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No.34292013年11月12日(火)放送
高齢者こそ肉を?! ~見過ごされる高齢者の“栄養失調”~

高齢者こそ肉を?! ~見過ごされる高齢者の“栄養失調”~

一見元気な高齢者 実は…

趣味の写真撮影で、毎日散歩を楽しむ、関谷緑さんです。
88歳の今まで、大きな病気をしたことはありません。
しかし、最近…。

関谷緑さん(88歳)
「駅まで5分くらいで歩けたのが、7分か8分くらい。
歩幅がね、狭くなっちゃったんですよ。」



うーん…、歩幅が狭くなるなんて、年をとれば当たり前では、と思ったあなた。
そうじゃないんです。

関谷さんの血液を調べると、栄養状態の指標となる血清アルブミンの数値が、3.7。
基準を下回っていました。
知らないうちに、栄養不足に陥っていたのです。

高齢者の栄養失調 その実態と背景

こうした、一見、元気な高齢者の栄養不足は、決して甘く見てはならないことが最新の研究で明らかになってきました。

東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長 新開省二さん
「こっちの奥のほうにあるんですよ。」

東京都健康長寿医療センターの新開省二さんです。
新開さんのチームは、東京と秋田で、目立った病気のない高齢者1,000人以上の栄養状態と、その影響を20年以上にわたって追跡調査しました。
栄養状態を表すアルブミンなどの血液成分と生存年数、病気との関連について、詳しく解析を行いました。

その結果、アルブミンの値が低い人たちは、そうでない人たちより生存率が低い、つまり、長生きできない傾向があると分かってきました。





ほかにも、認知症の前段である認知機能の低下を引き起こすリスクが2倍。
脳卒中、心臓病のリスクは2.5倍に上がる、という結果も出ました。




アルブミンは、肉や魚などのたんぱく質をもとに体内で作られるもので、筋肉や血管、免疫細胞などの機能に不可欠な成分です。
そのため、アルブミンが減ると、筋肉が落ち、血管がもろくなり、免疫機能も低下します。




年をとると、多くの場合、アルブミンを作る力が徐々に弱まる傾向にあります。
これが、いわゆる老化です。
だからこそ、高齢者は若い時以上に意識して、肉などのたんぱく質を多くとらないと、アルブミンの減少が加速。
老化が早まり、さまざまな病気が進行する要因となるのです。


東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長 新開省二さん
「(低栄養は)なかなか自覚されにくいということですが、じわりと全身のいろいろなところに影響してきます。
それが最終的な寿命とか、要介護の発生に結びついてくるのではないかと。」




この豊かな時代に、なぜ高齢者が栄養不足になってしまうのか。
VTRの冒頭に出てきた関谷さんです。
この日1日、食べたものを見てみると…。




朝は、パンと牛乳。






昼は、ごはんと焼き魚。






そして、夜のメインは、野菜炒め。






1日3食、食べていますが、摂取した、たんぱく質の合計は39グラム。
1日にとるべき量を満たしていませんでした。
気になるのは、肉が全くないことです。
肉を食べるのは、1週間に2回ほどだといいます。


関谷緑さん(88歳)
「毎日食べようという気がない。
それでも(栄養が)間に合っているんじゃないかなって。」



魚や大豆でも、たんぱく質をとることはできますが、肉は鉄分や脂肪など、ほかの栄養も一緒にとれるうえ、必要なたんぱく質を効率的に摂取できるのです。

東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長 新開省二さん
「高齢者は割合、魚とか大豆製品はとっているんです。
全体を見渡して、より不足しているのが肉なんです。
今の日本の高齢者は、もう少し肉の摂取を増やしたほうがいいと。」

とはいっても、栄養失調の克服は、そう簡単ではありません。


東京都健康長寿医療センター研究所 管理栄養士 成田美紀さん
「まずお肉、毎日食べてほしいんですよ。」



高齢者向けの栄養指導を行っている成田美紀さんは、高齢者の肉に対する先入観が壁になっていると感じています。



「これを食べたら、コレステロールが上がる。
それで肉を敬遠しています。」




「年をとると、肉よりも魚のほうがいいんじゃないのと。」





背景には、肉を控えるべきか食べるべきか、栄養指導の現場が混乱していることが挙げられるといいます。
昭和53年、国は死因の多くを占めた脳卒中心臓病、がんといった、いわゆる成人病の対策として、初めて栄養指導の指針を打ち出しました。
成人病の主な原因は、急激な食の欧米化などによる肥満だとして、肉の食べ過ぎや、脂のとり過ぎを制限するよう指導しました。
その後も、いわゆるメタボ対策として、40歳以上の人には、その指導をさらに強化。
肉の食べ過ぎは“悪”というイメージが浸透しました。

現在、この栄養指導は、74歳までを対象としています。
しかし、その一方、65歳以上を対象に、寝たきりなど、介護が必要になるのを防ぐため、肉などのたんぱく質を積極的にとらせる栄養指導が、8年前から新たに登場しました。
その2つの指針が併存する間、肉はとるべきなのか、控えるべきなのか。
それとも、75歳になったとたん、食事を切り替えればいいのでしょうか。

東京都健康長寿医療センター研究所 管理栄養士 成田美紀さん
「何歳から低栄養予防の食事に切り替えたらいいとか、そういったような指針が出されているわけではないので、そのあたりに関しては、教える側も、受け取る側も、それぞれ迷いながら進めているというのはあると思います。」

見過ごされる 高齢者の“栄養失調”

ゲスト葛谷雅文さん(名古屋大学大学院教授)

●高齢者 肉はとるべき? 控えるべき?

確かに全く真逆の方針、方向性ですので、大変混乱しているというのが事実だと思います。





例えば、このメタボ対策、これはまあ、肉を控えるようにということで、片や、介護予防、低栄養を予防しましょうということで、お肉は積極的にとりましょうということで、年代でいくと、ここの年代(65歳~74歳)が重なっているわけですね。
決して、画一的な線引きを、できるわけでは決してありません。



例えば、心筋梗塞をお持ちの方ですとか、糖尿病とか、また腎臓病をお持ちの方なんかは、年をとっても、ある程度、やっぱり栄養に関しては、食べれるだけ食べればいいっていうわけでは決してないと思います。
こういう方々はもちろん、かかりつけの先生の指導をちゃんと受けて、継続をすべきだと思います。



片や、年をだんだんとってくるにしたがって栄養不足に陥っている方とか、またあとで、お話出るかも分かりませんけれども、虚弱に陥っている方は逆に、お肉を積極的にとったほうがいいということで、ここの年代、どこでギアチェンジするかというのは、やっぱり個別性、個々の高齢者ごとに考えていくべきだというふうに思いますね。
(血液中のアルブミンが低下してくると、栄養失調の1つのサインではないかということでしたが?)
そのとおりですね。
血清アルブミン値というのは、栄養の大切な指標でありますので、大変臨床的にも重要だと思いますけれども、ただ、ちょっと気をつけなければいけないのは、血清アルブミン値というのは、栄養だけではなくて、例えば、炎症を起こすような病気に罹患をしていても、やっぱりアルブミン値は下がりますので、血清中のアルブミン値が低い場合には、栄養のことも考えなきゃいけないし、炎症のことも考えなきゃいけないので、総合的にやっぱり判断をすべき問題だというふうに思いますね。

●栄養失調のサインのようなものは?

いちばん分かりやすいのは、体重を測るということだと思います。
例えば、1年に4キロも5キロも体重が減ってくるということになると、栄養不足をやっぱり疑ったほうがいいと思いますし、あとは体重以外ですと、例えば、先ほどの映像にもありましたけれども、だんだん歩く速度が遅くなってきたとか、例えば今までだったら、平気で青信号のところに渡れた道路が、青信号で渡りきれなくなったとかですね、あとは、ペットボトルを開けにくくなって、自分で筋力が落ちてきたなと思う時は、やはり栄養不足をちょっと疑ったほうがいいかも分かりませんね。

●肉を摂取するにあたっての目安は?

例えば、若い時にコレステロールが高いから、そういう指導を受けたからといって、じゃあ今、高齢者、ご自分の若い時の指導が自分に合ってるかどうかというのは、やっぱ考え直さないといけないと思いますね。
例えば、何もしなくても、加齢とともに、やっぱり食欲は低下をしていきますし、味覚もそうですし、匂いも少し鈍感になってきますので、何もしなくても、食事量自体がだんだん減ってくるんですね。
だから、そういう意味では意識して、しっかり栄養をとるということを考える必要があるということだと思いますね。
(具体的に、どれくらいの量を考えたらいいのか?)
実際には、高齢者は、十分な食事をとったとしても、若い人と同じだけの消化能力もありますし、吸収能力もあるんですね。
例えば、4、50代の方と、やはり同じぐらいの量、例えば、たんぱく質をお食べになればいいと思いますね。
年だから、減らす必要は全くないと思いますね。

高齢者の栄養失調 克服のカギは?

東京23区で、最も高齢化率が高い北区。
高齢者の栄養失調を解消するため、65歳以上を対象にした食事会を開いています。
栄養学の専門家の指導のもと、平均年齢65歳のボランティアが食事を作ります。



この日のメインディッシュは、ハンバーグ。
ひき肉を使うことで、高齢者の間に浸透している“肉はかたい”という思い込みを払拭するのが狙いです。




「こんにちは。」

食事会は、ひとつきに2回。
あっさりした食事になりがちな高齢者に、肉を食べやすくする工夫を伝えていきます。



「お肉のほうは、豚の赤身のひき肉を使う。
そうすると、少しかたくなるので、お豆腐を入れて、やわらかめに食べやすく。」



「いただきます。」



参加者たちは、ハンバーグのあまりのやわらかさに、びっくり。





「うん、おいしい。」

「ハンバーグいいね、やわらかくて。
おじいさんでも食べられる。」

「お豆腐、結構入れるの?」

「お豆腐、全部で4丁入れた。」

「お豆腐なんて、なかなか思いつかない。」

こうした会話も、高齢者の栄養失調の克服に大切な要素、と専門家は指摘します。

参加者の中には、ふだん自宅に閉じこもりがちで、食が細いという悩みを持つ人も少なくありません。
そうした人も外に出て、大勢の仲間とテーブルを囲むことで、食欲が大いに増すといいます。




「この日が楽しみなんです、私たち。」

「みんなでお話しながら食べたほうが、おいしいね。」





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「豆腐入りハンバーグ」の作り方(5人分)

【材料】
豚赤身ひき肉(脂身の少ないもの) 200グラム
木綿豆腐 1丁
たまねぎ 1/2個
卵 1個
パン粉 1/2カップ
にんにく 1かけ
牛乳 大さじ2

【作り方】
1.前日から豆腐の水切りをしっかり行う。(まな板などで上下からはさみ、重しをのせる)
2.パン粉に牛乳をくわえ、ふやかしておく。
3.たまねぎとにんにくをみじん切りにする。
4.ひき肉に塩・こしょうをふり、よくこねる。2,3を加え、さらに卵を入れてこねる。
5.よく水切りをした豆腐を崩して混ぜ、5個にまとめる。
6.オーブンに油をしいて焼く。(フライパンで焼いてもよい)

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高齢者の栄養失調 克服のカギは?

ゲスト宗像伸子さん(東京家政学院大学客員教授・管理栄養士)

●高齢者が肉を敬遠しがちな理由とは?

宗像さん:そうですね、まずは面倒くさいというのがあると思いますね。
女性も男性も、1人暮らしになりますと、それがなおさら面倒くさくなって、だんだん食べない、簡単なもので済ませてしまう。
そういうことをやってますと、どんどん抵抗力のない体を作ってしまって、病気を作ってしまうということがありますのでね。
ですから、まず面倒くさがらないで、まず実践することだと思うんですね。

●簡単で栄養たっぷりの肉料理を紹介

宗像さん:豚肉の鍋照り焼きなんですね。
それで、先ほどVTRでひき肉を紹介いたしましたけれども、今回は、薄切り肉でおいしいものを紹介します。




まず豚肉、薄切りですね。
(何グラムぐらい?)
これは、1人前70グラムになりますね。
こんなに薄いんです。
これを今日は、ご紹介したいと思います。
(温度はどのぐらいが?)
温度はですね、大体中火の、ちょっと強火という感じですね。
まず油を入れます。

それで、こちらにおしょうゆとみりんを漬けた、約5分ぐらいですね、この豚肉を焼いていきます。
(みりんと、しょうゆ?)
そうですね。
おしょうゆとみりんが1対1の割合ですね。


それでは、焼いていきましょう。
(本当に薄いお肉ですね)
そうですね。
これ、すぐ焼けますので、これ、あんまり焼き過ぎますと、かたくなりますから、焼き具合に注意するといいですね。
今回は、おしょうゆとみりんですけれども、おみそとみりんでといたものとか、あと、簡単に塩・こしょうですね、これだけでもよろしいですし、あと、ハーブをそこに入れるといいですね。
それとあと、トウバンジャンとか、ニンニクがお好きな方であれば、中華風になさるといいと思います。

もう、これで裏返して…。
(いい匂いがしてきました。)
そうですね。
もうこれで火が通りますので、あまり通り過ぎないようにするということですね。
もうこれ、焼けましたので。

このくらいが70グラムなんですね。
ちょっと彩りを添えてます。





それから、そのほかにも薄切り肉を使いました、しゃぶしゃぶ、これから寒い時、おいしいですよね。
お豆腐も入りまして、栄養価がアップしています。




あとひき肉、こちらは三色丼。






それから、豆腐のそぼろあんかけ、こんなものも簡単にできます。
(これほど簡単な料理を積極的に紹介しないといけないほど、お肉離れが進んいでる?)
そうですね。
なんか、もう年をとったら食べなくていいとか、お肉はなんか体に悪いみたいなことを言われてますけれども、そうではなくて、やっぱりちゃんと、毎日食べていただきたいですね。

●食べることで体力を取り戻すことは可能?

葛谷さん:今後、後期高齢者がますます増えるということが言われていまので、今後、非常に大事なのは、どうやって要介護にならないようにするかということが大事だと思いますね。
そういう意味で、虚弱になった高齢者は、しっかり栄養をとって、それから運動をして、家から外に出て、社会とのつながりを持つことによって、また元気に戻ることができますので、しっかり栄養をとっていただきたいなというふうに思います。
(胃腸の機能というのは、高齢になっても衰えないとおっしゃっていたが?)
基本的には、若い人と同じだけの能力を、ちゃんと胃腸は、高齢者も持っていますので、十分食べることによって、ちゃんと身につくというふうに思います。

●肉以外にも、たんぱく質の多い食品とは?

宗像さん:お肉、お魚、卵、乳製品、豆製品ですね、こういったものがありますので、まずお魚、お肉は、献立の主菜になりますね。
そして、乳製品は朝、卵も朝とるといいと思います。
よく、お昼にお茶漬けとか麺だけとか、おかずがないたんぱく源とかビタミン、ミネラルですね、こういったものがない食べ方をなさる方がいますけれども、そうしますと、たんぱく質が少なくなりますので、そのへんも、ちゃんととっていただきたいと思います。
(1日3食、たんぱく質をとるようにする?)
朝昼晩、これをとり入れるといいと思います。

●急がれる低栄養対策

葛谷さん:しっかり栄養をとって、要介護にならないように、運動も心がけてやってほしいなと思います。



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「豚肉の鍋照り焼き」 の作り方(1人分)

【材料】
豚もも肉(薄切り) 70グラム
しょうゆ  小さじ1
みりん   小さじ1

【作り方】
1.もも肉を皿またはバットの上で広げ、しょうゆ・みりんに5分程度つけこんで下味をつける。(お好みで、少量のすりおろしたしょうがを加えてもよい)
2.フライパンに油をしき、肉の両面を短時間で焼く。

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