クローズアップ現代

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No.34032013年9月18日(水)放送
拡大する“ブラック企業” ~過酷な長時間労働~

拡大する“ブラック企業” ~過酷な長時間労働~

拡大するブラック企業 悪用される“みなし労働”

建築会社で長時間労働を強いられている、入社2年目の社員です。
この日の仕事は朝8時から始まり、終わったのは深夜12時前。
こうした勤務が1か月以上、休みなく続いています。



男性が、この会社を選んだきっかけは、大学で見つけた求人票でした。
基本給は、およそ23万円。
残業した場合は、時間外手当が払われると書かれていました。

男性
「学校からは『すごい、いい企業だよ。
やりがいは絶対あるし、入っても損はない』って。」

しかし、実態は全く異なるものでした。
毎月の残業は100時間を超えていますが、時間外手当は、ほとんど支払われていません。

男性
「夜飯も食べる時間もくれず、休憩もまったくくれず、風邪を引いたとかあれば、体が弱いといって、けなされたり。
泣きそうなくらい、精神的にやられてます。」

男性が会社に改善を求めたところ、みなし労働の1つ、固定残業代制度を導入しているため、これ以上支払えないという回答でした。





この会社の場合、あらかじめ30時間分の残業を想定し、月給に時間外手当を含んでいます。
本来は、みなした残業時間を超える場合は、追加分を支払う必要があります。
しかし、この会社は、時間外手当を支払っていることを盾に、違法な長時間の残業を強いていたのです。
次々と同僚が会社を辞めていく中、男性は、上司に長時間労働の是正を訴えました。
そのときの上司の回答です。

声 上司
「キミは本当に愛しているのか、うちの組織を。
戦力外通告だって、色んな理由で簡単なんですよ。
キミみたいな人が一人いると、それがどんどん、まん延していっちゃうわけだよ。
がん細胞みたいなものだから、手術しちゃいましょうって。
そうしないと、会社が成り立たないんだよ。」

男性は現在、個人で加入できる労働組合に入り、会社と交渉を続けています。


みなし労働が広がる中、最悪の事態を招くケースも出てきています。

和也さんの父
「これが夏用(の仕事着)ですね。」




この家族は、一人息子を過労死で亡くしました。
大手飲料メーカーの子会社で、正社員として働いていた和也さん。
23歳です。



和也さんの父
「まさか、こういう風になるとは思わなかった。」





和也さんの姉
「上司が仕事を押し付けてくることとか、体力的に厳しいと、すごい言っていた。」




和也さんの仕事は、飲料水を売る営業マン。
自動販売機80台を担当していました。
毎日、朝5時の始発で出勤。
帰宅は夜10時過ぎ、という生活が続いていました。

家族が業務日誌などをもとに割り出したところ、残業は、月平均110時間を超えていました。
国が過労死の危険性があるとしている、月平均80時間を大きく上回っています。
労災申請を担当した弁護士は、会社が、みなし労働を巧みに利用し、長時間労働に追い込んでいたと見ています。



増田崇弁護士
「営業の『みなし労働制』の適用があるんだといっていますね。
『事業場外みなし労働制』が適用されていたため、基本的に残業という概念はない。」



事業場外みなし労働とは、本来、外回りの営業マンなど、限られた職種に適用される制度です。
例えば、みなし労働時間が8時間と決められている場合、何時間働いたとしても、8時間分働いたとみなされます。
こうした働き方が認められるのは、自宅から直接、営業先に向かったり、一日中外で働くことが多く、会社が勤務を管理することが難しい場合だけです。
しかし、和也さんの同僚によると、実際は、この制度に当てはまる働き方ではありませんでした。
朝、必ず会社から配送車で出発。
決められた自動販売機に飲料水を補充し、夜も、再び会社へと戻っていました。
しかも補充した商品のデータは、携帯する機械で記録するため、会社は、どこでどれだけ働いたかを管理できたはずだといいます。

和也さんの元同僚
「データで全部分かるんですよ、どれだけ働いているか。
時間で全部出る、何時につないでるっていうのは。」



弁護士は、会社が勤務管理を放棄し、無制限に残業をさせていたと見ています。

増田崇弁護士
「労働時間を管理する意思が全くない。
働かせれば働かせただけ、会社が得になる、そういうシステムに、この会社はなっている。」


当時、1日、16時間以上働いていた和也さん。
亡くなる直前、姉に宛て、メールを送っていました。

“仕事がつらいんだ ごめん。
父ちゃんと母ちゃんのこと、よろしく。
ありがとう。
さよなら。”


和也さんの姉
「今の若者は就職難だし、辞めたら次がないっていうのを利用しているような気がするんですよね。」

和也さんの母
「会社なんて、役職のない社員なんて、虫けら同然に思っているんだなって。」



取材によると、その後、労働基準監督署が調査に入り、事業場外みなし労働にはあたらないと判断。
残業代不払いで、是正勧告が出されました。
和也さんの長時間労働について、会社側に見解を求めたところ、裁判の中で主張を述べていくとして、これ以上のコメントは差し控えると回答しています。

拡大するブラック企業 悪用される“みなし労働”

ゲスト宮里邦雄さん(弁護士・日本労働弁護団前会長)

●“みなし労働”の悪用・乱用が広がっている背景

今、VTRで見たのは、事業場外労働のみなしという制度、それから、固定残業制っていう、2つの問題が出てましたね。
なぜ、これが広がっているかというと、いずれも大変、企業にとってメリットがあるということなんですね。
どういうメリットかというと、基本的には長時間働かせても、それに比例した賃金を支払わない、時間外労働手当を支払わないという点で共通しているんですね。
みなし労働というのは、法律で非常に厳しい条件が決められていて、時間管理ができない業務に限られてるわけですね。
しかし先ほどのケースは、管理ができるのに、みなし労働を悪用したと。
固定残業制も、実際に、実労働で働いた時間に比例して払わないといけないわけですね。
固定残業制があるから、それで打ち切りとか、そういうことは法律違反なんですね。
いずれも、ただ長時間労働を知りながら、残業手当を削減する、賃金をカットする、こういう手段として悪用されたという、非常に悪質なケースじゃないでしょうかね。
(求人欄を見たときに、そうした実態をはっきり認識できるでしょうか?)
企業の求人広告の中には、賃金がいくら、かっこ残業代を含むというね、非常にあいまいな募集が結構あります。
本来、労働基準法の原則から言うと、きちっと労働条件を明示しなければいけない。
しかし、そこで見せかけの、高い賃金のようなものが見せかけられていて、それで採用されてみると、それは実は、残業代を含むものであったと。
実際に残業しても、それに見合う賃金が支払われないという、これはもう、採用段階における明らかな法違反ですよね。
これはなかなかね、実際に入ってみないと分からないっていうところから、先ほどのような問題が実際に起こっていると思いますね。

●過酷な働き方を強いられた労働者 なぜ声を上げない?

これは、いろんな要因があると思います。
声を上げたくても、上げられないという問題があると思いますね。
上げると、何らかの不利益が身に及ぶのではないかという恐怖もあると思います。
それから、やっぱり1人だけでは、なかなかできない。
一緒に声を上げる仲間がいないという問題もあると思いますね。
これは、もっと突き詰めていくと、果たして、そこに労働組合があるかないかという問題とも関連すると思いますね。
それからやっぱり、より基本的には、やっぱり声を上げるべきかどうかという基本的な法令に対する知識、労働基準法についての知識。
私は労働基準法というのは、働く人にとって、重要な身を守る術だと思うんですけどね。
やっぱり、その基本的な知識が欠けてることによって、声が上がらない、上げられない。
ここは、いちばん大きな問題でしょうね。

ブラック企業 取締りの最前線

東京・港区。
4万社近い企業を監督する、三田労働基準監督署です。
国の実態調査を受けて、この日、ブラック企業の対策会議が開かれました。
集まったのは、司法警察権を持つ労働基準監督官です。
悪質な場合、企業名の公表や、逮捕も辞さないという強い態度で臨むことが確認されました。

三田労働基準監督署 中尾剛次長
「若者を使い捨てる企業、必ずといっていいほど、法令違反を犯していることが想定されるわけです。
法的制裁も視野に、しっかりとやっていきたい。」


三田署の管内で、長時間労働が引き金となって起きた過労死などの労災認定は、この3年で35件。
その3分の1以上が、みなし労働でした。
この女性も、みなし労働による長時間労働で、精神疾患に苦しんでいました。

サービス業で働く女性
「100時間以上、残業している月があるんですけれど、社長は『みなし労働だし、残業代も含まれている』と。
いくら早朝から深夜まで働いても、9時半から6時のみなし(労働)。
精神的に、かなりきついです。」


大國尚士監督官
「見せないと、法律違反です。」





監督官の大國尚士さんです。
寄せられる情報を基に、違法な、みなし労働を突き止めていきます。
この日は、IT関連の企業に、立ち入り調査に向かうことになりました。
長時間労働で追い詰められた社員から、助けてほしいという情報が入ったためです。

大國尚士監督官
「すみません、そろそろ、ちょっと会社の近くなんで、ここら辺でご容赦ください。」

経営責任者や労務担当への聞き取り調査は、3時間以上に及びました。

大國さんが持ち帰ったのは、出勤簿とパソコンのデータです。
社員のパソコンの使用時間の記録をたどると、実際の勤務記録を割り出せると考えたのです。
社員一人一人のデータを入力していくうちに、長時間労働の実態が浮かび上がってきました。



大國尚士監督官
「終業時間で比べると、22時で仕事が終ったとなっていますが、パソコンの切断時間は、それ以降になっています。
22時以降も労働していた可能性がある。」


会社は、月40時間の固定残業代制を導入していますが、その3倍にあたる、140時間近い残業をしていた社員がいることが分かりました。
残業代不払いの法違反です。

大國尚士監督官
「もしかすれば、明日にでも過労死で亡くなる人が出るかもしれない。
会社ぐるみで、そういった指示をやっているのか、一部の所属長が、属人的な問題として『申請しないように』という指示をしているのか、今後、他の調査、他の課とか部署の記録を見て、判断していくことになります。」

このように違法な労働を特定し、是正勧告に踏み切った企業は、この1年で51件に上ります。


一方で、過酷な長時間労働にもかかわらず、違法性が全く問えないケースも増えています。
三田署に相談が寄せられた、あるIT企業の場合、多くの社員に適用されていたのが、みなし労働の1つ、裁量労働制でした。

裁量労働制は、記者や研究者などに認められ、仕事の進め方やスケジュールを、自分の裁量で決める働き方です。
そのため、時間の管理も本人に任されています。




調査の結果、この企業では長時間労働が常態化。
過労死ラインを超える働き方が、まん延していました。
しかし、時間の管理は本人に任されているため、今の制度では、企業側の責任を問うことはできません。



三田労働基準監督署 中尾剛次長
「実態の労働時間が長いからといって、諸手続きを経ているものについては、『直接の法違反ですよ』ということは出来ない。
歯がゆさは、常々感じています。」

監督署は企業に対し、粘り強く指導を行い、改善を求めていくとしています。

どう食い止める? 違法な長時間労働

●“裁量労働” 違法性を問えない現場も

裁量労働の最大の問題は、長時間労働であっても、それを労使協定でやってしまうとですね、なかなか違法性が明らかになりにくい。
だからこそ、乱用される危険性があるわけですね。
もともと、この制度を導入されたときに、非常に乱用されるおそれがあるという指摘をされておりました。
したがって、これは監督署が協定をされたものを違法だと断定するのは、非常に容易ではないと思います。
また逆に、それであるがゆえに、乱用されやすい、こういう関係になっていると思うんですね。

●増える“みなし労働”と“裁量労働”緩和の議論

裁量労働、それ自身もいろいろ問題がありますけれども、仮に裁量労働について、一定の見直しを図ろうとしても、やっぱりこの問題、この裁量労働の持っている本質的なところにきちっと歯止めをかけないと、ますます長時間過酷労働が広がる要因になっていくと思うんですね。
私は全体としての総労働時間、これの上限をきちっと規制すると。
それから1つ、1勤務と1勤務の間に、確実な休息時間を入れる、これインターバル勤務といって、ECの労働時間指令に書いているわけですけれども、ECは11時間といっています。
やっぱり、こういう非常に客観的な明確な枠組みを作ることによって、やっぱり長時間労働を抑える仕組みをね、セットにしてやらないと、裁量労働だけを緩和したら、今よりも、もっともっと私は実態は悪くなる、長時間労働が増える。
しかも、時間外労働手当は払わないと。
本当に労働者にとっては、悲劇的な状況が強まるんじゃないかと、非常に懸念しています。
(昨年1年間の労災の件数、心の病や過労自死の件数が最も多くなりましたね。)
そうでしたね。

●労働者を守る規制の在り方とは?

望ましい社会とは何か、ということと関連すると思うんですけどね。
本当に豊かな社会とは何か、やっぱり私は、そこで働いている人が健康で豊かに働く、そして、その上に立って企業が運営される、人あっての企業という、この理念が社会的に共有されるということがどうしても必要だと思いますね。
(労働の時間というものが、労働条件の中において非常に大事にされないといけませんよね。)
労働時間というのは、働くための最も基本的な規定的な条件だと思います。

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