クローズアップ現代

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No.34182013年10月21日(月)放送
わが町を身の丈に ~人口減少時代の都市再編~

わが町を身の丈に ~人口減少時代の都市再編~

わが町を身の丈に どうする都市の集約

4年前から、町の集約化を進めているさいたま市。
公共施設の統廃合を加速させています。
市街地の外れにあるこちらの体育館。
30年間使われてきましたが、老朽化が進み、建て替えることにしました。


「ちょうど、あの辺ですね。」

新たな体育館はここから1キロ。
駅前の中心街に移転させます。
そしてそこには、体育館のほかに、図書館やコミュニティセンターなど5種類の公共施設を集める予定です。

市に現在ある公共施設は全部で1,700か所。
その維持費用は年間280億円にもなります。
この過酷な財政負担を軽減するため、市はすべての施設を集約する計画を立てています。


さいたま市 公共施設マネジメント推進チーム
野口敦史主幹
「すべてのものを残していこうとすると、財政破綻に行き着いてしまう。
なるべく身の丈にあった施設を、今のうちから考えていく。」


町の集約化を進めなければ、今後さらに負担が増していくと警告する専門家がいます。
土木工学を専門にする名古屋大学教授の林良嗣さんです。
林さんは、各地の都市を500メートル四方に分けて道路と上下水道の総延長距離と人口から1人当たりのインフラ維持費用を調べています。
例えば名古屋市とその周辺の場合、中心部の年間の平均維持費用は1人当たりおよそ1万6,000円。
一方、郊外の中には80万円近くかかる場所があることが分かりました。
今後さらに郊外の人口減少が進むと、中心部と郊外の維持費用の格差は最大180倍にも広がると林さんは指摘しています。

名古屋大学 林良嗣教授
「1人当たり、こんなに負荷(費用)をかけているところがあったら、撤退できるように自治体なり国がうまい策を講じて、使わないようにしていくと。
人口が減るんですから、厳選していい所をきちんと選んで、そこへもう一回寄り集まっていくという。」

切迫する都市の維持費の問題に対して、9年前からコンパクトシティ事業を進める国は、さらに施策を推し進めようとしています。
去年(2012年)9月、「エコまち法」を制定し初めて都市機能の集約を明記。
来年(2014年)には、法改正などによって減税や補助金を厚くすることを考えています。

例えば、郊外から中心部へ病院や商業施設を移転させた場合、郊外の土地売却益の減税を検討。
一方、中心部に介護施設や学校などを建設する際には最大8割を補助する制度も導入する方針です。



国土交通省 都市計画課 和田信貴課長
「やり始めるのは今だと思います。
人口が減り、お年寄りが増えていくといった中で、どうやって行政サービス、商業だとか福祉だとか、そういった機能を維持していけるのか。
1つの答えになるのが、少し町を小さくしていこうということかなと思います。」

進まぬ都市の集約 行政主導の限界

しかし、行政主導だけで中心部へ移住を促し、町を集約するやり方には限界も見え始めています。
全国に先駆けてコンパクトシティを進めてきた青森市では、およそ10年前から中心部に商業施設や高層マンションを建設。
郊外から人を呼び込もうとしてきました。

ところが、市が出資した中核施設は店舗が次々と閉鎖。
思ったほど客が集まらなかったからです。
マンション以外では空き家が目立ち、郊外からの移住はほとんど進んでいません。


市は当初、中心部のマンションなどには郊外の高齢者に優先的に入居してもらおうと考えていました。
高齢者に住宅を売却してもらい、その資金でマンションを購入してもらおうと考えていたのです。
しかし、思うように進んでいないのが現状です。
市の最も外側の地域に位置する幸畑地区です。
住宅地として開発されてから49年。
高齢化率は30%を超えています。

町内会の役員を務めてきた櫻田博昭さんです。
行政からの周知を受け、中心部へ移り住むことも考えましたが、断念しました。
マンションの購入には最低でも2,000万円かかりますが、この地区の物件は買い手が付かず、元手ができないのです。

櫻田さんら住民たちは、行政側から持ち上がった計画をあとから知らされるのみ。
自分たちの希望を伝える機会もほとんどないまま町の再編が進んでいることに、不満を抱いています。



櫻田博昭さん
「マンションに移る人は、ゆとりのある人だよ。」

住民
「今住んでいる所が高く売れるのであれば、そこ売って買うことも出来るでしょうけども。」

櫻田博昭さん
「普通はマンションに入りたくても、実際は行けない人が多い。」

青森市は、町の集約は長期的なスパンで見ていく必要があり、今後も計画は推進していくとしています。

人口減少時代 進まぬ都市の集約

ゲスト姥浦道生さん(東北大学准教授)

●都市の集約化はなぜうまくいっていないのか?

コンパクトにするためには、そもそも人に移っていただかないといけないわけですけども、人っていうのはやっぱりそれぞれの生活があって、そこに暮らしていらっしゃるわけですね。
そういう現在の状況っていうのを無視したまま、単純に移ってくださいといっても、やっぱりなかなか移れない。
感情的にも移れないですし、先ほどVTRにあったように、経済的にもなかなか難しいという問題がありますね。
ですから、そもそも都市計画というのは長期的な話ですので、短期的にどうどいていくかというのは例えば世代ごとに移る、それを生かしながら、コンパクトな町をつくっていくというような形で、もうちょっと長期的に見ていく必要があるんだと思います。
それを短期的に見ていくとすると、やはり大きな助成であるとか、なんらかの実現のための施策というのが必要になるわけですが、それも存在していない中でやっていくとなると、やはり難しいものがあるかと思います。

●郊外の広いところに住むこと、子育て世代にニーズはある?

そうですね。
ニーズはありますね。
ですから、いろんな地方都市でまだまだ郊外の開発というのはどんどん進んでいます。
これは日本の土地利用の制度というのが、非常に規制が緩いということもございまして、ですから、コンパクトに住みましょうと言っているんですけども、そうではなくて郊外にどんどん開発が進んでいると。
一方で、先ほどVTRにもございましたとおり、郊外の住宅団地もいろいろ空いてきているわけですけれども、じゃあそこに若い人たちがどんどん入ってくるかというと、そうもうまくいかない。
これはなぜかといいますと、例えば敷地が狭いとか、坂がちであるとか、もしくは車が入りづらいとか、なかなか現在のライフスタイルにあっていないということもあります。
そのため、コンパクトな中でうまく住み替えるということが、うまくいっていないという状況かと思います。

●郊外の町づくりも同じように考えなければいけない?

そうですね。
まず1つ目は、郊外、これからなかなか持続しないであろうと思われるような開発をどうやって抑えていくのかということがあります。
それから郊外の、先ほど見たような団地をどう豊かな空間にしていくのかということも、中心市街地にどうやって施設を集中させていくのか、もしくは核となるような所に公共施設をどう配置していくのか、人をどう配置していくのかということと同じぐらい重要な課題かと思います。

●1人当たりのインフラ維持管理費について

まずは、この180倍という数字をどうやって縮めていくのかということが1つ目としては重要かと思います。
それをすべて例えば行政に委ねると、確かに180倍かかるという部分も、例えば先ほど出たような道路の部分ですね、あれの舗装であるとか、維持管理というものを地域でしますというふうにしますと、コストもずいぶん下がるわけですね。
そういう形で180倍を例えば100倍にしたり、50倍にしたりという形で下げることができます。
それからそのようなところに対する、例えば下水道、電気、もしくは商業などさまざまなサービスがありますね。
そのようなサービスも今、技術の変化とともに、例えば、エネルギーにつきましてはソーラーパネルをつけて、分散型のエネルギーというのが可能になってきていますし、上下水道、下水道でしたら、これは昔からありますけども、合併浄化槽というような形で、小さな単位で水をきれいにしていくという仕組みもございます。
そういうものをどううまく活用して、まずはこの180倍という数字をどう抑えていくかということが、まずは課題かと思います。

●計画を進める上でどういうプロセスが大事か?

行政が決めて、それでやっていきましょうという形ではなくて、多様な住民の方々、いろんな世代の方々であるとか、男性、女性、いろんな方々に入っていただいて、それで時間軸も考えながら、この地区を、町をどうしていくのか。
10年、20年、30年とそういう時間も考えながら、この町をどうしていくのかということを、そういう空間像なりそこでの暮らし方、もしくは土地の使い方、地区の使い方、そういうものを考えていくということが必要だと思います。

住民参加で広がる 新しい町づくり

住民みずから町を集約することに積極的に関わっている自治体、埼玉県鶴ヶ島市です。
ここでは5年前から、公共施設の維持費を削減するため、町の中心部に施設を統合しようとしています。


計画の当初から市が重要視してきたのが、住民と一緒に1から建設案を練り上げることです。

市の職員
「現在、適正な管理をするためにいくら必要かといったら、55億円必要です。」

市の担当者はまず、町の施設を整理しないとばく大な維持費がかかることを説明します。
その上で統合する建物の建設計画と予算を明らかにし、住民にも中身を練ってもらいます。

住民
「小さな子どもさんを抱えたお母さんたちの、交流の場っていうのも欲しいよね。」

今、話し合っているのは公民館の建て替えについて。
最初は6億円の予算で建設する計画でしたが、住民から、小学校の空き教室を利用すれば経費が浮くという意見が出されました。
さらに、削った予算の中から、光熱費を節約する設備も整えようというアイデアも出されました。

住民
「屋根の空間があるなら、ソーラーパネルを作って、電気は自分たちでやっていきましょう。」

市は住民から出た案に沿って、小学校と公民館を統合する方向で集約化を進めようと検討しています。
さらに住民たちの案は、施設の統合だけにとどまりません。

こちらは建設中の多目的ホールです。
ここにも住民の意見が反映されています。
当初の計画では2つあったホールを、使い切れないしもったいないという声を基に1つにしました。
その代わり集まりやすい雰囲気を作るために、ホールの外にカフェテラスを設けることにしました。
こうした住民参加の手法は、予算を低く抑えられるだけでなく、出来上がった施設の一層の有効利用にもつながると期待されています。

鶴ヶ島市 建築課 島田光弘課長
「当事者になるという事ですね、自分(住民)たちが。
生まれた(建設された)ときから、その建物に関わっていく。
当然その建物を育てるのにも関わっていきたいと思っていただけると、その建物の維持管理にまで関わっていただければ、われわれとしてはありがたい。」

町を中心部に集約する一方で、なし崩しに郊外の歯抜けが進んでしまう問題をなんとかしようと、住民自身がユニークな取り組みを始めた所もあります。
東京・国立市の谷保地区です。
市の中心部から少し離れたこの地域でも、公民館などの公共施設の維持が負担になっています。

こうした人が減っていく郊外こそ、町を使い勝手よく変えていこうと、空き家だった家を地域の拠点に生まれ変わらせたのです。
家主から格安で空き家を借り受け、誰もが気軽に集まることができる空間を作り上げました。
そこにはレストランも併設。
毎日、近所の畑で取れた野菜を使って料理を提供しています。

「いただきます。」

お昼になると近所の人たちが集まる、憩いの空間になっています。
さらに、ほかの部屋を月4万円で貸し出したことで、若いデザイナーや造園プランナー、建築家や家具職人など6つの会社が入居し、営業を始めました。
この場所の発起人の1人、建築家の饗庭伸さんです。
饗庭さんは、一律に町を中心に集約するのではなく、住民の暮らしに沿った柔軟性が大切だと考えています。

建築家 饗庭伸さん
「都市は放っておくと、だんだん穴が開いていく状態になっていきます。
それに対して、使いたい人たちにうまく結びつけて行くことによって、郊外が今まで培ってきた財産を最大限生かす形で、豊かな空間ができる。
大手術をせずに、本当に小さい手術を繰り返していきながら、なるべく全員に無理がこない形でゆっくりやっていくことは大事かなと思ってます。」

町を楽しく住みやすく 住民と行政の役割は

●地域の魅力を生かすということ

このまま放っておくと、市街地の中もスカスカな状況ですし、外もスカスカな状況になってきます。
空き地や空き家がどんどん出てきて、それはある意味ピンチなんですが、逆にある意味チャンスでもございまして、そのような空間を全体としてどう自分たちの空間にして、それを地区としてマネージメントをどうやっていくのかと、それができれば非常に豊かな空間ができるわけです。
そういう作業というのは、行政が一律にこうやりましょうという話ではなく、その地区その地区に応じた形で、維持管理などのソフトの部分を含めて、住民がやっていくということが基本になるのではないかと思います。

●資産を提供してもらえるような仕組みも必要では?

そうですね。
例えばドイツでしたら、空き地に対して固定資産税を免除します、その代わり、10年、20年貸してくださいと。
で、地主の方にとっては、やっぱり返ってこないのではというのと、お金がかかるというのが心配ですので、そうしますと例えば市なんかが間に入って、固定資産税の免除みたいな優遇策を取って、使いたい人に貸すということも1つの選択肢ですね。

●町づくりは住民を含めた話し合いから始まる?

そうですね。
客観的な情報を使って、それで住民の人たちにも入っていただく。
ですから今までのように、行政が「こう決まりました」と住民の人に説明するということではなくて、早い段階から、行政の人たち、それから住民の人たちが一体となって、これから町をどうしていくのかということを考えていく必要があるかと思います。

●広がった町をどう集約化していったらいいか?

広がった町を1つに集約化していくという考えというよりは、多様なライフスタイルを実現できるような、そういう成熟した町を作っていくという考えが重要ではないかと思います。
ですから集約していって、いろんな公共施設を集約していくことによって、文化的な生活だとか、なかなかクオリティーの高い生活を送ることができますし、郊外は郊外でまた別の空き地がたくさん、もしくはオープンスペースもたくさんあるような、そういう豊かな生活ができますので、そういう多様なライフスタイルを実現できるような成熟社会の空間というものが求められるんではないかと思います。
増えた選択肢の中で、最低限の効率性は維持しつつも、どれをどうやってそれぞれ魅力的にしていくのかが問われているのではないかと思います。

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