クローズアップ現代

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No.34902014年4月24日(木)放送
復活するアルカイダ ~テロへ向かう世界の若者たち~

復活するアルカイダ ~テロへ向かう世界の若者たち~

アルカイダに加わる欧州の若者たち

シリアで戦うアルカイダの戦闘員がみずから撮影したという映像です。

フランス語
「我々は神の教えに従い、敵と戦うのだ。」

話しているのは現地のアラビア語ではなく、フランス語です。
フランスからシリアに渡って戦闘員などとなった人はおよそ700人に上り、ヨーロッパで最も多いとされています。

「仲間たちよ、シリアに来い!」

シリアから3,000キロ余り。
フランスでは、テロに対する警戒感が高まっています。
今年(2014年)2月、カンヌ郊外にある高級マンションで、シリアから帰ってきたアルカイダの戦闘員が武器や爆発物を準備し、テロを計画していたことが分かりました。

マンションの住人
「テロリストが隣に住んでいたと知って、ショックでした。」



フランス政府は警察による捜査活動を強化。
アルカイダとつながりのある組織の摘発を急いでいます。

フランス国家警察 モハメッド・ドゥーアン氏
「イラク戦争のときはこうした若者は数十人しかいませんでしたが、今は数百人に増えています。
アルカイダが彼らを使ってフランスを攻撃する危険があるのです。」

なぜフランスの若者たちはアルカイダに加わるのか。
戦闘員となった人の多くが、イスラム系移民の若者たちです。
移民が多く暮らすフランス南部のニースでは、シリアに渡った人がおよそ30人に上ると見られています。
その中にはキリスト教徒だった若者も含まれていました。

18歳のこの青年もその1人です。
学校を中退し職業訓練を受けていましたが、仕事はありませんでした。
友人の多くが近所に住むイスラム教徒の若者でした。
去年(2013年)12月、こうした若者3人と共にシリアに行ったと見られています。
青年の母親が取材に応じました。
長年、介護施設に勤めながら女手一つで息子を育ててきました。

最近、シリアにいる息子から送られてきた写真です。
イスラム教に改宗し、アルカイダ系の武装組織に入ったと見られています。


母親
「息子がメールで私に伝えてきました。
シリアで殺された女性や子どもの映像をたくさん見た。
彼らを助けるためにシリアに来たんだというのです。」

母親は、アルカイダが仕事のない若者たちに目をつけ、リクルートしていたのではないかと考えています。

母親
「ひげを生やした男たちが、近所の若者と話しているのを見たことがあります。
シリアに行ったのは皆、お金のない無職の若者です。
飛行機代もないし食べ物を買うお金もありません。
アルカイダがお金を渡して連れていったのだと思います。」

シリアに渡ったヨーロッパ出身の若者たちの中には、過激なテロ思想に染まる者も少なくありません。
私たちは、今シリアにいるという若者の1人にインターネットを通じて直接話を聞くことができました。
19歳のこの青年は、アメリカによる対テロ戦争に協力するフランスは、祖国であっても攻撃の対象にするといいます。

フランス人戦闘員(19)
「フランスに帰ったら、フランス軍にかかわるあらゆる施設を破壊するつもりだ。
フランスはシリアのアサド政権と同じことをやっている。
だからフランスを攻撃しなければならない。」


フランスを含むヨーロッパ全体で、シリアに渡りアルカイダに加わった若者は2,000人に上ると見られています。
EU・ヨーロッパ連合では、治安担当の閣僚が集まる会議を開き、アメリカや中東諸国と連携するなど対策を迫られています。

EUテロ対策担当官 ジル・ド・ケルコーヴ氏
「ヨーロッパの若者は、EUのパスポートを持っているのでさまざまな国に自由に行くことができ、警察にマークされていない人も多くいます。
だからアルカイダにとって絶好の人材なのです。
国際社会全体で情報の共有を行い、対策を打ち出すことが急務です。」

アルカイダに加わる欧州の若者たち

ゲスト池内恵さん(東京大学准教授)

●なぜ若者はシリアに引きつけられていく?

それはフランスを中心とした西欧社会の社会的な条件の面と、それからイデオロギーの両方から見ていったほうがいいと思うんですが、まず条件面から言いますと、特にフランス社会では、移民の統合がうまくいっていない面があります。
もちろんうまくいっている場合もありますけど、うまくいっていない面がある。
非常に象徴的なのが郊外問題、都市の郊外に、特に移民を中心とした若者が職もなく集まっていて、その犯罪なども多いわけですね。
このイスラム教のジハード、外国に行ってまでジハードをしようという、こういうグローバルジハード主義といいますが、このイデオロギーは、まさにフランス・西欧諸国の抱える社会問題の中に、うまくつけ込んでいるということですね。
つまり通常であれば、目的のない若者が多く郊外にたむろしていたら、例えばマフィア組織に勧誘されるとか、麻薬に染まるとか、そういった犯罪に実際に染まってしまうことはよくあるんです。
むしろ、ジハードをやろう、やりたいという人たちというのは、そういうところから抜けようと思って、より確かな目標、目的のために身を投じたいということですね。
そういった形で人々を勧誘する、そして受け入れて、みずからシリアにまで行くと。
だからそういう意味でのイデオロギー的な、社会条件に適合したイデオロギーが広まっている、しかも広めるためにインターネットとかさまざまなメディアが出来たということが大きいと思います。
(インターネット上に出ている、無実の人々が殺されている映像などに引かれていく?)
そうですね。
つまり狂信的な人がジハードやってるとか、あるいは犯罪者が人を殺すためにシリアに行ったり、恐らく、少なくとも主観的にはそうではないわけですね。
むしろ世界に何か問題が起こる、不正義がある。
そして社会には自分たちの目的がない。
この2つが合わさったところにジハードをすれば、あなたの人生に意味が生じると、そういうふうに言われると、イスラム教徒の移民の子弟とか、あるいはフランスや西欧の社会に対して反発して改宗した人たちなどがそういったイデオロギーに染まる。
そして実際にシリアで内戦が行われていますから、その身を投じる場所がある、機会があるということですね。
そういう形で生じてる現象だと思いますね。

潜入 戦闘員を送るアルカイダの拠点

シリアの隣国レバノン。
私たちは、シリアに戦闘員を送り込んでいるグループと接触することができました。

拠点を訪ねると、厳しく取り締まられているはずのアルカイダの旗が公然と掲げられていました。
拠点には銃を構えた男たち。
周辺には監視カメラを張り巡らせ、24時間、当局の取り締まりを警戒しています。


このグループは、世界中から勧誘した若者を次々とシリアに送り込んでいます。
中東出身のこの若者は、このグループを通じて勧誘されました。
シリアでの戦闘に加わると言います。


アルカイダ系 武装組織 戦闘員
「我々にはアッラーのご加護がある。
勝利の日まで戦い抜く。」



彼らが目指すのは、シリアのアサド政権を打倒し、イスラムの教えに基づいた新たな国家をつくることだと言います。

アルカイダ系 武装組織 司令官
「世界の国々は誰もシリアの人々を助けてくれない。
だからわれわれが中東だけでなく、世界にまたがる巨大なイスラム国家を築くべきなのだ。」

“イスラム国家”樹立 勢い増すアルカイダ

すでにこの地域には、世界中から集まった1万人以上のアルカイダの戦闘員がいると見られています。
去年、「イラクとシリアのイスラム国」の樹立を一方的に宣言。
シリア北部の広い地域で統治を始めました。
貧しい人々には食料を配布。
苦しい暮らしを余儀なくされている人たちから、一定の支持を得ていると見られています。

「あなたたちの勝利を祈ります。」





さらに学校を開き、聖典コーランの読み方などイスラム教を重点的に教え込んでいます。
たばこなどの、しこう品は堕落した文化の象徴だとして強制的に処分しています。
この組織を率いるのが、イラクで数々の爆弾テロ事件を引き起こしてきたアブバクル・バグダディ容疑者。
インターネットを通じて、民主主義国家よりイスラム国家のほうが、公平で平等な社会が実現できると呼びかけています。

『イラクとシリアのイスラム国』指導者 バグダディ容疑者
「アラブの春の結果を見よ、前よりひどい状態になった。
イスラム教に基づく国こそが世界を導くのだ。」




アルカイダの統治を支える資金集めも、活発化していることが明らかになってきました。
資金源の1つが、世界有数の産油国、クウェートです。
イスラム教スンニ派の聖職者アリ・ヘラン師。
毎週、集団礼拝に合わせて、シリアで戦う同じスンニ派の同胞への寄付を呼びかけています。

クウェート人 聖職者 アリ・ヘラン師
「困った人を助けるのはイスラム教徒の義務です。
神に愛してもらえるよう、たくさんの寄付をしてください。」


アリ師は、イスラム過激派を支持しているとして当局から活動を制限されています。
しかしシリアへの支援活動に賛同する人は後を絶たず、この3年間でおよそ12億円の寄付を集めたといいます。
背景には、湾岸産油国の人々がシリアのシーア派系のアサド政権を倒すため、同じスンニ派の反政府勢力を支援していることがあります。
集められた寄付の一部が、反政府勢力の中核の1つ、アルカイダにも渡っていると見られています。

クウェート人 聖職者 アリ・ヘラン師
「シリアでは、ただスンニ派というだけで無実の人が大勢殺されています。
資金援助をすることは、われわれクウェート人の義務なのです。」

シリアの内戦に乗じて勢力を増すアルカイダ。
しかし支配地域では、市民への厳しい弾圧が行われていることが明らかになってきました。
アルカイダの掲げるイスラムの教えに背いたとする市民を、次々と拘束しているのです。


これはNHKが入手したアルカイダの内部文書です。
拘束した人の名前が記され、組織的に弾圧が行われていることをうかがわせています。
シリア北部で見つかった150人の遺体。
そのほとんどに拷問の痕がありました。

アルカイダによる虐殺を調査する弁護士
「アルカイダにはスパイ組織があります。
難民キャンプやホテルを監視したり、インターネットを使ったりして、批判的な人物の洗い出しをしています。
いったん連れ去られると二度と戻ってきません。」

世界に広がる アルカイダの脅威

シリアのようなアルカイダの新しい拠点は今、世界各地に広がっています。
アメリカがイラクの混乱を収束させないまま撤退するなど、中東への関与を弱める中、アルカイダの押さえ込みはますます難しくなっているのです。


アメリカ軍 元テロ対策担当 スティーブン・オハン氏
「今や、アメリカ市民にとって直接的な利益がないかぎり、中東での軍事作戦はほとんど支持が得られません。
したがって、今後われわれはアルカイダの脅威にさらされ続けることになるのです。」

アルカイダはなぜ復活したのか

●アルカイダが急速に勢力を伸ばした背景とは?

まず1つはアラブの春という3年前の出来事。
シリアは体制が不安定になり、エジプトなどが倒れたわけですね。
しかしそのあとに安定した体制が出来ているわけではない。
つまり、またシリアのように体制側が退かずに弾圧をし続けて、そしてそれを押しとどめる手段がないわけですね。
そこでやっぱりイスラム的なものが結局は代替し、オルタナティブなんだということが、一般的にそういう考えが一部で強まっているということですね。
そしてまたシリアの内戦の状況では、アサド政権に対抗するための支援をしてくれる勢力というものが少ないわけで、周辺諸国なども支援はしていますし、またアメリカも支援をすると言っていますけれども、あまりやっていないわけですね。
それに対してアサド政権のほうは、イランから、あるいはレバノンのヒズボラという組織から支援を明確に受けているわけで、そうしますと、世界中の、特にスンニ派の人たちがイランのシーア派に対抗するために、あるいはイランの脅威に対抗するために集まってくる、そういう現象があります。
そしてそのことをイランを脅威と感じる湾岸諸国、サウジアラビアとか、クウェートとか、そういった国の政府も支援しているわけですが、むしろ個人が支援する。
そういう形でシリアの内戦、いろんな勢力に、いろんな形で資金とか武器が集まってくる。
それによって内戦が永続化するわけですね。
そうしますと、混乱した状況下で、直接そういった周辺諸国から支持を受けていなくても、アルカイダにとっては非常に好都合な環境が生まれているわけです。
そしてアサド政権もまたそのような環境が生まれることを、むしろ好都合と考えている。
例えば2011年の紛争が始まった初期の段階に、アルカイダ系の指導者は、むしろアサド政権、たくさん釈放しているんですね。
(わざと釈放した?)
そうなんです。
むしろアサド政権の場合は、一般民衆が反政府行動をやっていると、それを弾圧するというのは、非常に国際的にも、そして国内的にも都合が悪いわけです。
ところが、相手がアルカイダのテロリストだということにしてしまえば、どんな弾圧をしても許される。
そういうことですから、むしろ初期の段階から、アルカイダ的な勢力を、実際に自分たちが刑務所に入れていた人たちも釈放したわけですね。
そういうわけで、政権側と反政府側の両方が、目的は違うんですけれども、この状況をそれぞれ作り出している。
そしてそのような状況を変えようという強い意志を、域外の大国、超大国、アメリカやロシアは見せていないわけですね。
むしろこのような内戦が永続化することをやむをえないと考えて黙認している、そのような雰囲気もあるということですね。

●アルカイダの復活はどのくらい広がっている?

われわれはアルカイダ、アルカイダって気軽に呼んでいますけれども、実際には1つの明確な大きな組織があるわけではないんですね。
しかもその組織は、過去10年の間にむしろ非常に弱まったわけです。
その中枢の組織はほとんど壊滅しました。
それは2001年の9・11事件で、それ以降、アメリカがもうグローバルに大規模な対テロ戦争をやったわけです。
それによってアルカイダの組織はほとんど壊滅したんです。
しかしそのあとに何が出てきたかというと、アルカイダが掲げたイデオロギーが残った。
そしてシンボルが残ったんですね。
ですからビデオの中でもあったように、世界共通の黒い旗を掲げる。
そしてアルカイダと直接つながっていなかった人たちも、その旗を掲げて、何かジハードをやるべきだと考える場所に行って何かやる、それをビデオに撮ってインターネットに載せると。
それを世界中の人が見て、あっ、この人はアルカイダだなというふうに認めると、またこれまでアルカイダを名乗っていた人たちも仲間に入れてあげるということをやる。
そういう形でネットワーク的、ソーシャルネットワーク的に広がっていく。
組織を作らないで、小規模な民兵集団を作って、あとからアルカイダとして認めさせていく、そういった分散的な組織としてアルカイダは今、育っているということだと思います。

●アルカイダの優位な状況、どうやって変える?

これ非常に難しいんですけれども、アルカイダっていうのは、やはり基本はイスラム的な観点から見て、不正義が各国にある、あるいは国際社会にあると、その不正義に対する憤り、そしてそれを正そうとする目的意識を人々が持つことによって生じるわけです。
そのような目的意識を持たないで済むような、そういう選択肢を国際社会が持つ、そのような意志を見せるということが第一歩だと思います。

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