クローズアップ現代

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No.33972013年9月5日(木)放送
緊迫シリア “化学兵器疑惑”に迫る

緊迫シリア “化学兵器疑惑”に迫る

シリア “化学兵器疑惑” 反政府勢力の証言

化学兵器が使われたとされるのは、首都ダマスカス近郊です。
いずれも、反政府勢力の影響下にある地区です。
今回、インターネットを通じて、この地区の住民に話を聞くことができました。



反政府勢力の支持者
「みんなパニック状態で、目が見えなくなる人や、呼吸ができない人もいて、異常な状態でした。」



この男性は、反政府勢力の支持者です。
先月(8月)21日未明、砲撃の音を聞き、現場に向かったといいます。

反政府勢力の支持者
「通常の砲弾と違って、大きな爆発音はせず、プロペラが回るような音がしました。」

「被害者の症状は?」

反政府勢力の支持者
「呼吸困難や心肺停止、泡をふいたり、気絶している人もいました。」

反政府勢力は、このとき1,400人以上が死亡したとしています。
しかし、現地には外国メディアなどが入ることができず、被害の実態を確認することはできません。

反政府勢力の支持者
「この地区は包囲されていて、誰も通れない。
この回線は衛星通信なので、どうにか使用できています。」

化学兵器は、この3か月前にも使われていたと訴える、反政府勢力の支持者から話を聞くことができました。
シリアの隣国、レバノンに逃れてきたばかりの、この男性。
アサド政権の報復を恐れ、顔を出さないことを条件に、みずからの体験を語りました。



今年(2013年)5月、ダマスカス近郊の街が、政府軍から攻撃を受けたとされるときの映像です。
現場にいた男性は、攻撃の直後から呼吸が苦しくなり、のどに痛みを感じたといいます。




男性
「朝起きたら、家族全員のせきが止まらないのです。
大人も子どもも、みんな呼吸困難になりました。」

「臭いは?」

男性
「よくわかりませんでした。
胸がたまらなく痛みました。」

シリア “化学兵器疑惑” 対立する主張

化学兵器は、実際に使用されたのか。
国連は現地に調査団を派遣し、今後3週間をかけて結果を出すことにしています。
しかし、アメリカは国連の調査結果を待たず、独自の報告書を発表。
アサド政権が、神経ガス・サリンを含む化学兵器を使用したと結論づけ、軍事行動に乗り出す構えです。


アメリカ オバマ大統領
「21世紀最悪の化学兵器の使用で、大人も子どもも虐殺された。
シリアへの軍事行動をとるべきだと決意した。」

これに対し、アサド政権は、化学兵器の使用は反政府勢力のねつ造だと反論しています。


シリア ゾアビ情報相
「政府軍が化学兵器を使っているという話は、テロリストたちのでっちあげだ。」

さらに、同盟関係にあるイランの国営メディアは、化学兵器を使用したのは反政府勢力だと伝えています。



イラン国営英語放送
「化学兵器は、取り扱いに慣れていない反政府勢力側が誤って使ったものだ。」

緊迫シリア 急増する難民

化学兵器の使用疑惑をきっかけに、攻撃に乗り出そうとするアメリカ。
シリアを脱出する人が急増しています。




男性
「アメリカの爆撃が怖くて逃げてきました。」

難民の数は、200万人を突破。
国連は、今世紀最悪の人道危機だとしています。


トルコとの国境にある、難民キャンプ。
毎日、およそ数百人が押し寄せています。
支援にあたる団体は、難民の急増に対応できない状況です。



人道支援団体 担当者
「なんとか持ちこたえようとしていますが、支援は全く足りていません。」




家族6人で避難生活を送る、ジャマル・ハサンさん。
砲撃で自宅が破壊され、このキャンプに身を寄せています。
難民増加の影響で、1日に2回配られていた食事は、1回に減りました。

真夏のテントの中の温度は、50度以上。
医薬品もなく、衛生状態は悪化する一方です。




ジャマル・ハサンさん
「私たちは生きることに精いっぱいです。
でも、誰も助けてくれません。
シリアの子供たちの未来は、まるで地獄です。」


難民キャンプは収容能力を超え、路上生活を余儀なくされる人々も現れています。
アメリカの軍事行動をめぐる緊張が高まる中、シリアの先行きは一層、不透明になっています。

緊迫シリア “化学兵器疑惑”の真相は

ゲスト高橋和夫さん(放送大学教授)

●シリアの化学兵器疑惑をどう見る?

化学兵器が使われたこと自体は、誰も否定してませんので、映像から判断して、イランイラク戦争の映像などと比べてみても、使われたのは確かだろうと思うんですね。
ただ誰がやったかっていうのは、内多さん、実はちょっと難しいですね。
というのは、論理的に考えて、その前に化学兵器が使われたっていうんで、国連の調査団が入ってきてる中で、わざわざアサド政権が使うかっていうのは、ちょっとね、考えにくいんですよ。
ただ、もしかしたら、その前にアサド支持派の住民が虐殺されるというような事件がありましたから、アサド派の一部が暴発して、指揮系統が乱れて使ったということも排除できませんからね。
これは、やっぱり慎重に見極めたいですよね。

●アメリカが軍事行動を実行する可能性について

オバマさんは2つ、おっしゃいましたね。
1つは、軍事行動をとるんだと。
もう1つは、議会の承認を得るんだということで、問題は議会が承認するかどうかなんですけれど、議会は、実は2014年、来年が中間選挙なんですね。
議員さんは、選挙がすごく気になりますよね。
ここでオバマさんに賛成するのがいいのか、反対するのがいいのかっていうのを、みんな悩んでいると思うんですよ。
かなりの方が、まだどう投票するか、言ってないんですね。
旗色を鮮明にしてないんですね。
ですから、説得に、かなりオバマさん、努力を要すると思います。
オバマさんの殺し文句は、アメリカにとって、中東でいちばん重要な国はイスラエルだと。
イスラエルを守るためにも、化学兵器なんか使っちゃいけないという原則を確立するほうが重要なんだと。
イスラエルの利益という殺し文句で、議会の説得にかかっているんですよね。
もし議会がOKを出せば、もちろんオバマさん、攻撃すると思いますよね。
ただ攻撃をして、どのくらいの攻撃をするのかということは、まだはっきりしていません。
あまり激しい攻撃をしたら、シリアの体制、めちゃめちゃになってくる可能性もありますし、議会がだめだと言って、攻撃しなければ、オバマさんのメンツは丸潰れで、アメリカの威信が崩れてしまいますんで、進むも地獄、退くも地獄というジレンマに、オバマさんは立たされてるわけなんですね。

●なぜ、これまで介入することができなかった?

そうですね。
もう2年以上も殺し合いが続いてるわけですよね、やはりアメリカを旅すると、本当に思うんですけどね。
イラクの戦争、そしてアフガニスタンの戦争、もうアフガニスタンの戦争は2014年に終わるんですけども、十何年ですよね。
アメリカ史上最長の戦争をアメリカは戦っていて、やっぱりたくさんの負傷兵がいて、体は負傷してないんだけど、心が傷ついた兵士がたくさんいて、やっぱりアメリカは、もう戦争はいいという気分がすごく強いんですね。
国内のえん戦気分があって、なかなかこう、新たな戦争を行えないというのが、1つありますよね。

それからもう1つは、アサド政権って、すごい問題のある政権ですけれども、とりあえず安定してたわけですよ。
アメリカにとって、いちばん重要な国、イスラエルと国境を接しているシリアが安定してるということは、イスラエルも安定して、安全ということなんですよね。
(アメリカの同盟国である、イスラエルの安定にもつながっている?)
ええ。
で、もう1つ、シリアが、やっぱり隣のレバノンのヒズボラという組織を支援してますけれど、支援してるということは、同時に抑えが効くということで、ヒズボラも抑えられると。
だから、アサド政権が百点満点ではないんですけど、とりあえず75点か70点で、合格点で悪くないという、便利な独裁者だったんですね。
だから、それを倒してね、先が見えないじゃないですか。
それよりは、ままでもいいんじゃないかという議論が、アメリカの中にあったんですね。
イスラエルの中にもあったんですけどね。

●軍事行動決断への複雑な背景 中東地域のパワーバランス

もう1つは、やっぱりシリア軍がかなり強力でしてね、簡単に行けば倒せるという相手ではないんですよ。
シリアは長年、ソ連、そしてロシアの軍事援助を受けていて、非常に強力な対空ミサイル網を持ってるんです。
ですから、あまり、うかつに手を出せないという感覚があったと思います。

反政府勢力 台頭するイスラム過激派

これは、シリア国内で活動するイスラム過激派組織が、インターネットで配信している映像です。
世界に向けて、住民を弾圧するアサド政権との戦いに参加するよう呼びかけています。




イスラム過激派 指導者
「神のための聖戦に命をささげる者が、真のイスラム信者だ。」



こうした過激派は、国際テロ組織、アルカイダとの関係が疑われています。
映像には、アジアやアフリカ、そしてヨーロッパなど、世界各地から集まった戦闘員の姿がありました。


フランス人の戦闘員
「同胞たちは犬どもの刑務所に入れられ、拷問されている。
世界中の兄弟たちよ、シリアでの聖戦は絶対に避けられない。」



当初、反政府勢力の中心は、政府軍から離反した兵士らで作る自由シリア軍。
そして、少数民族のクルド人勢力でした。
しかし今、急速に台頭しているのが、イスラム過激派です。
外国から戦闘員を呼び集めることで力を増し、支配地域を広げているのです。
戦闘員の流入に拍車をかけたのが、アルカイダの指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者の声明でした。

アルカイダ 指導者 ザワヒリ容疑者
「周辺国の同胞たちに呼びかける。
シリアの人々を救うため、命を懸けて立ち上がれ。」

イスラム過激派は、戦闘員を、組織的にシリア国内に送り込んでいます。
シリアと国境を接するヨルダンで、戦闘員の密入国を手助けしている組織のリーダーに接触することができました。
これまで、800人の若者をシリアに送り込んだといいます。

イスラム過激派の支援組織 ムハンマド・シャラビ代表
「志願者の中には、アフガニスタンでの戦いを経験した人もいれば、ごく普通の若者もいます。
われわれはそうした志願者に対し、シリアへの密入国や、ジハードへの参加を手助けしているのです。」

シリアのもう1つの隣国、レバノンからも、多くの戦闘員が国境を越えています。
街では、アサド政権との戦いで死亡した若者を、殉教者としてたたえていました。
今年4月から2か月間、戦闘に参加したレバノン人が取材に応じました。
23歳のこの若者は、戦闘で足を負傷し、いったん帰国しました。
シリアに厳格なイスラム法に基づく理想の国家を建設したいと、治療が終わったら、戦いに戻るといいます。

レバノン人の戦闘員
「シリアでは、子どもや女性、お年寄りが殺されています。
弱い人を守り、宗教を守るために戦うことが、ジハード・聖戦なのです。」

内部で対立する 反政府勢力

イスラム過激派の台頭で、反政府勢力の中に大きな亀裂が生まれています。
当初は団結してアサド政権の打倒を目指していましたが、国造りの方向性の違いから、苦しい内部抗争に陥っています。
特に激しく対立しているのが、イスラム過激派と世俗的なクルド人勢力です。


シリアと国境を接するイラクにある、難民キャンプです。
イスラム過激派に追われたクルド人、4万人が押し寄せています。
口々に、イスラム過激派への恐怖を訴えていました。



クルド人 難民
「クルド人と分かれば、すぐ殺されます。
逃げるしかありませんでした。」



シリアのクルド人組織 代表
「反政府勢力内で、イスラム過激派が力をつけ、私たちを襲い始めているのです。」

イスラム過激派台頭 アメリカのジレンマ

アサド政権が化学兵器を使用したとして、軍事行動を行うと宣言したオバマ大統領。
しかし、イスラム過激派の台頭でジレンマを抱えています。
去年(2012年)9月まで、オバマ政権でシリア問題の特別顧問を務めていた、フレデリック・ホフ氏。
オバマ政権が限定的な攻撃にこだわる背景には、本格的な介入が大きなリスクを伴うからだと指摘します。

オバマ政権 元特別顧問(シリア担当) フレデリック・ホフ氏
「アルカイダと関係があるイスラム過激派が、シリア国内に根を張り始めていることを、オバマ政権は深刻に受け止めています。
アメリカが反政府勢力を軍事的に支援すれば、結果的に過激派を支援することにつながってしまう。
そのことを強く懸念しているのです。」

イスラム過激派台頭 アメリカのジレンマ

●アメリカのジレンマ 反政府勢力への支援は過激派への援助

アメリカ議会での議論でも、アメリカ空軍がアルカイダの空軍の代わりをするのかという、皮肉な指摘も議員さんから出ていまして、それがやっぱりジレンマなんですね。
アメリカ人の頭にあるのは、アフガニスタンの1970年代、ソ連軍とアフガニスタンのゲリラが戦ったとき、アメリカはゲリラのほうを支援して、武器を渡したんですよね。
結局、でも、その武器がアメリカのほうに向けられて、アルカイダになって、9・11につながって、だからまた同じことが起こるんじゃないか、また牙をむいて、ゲリラたちがアメリカに向かってくるんじゃないかという懸念があって、アメリカはちょっと及び腰になって、支援が十分ではなかったという状況がありますよね。

●軍事行動の影響 最悪のシナリオは?

最悪なシナリオは、まずシリアが暴発して、化学兵器でイスラエルを攻撃すると。
(アメリカの同盟国、イスラエルを攻撃すると。)
イスラエルはその可能性は低いとしながら、すでに防毒マスクの配付を始めてまして、長い列ができてるという報道があります。
それからもう1つは、シリアの政権が崩壊に向かって、シリアの政権が持ってる化学兵器がレバノンのヒズボラに渡って、ヒズボラから攻撃があると。
(イスラム教のシーア派の組織、ヒズボラが、やはりイスラエルを攻撃すると。)
もう1つはシリアの同盟国、イランが同盟国のシリアがあまり激しく攻撃をされるのを見て、耐えきれなくなって暴発すると。
となりますと、イランは、日本に石油を送る重要なホルムズ海峡などを抑える位置にありますから、これが東アジア、そして世界全体の経済に大きな影響を与えるというのが、まあ、最悪なシナリオですね。
(イスラエルも攻撃を受けたら、当然、反撃をすることになりますね。)
そうですね。
イスラエルはあらゆる事態に対応するんだと、首相が明言してますからね。
(アメリカの決断は世界中に影響する重いものになると?)
オバマさんは、本当に重い決断をなさることになると思います。
ただシリアもイランも、これまでの例からいくと、非常に現実的に動いてきてますから、そう暴発の可能性が高いとは思われないんですけれども、戦争ですから、起こってしまうと、読めないことは、つい起こりますよね。

●対話による政治決着のチャンネルは残されてない?

探しますとね、例えばプーチンですね、ロシアのプーチン大統領、アサド政権の支持者ですけれども、プーチンは化学兵器が使われたという、本当の証拠を見せてくれたらね、ロシアも考えるということを言ってます。
それから、イランの新しい大統領、ロウハニさんが、今度、ちょうど今、ユダヤ教の新年に入ったんですけれども、「ユダヤ教徒の皆さん、新年おめでとうございます」というツイッターを出しました。
明らかにイランだって、対話を求めてるんですよね。
ロシアも対話を求めている。
(そういうメッセージですね。)
ですから、アメリカ、ロシア、イラン、みんなね、共通の利益はあるんですよ。
化学兵器に反対なんですよ。
イランは化学兵器の攻撃を、イラクによって受けましたからね、化学兵器は大嫌いです。
それから、アルカイダなみたいな人たちに、シリアを乗っ取られたくないんですよ。
ですから、化学兵器に反対、アルカイダに反対というところには、共通点があるんで、これを一歩、二歩として、なんか交渉のほうに進みだしてほしいですよね。

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