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No.34592014年1月28日(火)放送
“健康経営”のすすめ ~会社も町も大変身!~

“健康経営”のすすめ ~会社も町も大変身!~

ビッグデータ時代! 健康経営が会社を変える

続々とやって来たのは、大手歯磨き剤メーカーの幹部社員たち。
向かった先は会社の研修施設、その名も「健康道場」。
健康診断の数値から、メタボリックシンドロームの疑いありとされた社員たちが、業務命令で集められたのです。



営業部 関西担当
「結婚と転勤を機に、太り出しまして、とうとうひざを壊して、そろそろ使いものにならない。」




営業部 首都圏担当
「暴飲暴食当たり前、肝臓がいかれました。
自分の人生、健康の人生を取り戻したい。」



第一線でバリバリ働く幹部社員たち。
2泊3日で、運動や生活習慣の見直しを、徹底的にたたき込まれます。
社員たちは、体脂肪率などの数値が改善されるまで、定期的に道場へ送り込まれ続けます。
運営にかかる経費は、年間なんと4,000万円。
それでも、生活習慣病によって、せっかく育てた幹部社員が倒れてしまうリスクを考えれば、有効な投資だと位置づけています。

社員
「もう無理です。」




サンスター 福利厚生担当 取締役 中川寛さん
「従業員の方が、より健康になるということが、従業員一人ひとりのパフォーマンスを高めることにつながっている。」




一方ゲーム感覚で、社員が思わず運動してしまうような健康経営もあります。
従業員1万4,000人の、大手総合化学メーカーです。




従業員
「礼!」

従業員たち
「お願いします。」

仕事が終わると、毎晩のようにスポーツイベントを開催。
本格的なスポーツマンから、運動はちょっと苦手という人まで、こぞって参加します。




全社員を運動する気にさせているのが、こちら。
ヘルシーマイレージ合戦です。




毎日、どんなスポーツをどれくらいしたかを入力すると、マイルが登録されます。
マイルに応じて、電動歯ブラシや歩数計など、健康グッズがもらえる仕組みです。
ほかの人のマイルも、リアルタイムで見ることができ、ライバル心がかきたてられるというのがミソ。



従業員
「順位が出てしまうと、火がついてしまって、負けないように、隠れて運動してやろう。」




マイレージ合戦には、全国10か所の事業所が参加。
2,500人が競う、巨大イベントになっています。
この会社が、健康経営にかじを切り出したのは6年前。
社員の高齢化で、がんや循環器系の疾患が増加。
さらに景気低迷による、先行きの不安から、精神面の不調を訴える社員も急増したからです。
従業員の欠勤日数は30%も増えて、医療費は増大。
健康保険組合の赤字は、まもなく十数億円に達すると、予想されました。

危機的な状況に、健康経営の導入を提案したのが、産業医の土肥誠太郎さんでした。





土肥さんは、過去15年間にわたって蓄積した、従業員の健康診断の結果と、食事や運動量に関するデータを整理して分析しました。
社員の健康悪化が、偏った勤務や生活習慣にも、深く結び付いていることを、明らかにしたのです。




“今こそ全社的な運動プログラムが必要だ。”

データに基づいた土肥さんの訴えに、経営陣も早速応えました。




三井化学 統括産業医 土肥誠太郎さん
「経営層が健康管理を、きちんと経営方針の中に位置づけてくれるのは、ありがたい。
会社が社員の健康を、重要だという認識を持っているメッセージが、明確になる。」



健康経営の導入によって、欠勤日数は元どおりに減少。
健保財政の赤字化も、免れることができました。

従業員
「こんにちは。」

従業員
「元気?」

今ではスポーツを通じて、職場のコミュニケーションも活発となり、ほかの部署と連携した、新しいプロジェクトも誕生。
業績アップにつながっています。

三井化学社長 田中稔一さん
「健康を守るのではなくて、健康を獲得する、増進する。
社員が参加しやすいようなことを、工夫してやってきたということですね。
これは産業医を中心に、大変うまくやってもらったと思っています。」


こうした企業の健康経営を、後押ししようという動きも生まれています。
日本政策投資銀行では、2年前、健康経営格付制度を創設。




従業員の健康に関する取り組みを、200項目にわたって評価し、優れた企業には金利を優遇しています。
これまでに、外食チェーンや鉄道会社など9社に対して、155億円の融資を行っています。




融資担当者
「(この会社は)35歳位上を対象に、特定健康診断と同レベルの詳細な健康診断をしていらっしゃる。」




銀行のねらいは、優良な取り引き先の開拓。
売り上げなどの、財務データだけでは見えてこない、経営リスクや、企業の潜在能力を見極める材料になると、にらんでいます。

日本政策投資銀行 融資担当部長 竹ヶ原啓介さん
「(健康経営で)労働者自身も非常に恵まれますけど、たぶん会社の競争力はより強くなっていくし、新しいイノベーションとか、今まで考えてもいなかったような発明、発見、事業化というものが出てくるかもしれないです。」

“健康経営“のすすめ 会社も町も大変身!

ゲスト古井祐司さん (東京大学特任助教)

●今のような企業に働いている方は、非常に恵まれている?

これらの企業さんというのは、やっぱりいち早く、こういう取り組みが会社の成長にとって、やはりメリットがあるなっていうのが、いち早く本当に気が付かれた企業だと思うんですね。
(個々の生産性を上げていくことが、競争力につながるという気付きでもある?)
そうですね。
今、これらの企業さんは、今まで福利厚生っていう視点で健康づくりをとられた、そういう時代から、会社が成長するときに、従業員も元気になってもらって、みんなで伸びようっていう、そういう考え方だと思うんですね。

●働く環境に応じて、なりやすい病気、症状というのがある?

これ、われわれも本当に驚いたんですけれども、やっぱり働き方とか、業種、企業によって、これだけなりやすい病気が違うんだなって、最近分かってきたんですね。
例えば美容師さんっていうのは、非常に痩せていて、かっこいい感じの方が多いんですが、実は、健診で見てみると、痩せてるんですけども、血糖値が非常に高いというようなことが分かってきたんですね。
(それはなぜ?)
美容師さんっていうのは、やはり、忙しい立ち仕事なので、朝食とか昼食がなかなか食べられない。
そういうことで、裏に行ったときに、ちょっと甘い飲料を飲んだり、あんパンを食べたり、そういうことで、逆にあんまりごはんを食べてないので、基礎代謝が減って、脂がたまりやすくなって、逆に血糖値が上がっていったということも、分かってきたんですね。
(すると、どう改善すればいいか、企業が分かるように?)
そうですね。
そういうことが、例えば店長さんとか、経営者の方から、じゃあ、ちょっと自動販売機を変えていこうということで、そちらの美容室では、ジュースではなくて今度、お茶とかお水を入れたりとか、それから、20分でも30分でもいいので、みんなで交代でちゃんと昼食を食べようという時間を設けたりとか、そういうふうに職場環境を整えるということにつながっているんですね。

●健康経営ができる企業というのは、恵まれた大企業だけでは?

そうですね、今、大企業さんで先行的に広がったんですが、実は今年(2014年)から、中小企業でも健康づくりをやっていきたいということで、実は大分県の、中小企業が加入している協会健保というところで、健診データの分析をして、お宅の会社は、こんな特徴がありますよ。


それを社長さんが見ると、あっ、うちの従業員は、こんな健康状況なので、ちょっとこういう対策をしたほうがいいんじゃないかと、そういうアドバイスを、健康保険制度の中で、行うようになったんですね。
そういうことで言うと、中小企業であっても、同じように、健康経営をやろうと思えば、できるような環境が、徐々に整ってきていると思います。
(これは、2008年からメタボ健診が義務化されたことと関係がある?)
そうですね、メタボ健診というのは、実はみんなが健診を受ける機会だけじゃなくて、データが、様式が標準化されて、全国どこでも比較ができるようになったんですね。
それで簡単にデータから自社の特徴、自分の特徴というのが、分かるようになった。
これがたぶん大きな、予防医学的な視点だと思います。

自治体に広がる健康データの活用

運動生理学が専門の、筑波大学、久野譜也教授です。





自治体が持つ住民一人一人の健康診断のデータや、喫煙や飲酒、運動の習慣などを分析し、どうすれば医療費を減らせるのかを探っています。





筑波大学 久野譜也教授
「自分の町が今どういう状態で、どこが足りないのかというのが、この健康クラウドから見える。
それを見積もることによって、いかに政策上それを補うかということを考える。
そういうためにもデータというのは必要。」


データの中に眠っている、健康づくりの鍵を見つけることが、重要だという久野さん。

新潟県の三条市では、興味深いデータを発見しました。
ある地区の1人当たりの年間医療費が、最も高い地区と比べて、5万円も低くなっていたのです。




詳しく分析すると、高血圧や高血糖など、運動不足が原因とされる症状が、少ないことが分かりました。
一体なぜこの地区では、運動不足の人が少ないのか。




「100本以上あります。」





訪ねてみると、町は、江戸時代からの狭い路地が伸び、住民は車を使うより、歩いて移動することが当たり前となっていました。
しかも路地は、歩くと楽しくなるような、にぎわいにあふれていました。




筑波大学 久野譜也教授
「安いですよね。」




50年以上続く伝統の朝市です。






筑波大学 久野譜也教授
「健康のために歩いているわけじゃなくて、自然と楽しくて、この中を歩いてしまっている。
こういうものが、これからの高齢社会に重要になってくる。」



久野さんは最近各地の自治体と共同して健康な町づくりを進める研究会を立ち上げました。
参加する自治体は、40に上ります。
それぞれ蓄積してきたデータを共有し、活用法を探ろうとしています。



女性
「クラウドデータによる、岐阜市の現状と今後の対策ということですが、高齢で、低体力の人への対策が重要。」




情報交換を行う中から、自治体ごとの、新たな健康経営の取り組みが、生まれています。

国民健康保険事業の累積赤字10億円を抱える、大阪府高石市。
市は毎朝、ウオーキング教室を実施しています。
広い遊歩道も整備。
ほかの地域よりも高くなっていた、生活習慣病の割合が、運動不足解消によって、今後どうなっていくか、データを取って効果を確かめます。
こうした取り組みで、年間2億円の医療費削減を、見込んでいます。

高石市 阪口伸六市長
「取り組みを怠ってはですね、超高齢化社会を乗り切れないと思っているので、今から元気なご年配を、しっかり支援し、育てていく。」



兵庫県豊岡市では、運動教室に意欲的に参加してもらおうと、温泉の無料券などをプレゼント。
モチベーションが、医療費抑制にどれだけ効果を上げるか見守っています。




健康データをうまく活用しながらも、一進一退、試行錯誤を続ける自治体もあります。
新潟県見附市です。
筋力が低下している人の割合が、高いと分析されたこの町。
症状改善につながるトレーニング施設を、市内17か所に設置しています。
すると、施設でトレーニングを重ねた人の医療費は、していない人に比べて、年間10万円も下がったことが分かりました。
ところが、ここ数年、利用者が伸び悩んでいます。
そこで市は、新たに住民の日常生活が、そのまま運動につながる町づくりに、乗り出しました。

見附市職員
「歩行空間を広げる実証実験を、やらせていただきました。」




中心街の2車線ある車道の片側を封鎖し、一方通行に制限。
代わりにストリートカフェを作って、市民が歩いて出かけたくなるよう工夫しました。
実験後のアンケートで、反応がよければ実際に町をつくり変える計画でした。
ところが…。


“車がないと移動に不自由”、“う回路が遠すぎる”と反対意見が続々。
市では、数値などの具体的な根拠を示しながら、引き続き、健康経営の必要性を訴えていくつもりです。




見附市 久住時男市長
「車がなかったら、隣のうちにいくのも車ですから、そういうのが今、地方の常識になってしまったものを、意識変革しないといけない。
市民のみなさんにお願いをする。
そういう価値観をぜひ一緒になって、もってもらいましょうと、しないといけない。」

自治体の健康データ 宝の山 どう生かす

●自治体の健康データ どんな可能性が?

私もこの間、びっくりしたのは、これは皆さんもたぶんお持ちになってる健康保険証っていうのがあるんですが、これを大分で、協会健保っていうところが支援をして、これを見ながら、従業員の方がスマートフォンで自分の健康保険証番号を入れると、自分の健康データとか、それから、あなたは血糖値が高いから、こんな食事のしかた、どうですかって、アドバイスが来るんですね。
これはやっぱり見たときに、その方が、健康保険証というのは、病院に行くときだけではなくて、健康なときから使えるんだなと、非常に私、印象に残っています。
そういう意味で、中小企業であっても大企業であっても、また高齢者の方であっても、国民皆保険っていう制度下で、こういうことを、健康づくりを進める仕掛けが出来てきたっていうのが、非常に日本にとっては、いいことだと思うんですね。
(今、これはまだ大分だけ?)
そうですね、大分でモデルでやっていまして、この夏ぐらいから、徐々に全国に広がっていくと思うんですね。

●健康経営の取り組み 課題をどう克服するか?

非常にこの取り組みは、興味深いと思って拝見したんですけれども、やはり人とか町を元気にする、健康づくりを通じて、元気にする、この健康経営っていうのは本質は、たぶんコミュニケーションだと思うんですね。
あの事例のように、ストリートカフェっていうのは、自分から見ると不便なんですけれども、これを観光客に使えないかな、それから、ウオーキングでマイレージがたまったら、何か商品がそれでもらえないかなって、そういう仕掛けを作ることによって、不便ではなくて、これは楽しい仕掛けだ、どういうふうにこれを使って、地方、健康づくりも含めて活性化するか、そういうふうにたぶん変わっていくと思うんですね。
(健診に行かない人も、誘い込んでいく仕掛けになっていく?)
健康づくりをやっていいところっていうのは、データが出てきて、自分はもしかして、体重減ってるかな、歩数が稼げるっていうのは、何か変わったかなっていうのは、データを見ることによって、じゃあ、健診でチェックしていこう、そういうことにつながると思いますよね。

●健康経営 ビジネスにつながる可能性も?

今の拝見してると、どうしても健康づくりっていうのは、内向きな、捉えられてしまう。
これを先ほどのように社会的に評価をしてあげることで、あっ、これは外向きの取り組みなんだ、そういうことで、例えばこういうタイプの集団には、こんな健康づくりが効果があるな、そういうことが分かると、全国に活用できるだけではなくて、それを今、海外に持っていこうっていう、そういう動きもあるんですね。
(海外に?)
そうです。
(具体的にどういう?)
これはやっぱり健康データというのは、一番、日本は蓄積が進んでいます。
それに対して、どんな職場、どんな自治体で、どんな健康づくりをやれば、効果が出るか、今、まさに出てき始めてますので、これをデータだけではなく、また予防、健康づくりをやる機器と一緒に輸出をしていこうと、そういう考え方なんですね。
(新しいビジネスモデルを作る可能性も生まれてきたと?)
そうですね。
やっぱり健康づくりはコストじゃなくて、投資っていうふうに、できるといいですね。

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