クローズアップ現代

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No.35032014年5月27日(火)放送
検証 公益法人改革

検証 公益法人改革

公益法人 ずさんな実態 巨額の資金が流出

NHKは今回、改革に伴って解散した公益法人を独自に調査。
その結果、多額の資産の行方が分からなくなるなどして、国などにわたせない状態になっていることが分かりました。



2億円の行方が分からないまま、去年(2013年)解散した財団法人を訪ねました。
かつての事務所に残されていた看板。
未来産業技術研究振興財団です。
先端技術の研究施設などを作るプロジェクトを進めるとして、平成4年、当時の通産省の許可を受けて設立されました。
その後バブル崩壊のあおりで、プロジェクトから撤退する企業が続出。
財団の活動も大幅に縮小しました。

ところがその陰で、巨額の資金が流出していたことがNHKの取材で分かりました。
平成11年、運営を取りしきっていた専務理事らが、資産の大半に当たる2億円を福岡県の建設会社に貸し付けたのです。


この直後、その専務理事が貸し付け先の社長に就任しました。
なぜこのような融資が、財団の内部で認められたのか。
当時を知る元役員が取材に応じました。
理事会で議論が交わされることは少なく、専務理事に異論を唱える雰囲気ではなかったといいます。

元役員
「以前から知ってる方ですし、あまり根掘り葉掘り『それは本当なんですか』とか、いろいろ詮索するのも失礼にあたるんじゃないかと。」

専務理事は、四国にある自分の土地を2億円の担保として差し出すと、財団に説明していました。

記者
「ごめんください。」

現場はうっそうと木が生い茂り、長年、人が住んだ様子はありません。
その後の取材で、土地の所有者は専務理事ではなく、暴力団員だったことが分かりました。
2億円は、どうなったのか。
都内で、元専務理事に接触することができました。
元専務理事は、「自分はお飾りでいただけだ」と回答。
結局、2億円の行方は分からなくなりました。

公益法人 ずさんな実態 監督責任は

公益法人の指導・監督を行うのは、国や都道府県です。
すでに解散した公益法人の実態を確認できていたのか。
省庁や自治体に文書で尋ねました。
資産を把握できていない法人があると答えた省庁や自治体は、63のうち31。
行政の目が行き届かない間に、資産が失われてしまった法人が数多く存在すると見られます。

その1つ、去年解散した東京都市科学振興会が入っていた建物です。
都市作りに関連する調査や、書籍の編さん事業を行政から請け負うなど、7,500万円の資産を蓄えていました。


しかし、財団が発行していた雑誌は20年前にストップ。
その後、休眠状態にありました。
7,500万円は、どうなったのか。



運営を取りしきっていた常務理事の所在を突き止めました。
常務理事は、「7,500万円は借金の返済にあてた、詳しいことは答えられない」と話しました。



この財団を指導・監督していた東京都。
5年に1度、立ち入り検査を行うことになっていました。
しかし、最後に立ち入り検査を行ったのは平成12年。
常務理事が連絡を絶ったため、資産のチェックは今もできていません。

東京都 公益法人制度担当課長 猪俣聖人さん
「立ち入り検査をしようという段階で、なかなか連絡がつかないということがあるので、そこについては立ち入り検査は行えない。
やれる範囲でやった結果、そういうことがあったと認識しています。」

公益法人 ずさんな実態 問われる監督責任は

ゲスト宮脇淳さん(北海道大学大学院教授)

●解散手続きすらできない公益法人は336 この数字どう思うか?

私は公益法人の問題というのは、やはり行政との関わりに深い問題点があったというふうに思います。
これまでの公益法人は設立をするときに、所管官庁の許可というのを必要としました。
この許可を出すときの基準というのが、役所の裁量、別の言葉でいいますと、さじ加減で決まってきたという、そういう仕組みにあります。
さじ加減で、いろいろと税法上の優遇措置を受けられたりするわけですから、どうしても行政が優位になって不透明な関係を作りやすい、そういう土壌があったと思います。
ですから具体的に申し上げますと、例えば天下りの受け皿になる、しかもわたりっていう言葉がありますが、2回、3回目の受け皿になる。
あるいは公益法人のほうも、そうやってつきあっていますと、役所から仕事というものを受けやすくなるというような実態が存在する。
しかも、行政側に法的な明確な監督権というのが規定されていなかったという実態もあるわけです。

●336の公益法人の資産、100億円が行方不明だが?

これは役所も公益法人のほうも、やはり公共の財産というものを管理し、運用してきたんだという認識が、非常に欠如していたというふうに思います。
ですから、このまま過去の問題として放置するのではなくて、やはりなぜ、このような問題を起こしてきたのか、そのことを明確にして、新しい制度に向かって、その欠陥はなくすようにしていかないといけないと思います。

●2万4,000あった公益法人、新ルール審査後9,000しか残らなかったが?

許可を出すときに、さじ加減という、そういう言葉を使いましたけれども、まさに半分以上は、今日においては、どうも公益性ということが認められないような所に対しても、過去においてはそれを、許可を出してきたと。
その行政としての体質、こういったものをきちっと解明していくことは必要ではないかと思います。

(ずさんな運営ができないようにする仕組みとして、あいまいだった理事長の責任を法律で明記して、刑事罰が科せられるようにしたり、行政側には是正を命令したり、認定を取り消せる権限が、法律で定められた。
これによって、あいまいだった行政と公益法人との関係に、緊張感が生まれると思うか?)
確かに今までは法的な規定というものがほとんどなかったわけですから、こうやって法律によって規定したということは、一定の緊張関係を生み出せる1つの手段が埋め込まれたということはいえると思います。
ただし、それが実際に機能するかどうかというのは、行政側の体質、公益法人側の体質というものが、今までと変わってくるかどうか、それが、こういった法律の規定というのが機能するかどうかの大きなポイントになると思います。
(権限を持った行政側が、それを行使するのかというところも問われる?)
そのとおりだと思います。

新制度“一般法人” 思わぬ使われ方

東京都内で開かれた節税セミナーです。
中小企業の経営者たちが集まっていました。

税理士 谷忠宗さん
「(一般社団法人が行う業態としては)今は結論を言うと“何をやってもいい”。」

税理士が勧めていたのは、一般法人の1つ、一般社団法人の設立でした。
簡単に作ることができ、節税につながるというのです。

税理士 谷忠宗さん
「ポイントは税金なんです、一般社団法人の。
相続税は発生しないということなんです。」

その使われ方です。
本来、土地や株などを相続するとそれぞれの世代で相続税がかかり、資産が目減りします。



一般社団法人を設立して資産を移し、法人のものにすると、子や孫が法人の役員を務めれば、資産を実質的に保有しながら相続には当たらないため、税を払わずに済むといいます。
こうした一般社団法人を使った節税セミナーは、今、全国各地で開かれています。

税理士 谷忠宗さん
「手続き自体は全然難しくない。
株式会社よりも値段は安いですし、1週間2週間で作れます。」

新制度“一般法人” 後退する情報公開

さらに一般法人は最低限の情報公開しか求められず、外部の目が届きにくくなっています。
制度改革の中で、公益法人から一般法人に移行した団体もありました。
その数、1万1,000余り。
NHKでは、公益法人から一般法人になった団体の情報公開が、どう変化したか調べました。
この書類は、原子力発電などエネルギー関連の調査を行う法人が、移行前に公開していた決算書類。
財産の状況や受け取った補助金の額などが、16ページにわたって記載されています。
こちらは現在常時、公開されている決算書類。
2ページだけ。
国から9億円を超える委託金を受けていますが、どう使われたのか、これだけでは分かりません。
国から補助金や委託金を受け、国家公務員の出身者が理事を務めていた282の法人を調べました。
すると70%に当たる196法人で、移行後に情報公開が減っていました。

制度改革を担った内閣府です。
一般法人に詳しい情報公開を義務づけるのは、新たな規制につながり、制度の趣旨に反するといいます。



内閣府 公益法人行政担当室長 髙野修一さん
「公益法人制度改革の趣旨、その下で、民間の自由な活動主体として一般法人を作った以上、そのうちの一部について、法律にもよらずして、何らかのディスクロージャー(情報公開)の規制をかけることは、説明がつかない。」

新制度“一般法人” 悪用の実態

簡単に設立ができ、外部からの目も届きにくい一般法人。
制度の理念に反して、悪用するケースも出ています。
うその勧誘で投資を募ったなどとして、金融庁から警告を受けた投資ファンドのパンフレットです。
株を運用して絶対的収益の追求をうたい、245人から10億円を超える資金を集めていました。
このファンドを管理していた組織の代表が、一般社団法人でした。
都内にある事務所を訪ねました。
しかし、そこには法人の名前は見当たりませんでした。

記者
「こちらでよろしいでしょうか?」

「シェアオフィスみたいな感じなんです。」

そこにあったのは貸しオフィス。
法人はすでに引き払っていました。

その後この法人の理事に取材しました。
「知り合いから理事に就いてくれと頼まれただけで、業務内容は知らない」と答えました。



仲林茂樹弁護士です。
一般社団法人の名前を使ったうその勧誘を受け、だまされたというお年寄りの依頼で、損害賠償を求める裁判を起こしています。

弁護士 仲林茂樹さん
「一番の問題点は、民事責任を追及しようにも、刑事責任を追及しようにも、事業実態がない場合に、責任追及がどんどん難しくなる。
誰がやったのか、誰が不法行為者として責任追及すればいいのか。
どんどん闇に隠れて見えなくなる。」

悪用する側にとって、どこにうまみがあるのか。
一般社団法人を使って投資詐欺をしたことがあるという男性は、名前の信用力だといいます。

元投資詐欺師
「普通の株式会社、有限会社よりは、“社団法人”がついているだけで、お客さんも安心して投資できる。
何人も、何回もだまされる人がいた。」

公益法人改革 “一般法人”とは

●“一般法人” 新たな不正の温床を生んでる?

国民から見たときに、一般法人というのが一体どういうものなのか、そのことが極めて分からない構造になってしまってると思います。
株式会社であれば、一定の営利の目的です。
それからボランティア団体であれば、NPOであれば、一定のイメージを作ることができるわけですが、一般法人ということになると、一体どういうことをやるところなのか。
ところがこの中に、従来、公益法人であったところが移行してきているわけです。
つまり、1つは役所型の法人がそこに存在する。
それからもう1つは、本当の意味で、地域貢献をしたいという形でボランティア的なもので設立をする、新しい法人を設立する方々がいらっしゃる。
そしてもう1つは、詐欺等に悪用しようとされる人たちがいると。
こういうものが一緒くたになって、一般法人ということになります。
そうしますと、ある意味ぬえ的な存在なんですが、この役所的なところもまだ存在しますので、ブランドを背負ったぬえということで、国民からしますと、社団とついていると、何かそこに役所的な信用があるんではないかと思ってしまうということも、またやむをえないところがあるんじゃないかというふうに思います。

●公益法人改革 “一般法人”の課題は?

この一般法人については、外部からのチェックというのが、ほとんど効かないというところに最大の問題があると思います。
公益法人から移行したところも、7割がその情報公開ということが非常に簡素化してしまった。
株式会社であれば、株主がいて、マーケットがありますから、そこからチェックを受ける。
NPO法人もそうだと思います。
ところが一般法人について見ると、情報公開も十分行われない。
こうしたところでいろいろな問題が起こってきますから、やはり公益法人から移行した一般法人が、まず従来どおりの情報公開を全部やっていただいて、一般法人の信頼というものをきちっと維持し、作っていただくということが大前提だと思います。
それを基準としながら、新しく出来た法人も、そうした情報公開を行うと。
そうしますと、悪用しようとする法人というのが、自然と淘汰(とうた)されていくということにもなるんじゃないかというふうには思います。

●7割で情報公開が大幅減 制度設計に責任が?

制度というものは、新しく作っても、100%それがいいところばかりということはありえないわけです。
必ず制度というものには問題点があります。
今回のように政府が制度を作った結果、非常に大きな問題点というものを生みだしてくる、そういう場ができてしまったわけですから、これは早くその制度を修正するという努力を、政府みずからが行わなければいけない。
こういう応答責任というのが、私は行政側に求められるんではないかというふうに思います。
(明治29年以来の改革が成功したといわれるまでに、まだ道半ばと?)
これからが本番のところではないかというふうに思います。

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