クローズアップ現代

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No.34022013年9月17日(火)放送
あなたもハーバード大へ ~広がる無料オンライン講座~

あなたもハーバード大へ ~広がる無料オンライン講座~

“世界の才能”を発掘 無料オンライン講座

今年(2013年)1月、スイスで開かれた、教育についての国際会議。
ここで注目を集めた、12歳の少女がいます。

「パキスタンから来た少女です。」

ハディージャ・ニアジさん。
オンライン講座で、大学上級レベルのコースを次々と修了した天才少女です。




「これからオンライン講座で、どんな勉強がしたいですか?」

ハディージャ・ニアジさん(12歳)
「詩と歴史、それに宇宙生物学と化学です。」

「宇宙生物学…ですか?
信じられない…。」

ハディージャさんは、パキスタンの私立学校に通っています。
中学1年生にあたる学年です。
理数系の科目が得意な、ハディージャさん。
学校では初歩的な内容しか教えてもらえず、もの足りなさを感じていました。
そんなとき、両親の勧めで、オンライン講座を始めたのです。

ハディージャ・ニアジさん(12歳)
「学校では教わらないことも勉強できて、とてもおもしろいです。」




ハディージャさんが利用している、大学の無料オンライン講座。
大規模、公開、オンライン講座の英語の頭文字を取って、ムークと呼ばれています。
一昨年(2011年)登場してから、急速に拡大。
講座の数は、500に上ります。
これは、マサチューセッツ工科大学が配信する講座。
臨場感あふれる実験が人気です。

電子工学の講座
「マウスの中がどうなっているか、見てみましょう。」




電子工学の講座
「ご覧のように、蓄電池が入っています。
あなたのパソコンで、やってみてください。」



こちらは、MBAコースで有名な、ペンシルベニア大学、ウォートン校の講座。

経営学の講座
「コーポレートガバナンスや貨幣の時間的価値などについて、学んでいきましょう。」




受講生は動画を見るだけではなく、インターネット上でテストを受けることになっていて、成績もつきます。






ビデオ講義は毎週配信され、そのつど、テストやレポートの提出があり、これを数か月にわたって繰り返します。
すべての課程をクリアし、最終試験で合格すると、修了証が発行されます。




12歳ながら、大学上級レベルの講座を受けている、ハディージャさん。
難しい講座でもついていけるのは、サイト上の掲示板で、世界中の受講生からアドバイスがもらえるからです。




例えば、力学の講座では、こんな質問をしました。

“アーチ型の天井と平らな天井では、はりにかかる力は、どう変わりますか?”




すると、オランダの受講生がイラスト付きで詳しい解説を送ってくれたり、アメリカからは参考になる動画が送られてきたりしました。

ハディージャ・ニアジさん(12歳)
「オンライン講座では、世界中の人から学べます。
学びが地球規模に広がりました。」


ハディージャさんは、相対性理論や宇宙生物学など、11の講座を、いずれも優秀な成績で修了。
将来は、宇宙の謎を解き明かす物理学者になりたいと、夢を膨らませています。




無料オンライン講座の受講をきっかけに、憧れの名門大学に実際に進学を果たす人も出てきました。
バトゥシグ・ミャンガンバヤルさん。
モンゴル出身の17歳です。
今月(9月)、アメリカのマサチューセッツ工科大学に入学しました。

バトゥシグ・ミャンガンバヤルさん(17歳)
「今、僕がここにいるのは、オンライン講座のおかげなんです。」

モンゴルの首都、ウランバートルの高校で優秀な成績を収めていた、バトゥシグさん。
アメリカへの留学を希望していましたが、経済的な理由から、実現は難しいと感じていました。
そんなとき、MITのオンライン講座を受講し、すべての課題と試験で満点を獲得。
担当教授の強い推薦を受けて留学が決まり、学費も免除されることになったのです。

バトゥシグ・ミャンガンバヤルさん(17歳)
「この入学証をもらったときには、本当に誇らしかったです。
誰もが入れるわけではないので。」



マサチューセッツ工科大学 アナント・アガルワル教授
「オンライン講座を始めたことで、これまでは入学してこなかったような国の最高レベルの学生がやって来るようになりました。
将来、研究者や教授として貢献してくれるでしょう。」

日本の東京大学も世界の秀才をひきつけたいと、今月からオンライン講座に参入しました。
これまで海外での知名度は十分でなく、留学生の数が低い水準にとどまっていることが課題になっていました。
そこで今回、大学を代表する2人の人気教授の講座を英語で配信することにしたのです。

国際政治の講座
「戦争は多大な犠牲を生み出しますが、戦争を認めなければならない場合があるのでしょうか?」




宇宙論の講座
「この講座では、ビッグバンとダークエネルギーについて考えます。」



受講生は、すでに6万人を超え、ほとんどが海外からです。

「(受講生の割合は)アメリカ合衆国が19.6%、インドが9.4%、ブラジルが4.5%。
博士号を持っている人でも6.3%いる。
高学歴に相当、偏ってるんです。」

早速、大学院に入学したいという問い合わせがあるなど、受講生からは、よい反応が得られているといいます。

東京大学 江川雅子理事
「東大には、こんなすばらしい先生がいるのだ、あるいは、世界最先端の内容の教育を受けることができるのだ、そういったことが、世界の隅々の学生に分かってもらえるので、それによって、世界各国から留学生を獲得できるのではないかと思います。」

誰もが名門大学へ 急拡大するオンライン講座

ゲスト飯吉透さん(京都大学教授)

●急拡大するオンライン講座 レベルや言語など、その内容は?

言語でいうと、やはり皆さんご想像のとおり、英語が今のところ、ほとんどです。
ただ、やっぱり英語だけではと、世界中、いろんな人たちのいろんなニーズがありますので、例えば中国語だとか、スペイン語だとか、日本語も含めて、いろいろな言語でやっていこうという動きが出始めています。
レベルに関しては、わりに、やっぱり高等教育に、できるだけ多くの人を誘い込もうという意図もありますので、やっぱり大学でいうと、1年目、2年目、一般教養、そういうような教科が、やはり多いと。
ただ、その上を越えて、専門教育に入っていったり、中には大学院の内容というのも出ています。
(それほど敷居が高いものではない?)
むしろ逆だと思います。

●高等教育の革命的な変化と言える?

そうですね。
ですから同じ何万人というのでも、例えばこれ、先進国の人たちだけの何万人ではない、ここがやっぱりすばらしいと思います。
例えばオバマ政権は、アメリカの国内で、高等教育に関わる人を100%にしたいと言いましたが、これは大学の学位を100%取らせるという意味ではなくて、やっぱり高等教育に触れさせると、体験させていくと。
その意味で、この今、見たムークなんかは、世界中にそういう理念というか、信念を広げていくという、そういうすばらしい動きだと思います。
(機会を提供することで、何を目指そうとしている?)
それはですね、いろいろなものを目指せるんですけれども、やっぱり、できるだけ多くの人がよい教育を受けるということが、とりもなおさず、この世界を、やっぱり相対的にはよくしていくという、やっぱり考え方、そして信念があると思います。

●大学側には別の思惑もあるのでは?

もちろん、世界中から、逆にこれだけ高等教育のアクセスが世界中に広がるということで、その中から、少しでもいい学生を取っていきたいと。
例えば、そういう思惑は、各大学に当然あります。
ただ、その大学としては、すべてをこのビジネスモデルというか、収益というところで、例えば考えていくというのは、やはり、ちょっと小さくて、もっと自分たちは世界に、社会に対して、どういうことができるかという、そういう責任の果たし方を、いろいろな形で考えていかなくちゃいけない。
今回のこのムークなんかも、その1つの表れだと言うことができると思います。

●現実に修了している受講者の割合は?

これはですね、実際、5%ぐらいなんですけれども、ただ、それは修了率というのが5%だから、これはあまり意味がないというようなまとめ方をするのではなくて、例えば社会人で、修了証を取るほどは、ずっと継続できないかもしれないけど、だけども、こういうことを少し学んでみたいというような人たちのさまざまなニーズには、いろいろな形で応えている。
その結果、その修了証を取る人が5%ということなんでですね、そこのところは、もう少しゆったり考えてもいいんじゃないかと思います。

“自分磨き”にも 無料オンライン講座

東京・渋谷で、無料オンライン講座の受講生たちが交流会を開きました。
インターネット上で呼びかけ合い、集まったのです。
そのほとんどが社会人。
オンライン講座で、キャリアアップを目指しています。

電機メーカー勤務
「最近、仕事でも役に立つかなと思ってきて、面白くなってきましたね。」




建設機械メーカー勤務
「本格的に留学するというのは、ハードルが高いです、アメリカとか。」

「(授業料が)高い。」



東京のIT企業のシステムエンジニア、若井幸夫さん。
仕事で必要な知識を身につけようと、オンライン講座を始めました。

若井幸夫さん(29歳)
「私自身のキャリアとして、ビッグデータ関連の仕事に就きたい。
自分ではバックグラウンドが足りないので、補おうと今、受けています。」

若井さんは毎晩、仕事から帰宅すると、必ずオンライン講座に取りかかります。

若井幸夫さん(29歳)
「ワクワクする、どれとろうか、どれやろうか。
気になるコースが、どんどん開講されていくので、はまっちゃってますね。」

特に役立ったのが、ワシントン大学のデータ解析の講座です。
アメリカ大統領選挙で、ビッグデータがどう活用されたかなど、具体的な事例をもとに、実践的な知識を学ぶことができました。
この講座を修了したことが上司に評価され、ビッグデータ解析の新たなプロジェクトに抜てきされました。



若井さんは顧客に分かりやすく説明できるよう、プレゼンテーションの講座も新たに始めました。
幅広い能力を身につけ、さらなるキャリアアップを目指したいと考えています。




若井幸夫さん(29歳)
「自分のスキルを高めていける、いいチャンスだと思います。
かなり自分自身の人生を変えるきっかけになったと思います。」

無料オンライン講座 企業の人材獲得にも

アメリカでは今、企業がオンライン講座を人材獲得の場として利用し始めています。
サンフランシスコにある、ソフトウエア開発会社です。
事業の拡大に伴って、プログラマーを増やすことにしました。
利用したのが、無料オンライン講座を活用した、新たな人材紹介のサービスです。

受講生は講座を受ける際、職歴などの個人情報と成績を、企業に公開するかどうか選択。
情報の公開に同意した受講生のデータは、サーバーに送られ、保管されます。
企業は、成績優秀者のデータを、有料で得ることができるのです。



「ここに受講者の名前と経歴などの情報が載っています。」

この企業は、プログラミングの講座で優秀な成績を収めた、200人のリストを入手。
最も成績がよかった、ブラジル人の男性を採用することにしました。



ビクター・タタイさんです。
採用が決まり、この夏、アメリカにやって来ました。
ITの本場で、実力を試すチャンスをつかみました。

ビクター・タタイさん(36歳)
「とてもワクワクしています。
きっと、すばらしい経験になります。」

「こんにちは。
ビクターさんですね?
お会いできて、うれしいです。」



年収も、ブラジルで働いていたときよりも、25%上がりました。


ビクター・タタイさん(36歳)
「まさにアメリカンドリームです。
一生懸命勉強していれば、いつかは報われるというけど、僕の場合、あっという間のことでした。」


このIT企業では、ビクターさんに専門知識を生かして、新たなアプリを開発してもらうことにしています。


「これで完了です。
おめでとうございます。」




IT企業 事業本部長 ポール・アーノルドさん
「有名大学の卒業生は優秀かもしれませんが、それだけで選ぶのはリスクがあります。
オンライン講座は、実際に、どんな知識を身につけているかが分かるので、信用できるのです。」

無料オンライン講座 その可能性

●オンライン講座は 学び直しのチャンス

本当に勉強というと、受け身だけで、学校で学ばさせられているという意識が強くて、社会に出たんだから、もう学ばなくていいと、逆に変な解放感があると思うんですが、逆にこれからは、みずから積極的に学んでいくことが、逆に、そういうところがまた評価されなければいけないんですけれども、社会とか雇用主から。
そういうふうな流れがついていけば、本当に学びのホライズンと言うんですかね、これは広がっているので、いろいろなことが可能になってくると思います。
(社会の激しい変化の中にあっては、常にスキルアップをしたいという欲求を持っている方もいらっしゃるでしょうね。)
そうですね。
また、それを強迫観念というか、そうでなくて、やはり自分が本当にやりたいことであるとか、興味を持っていること、興味を新しく持ったこと、そういうものを大事にしながら、自分の次のステップということを、あくまでも保身的になるとか、自分は今のところにしがみつくということを、逆に少し自分を解放して、逆に、この開放された学びの環境というものを使っていただきたいと思います。

●今までの大学の在り方が問われることになるのでは?

ですから、こういうムークのようなものが普及していくと、結局、決まった知識とか技能というものは、どこでも無料で取れるということになりますので、当然、大学としては、そのほかに何を自分たちは、人育てとして、やらなくちゃいけないのかと。
すると、逆に知識や技能に基づいて、どうやって新しい構想を生み出していくか。
それから、何か問題があった場合に、それを解決していくかということを、またそういう問題を見つけ出していく力、そういうものをどうやってつけるかと、本当の意味での人材力というんですかね、そういうものが問われていると思いますね。
ですから、大学も、これから大きく変わっていかなければいけないと思います。

●企業や社会から認められる資格を提供する動きも?

実際、そういう動きも出てきそうです。
大学の学位を持っていればという考え方は、なかなか通用しにくくなってきていますから、学位まで大きな単位でなくても、例えば、さっきのデータアナリストの例もありましたが、サイエンティストですね、例えば、この7つのムークの単位を取れば、修了証を取れば、それでいいというふうに言われれば、そういうことを目指して、新しく学びの意欲を、それから自分のキャリアについて考えながら、働きながら学ぶという人が増えてくるのではないかと思います。

●オンライン講座 学生たちに与える変化は?

僕はここのところ、実はいちばんワクワクしていて、つまり、いい教えとか、それから、周りにすごく意欲を持って学んでいる、世界中の若い人たち、もちろん若くなくてもいいですけれども、いると。
その中に自分も入っていって、まさに目が肥えるというんですかね、こんな学び方もあったんだ、こんな教え方もあるんだということで、いろいろな意味で、学びの目利きになれるということですね。
しかも、その意欲があふれて、今度は学んだことをまた人に教えたいと、こんなすばらしいことを自分は学んだんだから、人に教えたいっていう気持ちが自然に出てくる。
このいい循環が自然に流れれば、そして、そこにオンラインであるとか、ムークであるとか、そういうものが生かされてくれば、これは教育が進化するというよりは、われわれ、人類が本当に進化していくための原動力になるんじゃないかと、こんなふうにワクワクします。

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