クローズアップ現代

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No.34462013年12月12日(木)放送
ストーカー加害者の告白 ~心の闇と対策~

ストーカー加害者の告白 ~心の闇と対策~

ストーカー加害者 殺意に至る心の闇

先月、千葉県市川市の駅前で、22歳の女性が殺害された事件。
逮捕されたのは、今年(2013年)9月まで一緒に暮らしていた、元交際相手の岡逸人容疑者です。
“復縁できなかったため襲った”と供述し、女性への強い執着心をのぞかせました。

岡容疑者の知人
「諦めきれない。
『こんな簡単に(関係を)終わらせるわけにはいかない。』
最後は、もう本当に、この人おかしいんじゃないの?」

ストーカー加害者の告白 異常な執着心 なぜ

好きだった相手を“殺したい”とまで思う執着心とは、どのようなものか。
3年にわたって、ストーカー行為を繰り返していたという、30代の男性です。
相手の女性が精神的に追い込まれ、通院したことなどをきっかけに、つきまといをやめた男性。
当時の胸中を語りました。

元ストーカー
「憎しみというか、怒りがわいてくる。
そうすると、衝動的な行動に出たくなる。
殺意みたいな気持ちが、一瞬に芽生える。」

男性がつきまとっていたのは、職場の同僚でした。
一緒に仕事をする中で好意を抱き、休日に2人で出かけるようになりました。
しかし、1年ほどたつと、次第に避けられるようになりました。
男性は、女性に、かえって強い執着心を抱くようになったといいます。

元ストーカー
「自分のこと、まだ(彼女が)理解できていないから、避けられているんだと思っちゃうんですね。
もっと自分のことを分かってほしい、分からせてやる。
余計、追いかけたくなるという心理が働きます。」

男性は毎週末、女性の家の周りをうろついて、行動を監視するようになりました。
さらに、女性がほかの同僚と会話しているだけで、裏切り行為だと感じるようになったといいます。

元ストーカー
「自分が許可していない態度をとるな。
自分の思いどおりに動いてくれる人形だと思っていたんですけど、支配欲がすごいあったと思います。」

殺意を覚えるまでに至ったのは、女性が、ほかの同僚と出かけていると知った時でした。
男性は深夜にもかかわらず、女性の自宅まで押しかけ、呼び鈴を鳴らし続けました。

元ストーカー
「理解してくれない彼女に対しても、憎しみがわいてきている。
誰かと仲良くしているような姿を見たら、パニックになって、自分が車を運転している時に、2人に突っ込んで行ったかもしれない。」

結局、行動に移すことは思いとどまった男性。
三鷹市で起きたストーカー殺人事件の容疑者を見て、当時の自分と重ね合わせたといいます。

元ストーカー
「自分も、もしかしたら、過ちを犯していたのではないかと思った。
もうこれ以上、自分は裏切られて悲しい思いをしたくないとか、もうつらい思いをしたくないというのがすごい高まって…。
(殺すことで)自分の手の中に入ったような気持ちになっていると思うんですよね。」


なぜストーカーは、こうした執着心や支配欲を持ってしまうのか。
これまで10年近くにわたって、多くの加害者と向き合ってきた、NPOの吉祥眞佐緒さんです。
吉祥さんが要因の1つとして指摘しているのが、幼少期の家庭環境です。
加害者の家庭では、父親が母親に対して、暴力を振るっていたケースが多いといいます。

NPO アウェア 吉祥眞佐緒さん
「自分の意に反するような行為をする者に対して、罰を与える、罰してもいい。
そういうことをする権利が自分にはある。
そういうことを考えている、勘違いしている人は多いと思います。」

若者に広がる “ストーカー予備軍”

さらに吉祥さんは、若者たちの間で、ストーカーになるリスクが高まっていると指摘しています。
首都圏のおよそ50の大学などで、学生に行ったアンケートです。

男性 大学2年生
“好きな相手を支配したい。”

女性 大学2年生
“強い束縛は愛されている証拠。”

支配や束縛が真の愛情だと考える記述が、多く見られます。
こうしたゆがんだ恋愛観が、ストーカー行為につながりかねないというのです。

この傾向を加速させていると吉祥さんが考えているのが、スマートフォンの普及です。
GPSで居場所を調べたり、常に連絡を取りあえたり、使い方によっては、容易に相手を束縛することができるからです。

「どれくらいの頻度で(連絡)してます?」

男子学生
「ずっと、朝から寝るまで。」

女子学生
「今、一緒にいる人の写真を(彼氏に)毎回送らないといけないとか、メールは10分以内に返さないと、電話がかかってくるとか…。」

NPO アウェア 吉祥眞佐緒さん
「束縛のツールと言えると思います。
親に、あんた何やってんのよと言われることもなく、2人の間だけで、どんどんエスカレートしても、誰も気がつかない。
すごく予備軍としては、たくさん控えているし、今後も、そういった危険な事件は起こる可能性は大変高いと危惧している。」

ストーカー事件 凶悪化の背景は

ゲスト桐生正幸さん(関西国際大学教授)

●凶悪化するストーカー事件 従来の殺人事件との相違は?

これまでの殺人事件というのは、私たちでもよく理解できる、なるほどと。
人間関係がごちゃごちゃになって、最終的に、いろんな要因があってエネルギーが爆発してしまったというような殺人なんですが、ストーカーに基づく殺人事件というのは、非常に塀が低いというか、ハードルが低い。
やってる行為と得られた結果のギャップが、あまりにも大きい。
こんな動機で人を殺すのかといった、そんなふうな質的な変化が見てとれるんじゃないでしょうか。
(なぜ、それほどにまで、執着心や支配欲というものが高まるのか?)
これは、たぶんにストーカー行為というのは、恋愛行為につながるものですから、そもそも支配欲、それから執着心というのがあるんですね。
ですので、実際にあるものを、これまでは、しっかりとふたをしていて抑止していたものが、次々と剥がれてしまったというのが現状ではないか、というふうに考えています。
(何が剥がれた?)
まず、そもそも愛情、恋愛といったもので、こういったことはやっちゃいけないよといったモデルが、なかなか今の若い人たちには得ることができない。
例えば、親子関係であるとか、夫婦関係を見て、それを学ぶという、その機会がなくなってきたというのが第1点。
一方では、非常にバーチャルな空間、例えばネット上で、女性が男性に支配されているような場面を描いたストーリー、ビデオ、そういったものはたくさんあるんです。
そういった悪しきモデルを今度、得てしまうというのが第2点。
そして3番目に、その行為を助長させる、高まらせてしまうようなツールとしてのネット関係、つまり、対面すればやっちゃいけないと思うにもかかわらず、対面しないで人間関係を構築できますので、そういった、安易にできるということで、抑止力を止めてしまった。
最後は、そもそも、これまで男性中心の恋愛関係が主だったんですが、実は今や、男性と女性、対等であるといったことを十分に男性側が理解しないで、そういった行為に入ってしまうというふうな、そういったことが考えられるというふうに思っております。
(男女間の恋愛観のギャップの大きさということ?)
そうですね。
世の中が変わったということを、男性がまだ気付いていない。
先ほど申し上げたように、しっかりとした恋愛関係のモデルをまだ、新しいモデルを男性側が構築できていないというのが、重要なポイントではないかというふうに思っております。
(GPS機能が付いたSNSなどがあれば、容易に相手の居場所が確認できますね)
従来であれば、非常に労力が必要だったのが簡単にできてしまうというのが、これは非常によろしくないことではないか、というふうに考えているんですね。

●ストーカー加害者 エスカレートしやすいタイプは?

まさに、このことを今、調査・研究しているという段階になっております。
そもそも、どういったタイプが、どういったことをやることによってエスカレーションするのか、これを明らかにすることによって、今後、対策が練られるということになるんじゃないでしょうか。
(はじめは、相手を好きだという感情からスタートするわけですよね)
そうですね。
それが、だんだんストーカー行為を繰り返すことによって、好きだという気持ちが、例えば攻撃する、そういったふうに動機がシフトしてくるというようなことも、このストーカーの特色なんですね。
(いつ、それが殺人というところにまで至ってしまうのか?)
先ほど申し上げたように、いろんなものが積み重なって、最終的に爆発してしまう。
これが、ストーカー殺人の特徴というふうに考えております。

“加害者対策を急げ” 遺族の訴え

突然、凶悪化するストーカーの事件。
今、被害者の家族から、加害者への対策を急ぐべきだという声が上がっています。

逗子ストーカー殺人事件 被害者の兄
「加害者への処置、治療、臨床、ケア、支援を警察、保護観察所、裁判所、NPO、弁護士、皆さんにお願いします。」




訴えているのは、去年(2012年)11月、神奈川県逗子市で起きた、ストーカー殺人事件の被害者の兄です。
元交際相手に、命を奪われた妹。
加害者は、脅迫容疑で一度、逮捕されていました。
しかし、その後も、嫌がらせのメールを大量に送りつけるなど、ストーカー行為をやめず、殺害に及びました。
被害者の兄は、警告や処罰だけでは、加害者を止めることはできないと考えるようになりました。

逗子ストーカー殺人事件 被害者の兄
「警告があって、逮捕もあって。
ある意味、やれることは、かなりやっているわけですよね。
それでも、全く止めることはできない。
それを考えていくと、単に相手に罰を与えるとかいうことよりも、もう加害者を止めるしかない。
妹こそ、そういうことを望んでいたのではないか。」

先週、警察庁を訪れた男性。
ストーカー対策を検討する会議で、加害者への対策を積極的に行うべきだと訴えました。

逗子ストーカー殺人事件 被害者の兄
「ほかの機関も含めて、連携しながら、加害者の治療にあたってほしい。
検討してもらえるのではと期待しています。」

加害者の思考を変えろ 密着 ストーカー対策

今、加害者対策は、どうなっているのか。
警察や国の機関に先駆けて、民間の団体が取り組みを始めています。

ストーカーやドメスティックバイオレンスの加害者を対象に、NPOが実施している更生プログラムです。
家を出た妻を、GPSで追跡していた夫。
交際相手に大量のメールを送っていた男性。
周囲から強く勧められ、参加しています。


「思考と感情は連結しています。
感情そのものを変えることはできないんですけど、思考を変えれば、感情は、あとからついてくるということですね。」

この日は、先月、千葉県市川市で起きた、女性の殺害事件について話し合いました。
もし自分だったら、どのような思考によって、どんな感情を持つのか。
率直に打ち明け合います。

男性
「裏切られた、悔しい。」





男性
「なんで俺だけ、みたいな。
勝手に出て行くなよ、っていう感じですかね。」




「そうすると、感情はどうなるんですか?
勝手だと考えると、恨む?」

男性
「怒り、やっぱり怒りですよね。」


“相手は思いどおりになる”という思考を持つ参加者たちは、怒りの感情を次々に訴えました。


「殺人が起こったんですけど、皆さんでしたら、殺人以外に何をするんですか?」

男性
「暴力。」

男性
「追跡、捜す。」

男性
「妻と復縁できなかったら、いっそ、ひと思いに妻を殺して、自分も自殺しよう。
自分の所有物が勝手に出て行った。
心の中から聞こえてくるんですよ、“奪還せよ”。」

人前では語れない感情を吐き出してもらい、互いに、その誤りに気付かせるのがねらいです。

男性
「支配したくて支配してたわけじゃなくて、結果、支配してたってこと。」

男性
「ここに来るまでは、支配していたことに気づかなかったですね。」



“相手は思いどおりにならない。”
徐々に自分の思考を変え、怒りの感情を抑えられるよう訓練を続けます。


9か月にわたって、プログラムに参加している男性です。
家を出て行った妻に、ストーカー行為をしていました。
自分の思考が間違っていることに、次第に気付いていったといいます。

元妻にストーカー行為をしていた男性
「彼女は彼女の人生、僕は僕の人生で尊重できるようになった。
彼女の考え方に賛同してみるとか、彼女の意見を尊重することが、やっぱりパートナーを大事にすることを学ばさせてもらっている。」



この日、NPOの事務所を訪れた男性。
一緒に来たのは、別れた妻でした。
元妻は、男性が思考の誤りに気付いたことで、時々、会うようになったといいます。



男性の元妻
「まず、人の意見を聞く。
『もっと、どうしたいの?』と聞いてくれるので…。
ここに来て、すごい変わったと思います、顔つきが全く違うので。」

しかし、こうしたプログラムに自主的に参加する人は、ごく僅か。
ストーカー加害者のほとんどが、ゆがんだ思考や、自分の危険性に気付いていないのが現状です。

NPO法人 ステップ 栗原加代美理事長
「ストーカーしている方が、自分がストーカーであることも気づいてないと思います。
“どうしたら、皆さんに知っていただけるんだろう。”
“どうしたら、来ていただけるんだろう。”」

ストーカー加害者 思考をどう変える

●ストーカー加害者の思考を変えるNPOの取り組み

非常に、よい試みだというふうに考えられます。
特にストーカーは、ストーカー行為を行っている時は、非常に孤独なんですね。
ですから、孤独だからこそ、悪質な行為を繰り返してしまう。
誰も監視しなきゃ、やってしまうということがありますので、同じようなことをやった人を見ることによって、自分を客観視し、「あっ、あの時は、なんてばかなことをやってしまったんだ」ということに気付くというのが、まず非常に重要だというふうに考えられますよね。
(本人は自分が悪いことをしているという意識がないために、プログラムに積極的に行く人は、ごく僅かだということだが?)
そうですね。
実際に、自分でなんとかしようと思う人が行くということであれば、やはり、改善される可能性は高いわけなんですが、そうじゃない人を、今後どうするかということも、やはり大きな課題になってくるというふうには思われます。

(最初に加害者と接触する警察は、これまでのように、警告や検挙にとどまらない、新たな仕組みを模索しようとしています。
加害者に精神科医や臨床心理士を紹介して、治療を促す仕組みで、日本では来年度、試験的に始まる予定になっていますね)

まず先進国では、ほぼ、このような仕組みが出来上がっております。
しっかりと証拠、エビデンスをもとにした治療行為が必要だということがあるんですが、なにぶん、今回、先駆的なものということで、警察が窓口になっております。
これが、警察になかなか行けないという方もいらっしゃると思いますので、例えば、NPOであるとか、地域の施設であるとか、そういった窓口を将来的に広げるということも必要ではないでしょうかね。
(加害者へのアウトリーチということですよね)
そうですね。

●ストーカー加害者への対策は?

実際には、さまざまな分析を行って、基礎的なデータをそろえなければいけないんですが、いつ、どんな時に変化するのかといったことを、まず明らかにするということが重要ですよね。
それと、実際にデータを見ていきますと、元彼、そして、元だんなといった人がストーカー行為を行っております。
ですので、そもそも男女双方とも、別れた時点で、「私はストーカーの被害者になるかもしれない」、「僕はストーカーになるかもしれない」といったことを自覚しなければいけない。
このことは翻れば、ストーカーそのものを、つまりストーカーの加害者を、しっかり、お互いに知るということが重要になってくるというふうに考えられます。
(今までの男女関係の在り方、特に女性側が大きく変わったということから、今は新しい男女関係を求めるといった、恋愛関係の変化の過渡期にあるとおっしゃっていますが?)
そうですね。
これまでは男性中心の恋愛観が、今やもう、そういう時代ではないと。
であるならば、どういった恋愛関係がいいのかといったことも、双方しっかり考えるということも重要ではないでしょうかね。

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