クローズアップ現代

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No.34892014年4月23日(水)放送
子どもの体に異変あり ~広がる“ロコモティブシンドローム”予備軍~

子どもの体に異変あり ~広がる“ロコモティブシンドローム”予備軍~

整形外科医も驚く 子どもの体の異変

整形外科医 林承弘さん
「今、痛いとこない?」

埼玉県内で40年近く整形外科医をしている、林承弘さんです。
去年(2013年)林さんは、それまで見たことのない患者に出会いました。

整形外科医 林承弘さん
「ちょっとびっくりしたんですけど、両手首の骨折なんですよね。」

13歳の男子生徒のレントゲン写真です。
手首の骨が左右とも同時に折れていたのです。

男子生徒が思わぬけがをしたのは、体育の授業で跳び箱を跳んだとき。

けがをした生徒
「頭から前のめりの姿勢で落ちてしまった。」

バランスを崩して手をついた際、手首が十分に反り返らずに両手首を骨折してしまいました。

整形外科医 林承弘さん
「普通によけられるじゃないですか。
両手首を骨折なんて、ありえないですよね。
体の微妙な変化が、子どもたちに起こってきている。」


以前では考えられないような子どもの体の異変が増えているとして、埼玉のこの中学校では2年前から関節や筋肉など、運動器の状態を調べています。
検査の項目は、足首やひざなどの運動器を見るしゃがみ込み。
体幹の硬さをチェックする体前屈。
手首の動く範囲を調べるグーパー運動など。
5つの動きを見て運動器が正しく機能しているかを調べます。

整形外科医 林承弘さん
「はい、お願いします。
しゃがんでごらん。
おー、転倒か。」


男性
「かかとが浮いちゃう。
後ろに倒れちゃう。」

下半身の硬さが表れるしゃがみ込み。
実に14%の生徒ができませんでした。

整形外科医 林承弘さん
「グー、パー。」

また4人に1人が、手首が十分に反り返らないことも分かりました。



整形外科医 林承弘さん
「もっとこういかないと、けがするぞ。」

今回の検査の結果、52.8%の生徒の運動器が十分に機能していないことが分かりました。

整形外科医 林承弘さん
「やっぱり予想していたより硬いですよね、全般的に。
だから非常に体のバランスがアンバランスな子が多いかなと思っています。」

しゃがめない 曲がらない 運動量の多い子も?

宮崎では、さらに8,000人もの小中学生を調べたところ、23%の子どもが運動器に問題があると判明しました。
調査を行った、宮崎大学医学部の帖佐悦男さんです。



一体、子どもの体に何が起きているのか。
ふだん診察で使用している解析装置で、運動器の動きを見てみることにしました。
床に全く手が届かない男の子。
帖佐さんはその骨盤に注目しました。

宮崎大学医学部 帖佐悦男教授
「本来であればこの骨盤が前にかがまないといけないのが、全然かがまないので、これから先に進まなくなってしまう。」




実際床まで手が届く子どもは骨盤が90度近く曲がっているのに対し、体の硬いこの男の子はほとんど曲がっていないことが分かります。



そして、しゃがみ込み。
すぐに尻餅をついてしまいます。
解析装置で見ると、足首の運動器が硬く十分に曲がりきれていません。


宮崎大学医学部 帖佐悦男教授
「硬いため、運動器が動かないため、重心を前にもっていけませんから、しゃがもうとすると後ろにこのように転げてしまう。
足首が悪くなると、ひざが悪くなったり、反対側の足首に負担がかかって、変形性関節症というような病気になってしまいます。」

子どもの体は本来大人より柔軟に出来ています。
それは大人より軟骨部分が多く筋肉などが柔らかいためです。





しかし最近関節回りの筋肉などが大人と同様に硬くなる、いわゆる運動器の機能不全が増加。
放置するとロコモティブシンドロームになるリスクが高まるというのです。


宮崎大学医学部 帖佐悦男教授
「小さい頃からそういうことが起こっていることは、今事実なわけですから、そういう子どもたちが30、40になったら、もっといろいろな障害が。
子どもの頃からのロコモ予防は、まさしく大切だろうと思います。」

一体なぜ子どもたちの間に、運動器の機能不全が広がっているのか。
帖佐さんは、日常生活の中で子どもたちの動きのバリエーション、多様性が減っていることが影響していると考えています。
中学校男子の授業以外での1週間の運動時間を示したグラフです。
1週間に7時間以上運動する子と、1時間未満の子で2極化していることが分かります。
1時間未満の子どもを分析すると、ゲームやネットなどで全く運動しない子が80%近くに上ります。
これでは、運動器の機能が十分に育まれないおそれがあります。
一方で積極的に運動をする子どもにも、意外なことに運動器の機能不全や障害になるケースが少なくないのです。

実は先ほどの男の子は、1週間に10時間以上サッカーに打ち込んでいる運動量の多い子どもでした。
日々の練習で足の筋力や持久力が鍛えられ、運動能力も高いと見られます。
ところが足首や腰はサッカーで使っているものの、ふくらはぎや太ももなどの筋肉が過度についてしまい、柔軟性や運動機能のバランスが損なわれているのではと、帖佐さんは見ています。

宮崎大学医学部 帖佐悦男教授
「そのときの自分たちの体の特徴にあった以上の負担をかけてしまう。
とにかく1か所しか使わないというのは、絶対によくないですね。
多様性といいますか、体全体をうまい具合に使えないという弊害が出てきているんです。」

国が方針転換へ 健康診断を見直し

文部科学省はこうした子どもたちの体の異変を重く見て、去年から抜本的な対策に乗り出しました。
運動器の機能不全や障害を早めに見つけ出し、適切な指導や治療につなげられるよう、学校の健康診断を見直そうというのです。
これまでほとんどの運動器は学校では検査されてきませんでしたが、来月(5月)改正される法令で、新たに運動器の状態も注意するよう明示される見込みです。
ちなみに長年続けられてきた座高測定やぎょう虫検査などは、時代に合わないとして廃止される方針です。

文部科学省 学校健康教育課長 大路正浩さん
「常にその時々の状況を的確に反映した検査項目のあり方というのは、常に考えていく必要があるのではないか。」

子どもの体に異変 広がる“ロコモ“予備軍

ゲスト武藤芳照さん(日体大総合研究所所長)

●子どもの基本的な運動機能の異変 どう実感しているか?

ひと言で言えば2極化だと思います。
運動習慣、あるいは生活習慣の2極化、それに伴って子どもの体も2極化してしまった。
その2極化した状況というのは、運動の不足に伴って起こる機能障害もあれば、運動が多すぎて起きている機能障害、両面あると思うんですね。
子どもたちにとって、成長、発達には、運動は大切ですし、運動が必要であることは間違いないですね。
でも少なければ運動の効果もないし、多すぎたり、与え方を誤ると、害、副作用があると思うんですね。
この運動の必要性なんですけど、運動には2つのポイントがあって、運動の質と運動の量。
運動の質は、いわば多様性なんですね。
いろんなことをやるということですが、運動の量については、3つのポイントがあって、運動の時間、運動の強度、運動の頻度、何回やるかということですね。
1日、あるいは1週間に何回やるか。

その運動の不足に伴う機能障害でいえば、例えば私どもの経験でいえば、これは京都府のグループの報告なんですが、肩を上げてくださいと子どもたちに言ったら、このぐらいしか上がらない、あるいはもうこのぐらいで止まってしまうというような、例えていえば小学生の五十肩状態の、運動の機能障害がある。
(肩の関節が硬いということか?)
硬いということですね。
本来ならもっといろんな動きをしていれば、あるいはいろんな量の運動をしていれば、十分に肩が上がったはずなんですが、本来ならできるはずのことができなくなってしまうぐらいの機能障害が起きている。
これを運動器の機能不全とか、いわゆる体の硬い子という言い方をします。

●肩というのは本来いろんな方向に回るはずだが?

おっしゃるとおり。
今、国谷さんがされたように、肩は前にも、あるいは後ろにも、横にも上げられるし、回すこともできる、非常に動きの範囲、あるいは動きの方向が多様な関節なんですね。
そして運動が過多の場合、多すぎる場合、これは一般的にいえば、スポーツ障害、スポーツ外傷という状況になりますけれども、私どもの経験で言うと、例えばこういう例がありました。
野球のひじの障害なんですが小学生段階で野球を短期間に集中的に、たくさんの投げる動作をたくさんやったところ、ひじを痛めてしまった。
ひじを痛めてどうなったかというと、骨と軟骨に損傷をきたしてしまって一部剥がれてしまった。
その結果、本来ひじってこのぐらい動くんですね、子どもたちは当然。

これはその子の場合には、前にも、伸ばすほうも曲げるほうも5度ぐらいしか動かなくなってしまった。
そういう運動習慣の2極化に伴って体の2極化、そして疾患障害の2極化が起きているというふうに捉えられると思います。

●子どもの体は本来柔軟性にあふれ、いろんな動作ができるはずだが?

子どもの体は非常に柔らかいんですけれども、例えばここに子どものひざ関節という、ひざ関節と、大人のひざ関節があります。
これ、大人のひざ関節、大たい骨、けい骨、ひ骨という、まあ骨なんですが、これと比べますとずいぶん開いてますね。


ここに線があります。
ここは本当は軟骨があって、だんだん成長してきているので、大人のしっかりした骨になります。
(軟骨の部分が非常に多いが?)
私たちは子どもは軟骨人間と言っています。
子どもの骨は約350個ぐらいあって、大人になると206個ぐらいになるんですが、成長・発達の過程でしっかりした1つの大きな骨になっていくので、だんだん骨の数が減っていくんですけれども、例えば赤ちゃんは、頭が柔らかくって、べこべこ触ることができますけれども、そうした軟骨人間がだんだんしっかりした体になっていくのですが、例えば骨が急速に伸びる、女の子ですと12歳くらい、男の子ですと14歳くらいの成長期がありますね。
1年間で例えば15センチとか、1年間で20センチぐらい身長伸びる子がいますが、その時期っていうのは、何が伸びるかっていうと1番伸びるのは骨なんですね。
骨がどんどんどんどん伸びていく。
じゃあ筋肉やじん帯、骨に付いている筋肉やじん帯、けんはどうかというと骨ほど急速には伸びないですね。
そうすると当然骨に付いているので、その筋肉、じん帯、けんは突っ張った状態になってしまうので、成長が著しい時期はその時期には運動、特に筋伸ばし体操というストレッチングをしっかりやらないと、骨がぐんぐん伸びていて、ストレッチングは本当はどんどんやってもらわなきゃいけないんですが、足らないと骨を痛めたり、軟骨を痛めてしまって、出っ張ったり、機能障害を起こしてしまうという障害が生まれるんですね。

異変をどう見つけるか 学校現場の模索

宮崎市内のこの小学校では、国の方針に先駆けて4年前から運動器検診を実施しています。
検診を行っているのは、先ほどのVTRで子どもたちの運動器を調べていた宮崎大学の整形外科医、帖佐悦男さんです。
1学年90人の検査に割り当てられた時間は、僅か1時間。
運動器の検査をする医師は帖佐さん1人のため、子ども5人を1度にチェックします。

宮崎大学医学部 帖佐悦男教授
「どこか痛い?
足首がつけないんだね。
4番、タイトネス(極端に硬い)。」


その隣では、別の医師が。
こちらは学校医の小児科専門の医師です。
従来どおりの内科検診を行っています。
学校医の多くは内科医や小児科医で、運動器の詳しい知識はありません。
正確な検診の実施となると戸惑いもあります。

「運動器検診を自分がやるとなったらどうですか?」

学校医(小児科医) 小野武己さん
「小児科医にはできません。
とても整形など専門的なものはできません。
運動器はとても無理ですね。」

そこで整形外科以外の医師でも運動器検診が行えるように、基礎知識を持ってそのサポートをする、健康スポーツナースの育成に取り組んでいます。



宮崎大学医学部 帖佐悦男教授
「知識を持った人(健康スポーツナース)が手伝ってくれますので、よりスムーズにできる。
こういうことを少しずつ、大変ですけど広めていかないと。」

異変をどう見つけるか 家庭と学校の連携

一方家庭の協力を得ることで、運動器検診を効率的に行っている地域もあります。
島根大学医学部の内尾祐司さんです。
このマークシートを家庭に配る、通称・島根モデルと呼ばれるユニークな検査方法を編み出しました。

検査を受けた田中萌さん、13歳です。
この日、萌さんは学校で配られたマークシートをお母さんに渡しました。



母 理江子さん
「運動器検診問診票。」

田中萌さん
「見た目で左右の肩の高さが同じですか?」

子どもの運動器の状態をあらかじめ家庭でチェックすることで、そのあとの学校での検診を短時間に、また専門医でなくてもきちんと行えるようにというものです。



田中萌さん
「足の裏を全部床につけて、完全にしゃがめますか?」

リレーの学校代表選手に選ばれた萌さん。
しゃがんでみると…。

母 理江子さん
「転んでる。
できてないよ。」

母 理江子さん
「草取りするときだって、こうして。
かかと上げてるんだ、草取りするとき。
すごい力がいるね。」

家での事前チェックの結果、お母さんは萌さんがしゃがめないということに初めて気が付きました。

母 理江子さん
「まじまじ見ることがなかったので、とても良かったなと思います。」



家庭で記入されたマークシートは、検査前に読み取り機へかけられます。
すると瞬時に、運動器に異変の疑いがある子どもが判別されます。
それによって医師は懸念のある子どもを重点的に検査し、早期発見、早期治療につなげることができるのです。

島根大学医学部 内尾祐司教授
「ひざのことで病院とかは行ったことある?」

田中萌さん
「はい、行きました。」

島根大学医学部 内尾祐司教授
「できれば(かかりつけの)整形外科の先生に診てもらったほうがいいと思います。」

島根大学医学部 内尾祐司教授
「本人だけでなくて、保護者だけでなくて、周りの大人たちみんなが、それ(運動器の健康)を支えていくような運動につなげていきたい。」

早期発見で改善? 子どもの体の異変

●学校での検診の導入 限られた時間の中、どう合理的に行うかが課題?

おっしゃるとおりで、学校医の先生、養護教諭の先生の主体ではあるんですけど、家庭、地域、みんなが協力し合って合理的な仕組みを作ることが大切だと思います。

●子どもたちの体の異変 どう改善し、予防するか?

ふだんから長くできる、簡単な体操から始めましょうか。
では3つの体操をお伝えします。
お勧め健康ストレッチングトップ3であります。

1つ目は、かもいを使って、ラジオ体操の基本の姿勢、あるいは万歳の姿勢になりますけれども、これによって、脇の下、あるいは胸の上のあたり、肩回りのストレッチングになります。
弾みをつけない、息を止めない、同じ姿勢を15秒から20秒ほど、これで続けてもらいます。
もし子どもさんが小さくて、このかもいに届かない場合には、親御さん、保護者の方が少し支えてあげて、この姿勢が続くように協力をしてあげてください。

2つ目にいきます。
壁押しという、いわゆるよく運動部が行うストレッチングですが、このときに大事なのは、今やるとあれですが、弾みをつけない。
弾みをつけてください。
こういうのは間違ったストレッチングですので、この壁をしっかり押して、この姿勢を保つようにして、お尻から太ももの裏側のハムストリング、あるいはひざの裏側、ふくらはぎを順番に15秒から20秒伸ばします。
ふだん歩く、またぐ、上って下りるなど、さまざまな下半身の動きをしていますが、筋肉は収縮して縮んでしまっているので、それをよく伸ばしてやるストレッチングです。
今はひざを伸ばしていますが、そのひざを曲げたパターンにしますと、今度はアキレスけんの上のふくらはぎの奥の筋肉、そしてそくていという、足の裏側の筋肉を伸ばすストレッチングになります。

3つ目のストレッチングにいきます。
おうち、あるいは学校、オフィスで、行うことができる簡単なストレッチングですが、猫が朝起きると、必ずストレッチングをしています。
猫のポーズとわれわれは呼んでおりますが、この場合はいすを使います。
お布団のうえで、床の上で、あるいは同じようなポーズをすることができますが、頭を下げないようにして、息を止めないで、弾みをつけないで、脇の下、そして肩周り、背中、腰、お尻、そして太ももの裏側のハムストリングがずっと伸びていきます。
この姿勢だけで、上半身から下半身全体の筋を伸ばすストレッチングになります。
以上が健康ストレッチングのお勧めトップ3であります。

●子どもの健全な成長のため、ケアしなければならない時代に?

生活環境の変化がありますし、子どもたちの体自身の変化もあると思うんですが、まずは遊びが足らない、外遊び、運動遊びが足らない。
その状態で運動の不足の子どもたちが生まれ、スポーツの種目の訓練はするけれども、遊び的な要素の入った多彩な動きを含めたスポーツ指導とか、運動訓練がなくなってしまった。
いずれも原因と対策は外遊び、運動遊びの不足だと思います。

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