位!
全国7位!」

「イエーイ!」

「すばらしい!」

どう生かす 転勤できない社員の力

●地域限定や店舗限定の正社員 雇用の安定化や収入増にもなる?

この点を理解していただくために、いくつか重要な事実をお話をしたいと思うんですが、1つは、ご存じのように、非正社員の人が増えているということがありますが、それと同時に、正社員と同等の仕事をしている非正社員の人が増えているということが、大切。
(能力の高い方々ですよね。)
はい。
もう1つ、重要なことは、そういう非正社員の人たちに意欲を持って働いてもらわないと困る会社が増えてきているということです。
したがって、今度会社からすると、そういう意欲を持った、能力のある非正社員の人には、どんどんいい仕事をしてもらって、経営成果を上げるということが非常に重要になってきますので、そうすると、そのための1つの制度っていうか、施策として、転勤のない正社員に移っていただいて、またキャリアを伸ばしていただくということだと思います。
そういう点からすると、従来の非正社員の人たちをもっともっと活用するという政策として、非常に重要だ、非常に注目すべき政策だというふうに思いますけど。

●人材確保の意味でもこうした施策が取られているのか?

日本社会全体で考えると、今言った非正社員の例は少しこう、ひるがえってみると、そういう社員の人たちを十分に活用しなかったっていうことですよね。
こういう非正社員の人たちっていうのは、多くは転勤ができない、制約的な社員なので、そのほかいろんなタイプの制約社員の人がいらっしゃるんですが、全体として、やっぱり制約社員の人たちを十分に活用しきれてこなかったというのは、これまでの日本の状況で、そういう点では、今出てきたような政策で、そういう人たちの活用を進めるというのは、日本経済全体にとっても非常に重要だというふうに思いますけど。
(とにかく企業にとっては制約ある社員をどう活用していくか、人事制度の見直しも進むか?)
そうですね。
従来と違って、1人1人を見る、1人1人を見て評価するという、こういう人事制度が必要になってくるだろうというふうに思います。

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