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No.33832013年7月23日(火)放送
検証“ネット選挙”

検証“ネット選挙”

ビッグデータを活用せよ 自民大勝の舞台裏

ネット選挙の解禁を受け、自民党は選挙戦略の一翼を担う独自のチームを立ち上げました。

「おはようございます。」

「おはようございます。」

党本部7階に設置された自民党ネットメディア局の拠点です。
今回、NHKは密着取材を行いました。

ここで毎日分析していたのは、インターネット上の膨大な有権者の声、ビッグデータです。
世論の変化の兆しをマスメディアの報道と合わせていち早くつかみ、選挙の戦略に生かすのがねらいです。
ネットメディア局を率いる平井卓也衆議院議員です。
IT企業や大手広告代理店と協力し、50人態勢のチームを編成しました。

自民党 ネットメディア局長 平井卓也衆院議員
「毎日いろんなことが起きることに対して、世の中がどう考えているかつかむという意味で、ネットは割と早く反応してくれるので、それに対してこちらも早く情報をつかめる。」



ネットメディア局のビッグデータ分析の仕組みです。
有権者がツイッターやフェイスブック、ブログなどに書き込んだ政治に関することばを抽出。
自民党の政策に対する共感や反発が日々どう変化しているのか読み取り、訴える内容に反映させていくというものです。

「一番のキーワードはアベノミクスに関する質問だけ。」

公示の2週間前。
ネットメディア局が検討していたのは、国民の支持を背景に選挙戦で前面に打ち出そうとしていた経済政策、アベノミクスについてでした。
会議では分析を行った担当者からある指摘がありました。

メディア分析会社
「我々も集計してみて、なるほどと初めて思ったんですけど、アベノミクスでデフレを脱却できると思うか?
『思わない』という人が増えてしまっている。」



ネットメディア局が分析対象の1つにしていたのが、ツイッターです。
“経済再生。”
“アベノミクスに期待したい。”
“ボーナスが3万円アップした。”
“アベノミクス効果きたか。”

こうした好意的な声の一方、直前の株価急落の動きを受け、“アベノミクス失敗。”
“株安で景気がよくならない。”
“株価が下がり過ぎ”など、不安の声が上がり始めていました。



NHKもツイッター上のアベノミクスに関する書き込みを分析しました。
株価が急落した先月(6月)13日、書き込みの数に大きな変化がありました。




アベノミクスとともに書かれていたことばです。
丸の大きさが数を表しています。
この日は、失敗ということばが最も多くなっていました。
世論の変化の兆しをつかんだネットメディア局。
アベノミクスに対する不安の声も踏まえて、何を訴えるかが選挙戦の鍵を握ると考えました。

メディア分析会社
「アベノミクスでどうなんだという話が自民党に対する一番の疑問点として提示されていて、どう応えるかっていうことが、ひとつのポイントになると思うので。」

「安倍総理が、たった今、ご到着をなさいました。」

参議院選挙が公示された今月(7月)4日。
安倍総理大臣が改めて強調したのは、アベノミクスの実績や成果を示す具体的な数字でした。

安倍首相
「私たちの政策によって、今年1月、2月、3月、GDPはプラス4.1%になりました。
皆さん、マイナスからプラスに変わったんですよ。
雇用においても、有効求人倍率は0.9。
あのリーマンショックの前に戻ったんです。
民主党政権が3年間でできなかったことを私たちは、半年間でやりました。」

ビッグデータの分析結果は、候補者の選挙運動にも活用されていました。
山梨選挙区の自民党候補、森屋宏さんです。
県議会議員出身で国政選挙は、初めての挑戦です。
今回、ネットメディア局は、すべての候補者に情報端末を配付しました。

「ここに専用のアプリが入っています。」

自民党ダッシュボードと名付けられた独自の取り組みです。
ビッグデータから世論の変化の兆しをつかみ、何を訴えれば有権者の支持を得られるのか。
毎日レポートとして届けられます。

自民党 森屋宏候補
「どうもありがとうございます。」

森屋さんが選挙戦で懸念していたのは、地域の有権者の多くが景気が上向いている実感を得ていないことでした。

「地域経済のことを懸命に考える人が必要であります。」

そんな森屋さんのもとに、この日届いたのが地域経済に言及したレポートでした。

自民党 森屋宏候補
「日銀が7月4日に発表した地域経済報告。
生産や雇用が好調に回復している。」

「実績として訴えやすい?」

自民党 森屋宏候補
「こういう数字をいただけると、ありがたいですよね。
直近の数字をこういう形でいただけると、街頭演説にもいかせますよね。」

「それでは森屋候補本人よりごあいさつをさせていただきます。」

早速、演説の内容に盛り込みます。

自民党 森屋宏候補
「こんにちは。
お暑い中、このように大勢の皆さん方お集まりをいただきましてありがとうございました。
日銀なんかの地方の経済の状況報告なんか見ますと、だいぶその報告はよくなってきた。
7月4日に報告がございましたけれども、全国9地区の中で東北を抜いたあとの8地区は景気が上向いてきた。
製造業の現場が上向いてきた。
あるいは雇用もよくなってきた。」

自民党 森屋宏候補
「通常だと新聞とかいろいろなもので入手していかなきゃいけない情報もありますけど、こういう形で送られてくる、絞られた形で送られてくるから非常にありがたかった。
話しているうちに徐々にわかっていただけたと手応えはありました。」

アベノミクスを前面に掲げ、確実に支持を広げる自民党。
ネットメディア局ではビッグデータの分析からある懸念材料をつかんでいました。

大手広告代理店
「『原発再起動』ということで言うと、2000から4000と倍になっている。」

原発再稼働についての書き込みが急増したのです。
きっかけは、この前日。
原発の運転再開に向けて、地元自治体を訪問した東京電力が強い反発を受けたことでした。
NHKの分析でもこうした動きを受け、原発に関する書き込みが増えていたことが確認されました。

詳細に分析すると原発とともに自民党や是非などのことばが多く語られ、自民党の原発政策の是非に関心が高まっていることがうかがわれました。
安倍総理大臣は選挙前G8サミットのあとの記者会見で、原発の再稼働について次のように述べていました。

安倍首相
「原発の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ねます。
委員会が新たな基準に適合すると認めた場合には、その専門的判断を尊重して、再稼働を進めていきます。」

ネットメディア局は再稼働を進めるということばだけが独り歩きすることに神経をとがらせていました。

「再稼働申請の時期って、これから断続的に、ですよね。」

「明日以降の党首討論でも、ちょっとフォーカスされて、クローズアップされる可能性がこういったところからあるんじゃないかと思います。」

「変に突っ込まれた時に『いや再稼働しないといかんでしょう』みたいな風に思わず言ってしまったりすると、そこも捉えられちゃうということです。」

官邸のメンバーも出席しているこの会議。
より丁寧に党の考えを説明することにしました。

自民党 ネットメディア局長 平井卓也衆院議員
「すぐに再稼働するかしないかという議論になってしまうと、これは白か黒かみたいな話になるんですけど、要するに誤解されないようにまず“安全第一”だということを徹底しようと。」


翌日、安倍総理大臣は各党の党首が集まるテレビ討論に臨みました。
野党からは原発の運転再開に反対する意見が相次ぎました。

共産党 志位委員長
「事故の収束ができていない。
事故の原因の究明もできていない。
こういう下での再稼働というのは私は論外だと。」


社民党 福島党首
「原発の推進、原発再稼働、原発輸出をすべきではありません。」




安倍首相
「安全第一で考えなければなりません。
その中で原子力規制委員会において、厳しい安全基準を作っている。
この基準を満たさなければ、我々はもちろん再稼働はしません。」

安全基準を満たさなければ再稼働しないという表現で、安全を最優先する姿勢を強調しました。
自民党優位で進む選挙戦。
ネットメディア局がてこ入れを図ったのは、接戦が続いていた選挙区でした。

「各議員のネット戦略の通信簿と言いますか。」

この日、取り上げられたのは岩手選挙区。
インターネット上で自民党候補がどれほど話題に上っているかを分析し、支持の広がりを探りました。
ツイッターの書き込みの推移です。
最も関心を集めていた候補者は、多い日で1日およそ300件。
一方、自民党の候補者は80件程度でした。
ビッグデータの分析から候補者が関心を集めていないと考えた自民党。

安倍首相
「恐らく日本中で最も厳しい選挙区が、この岩手の参議院の選挙区であります。」

巻き返しを図るため、総理大臣の遊説では珍しい新たな取り組みを行いました。
安倍総理大臣の岩手県内での演説をネットで中継したのです。
視聴したのは1万3,000人余りに上りました。



この日、自民党候補に関する書き込みは472件に急増。
初めて他の候補を上回りました。
結局、自民党は今の選挙制度の下で最も多い、65議席を獲得しました。

「山梨選挙区、森屋宏当選確実です。」

今後もビッグデータ分析の活用を続けることにしています。

自民党 ネットメディア局長 平井卓也衆院議員
「これだけ色々なものがインターネットによって変わってきている中で、政治だけが変わらないっていうことはありえない。
今回は多少装備も他の政党よりは分厚くやってたと思いますが、そういうノウハウを積み上げてきたので、今後ともそういうものを積み上げていきたい。」

ビッグデータ分析 政治はどう変わる

ゲスト御厨貴さん(東京大学名誉教授)
ゲスト佐藤哲也さん(静岡大学准教授)
ゲスト徳橋達也記者(政治部)

●50人態勢で自民党はビッグデータを分析 どう見るか?

御厨さん:やっぱりね、すごくやっぱ戦略的にうまいと思いますね。
大体、自民党はそれでも、今まででも、ずいぶんいろんな細かい政策について、みんながどう思ってるかというのは、分析はしてきたんですけれども、大体は経験と勘です。
これでいけるなというふうにやってきたのを、今度はそれを全部データに変えようと。
つまり、確かな数字ってものを出してきて、それによってどう動くかというのを考えるというのは、あれだけ徹底してやれたということは、私はやっぱり、これはすごいことだと思いますね。
(現場の候補者にとってみれば、ありがたいということばがあったが?)
ありがたいと同時に、やっぱりあれに頼っちゃうだろうなと。
やっぱり来たら、それで、あっ、いけるんだと、こう思うでしょう。
だから、あれはねすごくいいとは思うんですが、ただやっぱり、基本的に、あれにずっと頼っていくと、投影型というかな、要するにやっぱり上の本部が、全部支配していくような選挙になるだろうねっていう予感はしますね。

●ネットと政治が専門の佐藤さんはどう見たか?

佐藤さん:そうですね、政治のマーケティング化が、より一層進行していくだろうなということがよく分かるビデオだったと思います。
ただし、今回の自民党の選挙に関して言えば、自民党がかなり圧勝するということがいわれておりまして、実際そういう結果になったということで、今回のネットを使ったさまざまな取り組みが、どこまで勝利に貢献したのかということは、ちょっとまだ分かりませんけれども、いずれにしろ大変な努力をして、確実に勝利しようという、試みを感じた取り組みだったと思います。

●優勢が選挙前から伝えられていた自民党 なぜビッグデータを活用?

徳橋記者:安定した政権運営を目指す自民党にとっては、今回の参議院選挙というのは、なんとしても勝ちたい選挙であると。
同時に今、お話がありましたように、事前から優勢が伝えられていましたので、大きな失点をしなければ、勝利が見込める選挙だったわけなんですね。
このため、いち早く不安や懸念の芽を摘み取る、いわゆるリスクコントロールが選挙戦略上、重視されまして、ビッグデータの分析と活用に乗り出したというわけなんですね。
情報の確かさに多少の問題はあっても、結果として、世論の変化の兆しを先取りすることができれば十分だと考えたのだと見られます。

●アベノミクスや原発再稼働 世論の微妙な変化を受けて対応?

御厨さん:そうですね。
(そうした選挙戦の在り方の影響は?)
もちろん、それは日々変わっていく、要するに民意にいかに的確なことばを伝えていくかということをね、戦略としてはすごいと思いますよ。
ただ、やっぱりそれが、例えば今日(23日)出てた原発の問題ですね。
あれ、原発を要するに、最初は肯定的に言おうとしたのを、安全第一ということを言わなくちゃいけませんよねというんで、要するに今度は否定形で捉える言い方に変える。
もちろん、おんなじことの裏と表なんだけれども、うまいと思うけど、しかし、それが本当に選挙後も、本当にそれでいくのかなぁという感じは持ちますからね。
そうすると、そこは下手をすると、この争点隠しというか、それで続いちゃうという可能性もあるわけです。
だから、そこのところをどう見極めるか。

●選挙期間中に政策議論を深めていくことが望ましい?

御厨さん:望ましいんですよ。
だからあれを受けて、与野党が単に原発再稼働というのを、反対、賛成と、それこそ言うだけじゃなくて、じゃあ、具体的に現場でどうするのというところまで議論がいけばいいんですけども、あそこはうまくやったねという感じのところで、終わっちゃってるという感じなんですよね。
そこが問題だろうと思いますね。

徳橋記者:例えば自民党の今回の選挙の戦いぶりについてお話があったんですけれども、自民党としては、このビッグデータの活用というのは、中長期的なねらいもあったと言われるんですね。
大きな流れで見ますと、自民党の従来の支持基盤といいますのは、弱まっていく傾向が続いていまして、新たな支持層をどう掘り起こしていくかという課題を抱えているんですね。
こうした課題を克服する手段として、ビッグデータを活用していきたいというねらいもうかがえます。
ネット選挙が解禁されたのを機に、ネットと親和性の高い若い世代ですとか、大都市圏の無党派層、そういった意識や行動を探って、将来的には蓄積した情報をもとにして、政策を立案して、支持を得ていくということを見据えていると思います。

●新たな支持層の発掘 ネットを通してできるか?

御厨さん:いや、すごくね、だから自民党にとっては、無党派層をなんとしても取り込みたい、これ、全部今までだと、野党のほうの風でいっちゃうと。
だから、風できたものをしっかり受け止めるためには、今回みたいにビッグデータを分析して、ちょっとした変化にもついていけるような、それでそれを最終的にはまあ、囲い込みたいと。
だけども、普通の今までの自民党がやってきた組織というのは、確かにハードに囲い込めるんだけど、これはソフトですからね、風がまた変わると、ふっと変わる。
だから、囲い込むっていうことは恐らく不可能なんだけど、しかし、自民党というのはやっぱり、なんか手応えがないと嫌な政党ですから、そこでね、この無党派層を取ったという手応えが欲しい、そのために頑張っているという様子は見えますね。

●ビッグデータの分析 どこまで世論を反映しているか?

佐藤さん:今はすでにいろんなソーシャルメディア、ツイッターとかフェイスブックとか、データがありますので、それを分析しようということになりがちですけれども、そもそも、そういったソーシャルメディアを使っている人はどういった人なのかということに関する分析が、必ずしも進んでいるというわけではありませんので、そういった人たちの声を、すぐさま世論であると、短絡的に結び付けるということは、かなり危険なことで、分析、あるいはマーケティング的にも精査していかなければいけない課題は多いと思っています。

●つぶやかれたキーワード そのニュアンスはどこまで分かるか?

佐藤さん:ニュアンスの分析というのは、ある程度技術もありますけれども、なかなか難しいところも多いのが事実です。
やっぱり人によって、つぶやきやすいことば、つぶやきやすいテーマというのがありますので、本当に必要な政策課題なのかどうかということとは、無関係に、人々がつぶやきやすいことをつぶやいているといったような実態も、現実的にはあります。

●有効なデータとなりうるために必要なことは?

佐藤さん:そうですね、本当に有効なデータとするためには、そういったつぶやきをしている人が、どういう人なのかということを分析したうえで、そこに見えない、つぶやかないけれども、その背後にいる無党派の動向をしっかり分析するということが、選挙の勝利のうえでは重要になってくるというふうに思います。

●アメリカでは相当、精緻な分析を行っているようだが?

佐藤さん:そうですね。
アメリカの大統領選挙は、特にお金がたくさん使えるということもあって、かなりの細かい分析を、もともと持っている有権者のデータを、細かく分析して、有権者ごとに異なる方法でアプローチして、支持を獲得するという競争が、激しく行われていることはよく指摘されていますので、今後もそういった方向に日本の選挙が、進んでいる可能性もあると思います。

●つぶやきなどのビッグデータを超えて有権者の情報とつなぐ必要が?

佐藤さん:そうですね、そういう意味では、有権者の、あるいは普通の人のいろんなデータが今後、つながっていって、もちろんプライバシーの問題もありますけれども、つながっていったうえで、人々が何を考えているのかということが、ネットを通じて明らかになる時代ということが、すぐそこまで来てるというふうに言えると思います。

“ネット選挙”解禁 候補者たちの戦い

今月11日、インターネットで中継された演説会です。
自民党の比例代表候補、伊藤洋介さん。
かつて、東京プリンという名前で、タレント活動していました。
みずからをネット候補と称し、選挙運動のほとんどをインターネットで行うと宣言しました。
仮想空間のキャラクターにふんして、演説を見守る視聴者たちに支持を呼びかけました。

自民党 伊藤洋介候補
「僕はネットで、ネットで支持を訴え、必ず当選ラインと言われている10万票を集めてみせます。」




自民党 伊藤洋介候補
「おはようございます。」

伊藤さんの選挙事務所です。
ネット選挙が中心となるため、自民党本部から送られてきたパンフレットやポスターは、使う機会がほとんどありません。

「配らなくていいんですか?」

自民党 伊藤洋介候補
「配りますけど…。
ただ5,000も、はけるかな?
はけないですよね、たぶんね。」

タレント活動などを行ってきた伊藤さん。
政治家になって、日本のエンターテインメント文化を海外に売り込み、大きな産業に育てたいと考えました。
支持基盤がない伊藤さんは、フェイスブックやツイッターを通して、若い人たちに支持を呼びかけました。

自民党 伊藤洋介候補
「支持母体がなくても、知名度がなくても、なんとか志さえあれば、それは若い人たちに賛同してもらえれば、支持をしてくれた人たちの声を永田町に届けることができるんだ、という実例を作りたかったということです。」

伊藤さんが支持を広げるために協力を仰いだのが、芸能界の友人でした。

この日、伊藤さんは、あるアーティストのライブ会場を訪ねました。
歌手の浜崎あゆみさんです。
浜崎さんのツイッターの読者、フォロワーは88万人に上ります。
伊藤さんは、浜崎さんに自分を応援する書き込みをしてほしいと、直接、依頼することにしました。



ライブ終了後、浜崎さんがツイッターに投稿した写真です。
古くからの友人なので、よろしくお願いします、と書き込んでくれました。




この書き込みを受け取ったのは、88万人。
共感をした人は、リツイートという機能で、書き込みを、それぞれの友人に送ることができます。
しかし、実際にリツイートをしたのは、全体の0.1%、およそ1,000人でした。

自民党 伊藤洋介候補
「どのぐらいの票になって、結果として返ってくるのかは分からない。
つかみにくい、つかみにくい。
それは、ネットの世界特有ですけど。」

この日、伊藤さんを呼び出したのは、自民党ネットメディア局の福田峰之衆議院議員です。
党の分析に基づき、政策や、それを実現する熱意を訴えるべきだと指摘しました。

自民党 ネットメディア局次長 福田峰之衆院議員
「通るには、相当気合を入れてやっていかないと、正直厳しいと思います。
政治家として、何をやりたいのかということが、はっきり見えるかというと、現況のウェブ上の中では、残念だけど、見られてないんじゃないかと思ってるんですね。」

自民党 伊藤洋介候補
「いろいろとご心配をおかけしまして、ありがとうございます。」

自民党 ネットメディア局次長 福田峰之衆院議員
「頼むよ、勝ってもらわないと困るんですよ、関わる以上は。」

自民党 伊藤洋介候補
「よろしくお願いします。」

自民党 ネットメディア局次長 福田峰之衆院議員
「ほんとに。」

その後、伊藤さんは、ネット討論会などで政策を訴え続けました。

自民党 伊藤洋介候補
「このままでは、クールジャパン戦略というのは成功しません。
それを“集中”と“選択”。
これに関しては、もっと徹底的にお金をかけよう。」


しかし、支持は広がらず、落選。
獲得したのは、目標の10万票を大きく下回る、3万7,000票でした。

民主党の候補者の中にも、ネット選挙で苦戦を強いられた人がいました。
比例代表で立候補した、樽井良和さんです。
かつてない逆風の選挙戦となった、民主党。
樽井さんは、誰もやったことがない選挙をすることで、注目を集めたいと考えました。
三輪バイクで全国を行脚。
その様子をネットで中継しました。

民主党 樽井良和候補
「福島の復興なくして、日本の復興なし。
一日中、福島を回らせていただいています。」



バイクで移動しながら、その地域が抱える課題について訴えます。

有権者とのやり取りも、すべて中継しました。

民主党 樽井良和候補
「ストレスとか、悲しみとか、そういう中で自殺してしまったりとか…。」


♪「やったるいやったるい」
♪「朝から晩までやったるい」





さらにホームページでは、野田前総理が歌う応援歌「やったるい音頭」を流すなど、奇抜な仕掛けも用意しました。





民主党 樽井良和候補
「正直、いろんな支持率を見ても、厳しいと思うんですね。
ただ斬新なことをして、ぜひ分かってくださいというのは、全力でやろうと思っています。」


「こんばんは、夜分にすみません。」

しかし、ネットでの反応は、厳しいものでした。
この日、樽井さんは、フェイスブックに寄せられた意見への対応に追われていました。

きっかけは、注目を集めようと作った、このイラストでした。

民主党 樽井良和候補
「勝ちすぎたら、ダメだよ。」

自民党への批判票を獲得しようという、ねらいでした。
ところが、辛辣(しんらつ)な意見が殺到。
ネットの怖さを思い知らされました。

民主党 樽井良和候補
「“かったるい”と書かれてますね。
民主党の悪口、僕への悪口。
書いている人は、95パーセントが悪口です。
何か言えば、また倍返しみたいな。」

結局、樽井さんは落選。
獲得したのは、1万3,000票でした。

“ネット選挙”解禁 新たなうねりも…

一方、ネット選挙が生み出したムーブメントもありました。
緑の党グリーンズジャパンの比例代表候補、ミュージシャンの三宅洋平さんです。
演説と音楽を融合させた、これまでにないスタイル。
訴えたのは、有権者の政治参加でした。

緑の党グリーンズジャパン 三宅洋平候補
「俺が一人でやるんじゃないよね。
俺を押し出した、みんながやること。」

無名にもかかわらず、数千人規模の聴衆を集めた三宅さん。
なぜ、支持は広がったのか。
多くの候補者が一方的に情報発信する中で、三宅さんは、選挙戦序盤から、有権者との対話に力を入れてきました。



最も有効なツールだと考えていたのが、手軽にやり取りができるツイッターです。
脱原発など、自分の主張に対して寄せられる声に、できるだけ早く返信するように心がけてきました。
少しでも時間ができれば、どこでもツイッターです。

緑の党グリーンズジャパン 三宅洋平候補
「思いが入っているやつは無視できないし、全ての空き時間は、ツイッターに費やしている。」

選挙戦中盤、三宅さん支持のうねりを起こしたのは、その主張に共感した有権者でした。

これは、三宅さんのプロフィールや、演説の動画などを集めた応援サイトです。
サイトを作ったのは、三宅さんのツイッターの読者、フォロワーの1人でした。
このサイトが、多くの人の目に留まることになります。



その広がりを、NHKのビッグデータ分析で見てみます。
最初に、このサイトの存在をツイッターで投稿したのは、およそ280人。
瞬く間に拡散し、1週間で88万人に届きました。



三宅さんを知った人たちは、さらに動きました。
演説の様子を、スマートフォンなどでネット中継したのです。
多いときは、15人以上が同時に中継し、数十万人が視聴したと、みられています。
その一方で、三宅陣営は、選挙運動に関して指摘を受ける場面もありました。
事前に承諾を得た有権者以外に、メールを送ったことが問題だとされたのです。
選挙戦最終日。
東京・渋谷で行われた演説には、多くの人たちが集まりました。

緑の党グリーンズジャパン 三宅洋平候補
「日本の参議院選挙から、世界の歴史を変えるんだよ。」

有権者が有権者を巻き込んだムーブメントは、最後まで広がり続けました。

緑の党グリーンズジャパン 三宅洋平候補
「みんなを巻き込んでいくために、ネットは、すごくいいツールになっている。
より全員が話し合いに参加できるために、とても必要な技術だったと思うし、これだけの人がついてきている。
これは新しい政治力なんで、それをしっかり組織化していく。」

緑の党グリーンズジャパン 三宅洋平候補
「みんな、本当にありがとうね。」

三宅さんが獲得した票は、17万7,000票。
当選はならなかったものの、比例代表で議席を獲得した政党では、当選圏内の得票でした。

“ネット選挙”解禁 政治はどう変わる

ゲスト山下和彦記者(経済部)

●無名に近かった人が、17万7,000票を獲得しましたが?

御厨さん:すごいですよね。
やっぱりこれ、3人見てて、この3人目の三宅さんというのは、やっぱり目線も、要するに相手方と同じ目線で、しかもそれに訴えかけて、彼らを引き込んでいこうっていう、そういう、何と言うかな、積極性があり、前のお二人は、結局ツールに使われちゃったっていうか、それで結局、感動を呼ばなかったんですね。
これだけの人数がね、やっぱ最後は参加するって、すごいことだと思いますね。
キャラがたってるという感じがするし、やっぱりちょっと、1世紀前の、われわれの世代から言うと、シンガーソングライター的な感じもあったりして、だから、古い世代にも、これ受けたでしょうし、新しい世代は、これはこれでという形で、なんか、すごい掘り起こしをやったなって感じがしますね。

●改めて、ネットのパワーというのを感じますね

佐藤さん:やっぱり、三宅さんの持ってるメッセージ、あるいは、そのライフスタイルというか、持ってるパーソナリティーみたいなものが、大変うまく調和して、特に、ネットを中心に使っている若い人に、すごい刺さったんだと思うんですね。
それが、より人々の共感を生んで、つながっていったということがあると思います。
今まで、どうしても政治と言うと、利益や、あるいは政策を中心に考えていこうというものがあったと思うんですけれども、今回、三宅さんの取り組みを見てると、共感と言うか、感情に訴える部分がかなりあると思いますので、そういう意味では、それが成功につながった理由じゃないかというふうに思っています。

●NHKが独自に分析したビッグデータ 三宅さんの場合

山下記者:そうですね、私たちはツイッターの分析とともに、ネット上のさまざまな動きを、この1か月、見続けてきました。
その中で最も目立った存在が、三宅洋平さんだったんです。




その三宅さんのツイッター分析の結果が、こちらです。
選挙期間中に、三宅さんが投稿した選挙関連のツイートは、978件。
1日あたり50件以上で、候補者全体の平均のおよそ5倍です。
また、投稿をほかの人が紹介する、リツイートの件数は3万4,000回。
これは、すべての候補者や党首の中で、最も多い数なんです。
投稿1件あたり、どれだけリツイートされたかを表した拡散力で見ますと、34.8になりまして、三宅さんのツイートは、平均30回以上、紹介されていたことになります。
こうした拡散が、さらに関心を呼び起こしまして、三宅さんのフォロワーは選挙期間中、1万8,000から、3万6,000へと倍増しました。
三宅さんは、こうしたネットの特性を生かして、多くの人にメッセージを届けていたことがデータから分かります。

●三宅さんの情報が、これほど広く速く拡散した理由は?

佐藤さん:そうですね、もちろん戦略的にリアルな活動、フェスのような活動と、ネットでの活動をうまく融合的にやったということ、あとはヴィジュアルイメージを大変重視した選挙戦を行いましたので、映像のクオリティーが大変高いということも大きな要因だと思います。
ですけども、それ以上に三宅さんの政治に対する態度であるとか、そういったものが既存の大手政党が、どうしてもよっている、なんか日本の政治文化みたいなものを大きく揺さぶるような、もっと若い人はそういう政治を求めているんじゃないんだ、ということを、うまく形にしたようなところがあって、そういったところのメッセージが若い人に受け入れられたんじゃないかなというふうに考えています。

●各党の党首の発信力の比較

山下記者:各党党首の拡散力を比較してみます。
こちらです。
最も大きいのは、共産党の志位さんで、234。
次いで、安倍総理大臣の195となっていまして、この2人が、ほかの人に比べて、ぬきんでています。
共産党の志位さんは、リツイートされた件数が非常に多く、組織をあげて情報の拡散に取り組んだことが、データからも見て取れます。
一方、安倍総理大臣は、リツイートの回数は志位さんに比べて少ないものの、15万のフォロワーを持っていますので、自分のメッセージを効率的に拡散することができたと言えます。

次に、政党別に党首と候補者の投稿件数を見てみます。
選挙期間中、共産党がほかの党を引き離しています。
ほとんどの候補者が、毎日かなりの件数を投稿し、全体を押し上げました。
それに比べまして、民主党や日本維新の会は、数多く投稿したのが、ネットを頼りにした一部の候補者に限られていまして、共産党に及びませんでした。
大勝した自民党も、投稿件数はそれほど多くありませんでした。

最後に、党首や候補者の投稿に、どのような単語が多く含まれていたのか見てみます。
円の大きさは、それぞれの単語が書き込まれた回数を表しています。
最も多かったのは、街頭演説。
このほか、応援や写真といった単語も目立ちます。
それに比べまして、政治課題に関する単語は、20位内に原発があるくらいなんです。
今回の選挙で、ツイッターの投稿は、政策の発信よりも、日程の告知や運動の紹介に利用されるケースが多かったことがうかがえます。

●今回のネット選挙が有権者に与えた影響を どう捉える?

徳橋記者:そうですね、NHKの出口調査を、まずご覧いただきたいと思うんですが、ネットによる選挙運動を投票の参考にしたかどうかを尋ねた結果です。





参考にしたと答えた人は、合わせて16%にとどまっているんですね。
投票率が低かったことと合わせまして、全体としては、ネット選挙が有権者の投票行動に与えた影響は限定的だったと言えます。




ただ年代別に見てみますと、こちらです。
20代で28%、そして、30代で23%の人が参考にしたと答えていまして、やはり若い世代ほど、ネット選挙を活用していたことが見て取れます。
今後、選挙を重ねていくことで、VTRにあったような選挙運動の手法が浸透していって、候補者も有権者も自分なりのやり方を身につけていけば、日本の選挙でネットの影響力は大きくなる可能性は十分にあると思います。

●なぜ政治家の中では、告知にとどまる“つぶやき”が多かったのか?

佐藤さん:まず、大前提として、ネット選挙が解禁になったことで、選挙期間中に、かなり政策論議が高まるんじゃないかという期待が、かなり高かったのも事実なんですけれども、一方で、日本の、特に参議院選挙は政党選挙ですので、政党と政党の戦いですので、政党の主張する政策というのは、あらかじめ決まっておりますので、そこを改めて候補者がアピールするというよりは、自分たちは特定の政党の候補者であるということを、声高に主張する期間が、むしろ選挙期間だということなんですね。
ですので、ある程度は、既存の候補者の選挙戦のスタイルからすると、そういった告知であるとか、街頭演説のことを、みんなにお知らせするといったのが中心になることは、やむをえないと思うんです。

●ビッグデータ活用した自民党 安倍総理大臣のフォロワーは15万人

御厨さん:15万人いるんですよね。
(積極的に発信を続けているねらいというのは、どうご覧になりますか?)
これはやっぱり、安倍さんは、前に内閣を率いたときに、やっぱり、その前の小泉さんがやったようにテレビに出てきて、一種のワンフレーズで、これでワンフレーズで世論を引き付けて、党内の反対派を抑えていく、みたいな手法を取ることができなかったんですね。
だから、彼はやっぱりテレビではだめだったけれども、やっぱりその間にずっと考えて、次はネットだと。
だから、このネットを使うことによって、彼自身が今言われてるのは、とにかく、自分でツイートしてるわけですね。
そこでいっぱい、自分の言いたいことを言って、それで、その15万人いる人たちの支持、これを引き付けて、これから恐らく、党内にもちろん、反対派が出るような政策課題をやっていかなくちゃいけない。
それを抑え込むためには、やっぱり、これだけの味方がいるんだってことを、彼としては示したい。
だから、小泉さんがテレビでやったことを、恐らく、安倍さんは、このネットでやろうとしているんだろうという感じがしますね。

“ネット選挙”解禁 動き始めた有権者

講師
「さて、ネット選挙、何ができるのかというところです。」

公示直後の週末、若者たちが政治への関心を高めようと開いた勉強会です。

講師
「ホームページを更新してはいけない、フェイスブックを更新してもいけない、ツイッターもやっちゃいけないというのが、今回から出来るようになりました。」

参加したのは、20代を中心とした、大学生や会社員です。

喜屋武佑香さん
「知るための第一歩としては、考えるんですけど。」

その1人、喜屋武佑香さん、27歳です。
ネット選挙の解禁を機に、少しでも政治に関われればと、参加しました。


喜屋武佑香さん
「もっと、みんなが自分のこととして学べるといいなと思いました。
そして、もっと勉強したいなと思いました。」

喜屋武さんにとって、以前は、政治は身近な問題でした。

「ここは?」

大学生だった9年前、構内に、アメリカ軍のヘリコプターが墜落しました。
喜屋武さんは、当時は、基地問題を解決してほしいと政治に期待していました。


「まさに、この木ですね。」

喜屋武佑香さん
「そうですよね。」

しかし、基地問題が解決する道筋は見えず、次第に関心が薄れていったといいます。

喜屋武佑香さん
「当たり前の距離に基地があって、日常になってしまっていて、こういう沖縄の抱えている問題というのは、ぜんぜん話してないですね。
自分のことばかりになっていたと思います。」

ネット選挙の解禁で、改めて政治に関心を持った喜屋武さん。

喜屋武佑香さん
「結構アップされてるんですね。」

早速、ネットで、普天間基地の移設問題について調べてみました。
自民党の沖縄県連は、基地の県外移設を求めると主張しています。




一方、自民党は、県内の辺野古への移設を掲げて、ねじれが生じています。
喜屋武さんは、地元の候補者が、県外移設にどこまで真剣に取り組もうとしているのか知りたいと考えました。

喜屋武佑香さん
「県連と本部がねじれてる移設問題については、どうするのっていう。
そこが疑問ですね。」

まず、候補者のホームページをチェックしました。
県外移設については、アベノミクスなどに続いて、4項目目。
詳しい内容は、書かれていませんでした。
さらに、ネット上で候補者の演説を見つけました。



候補者 演説
「雇用を増加させ、そして県民の所得を増加させていく。
これが強い決意でございます。」

ここでは、県外移設について、一切触れていませんでした。

喜屋武佑香さん
「こんばんは。」

喜屋武佑香さんの友人
「こんばんは。」

喜屋武さんは、感じた疑問について友人と話しました。

喜屋武佑香さん
「結局は(県内移設が)決まっていけば、(主張が)ひっくり返る。
『本部の意向には逆らえませんでした』と言わないまでも、そおっと。」

喜屋武佑香さんの友人
「フェードアウト。」

ネットを使って、候補者に基地問題について問いかけることもしました。
喜屋武さんは、これからも政治に関心を持ち続けたいと考えています。

喜屋武佑香さん
「政治に対する知識も、やっぱり。
政治も選挙のスタンスを下げるんじゃなくて、みんなが政治に対する知識を上げた方がいいと思います。」


自分たちの声を政治に届ける。
それを後押しする動きも、有権者の中から起きていました。

逆選挙というサイトです。
候補者や政党への批判の声を募り、政党のツイッターに送る仕組みになっています。
有権者から寄せられた書き込みです。



自民党への批判
“憲法改正の前に解決しないといけないことは、山ほどある。”




民主党への批判
“安倍総理の批判ばかりで、民主党の景気対策は何なんでしょうか?”

平田雄紀さん
「こんにちは。」

このサイトを作ったのは、システムエンジニアや、大学の情報科学の研究者など、4人です。
ネット選挙解禁に向け、半年間、準備を続けてきました。

平田雄紀さん
「『国民の声に耳を傾ける』と、いつも言っている政治家・議員に、これだけの不満が集まっている。
今まで向き合えてなかったものに、きちっと向き合っていただくという、変化をもたらしたい。」

今回の参議院選挙で、彼らのサイトを通じて政党に送った意見は、300以上。
この取り組みをきっかけに、政治家との双方向の意見交換が行われれば、有権者の政治参加が進むと考えています。

平田雄紀さん
「私の意見が、どこかで消えてなくなっているような感覚が、今の議会制民主主義・間接民主主義への不信につながっていると思う。
期待値が少ないので言わない、言わないから変わらない。
このスパイラルを、まず断ち切ることが、直近の目標になっていくと思う。」

ネット選挙の解禁は、有権者どうしの政策論議を深めることにもつながっていました。
北海道の農家、今井貴祐さん。
TPPに反対の立場をとっています。
日本のTPP交渉参加を間近に控えた、今回の選挙。
今井さんは、投票に向けて、自分の考えを整理するために、インターネット上のサイトで議論をしてきました。
今回の選挙から、有権者も、ネット上で、政党や候補者への支持を表明できるようになりました。
今井さんは、政党や候補者のTPPに対する姿勢の違いを議論し、投票の参考にしようとしていました。

TPP反対 今井貴祐さん
「意見交換をしていると、そうじゃない考え方とか、可能性とかもあるんだなと気付くチャンスではあると思う。」

今井さんの書き込みに、頻繁に返信する人がいました。

TPP反対 今井貴祐さん
「千葉県の米農家の人ですね。」

TPPに賛成する農家でした。
今井さんとネットでやり取りをしている、千葉県の橋本英介さんです。
90ヘクタールの水田で米を作る、大規模農家です。
日本の農業の未来を考えるうえで、今回ほど重要な選挙はないと、議論をしてきました。

TPP賛成 橋本英介さん
「参議院選に向けて、しっかり、今、話題が低迷がちなTPPに対して、もう一度、農業者間の中で話を盛り上げて、やっていこうじゃないかということがあったんですけども。」


2人が行った、やり取りです。

今井さん(TPP反対)
“性急に判断することなく、国民議論を経てから、新たな枠組みを形成していくという戦略では、ダメなのでしょうか?”




橋本さん(TPP賛成)
“TPPに参加しないとしても、10年後の日本の農業は、なんらかの改革は必ず必要だと感じています。”

こうした議論を参考に、投票した2人。
今後、さらに多くの農家を巻き込み、議論を広げていきたいと考えています。

TPP反対 今井貴祐さん
「ネットを使って、今回のTPPに関してのやり取りの中で、(賛成する人の)考え方に出会えたというのも、自分の中でも、これから先、もしかしたら、大きな変化のきっかけになるかなと思います。」

TPP賛成 橋本英介さん
「今までは、どこかを介してとか、団体を介して、その意見が中央に上がっていくようなシステムだったと思う。
そうではなくて、末端の本当の現場の声を、直接吸い上げることが、本当に国政で出来るならば、もっと飛躍的に、いい方向に進むのではないか。
そういう期待もありますよね。」

“ネット選挙”解禁 有権者は

●自分の声を届ける機会があることで、有権者に変化が?

御厨さん:今日の今のVTRを見ていると、まあ、政治をもう一度考えようという喜屋武さんのケースもあるし、それからやっぱり、われわれの願いとか気持ちが、どこかで消えてるのを、やっぱり、どこかできちんと伝えようというね、そういう話も出てきますし、いちばん最後の、やっぱりあれは、北海道と千葉の、普通だったら出会わない人たちが出会って、そこで、やっぱりTPPを中心とする議論を深めているというね。
だから、瞬間にして、いわゆるツイッターの世界とか、そういうのとはちょっと違った、やっぱり、じっくりとそれを考えていく要素っていうのを、実はネットって持ってるんだねってことを、つくづく感じさせますよね。
ですから、これによって、要するに、向こう側からの一方的な発信ではなくて、われわれのほうから、やっぱりどうなの?っていうことを聞いていける。
そういう意味で、盛んに今日も出てましたが、双方向っていうのは、ありうることだと思いますね。
(政治の在り方を、有権者の側から促すような感じもしますね)
単にデータだけではなくて、データ、あるいは量っていうのが、質に変わっていくっていうところが、すごく見える感じがしますけどね。

●この変化をどう見る?

佐藤さん:そうですね、私は今回のネット選挙は、あくまで初めての取り組みですので、今後の政治の在り方が大きく変わっていくチャンスだと思うんですね。
というのは、結局、ネット選挙というのは、選挙期間中、限られた2週間程度の時間にネットが使えるという話ですので、むしろ大事なことは、それまでの間の政治活動の中で、どれだけ有権者と政治家が向き合って話を深めていくのか、そこでできた信頼関係を、選挙のときに票にしていただくというのが、本来の民主主義の在り方だと思いますので、そういう意味では、ふだんの政治活動の中で関係を育てていって、その関係を、選挙のときに収穫するような、収穫のツールとしてネット選挙を扱えるということですと、ふだんのネット政治の環境の中で、関係をどう作っていくのかということが求められてくると考えています。
(有権者も、ふだんから議論に向き合うとか、あるいは政治家に質問を投げかけるなどの、そういったインセンティブが働きやすい?)
そうですね、全く、そのとおりだと思います。
今回、特に農家の方の取り組みのように、いろんな、こういう難しい話を、自分の利害に関係するようなことも含めて、ちゃんとずっと冷静に話し合っていくというようなことが、大変重要になってくると思いますので、ぜひ有権者の中でも多様性を認めて、いろんな方と語り合っていって、合意を形成していくというようなことが進むようなことになれば、日本の民主主義もいい方向に進んでいくんじゃないかと期待しています。

●ネットに向き合う今の政治家の姿勢 全体的にどういうもの?

徳橋記者:現状としては、双方向のやり取りができるというネットの特性を生かしていこう、という意識が広がっているとまでは言えないんですね。
(広がってるとは言えない?)




先月、NHKは、すべての国会議員を対象にしたアンケート調査を行いました。
それによりますと、ネット選挙に最も期待する効果として、政策や主張がより伝わりやすくなるという答えが、75%を占めたのに対しまして、有権者の考えや意見が、よりくみ取りやすくなるという答えは、14%にとどまったんですね。
選挙運動ですとか、さらには日常の政治活動を通じて、政党や政治家は、みずからの主張や政策を丁寧に伝えると同時に、有権者の意向を頻繁にくみ取って政策に反映していくと。
そうした政治的なつながりも、インターネットを活用することで、実現していくことが期待されます。

●政治の質を高めていくうえで、有権者には何が問われる?

佐藤さん:先ほどの喜屋武さんの“もっと勉強したい”という、大変前向きな発言が印象的なんですけれども、前向きになったときに、自分の立場というのを明確にすることも大事ですが、異なる他者の違う立場の人がいるんだということも、よく理解をして、そういった人と冷静に話し合っていくという対話の必要性がより高まっていくというふうに思っています。
なぜかというと、ネットというのは、どうしても対立が深まっていく勢いがなきにしもあらずですので、そういったことをうまく乗り越えていく有権者側の取り組みというか、知恵が今後のインターネットを使った政治の在り方を決めていくんじゃないかと考えます。

●日本の政治は混とんとした感じが続いてきましたよね

御厨さん:だから今回も、これから政治、どうなるんだろうという、一種不安もあるわけですけれども、ただ、やっぱりネットが、これだけの可能性を秘めているということが分かってきたということは、これは有権者ももちろんそうですけど、やっぱり政治家のほうが、もっともっと有権者に向き合わなくちゃいけない。
これまでは、なんとなく外から出てくる音を、雑音とまでは言わないけれども、しかし、なんとなく自分が聞きたいことしか聞かないという姿勢が、どうしても政治家にあったんですが、やっぱり今度は、ネットという新しいツールで、やっぱり、こっちから行くだけじゃなくて、やっぱり聞いてみようということですね。
聞くことによって、これがやっぱり国民が考えてることなんだということを理解すれば、そこで議論も始まるだろうし、いやいや、それでもやっぱり、われわれはこう考えるんですよということも言えるし、それからまた、向こうは、いえいえ、それはおかしいでしょ。
そこで初めて、お互いを認める議論になるし、それから、先ほど、まだ議論がありましたように、その中で、この問題について賛成、反対っていうだけじゃなくて、反対の立場っていうのも、やっぱりこういう別面があるのかとか、じゃあ、われわれも一途に賛成とは言わずに、これと妥協できないだろうかっていう、そういう、いろんな思考経路ができていく。
だから、すごく、何て言いますか、そういう点では、ようやく実りが出てくるようなツールを、われわれは手にしたと。
だから、これから、これを政治を変えるきっかけしていくという、そういう話じゃないでしょうかね。

●政治には無関心などと言っていられない時代になってきた?

御厨さん:言ってられないですよ。
だから、せっかく手にしたこのツールを、どうやって、やっぱり使いこなしていくか。
それは、われわれに、やっぱり問われていることだと思うんですね。

●民主主義が成熟するチャンス、きっかけになる?

御厨さん:なると思います。
あるいは、そうしなければいけないんだろうと思います。
もう、これ以上の技術革新というのは、そうそうあるわけじゃないですから、これを使うということが大事ですよ。

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