クローズアップ現代

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No.34862014年4月17日(木)放送
“折れない心”の育て方 ~「レジリエンス」を知っていますか?~

“折れない心”の育て方 ~「レジリエンス」を知っていますか?~

レジリエンス 逆境力 “折れない心”の育て方

都内の私立高校です。
試験や部活などでストレスを訴える生徒が増える中、去年(2013年)からレジリエンスについての授業を取り入れてきました。

教師
「レジリエンス、逆境力、回復力が高いと思う人をあげてください。」

生徒
「イチローさん、野球選手。」

生徒
「サッカーの長友選手。」

逆境を乗り越えたスポーツ選手の生き方を学ぶ事などで、自分の中にある逆境力を育んでほしいと授業を行ってきました。

郁文館グローバル高校 土屋俊之教頭
「いろんな悩みを抱えて、ギリギリ折れそうなところで踏ん張っていて、時には折れてしまうって方もいると思うので、そうならないように、知識としてスキルとして(レジリエンスを)学んでおく必要があると感じています。」

どこが違う? 心の折れやすい人

レジリエンスという概念が注目され始めたのは1970年代。
きっかけの1つとなったのが、第2次世界大戦でホロコーストを経験した孤児たちの研究でした。
孤児たちのその後を調査すると、過去のトラウマや不安にさいなまれ生きる気力を持てない人たちがいる一方で、トラウマを乗り越え仕事に前向きに取り組み、幸せな家庭を築く人たちもいたのです。
同じ経験をしながら、その後の人生が大きく違うのはなぜか?
研究から、逆境を乗り越えた人たちには共通の傾向がある事が分かってきました。

心理学者 イローナ・ボニウェル博士
「レジリエンスには、思考の柔軟性が必要な事が分かってきました。
つまり、厳しい状況でもネガティブな面だけではなくポジティブな面を見いだす事ができる人が、逆境を乗り越える事ができるのです。」

ストレス社会ともいわれる現代で、どうすれば逆境力を養えるのか。
心の折れやすい人と折れにくい人の違いをユニークな実験で明らかにしようとするのが、埼玉学園大学の小玉正博教授です。
小玉教授が実験に用いるのは、けん玉です。

埼玉学園大学 小玉正博教授
「まず小皿、大皿、最後中皿…。」

初心者には困難な課題に挑戦させ、その課題にどう向き合うかを観察するこの実験。

埼玉学園大学 小玉正博教授
「はい、よ~いスタート!」

参加者が課題を諦めてしまうまでの時間や過程を観察すると…。

埼玉学園大学 小玉正博教授
「白旗あげた。」

20分ほどで諦めてしまう、心が折れやすい人たち。
共通した特徴が見いだされました。

男性
「うわ~っ!」

その1つが、感情の起伏が激しい事です。
小玉教授が注目した20代の男性です。

男性
「おっ!」

一見、笑顔を浮かべ前向きなようですが…。

男性
「せ~の!」

埼玉学園大学 小玉正博教授
「にこっと笑うでしょ。
反応が強すぎる、一個一個(の結果)に対して。
長持ちしない、いちいちリアクションするから。
自分の感情出し過ぎる。
一喜一憂するのはエネルギー消耗しますよ。」

小玉教授の予想どおり、この男性も20分で諦めてしまいました。
こういったすぐに諦めてしまった人に聞き取りをしてみると、更なる傾向が明らかになりました。




女性
「たぶん、こういうの向いていないな。」

男性
「最初から諦めている。」

女性
「これは無理だな。」

課題に対して最初から無理と決めつけていたり、自分の力を過小評価する傾向があったのです。
レジリエンスには、状況に一喜一憂しない感情をコントロールする力や、自分の力を過小評価しない自尊感情が大きく関係する事が分かってきたのです。
一方、1時間以上にわたって挑戦を諦めなかった人たちからも、一定の傾向が明らかになりました。
課題の失敗を繰り返す中でも、少しずつ成長していると感じている人や、いつかできるだろうという気持ちを持つ人が多くいたのです。
自分が成長前進していると感じる事ができる、自己効力感という要素。
そして失敗の中でもいつかできると考える楽観性も、レジリエンスには重要な要素である事が分かってきました。

埼玉学園大学 小玉正博教授
「一般的に“心が強い”とイメージするのは、“鋼のような”、“跳ね返す”、“硬い”、“頑丈な”というイメージを持つが、レジリエンスというのは、楽観性のように自分のいる状況に対して前向きに、不安とかそういうものに打ち負けないでしなやかにこなしていく。
そういう心の持ちようがレジリエンスだということが、研究の中でだんだんと明らかにされてますね。」

どこが違う? 心の折れやすい人

ゲスト大野裕さん(精神科医)

●一喜一憂すると心が折れやすい?

そうですね。
まあやっぱり、一喜一憂してその結果にばかり目が行ってしまうと、そこに全部目が向いてしまうんですね。
そうすると、一体自分が何でその事をやってるのかっていう事が見えなくなってしまって、それでもうエネルギーを消耗してしまうという、そういうふうになりやすいと思いますね。
(目の前の失敗にとらわれ過ぎた、1つのシグナルということ?)
そうですね、できたかできないかというところですよね。

●早く諦めた人も物差しになる?

やっぱり諦めると、もうそこで終わってしまうので、やはりやっぱりできなかったっていう気持ちになりやすいんですね。
そうすると、そこでやっぱり駄目なんだという考えになりやすいっていうのはあると思います。
(早く諦めた人が全て当てはまるのか疑問だが?)
そうなんですね、私なんかは多分諦める方だと思うんですけどね。
ただ自己弁護をさせてもらうと、これやったってそう大した事ないやっていうふうに思えば、諦める事もまた1つ意味があるんですね。
自分にとって大切でないっていう判断して、そこで諦める力って、それもやっぱり大事な心の力だと思うんです。

●心が折れにくくなるための一番大事な事とは?

一番大事な事は、自分にとってそれが大切かどうかっていうのを客観的に考える力なんだと思うんですね。

●心が折れないための要素が4つ出たが、ほかには?

やっぱりあの4つは大事なんですけれど、それは個人の力として大事なんですね。
ただ一方で私たちっていうのは1人で生きてる訳ではなくて、ほかの人と一緒に生きてますから、やはりそのほかの人と一緒に生きる力っていうのも同時に大事になってくると思います。
(これは人間関係?)
人間関係ですね。

●折れそうになってる時は内向きになりがちだが?

そうなんですね。
そして自分の世界に閉じ籠もってしまう。
そうすると周りからの支援が得られないので、ますます力が弱まってくるという悪循環になってくるんですね。
(むしろ愚痴を言ったりする方が力はつく?)
そうです。
やっぱり愚痴を言ったり困った事を話をしたり一緒に笑ったりっていうそういう関係があるっていうのはすごく大事な事ですね。

●なぜ今レジリエンス(逆境力)に注目が集まっている?

さっきの話につながってくるんですけれども、やはり私たち今どうしても孤立をしてるんですね、短期目標で競争をするとか。
そして社会の中でも孤立をしやすい状況になってて、そのために精神的につらくなりやすくなってるんだと思うんですね。

食生活と運動で心を折れにくく

世界100か国以上に展開する大手製薬会社です。

「右ひざを胸に。」

社員のストレスを軽減するため、この会社では8年前から独自の取り組みを行ってきました。
食事のとり方を変える事でレジリエンスを高めようというのです。

「少量を頻繁に食べると、血中のブドウ糖を安定させ、(レジリエンスに)必要なエネルギーが維持されます。」

ポイントとなるのは、脳のエネルギー源となるブドウ糖。
ブドウ糖が少なくなると集中力が落ち、感情の起伏が激しくなるといわれています。



食事を少量ずつ3時間置きにする事で、ブドウ糖を一定のレベルに保ち、感情をコントロールする力を高めレジリエンスにつなげようというやり方です。
そして運動も重視します。


「その調子でいこう、あと1分10秒!」

全力でのランニングを何度も繰り返すインターバルトレーニングを、レジリエンスに効果があると推奨しています。
体力の限界を乗り越える経験を通じて、自己効力感が養われるというのです。
トレーニングに参加した1万人の社員のうちおよそ8割が、職場におけるメンタルヘルスを改善し、仕事のパフォーマンスが上がったという結果が出ています。

伸び悩む営業社員 “折れない心”をどう養う

一方、日本でも独自のやり方で社員のレジリエンスを高め、営業成績を上げようという取り組みが行われています。
愛知県瀬戸市にある従業員90人の中小企業です。
電柱に取り付けるセラミック製品を製造するこの企業では、売り上げがピーク時より大きく落ち込んでいました。

ヤマキ電器 加藤陽太郎社長
「壁に当たった時に何が何でも乗り越えてやろうと、気持ちが表に出ないタイプが多いものですから。
その課題が会社として解決できれば、また会社がさらに強くなると思っています。」

伊藤正人さん
「はい、お世話になります。」

営業成績が伸びず、悩みがちになっている社員がいました。
伊藤正人さんです。

伊藤正人さん
「え~とですね、木曜金曜はちょっと難しいですね。」

もともと技術者だった伊藤さんは、ここ2年、新たな事業につながる契約を取れず、自分は向いていないのではないかと考えるようになっていました。

伊藤正人さん
「新規飛び込み営業のようなお客様というのは、ちょっと後ずさりしてしまうような部分があるものですから、あらかじめ自分の頭の中で負のシミュレーションをしてしまって、行ってもダメなんじゃないかなという。」

過去の逆境体験を力に

社員の折れやすい心を変える事はできないか。
この企業では民間団体の講師を招き、レジリエンスの研修を行いました。

研修 講師
「気持ち的に落ち込んだ時からどう再起したか、どう上がったかという所を思い出していただきたいんですよ。」

研修で使われたのは「逆境グラフ」と呼ばれるもの。
自らの人生の浮き沈みをグラフにし、その時の状況や気持ちを書いてもらいます。
自信を失っていた伊藤さん。
3年前に大きな落ち込みがありました。

伊藤さんの逆境グラフです。
逆境の原因は、妻の入院と同じ時期に父親の死に直面した事でした。

伊藤正人さん
「父親との死別の時は、何かもっと僕にできることがあったんじゃないのかなっていうような思いは僕の中にもあったんで、それを家族が『そんなことないよ』って、助けられたってことがあります。」

家族の支えによって父親の死から立ち直る事ができた伊藤さん。
逆境グラフで過去の体験を見つめ直す事により、自らの逆境力や周囲の人たちの支えを再認識する事ができました。

研修 講師
「おそらく伊藤さんにとっては、新規開拓というのはそんなに大きな逆境じゃないと思うんですよ。
これだけ大きな逆境を経験されてるんで。
過去に経験されたことと比べたら、ちっぽけなことかもしれないですね。」

伊藤正人さん
「そう言っていただけるとすごく自信になる。」

レジリエンスの研修を受けた伊藤さんはこの日、新たな取り引き先を開拓するため都内で開かれた展示会に参加しました。

伊藤正人さん
「いろいろ情報を聞いて回ってるんですけど。」

「残念ながら。」

伊藤正人さん
「ないんですね。」

伊藤正人さん
「勉強になりました、ありがとうございます。」

以前は断られ続けると心が折れてしまった伊藤さん。
この日は30を超える企業にアプローチを続けました。

伊藤正人さん
「やれるんだという自信というか、やらなきゃいけないし。
自信があるとはまだ言わないですけど、小さい一歩は踏み出した気がします。」

過去の逆境体験を力に

●自分の過去の逆境を振り返るプロセスについて

とてもいい表情だったんですけれども。
やはりつらかった時に、つらかった事だけではなくて例えばご家族の手助けだとか、そこでご自分が工夫された事だとか、そういうプラスの部分を見てらっしゃるんですね。
そうする事で「あ、自分にとって大切なものはこういう事なんだ」と理解されたと思うんですね。
そうするとつらい体験が必ずしもマイナスだけではなくなる。
そういう事だと思うんです。
そうしますと、やっぱりご家族との関係だとか、そういうものは契約が取れるか取れないかに比べたらずっと大きいんだと。
逆に言うと、契約が取れるか取れないかというのはそんなに大した事ないんだ、そういうふうに視野が変わってきたんだと思うんです。

●体験した逆境が大きいと、それを見つめるのもつらいのでは?

そうですね、やはりここは非常に注意しないといけないんですけども、逆境を思い出せるそしてそれを力にできる方と、やっぱり逆境を思い出す事でもう一度心が傷つく方っていらっしゃると思うんですね。
その場合には、せっかく抑えてらっしゃる記憶を表に出すというのはあまりいい事ではないと思うんです。
ですから、忘れる力っていうのも私たちの心の力ですので、そういうものも大切にしながらやっていく必要があると思うんですね。
(そういったケースはどうやってこのプロセスを踏めばいい?)
私たちも企業とか学校でやってるんですけども、その場合にご自分の体験ではなくて、ほかの人の体験としてこういう体験を見て頂いて、「じゃあこの人たちにどういうふうにアドバイスできるだろうか」とか第三者的に考えていくと、ちょっと距離を置いていろんな考え方のシミュレーションができると思うんです。
ですからそういうのも1つだと思いますね。

●本当に心の力を高めていくには何が大事か?

まずは今の例でもそうですけど、何が大切なのかっていうのをご自分の中で客観的にきちんと把握しておかれるという事ですね。
そうすると、目の前の成功失敗に一喜一憂しないで済むという事があると思うんです。
そしてその大事なもののために諦めないで頑張る。
それ以外のところは上手に諦めるっていう、そういうふうな事がまず1つ大事だと思うんです。
もう1つは、1人で頑張る力というのは限られてますので、ほかの人と一緒にそういう事ができる、そういう環境を作るというのも大事だと思うんですね。
(いろんな人間関係を広げるという事?)
そうですね。
さっき愚痴を言うっていう話がありましたけど、愚痴を言ったりいろんな気持ちを共有したりという事も役に立ってくると思うんですね。
だからそれは、なかなかすぐにはできないかもしれないんですけど、やっぱりそれを意識して頂く。
そして場合によってはウェブサイトだとかそういうものなんかも使って、いろんな関係を作って頂くというプラスの方向でそういうものが作れるといいと思いますね。

●ネガティブな時に誰かに声をかけるのは大変では?

だけど人にとって一番幸せな事って、人のために何かできる事なんですね。
ですから思い切って声をかけて頂くと、ご自分にとっても楽になりますし、その人もその方に対して何かができるっていう幸せ感を感じられると思いますので、やはり両方が幸せになれる。
そういう第一歩だと思うんですけどね。
(思い切って何かお願いしたりするという事も大事?)
そうですね。
そうするとお互いに幸せになれるという事だと思います。

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