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No.34212013年10月24日(木)放送
どうする介護離職 ~職場を襲う“大介護時代”~

どうする介護離職 ~職場を襲う“大介護時代”~

あなたならどうする? 介護と仕事

東京・千代田区にある、社員4,000人の大手総合商社です。
これまで介護休暇を増やすなど、さまざまな支援策に取り組んできましたが、最近、介護を理由に転勤を望まない社員が増えたため、実態調査を初めて行いました。

丸紅 人事部 部長 伊佐範明さん
「このページですけれども。」





結果は、経営陣にとって衝撃的なものでした。
すでに介護をしている社員は、11%。





それが2016年の時点になると、8割以上が介護に直面する可能性があると答えたのです。





丸紅 人事部 部長 伊佐範明さん
「まさか、こんなに大きな数字になるとは想定していなかった。
まさに経営に直結した問題になる。」


40~50代の幹部社員が介護で転勤できなくなったり、退職したりすれば、国内外で重要なポストに穴が開くおそれが出てきます。


広報部で部長代理を務める、田中郁也さんです。

実家のある神戸に、認知症の父親がいます。
田中さんは入社以来、アフリカや南米で自動車販売を担当。
6か国に駐在して、キャリアを積み上げてきました。
しかし今、父親の介護を考え、転勤をちゅうちょするようになりました。

丸紅 広報部 部長代理 田中郁也さん(52歳)
「親って、いつまでも元気なものだと錯覚していたが、現実に(介護を)突きつけられて…。
なかなか、しんどいものがありました。」

田中さんは一人息子。
妻も自分の親の介護で、すでに手いっぱいです。
父親がいる神戸の老人ホームに通って、世話ができるのは田中さんしかいません。



父・仁さんは、このところ認知症が進んでいるうえ、目や足にも病気があります。
病院での手続きなどは、田中さん自身の対応が必要になるといいます。
海外への転勤を打診された時、介護と両立できるのか。
悩みは深まるばかりです。


丸紅 広報部 部長代理 田中郁也さん(52歳)
「その時の父親の状況とか家族の状況、それらを考えて、会社と相談しながら決めていくということになると思いますけど。
今、当面はちょっと(海外転勤は)無理だろうなと思っています。」

“介護離職” 待ち受ける現実

介護と仕事の両立がひとたび崩れると、個人だけでなく、社会の負担も一層増大します。
親の介護をきっかけに仕事を辞めた、中西久雄さんです。
中西さんは、寝たきりの母・しずゑさんを自宅で介護しています。



中西久雄さん(51歳)
「はい、どうぞ。」

姉は病気で入院が続き、妻とは、自宅での介護が始まったころに離婚しています。

中西久雄さん(51歳)
「私以外の頼れる方っていうのは、いないですね。
母親もいちばんつらいだろうし、それに寄り添うことが、俺の今の役割なので。」

母親が倒れたのは、7年前。
当時、中西さんは運送会社のドライバーとして働く正社員でした。
無遅刻無欠勤の優勝な社員として、表彰されたこともあります。
はじめは、1人で生活できていた母親。
次第に食事や排せつの介護が必要になり、デイサービスや訪問介護を利用するようになりました。
しかし、こうしたサービスを使っても間に合わなくなり、中西さんが会社を休んで、介護をすることが多くなります。
会社は、そのたびに融通を利かせてくれました。
しかし、休む日が増えるにつれ、中西さんの中で申し訳ない気持ちが募り、最終的に、みずから会社を辞めました。

母親が寝たきりになってから、家を空けられるのは、介護サービスを受けている間の1日、3時間だけ。
今では、新聞配達のアルバイトしかできません。




収入は母親の年金などを合わせても、月12万円ほど。
僅かな蓄えも底をつき、3年前に生活保護を受けるようになりました。
かつて、中西さんは働くために、母親を施設に預けることも考えました。
しかし、介護をする中西さん自身が健康であるため、独り暮らしや、いわゆる“老老介護”の人に比べ、入所は困難です。
仕事を辞め、再就職のめども立たず、社会からの孤立を深めていく。
不安な気持ちを誰にぶつけることもできません。

中西久雄さん(51歳)
「母親のせいにはできないですよ。
あんたがいるから、俺は1人でしなあかんから、仕事できんなったから、人生むちゃむちゃなったとか、そんなん考えてはないです。
そんなん、もう思い出したら絶対、顔に出るしね。
なんぼ思うてて、思った時もあったとしても。」

「そんな顔は見せたくない?」

中西久雄さん(51歳)
「そんなんできますか?
排せつの介助できますか?
たぶん、できんと思いますよ。
食事介助の時、笑顔でいると思いますよ。」

“大介護時代” どうする介護離職

ゲスト矢島洋子さん(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員)

●増加する介護離職 その背景は?

両立するうえでは、やはり、1つには働き方をどうするかという問題と、それから、介護サービスをどう利用するかという問題があって、どちらの支援もですね、まだ、もちろん十分とは言えませんし、課題があると思います。
ただ、いちばん大きな問題としては、それ以前にですね、介護をするなら仕事はできない、介護イコール離職という思い込みがあるということが大きいと思っています。
実際にですね、離職してしまった方が離職する前にですね、どのような介護をしているかということを調査しますと、自分で身体介護、体のケアなどを直接行ってた方が非常に多いんですね。
今、仕事をしながら働いて両立している方はですね、自分だけでなく、介護サービスを利用したり、親族の方とシェアしながらケアしている方が多いんですね。
ですので、全部自分で抱え込んでしまって、サービスなどを使わずに離職してしまう。
また専門家ですとか、職場に何も相談せずに辞めてしまうという方が非常に多くてですね。
まずは、介護イコール離職という思い込みが大きな問題だと考えています。

●増加する介護離職 会社側にも問題があるのでは?

そうですね。
やはり職場でですね、介護休業、介護休暇にかかわらず、休みを取るということについて、特に介護に直面する方というのは40代、50代。
男性の方もいますし、管理職の方もいらっしゃる中で、私的なことで休みを取るということについて、まだまだ、ちゅうちょされる方が多く、周りもそれを受け入れる空気が十分にないという問題があると思います。

(介護のための両立支援制度で、大きな柱としては3つあるわけですよね?)
十分に使われていないというところがありまして。
介護休業ですと、例えば5.2%。
それから、介護休暇って6%程度しか使われていない。
いちばん使われているのは、年次有給休暇なんですね。
年次有給休暇は、3割ぐらいの方が使っているんですが、一方で、何の制度も利用してない方が5割ほどいるような現状です。

●介護保険サービス 使う側にとっての利便性に疑問の声も

どうしても介護保険サービスというのは、これまでは、家族のうちで誰か働いていないで介護をしている方がいるという前提に立っているところがあります。
それでですね、実際に働きながら介護するということで考えた場合に、サービスは量的に足りないかということは分からないんですけれども、使い勝手としてですね、柔軟に対応できるか。
例えばですね、急な出張に対応して、ショートステイが利用できるかとか、それから、デイサービスから戻ってきたあと、帰宅するまでのちょっとした30分くらいの時間、誰か見ててくれる人が確保できるかとか、ごみ出しですとか、宅配のお弁当を受け取るとか、そういった、ちょっとした家事などでサポートが受けられるかということになると、なかなか難しいところがあって、そういうことが両立するうえでは難しい面があると思います。
(誰か介護に専業している方が家にいるという前提で作られていることが大きな問題?)
そうですね。

介護と仕事 両立支えるサービスは?

新しい介護サービスを活用して、仕事と介護を両立している渡辺さん一家です。
介護をする夫婦、共にフルタイムで働いています。

「いってきまーす。」

「いってらっしゃーい。」

朝8時には、2人とも出勤。

「おはようございます。」

入れ替わりで、9時半になると、介護施設の職員が母親を迎えに来ます。



「おはようございます。」

到着したのは、“小規模多機能型居宅介護”と呼ばれる、介護保険のサービスを提供している施設です。
ここで、食事や入浴などの介護サービスを受けています。
この施設の特徴は、介護する家族の急な事情に合わせて、柔軟に利用できることです。
突然の残業で遅れる時は、電話1本で、利用時間を延長できます。
宿泊スペースもあり、泊まることも可能です。

「おじゃましまーす。」

施設に通わない日や、緊急の場合、自宅にヘルパーに来てもらうこともできます。

「いいですね。」






利用者は、こうしたサービスを24時間、365日、自由に組み合わせて使えるのです。

渡辺さん(仮名)
「お迎えの時間を、ぎりぎりまで延ばしてもらえる。
残業する時間を、ここで母を見ててもらえる安心感。
仕事を積み重ねていくうえでは、必要不可欠になっています。」


働く家族にとって便利なサービスですが、普及には課題があります。
施設の半数が赤字なのです。

国が定める報酬は、利用者の要介護度に応じて大きな差があります。
その差は、最大で2.4倍。




要介護度が低い利用者が多いと収入が下がり、経営を圧迫してしまうのです。





小規模多機能型居宅介護施設 理事長 宮長定男さん
「現実の問題としては、介護度が低くても、実際に介護のための人員をたくさん必要とする。
そうすると報酬が(要介護)1・2の方々が多いと、(報酬が)すごく少ないわけですから、当然、経営する方にとってみれば、人件費がだいたい6割占めるわけですから、経営的には、ほとんど苦しくなってしまう。」



一方、従来のサービスの使い方を工夫して、仕事と介護の両立を目指す取り組みも始まっています。
介護の計画を作る、ケアマネージャーの石山さんです。
介護する家族の事情を視野に入れて計画を作るよう、後輩に指導しています。



ケアマネージャー 石山麗子さん
「ご家族のアセスメント(状況分析)も、併せてとっている方?
ご家族のアセスメントも、同時にやっている方。」

現在の制度では、介護を受ける高齢者本人の支援が原則。
家族が抱える問題まで考えた計画作りは、十分に行われていません。

例えば、これは高齢のため、2時間起きに水分を補給しなければならない人の介護プランです。
当初、昼食の介助とおむつの交換のために、90分間の訪問介護を組み入れていました。
この時、家族が働けたのは、ヘルパーがいる時間帯の前後2時間を含め、朝9時半から午後3時まででした。



石山さんは、この訪問介護を、60分と30分に分割して配置することにしました。
すると、働ける時間を午後5時まで延ばすことができたのです。
こうした介護を実現するために、石山さんが重視しているのは、家族への聞き取りです。



信用金庫に勤めながら、軽度の認知症の母親を実家に泊まり込んで介護している柳田さんです。
最近、母親が幻聴で夜中に目を覚ますため、寝ずに介護することが増えています。




柳田邦夫さん(61歳)
「仕事終わって帰ったよ、って。」

柳田さんの母
「ああ、そう。」

柳田邦夫さん(61歳)
「あんまり頻繁に起こると、やっぱり仕事にも差し支えるかな。」

ケアマネージャー 石山麗子さん
「よろしくお願いします。」

石山さんは、ヘルパーや介護用品を扱うスタッフなどを集めて、対応を考えます。

ケアマネージャー 石山麗子さん
「例えば、月に何日かだけは施設にお泊りをして、その間に息子さんは、ぐっすり睡眠をとっていただいて…。」

石山さんは、柳田さんの負担を減らすことが、よりよい介護を実現するという考えに基づいて、新たなプランを組み立てていきます。

柳田邦夫さん(61歳)
「もし、そういうことが可能であれば、精神的にも肉体的にも楽になるかなと。」




ケアマネージャー 石山麗子さん
「いちばんそばにいる家族を無視しては、対象者の支援ができないので、家族も含めて一緒に見て支援していかないと、現実的には支援が成り立たない。」

介護と仕事 両立できる社会とは

●家族のアセスメントも合わせたケアプランの必要性

家族の働き方ですとか立場も考えて、ケアプランを作成するということが、ケアマネージャーさんの教育課程から織り込まれて、両立に理解のあるケアマネージャーさんが育っていくことがとても重要だと思います。
(ケアマネージャーの研修の段階から、そういったことを浸透させていく?)
はい。

●介護と仕事の両立へ “小規模多機能型居宅介護施設”への期待

とても使い勝手のいいサービスだと思います。
24時間365日、暮らしを支えるということで、ニーズに合わせてサービスを組み合わせられますし、緊急時などにサービスを変更して利用できるというところはメリットがあります。
ただ一方で、VTRにもありましたけれども、運営する側からするとですね、赤字という問題もありますが、サービスの組み合わせ、変更に柔軟に対応するなど、難しい問題も多くあると思います。

●2015年の育児介護休業法の見直し 何が必要?

介護休業制度は非常に重要な制度だと思いますけれども、現在、やはり1回、3か月しか取れないということで、これを分割して取れるという見直しが1つ、視点としてあると思います。
やはりですね、最初に介護がスタートする時にですね、なかなか思い切って取れないということで利用してない方も多いですし、実際には、短い休暇を必要な時に臨機応変に取れるということが両立するうえでは、とても役立つという意見もあります。
(介護をする側にも、直面している状況を、どんな方法で乗り越えられるかという知識も、もっと広がればいいですね)
ですので、企業の中には、介護に直面する前に、例えば40歳になった社員に向けて、介護についての研修を行う。
その中でですね、企業が仕事と介護の両立をサポートするという姿勢をアピールしている企業もあります。
(社会全体として、サービスは介護保険制度があり、自分の場合、どういうことをやれば乗り越えられるのか、もっと知りたい方々が多いのでは?)
そうですね。
どのような介護状態で、どのようなサービスや働き方を組み合わせたら、両立ができるんだろうかという、そういったベストプラクティスのような両立の情報が、まだまだ不足していると思います。
こういった情報がたくさん集められて、共有されることが必要だと思っています。
(具体例が、いろいろ出てくるといいですね)
そうですね。
(調査のほうも、まだまだ必要なのでは?)
そうですね。
国全体で調査が行われることが期待されると思います。

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