クローズアップ現代

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No.34842014年4月15日(火)放送
無月経、疲労骨折・・・10代女子選手の危機

無月経、疲労骨折・・・10代女子選手の危機

10代女子選手に広がる 無月経・疲労骨折

高校の陸上選手、およそ300人が集まって行われた強化合宿です。

指導者
「強く吐くんだよ、強く吐くの。」

体重の軽いほうが有利といわれる長距離などの種目では、体を絞り込む選手が多くいます。

「体重制限している人ってどれくらいいます?
けっこういっぱい。」

高校陸上選手
「陸上は特に自分の体で勝負するので、脂肪はなるべくつけないようにしてます。」

そんな中、無月経に悩む選手も少なくありません。

高校陸上選手
「一番長いと1年とか(生理が)こなくて、また3か月くらいこない。」

今まで実態が把握されてこなかった、10代女子選手の無月経と疲労骨折の関係。
NHKのアンケート調査からは無月経を経験した選手のうち、3人に1人が疲労骨折を起こしていたことが分かりました。

17歳の女子長距離選手です。
高校3年生になっても月経が一度もなく、2年間で疲労骨折を3回繰り返してきました。

陸上長距離選手(17)
「また痛みがでたので。」

全国でもトップクラスの強豪校に通うこの選手。
毎日20キロ以上走り、体重は41キロを目標に常に減量に励んできました。

陸上長距離選手(17)
「(顧問の)先生にはどんどん体重減らせってばかり言われて。」

医師
「もっと減らせって?
それでやってると壊れちゃう。」

疲労骨折の原因は月経がないためだと、この産婦人科で初めて診断されました。

陸上長距離選手(17)
「先生に言われるまでは、(無月経が原因だと)全然知らなかった。
自分で実際検査を受けて、こういうのあるんだって知りました。」

月経に伴って分泌される女性ホルモンは、骨の形成に欠かせません。
骨は壊れたり、再生されたりを繰り返し、強度を保っています。




無月経になると、女性ホルモンが不足し骨が再生されないために、もろくなってしまうのです。
この状態で激しい運動を続けると、負荷に耐えきれず疲労骨折を起こしやすくなるのです。


医師
「出血(月経)あっても、よさそうなんだけどな。」

この選手は、1年前から女性ホルモンの投与によって月経を促す治療を受けています。
しかし、いまだ月経は来ていません。

なぜ深刻な事態に至るまで気付くことができないのか。
日々10代の選手に接している指導者1,000人へのアンケートでは、無月経と疲労骨折の関係について知らないと答えた人が52%に上りました。


さらに、たとえ知っていても76%の指導者が、選手が疲労骨折をしたとき月経について確認していませんでした。
その理由が書かれた記述です。



指導者アンケート
“全国大会レベルの選手のほとんどが無月経と思われる。”




指導者アンケート
“生理がなくて当然と考えている。”

無月経・疲労骨折 絶たれた選手生命

無月経による疲労骨折の危険性を周囲が知らなかったために、10代で選手生命が絶たれてしまった人がいます。
バレーボール選手だった寺山絵未さん、24歳。
全国大会で優勝争いをする強豪校でセンターを務め、チームの中心的役割を担ってきました。

寺山絵未さん
「全日本選手に私も、なるべく早くなりたいという気持ちがありました。」



男性の指導者からもっと痩せたら高く跳べると、寺山さんはアドバイスを受けたといいます。
その直後から2か月で8キロ減量。
月経が止まってしまいました。

急激に痩せていく娘を間近で見ていた母親も、それがさらに深刻な事態を招くとは思ってもいませんでした。

母 貴世さん
「親としてブレーキをかけてあげなきゃいけなかった。
後悔はすごくあります。」

指導者にも母親にも気付かれず、練習を続けていた寺山さん。
全国大会を前に足に激痛が走り、病院に直行しました。
結果は疲労骨折。
しかし背景にある無月経については、ここでも気付かれることはなく、その後も疲労骨折を繰り返しました。

数多くのトップアスリートを診察してきた、整形外科の桜庭医師です。
寺山さんのようなケースは決して珍しくないといいます。

順天堂大学 桜庭景植教授(整形外科)
「疲労骨折の原因として、生理不順、無月経、摂食障害があると。
それが大きな原因になっているということを知らない先生がいることも事実。
ドクターたちの意識改革も必要だと思う。」

夢を諦め今は地元で働く寺山さん。
もっと早く気付いていたら、今もバレー選手として活躍できていたのではないかと悔やんでいます。

寺山絵未さん
「知っていたらもっと違っていたんじゃないかな。
疲労骨折も予防できたんじゃないかな。
月経が止まっている選手に対して、“今すぐ危険だから早く病院に行って”と声をかけてあげたい。」

無月経・疲労骨折 その実態は

ゲスト増田明美さん (スポーツジャーナリスト)
ゲスト目崎登さん (筑波大学名誉教授(産婦人科)) 

●寺山さんの“もし知っていたら疲労骨折を予防できた”という言葉 どう思うか?

増田さん:私も全く同じことを考えています。
私も10代のときに、約2年半、無月経のときがあったんですね。
でもそれはもう、当然だと思って練習を続けていたんです。
そうしましたら、競技生活の後半のほうでは、足に痛みがあることがすごく多くなりましてね、引退した直後に検査をしたら、足に7か所も疲労骨折があったんですね。
それで、65歳の女性の骨密度、骨密度がそのくらいの量だっていうことを言われて、すごくショックを受けたんです。
でもそれはもう20年も30年も前のことですからね、私のときっていうのは、月経があるようでは、まだまだ練習が足りないっていう、その時代で、今はもっともっとスポーツ医学が発展しているから、こんなことないだろうと思っていたのに、今のVTR見ましたら、なんも変わっていないということにショックを受けました。

●無月経と疲労骨折の因果関係等について知識はあったか?

増田さん:いや、なかったんです。
7か所の疲労骨折があったときにも、そのときに28歳でしたけども、初めて疲労骨折ということばを知ったんですね。
ですからすごく無知でした。
寺山さんと同じように、もっともっとそういう知識があれば、28歳ではなくて、競技生活が長くできたのかもしれないなと思うと残念ですし、すごく反省もしています。

●無月経・疲労骨折 指導者の意識かなり立ち遅れてないか?

目崎さん:そうですね。
本来は女性アスリートの健康というと、やはり月経もあってということになるんですけれども、先ほどのビデオにありましたように、競技を高めるために体重減少する。
体重減少の結果、無月経になるんですけれども、この無月経になるというのは、うがった見方をしますと、体重減少、ひどすぎる場合には、人が生きていくための機能としてはぎりぎりだと。
そうしますと最初に切り落とされるのは生殖機能ということなので、無月経になってくると思うんですね。
ですから、無月経になるということは、体としては、あまりよくない状況だというふうに考えたほうがいいと思います。

●特に10代の女子選手は、この影響をきちんと捉えるべき?

目崎さん:そうですね。
非常に大きな問題でして、10代というのは、骨密度が急激に高まるときですけれども、このときに無月経になる。
いわゆる女性ホルモン、エストロゲンが少ないと、骨密度が増加するどころか、減ってしまうわけですね。
ですからそのまま競技をしていれば、疲労骨折を起こすでしょうし、また女性ホルモンが少ない状態、ずっと続いてますと、子宮も萎縮しますし、無月経が無治療のままずっといれば、将来的には排卵障害になる、不妊症なども起きてきます。
しかしながら、これ、問題ばかりを申し上げましたけれども、10代のときに見つけて、きちっと治療すれば、そのような問題は起きてきませんので、10代アスリートの無月経は早期発見、早期治療、これが非常に大切だと考えております。
(いったん骨密度が下がっても、戻る?)
そうですね。
(子どもを産めるように、体は回復することも?)
はい、それも当然、期待できます。
ですから、もう諦めたというんではないということになりますね。

増田さん:先ほどVTRにあった土佐礼子さんも、2人のお子さんをお持ちで、とてもお元気なんですね。

無月経・疲労骨折 アメリカの対策は

女性のトップアスリートを数多く輩出しているアメリカ。
1990年代から、無月経が疲労骨折を招くことがスポーツ界で広く認識され、医師や指導者などの立場を越えた連携が進められてきました。
全米の高校、大学、ほとんどの競技の選手が毎年受けている専用の問診票です。
最大の特徴は、女性を対象にした月経についての設問があることです。

“最後に月経があったのはいつですか?”





“この1年に何度月経がありましたか?”





選手の異変をいち早くつかみ、早期の治療に結び付けるのがねらいです。

無月経・疲労骨折 “連携”で早期対応

女性のオリンピック選手を数多く治療してきたナティーブ医師。
この問題の第一人者です。

カリフォルニア大学 ロサンゼルス校 オーレリア・ナティーブ医師
「月経に関する質問は、リスクを抱える女子選手を見極めるうえでとても重要です。
小さな異変に早く気付くことができれば、問題が深刻になるのを防げるからです。」

月経に異常がある選手が見つかると、医師やトレーナー、栄養士などが情報共有のため集まります。
それぞれの専門知識を生かし、どうサポートするか検討します。

カリフォルニア大学 ロサンゼルス校 オーレリア・ナティーブ医師
「この新入生は疲労骨折をしたことがあり、再発をとても心配しています。
調べてみたら月経の異常もあります。」

トレーナー
「彼女を担当するコーチと、これから密接に連絡を取ります。」

栄養士
「エネルギーバランスがとれているか、詳しく調べてみます。」

カリフォルニア大学 ロサンゼルス校 オーレリア・ナティーブ医師
「早期に介入することで選手生命を延ばし、さらには成績も向上させることができるのです。」

無月経・疲労骨折 始まった模索

一方、日本でも無月経による疲労骨折を防ごうと模索が始まっています。
10代の新体操選手を30年近くにわたって指導してきた、橋爪みすずさんです。
かつては選手に厳しい体重制限を課していましたが、今は無月経による疲労骨折が起きないよう常に配慮しています。
橋爪さんが意識を大きく変えるきっかけとなったのは、2年前。
ロンドンオリンピック直前の国際大会でのアクシデントでした。
日本のエースだった選手が演技中に突然、崩れ落ちました。
太ももの疲労骨折でした。
中学生のときから月経の異常に悩んできたといいます。
このけがで選手生命が絶たれました。

伊那西高校 新体操クラブ 顧問 橋爪みすずさん
「あまりにもショックで、言葉が無かったですね。
選手に対して(今までと)同じ指導を続けていてはいけないと、強く思った。」


橋爪さんは去年(2013年)から選手の体に関する詳細なデータを、定期的に取っています。
骨密度、筋肉のバランス、体脂肪率など、およそ20項目。
選手の体の小さな変化も見逃さないためです。

伊那西高校 新体操クラブ 顧問 橋爪みすずさん
「まだ生理きてないの?
きてる?
いつきた?」

検査には選手の親にも立ち会ってもらい、情報を共有しています。

伊那西高校 新体操クラブ 顧問 橋爪みすずさん
「データが出たら一緒に見ていただいて。」



さらに栄養士を招き、無月経を防ぐために有効な食事方法を指導しています。

選手の母親
「体重を落とすことイコール食事を減らすことという意識がすごく強かったので、間違いの知識だったんだなと。」

選手の母親
「これから、そういうこと(月経の異常)が起きてきたときに、防げるようにとは思っています。」

指導者と家庭が連携することで、けがも減り、全国大会で3位になるなどレベルも上がったといいます。

伊那西高校 新体操クラブ 顧問 橋爪みすずさん
「たくさんの目でひとつの体を見守っていくことが大事だと思うので、その子の人生にマイナスの影響を与えるのは、絶対指導者としてはあってはならないことだなと。」

どう防ぐ 無月経・疲労骨折

●立ち遅れた状況の中、日本はまず何から進めるべきか?

目崎さん:そうですね、女性アスリートの健康上の問題についての認識が、スポーツドクター全員では、必ずしも共有されていないというところが問題だと思うんですね。
例えば婦人科医の場合には、月経異常、無月経で10代の少女が来た場合には、それに対しては思い至りますけれども、疲労骨折という感覚では捉えることができない。
逆に整形外科の先生は、無月経が疲労骨折の原因になっているというふうに、いわゆる裏表ですかね、その感覚で捉えることができてないということが、これが非常に大きな問題だと思いますね。
特に婦人科医の場合には、少女の月経異常は治療できても、アスリートはできないといって、避ける風潮があります。
しかし、産婦人科医もきちっと女性アスリートの健康管理に関わらなきゃいけないということで、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会もこの問題に取り組んでいきますので、数年たてば、いろんな指針が出てきて、きちっと対応ができるようになると思いますし、またスポーツドクターでも、婦人科以外のドクターが対応できるようにということで、臨床スポーツ医学科医のほうで、産婦人科部会から、婦人科的な問題についての対処法についても学会誌に出したりしておりますので、いろいろな診療科の先生方にもご理解いただけるんじゃないかと考えております。

●体のことを配慮してくれる指導者がいてほしい?

増田さん:ええ。
スポーツの場合には、スポーツの指導者っていうのは、圧倒的に男性が多いですので、なかなか選手は男性の指導者に言いにくかったり、男性のほうも気にしてるんだけど、言っちゃうとセクハラになっちゃうんじゃないかということもありますけどもね、やっぱり6年後の東京オリンピックやパラリンピックのことを考えたら、選手も指導者も、もっと疲労骨折と無月経の関係を知って、もっと心配しなければいけないですよね。
やっぱり選手以上に指導者の皆さんが負けず嫌いなんですよ。
だからこの3年間で、日本一にしようって、目先の勝利ばっかり考えがちですけれども、もっともっと選手の体の成長を見守りながら、練習をレベルアップしていくということ、長い目で見ていく必要があると思いますね。

●指導者が選手に聞けないとき、母親の役割は大きい?

増田さん:そうですよね。
指導者に言えないときには、お母さんに言って、家庭と、さっきの橋爪さんのように、家庭と指導者と、また選手が上手に連携が取れていけば、とてもいいですね、全国的に見てね。

●10代の女子選手たちに今何を伝えたいか?

増田さん:選手の気持ちになると、目の前の練習をしなきゃ、真面目ですから、この大会で頑張らなきゃって思いがちなんですけれども、やっぱり選手でいるとき以上に、そのあとの人生のほうが長いわけですから、しっかりと無月経であれば、親御さんに話すとか、指導者に話すっていうことをして、目崎さんが言われたように、早期発見でしたら体は治りますので、そういうようなことを分かってほしいなというふうに思います。

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