クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.33742013年7月2日(火)放送
腰痛 2800万人時代 ~変わる“常識”~

腰痛 2800万人時代 ~変わる“常識”~

“腰痛芸人” イタタ…な日々

ドランクドラゴン 塚地武雅さん
「『クローズアップ現代』をご覧の皆さん、腰痛って、甘く見てると、大変なことになりますよね。
実は、僕の相方の鈴木もそうなんです。」



ドランクドラゴン 鈴木拓さん
「いたーい、ちょっと…もうちょっと、ゆっくりやって。」





お笑いコンビ・ドランクドラゴンの鈴木拓さん。
時に、台車を使った移動を強いられるほど、腰痛に悩まされてきました。
5年前、突然、激痛に襲われた鈴木さん。
椎間板ヘルニアが原因と告げられ、緊急入院しました。

ドランクドラゴン 鈴木拓さん
「毎回、腰にガン、ガンって痛みが来てましたね。
今までの生活史上、気を失うくらいの痛みだったので。」




治療の中心は、注射による痛みの緩和。
徐々に仕事ができるまでに回復しました。
しかし、その後も、しばしば痛みに見舞われた鈴木さん。

効果があるとされる治療を、手当たりしだい試しました。
しかし、腰痛はなかなか改善しません。
鈴木さんは、安静がいちばんと念じて、痛みがひくのを待つほかありませんでした。

ドランクドラゴン 鈴木拓さん
「運動すれば余計、ヘルニア出ちゃうよ、なんて言われてた。
ひたすら安静にしていた感じ。」

腰痛治療 変わる“常識”

鈴木さんを苦しめ続ける腰痛。
今、常識とされてきた通説や、治療方法が見直されようとしています。
画像による診断を行っても、その85%は、原因が特定できないことが分かってきました。
鈴木さんの場合も、初期の痛みの原因は椎間板ヘルニアでしたが、入院治療後の慢性的な痛みの原因は、まだ、はっきりしていません。
さまざまな治療を行った鈴木さんが、最も効果があると考えるに至った、安静。
慢性的な痛みの改善には、むしろ逆効果で、適度な運動が必要なことも分かってきました。
さらに最新の研究で、特定できない痛みの原因が、腰以外にあることも明らかになってきました。
福島県立医科大学紺野愼一教授です。
腰痛の原因は、ストレスによる脳の機能の変化にあるといいます。
人は、腰に刺激を感じると、痛みの信号が背中の神経を通って脳に伝わります。

通常、脳の側坐核という部位が痛みを抑える物質を出すことで、必要以上の痛みを感じずに済むようになっています。
しかし、側坐核はストレスを受けると、機能が変化します。
痛みを抑える物質が少なくなり、僅かな刺激も痛みとして感じるようになってしまうのです。


福島県立医科大学 紺野愼一教授
「仕事の収入に対する不満、あるいは職場関係で何か問題がある場合、ストレスや不安やうつ、それから、その方の生活環境というのが腰痛の発生に関係していると分かってまいりましたので、今まで注目されなかった心理社会的要因に注目していただく必要がある。」

5年間、腰痛に悩まされている鈴木さん。
最近、医師から、ギャグがすべったときのストレスが腰に最もよくないと言われています。

ドランクドラゴン 鈴木拓さん
「しょうたろうくん、見てー。」




ドランクドラゴン 鈴木拓さん
「体のことを考えて、すべらないようにしてくださいって言われまして、芸人初の、ボケをドクターストップされた。
腰やべぇな、さっきボケたのうけねぇしな。
よし決めた、しゃべるのやめようっていって、しゃべるのやめたりとかしてましたね。
芸人失格でしょうけど、申し訳ないです。」

ストレスをなくせ 変わる腰痛治療

腰痛の悪化につながるストレス。
新たな治療の取り組みも始まっています。

この大学では、整形外科医や麻酔科医だけでなく、精神科医も加えたチームを結成。
患者のストレスを取り除くことを治療の中心に据えました。




この大学病院に通っている、田中敦子さん。
これまで7つの病院を転々としてきましたが、痛みは一向に改善しませんでした。




医師
「どうですかね?」

田中敦子さん
「腰?」

医療チームは、田中さんが何にストレスを感じているのか、丁寧に聞き取ることから始めました。
すると、人間関係や家族の将来に悩んでいることが分かりました。

田中敦子さん
「生活面全部とか、細かい、人との付き合いとか、子どものこととか。
きっと、それがストレスだったんでしょうね、大きな。
考えちゃってるということが。」

田中さんの治療法を議論した医療チームは、細かいことを気にし過ぎてしまう傾向を変えることを最優先にすることにしました。

前向きに生活することを心がけてもらうために、1週間ごとに日常生活の目標を書いてもらうことにしました。





さらに夜、何度も目が覚めてしまう田中さんのために、痛み止めではなく、睡眠を促す漢方薬を処方しました。
通院してから1年。
今では痛みを感じることが大幅に減ったといいます。



田中敦子さん
「痛みとか、いろいろな悩みとか、今まで頭にいっぱいあったのが半分になったりとか、ちょっと減っているなという感じはして、うれしかったですね。」

腰痛2800万人時代 変わる“常識”

ゲスト牛田享宏さん(愛知医科大学学際的痛みセンター教授)

●患者の85%は特定できない腰痛の原因 大きく変わる治療

そうですね、いろいろ、もちろん椎間板ヘルニアで困られてる人もたくさんおられるわけですけども、調べてもなかなか分からないのが多いのが現実、実際のところですね。




ですので、そもそも椎間板ヘルニアというのは何なのかというふうなところも、今、注目されているところかなと、そういうふうには思います。

●椎間板ヘルニアがあっても、痛みを感じない方も多い?

そういう感じですね。
椎間板っていうのは、そもそも加齢とともに変わってくるものであって、しわのようなものなので、多くの人にあるのが、むしろ普通なわけですね。
ですので、確かに椎間板が痛んでる人のほうが、骨の動きが悪いだとか、いろいろ出てきますので、痛みが出る人が多いのも事実ですけれども、多くの人が持ってて、それで困っていないというのも実情なわけです。
ただ一方で、画像診断的に、さっきのMRIだとか、椎間板ヘルニアを見ることが多いですので、ああいうヘルニアだとかを見ますと、私はヘルニアだから痛いんだと、そういうふうな思い込みによって症状がずっと続いていると。
ヘルニアがあるから動けないんだとかいうことになってくると、筋肉も弱ってきてしまうだとか、二次的な問題を起こしてきているような方も結構見られますね。

●ヘルニアの症状も、自然に治る場合、消える場合もあるそうですね?

そうですね。
ヘルニアが仮になくなってても、腰痛は続いているということも結構あるわけです。
(なくなってても、痛みを感じられる方?)
ですので、骨との間の高さが変わってるだとかいうこともありますし、それと、そもそも痛みというのは、頭で記憶されているものですので、痛みで、頭で記憶されているようなことがあると、腰がなんか同じような姿勢になってたら、また痛いんじゃないかということで、それによって体が防御的に働いたりして痛い、そういうふうな方もおられます。
非常に、そのへんが難しいところかなと思いますね。

●腰痛には、いろいろなケースがありますよね?

いろんな要因で腰痛っていうのは、出てくると思うんですよね。
最終的に頭で経験するもんなんですけれども、ただ、ストレス、先ほどストレスのVTRが出ましたけれども、実際にストレスと言っても、天気で気温が下がるっていうことだけでも、私たちが行った大規模調査、3,000人ぐらいの調査でも、40%ぐらいの人が痛みが強くなるというようなのが出ています。
天気が悪くなる前でも、あるいは、悪くなったあとでも、20%ぐらいの人が痛みが出るというのが分かってますので、さまざまな要因がわれわれに影響して、痛みをまた思い起こさせたりして、症状を作っていると、こういうこともあると思います。
体の問題と心の問題、両方あります。

●ストレスがあると、痛みを和らげる物質が出なくなることもある?

ストレスがあってくると、同じような痛みを経験しても、すごく過度に感じてしまうということは、すごく往々にしてあることで、例えば、うつ病だとか、そういうのでもそうですけども、その辺のところを薬だとかを使いながら、調整しながら、体を動かしていくということもしないといけないかなと、そういうふうに思いますね。
(心の問題で痛みが出てくるケースも?)
これは私たちが行った研究でも、腰が痛そうな姿勢をしている人を見るだけでも、やはり不快感というのは、みんな出てくるんですね。
やっぱり、自分が痛くなったときのことをイメージしてしまいますよね。
そうなると、痛くなってしまう人も出てくる。
そうなると、体の問題というよりは、頭の中にある問題だというふうなことが、最近捉えられているところかなと、そういうふうに思いますね。

腰痛が仕事を奪う 働き盛りの“悲鳴”

東京都内に住む、47歳の男性です。
専門学校を卒業以来、腰痛のために何度も仕事を失ってきました。
腰痛で会社を休むことに理解が得られず、いつも職場での居場所がなくなっていったといいます。
男性は、この20年間、7回の転職を余儀なくされてきました。

47歳 男性
「本当に腰が痛いのに、見えないものなのでね。
だんだん職場での肩身が狭くなってくるのではないかという、恐怖感というのもありましたし、気持ち的にも焦りが出てしまって、悪い方向、悪い方向に進んでいってしまうような形ですね。」

現在は、週に5日、アルバイトをしている男性。
ストレスを取り除く治療で痛みは軽減していますが、またいつ仕事を失うか、不安を抱えています。
整形外科医の松平浩さんです。
今、腰痛は、働き盛りの人々にとって、深刻な問題になっているといいます。
一昨年(2011年)、松平さんは全国の6万5,000人を対象に調査を行いました。

その結果、4人に1人が、腰痛で仕事などを休んだ経験があることが分かりました。





労働者健康福祉機構 松平浩本部研究ディレクター
「(腰痛は)社会的損失が大きい。
働き方の効率だったり、個人の効率も落ちれば、企業全体の、家族にも影響を与えたり、同僚にも影響を与えたりとか、社会全体へ悪影響を及ぼしかねない。」

アメリカ 腰痛との闘い 社会的損失を減らせ

腰痛がもたらす、社会的損失。
世界各地で、その対策が始まっています。
アメリカでは7年前、ある研究チームが腰痛による仕事の制限や、生産性の低下による影響を試算。
すると、年間74億ドル、日本円で、およそ7,400億円の損失があることが明らかになりました。
腰痛が社会や経済に与える損失を、どう軽減していくのか。
今、アメリカ各地で、腰痛のために、休職や退職を余儀なくされている人たちを職場に戻す取り組みが始まっています。
シアトルにあるワシントンリハビリテーションセンターも、その1つです。
通常の治療に加え、働き盛りの人々のための特別なプログラムを組み、社会復帰を支援しています。

「仕事を休んで、どのくらいですか?」

男性
「1年です。
再就職したいですね。」


男性
「仕事に戻れるように、リハビリを頑張っています。」




毎年、300人の患者がプログラムに参加。
1年以内に、70%以上が職場への復帰を果たしています。
このプログラムで最も重視されているのは、腰痛を正しく知ってもらうこと。
そのため、精神科医による講義が行われています。
痛みの原因は心理的なストレスが大きいため、うまくつきあっていくことができると理解させるのです。

ワシントンリハビリテーションセンター 
ジェームス・ムーア所長(精神科医)
「毎日“痛み”と向き合うと、どんな気分になりますか?」




ワシントンリハビリテーションセンター ジェームス・ムーア所長(精神科医)
「“痛み”をどう捉えるかによって、気持ちは大きく変わるのです。」

リハビリでは、職場に復帰したあとに必要とされる動作を繰り返させます。
仕事中に再び腰を痛めるのではないか、という恐怖心を取り除くためだといいます。


ワシントンリハビリテーションセンター ジェームス・ムーア所長
「患者たちは、体を動かすことを恐れているのです。
ですから、最初はゆっくり小さな動きから始めます。
体を動かしても痛むことはないと、自信を持たせるのです。」

さらに、このプログラムには、職業カウンセラーも参加。
痛みに応じて、適切な職業をアドバイスします。

かつて美容師をしていた、この女性。
立ち仕事に不安を感じています。
座ったままできる仕事のほうが腰への負担が少ないとアドバイスされ、タイピングの練習を始めています。



女性
「きっと新しい仕事につけると、自信が持てました。」

プログラムの費用は、1人当たり、およそ140万円。
ほとんどが州や企業が負担する保険で賄われています。
しかし、退職者への手当や求職者への保障にかかる費用に比べると、はるかに少ない負担で済むといいます。

ワシントンリハビリテーションセンター 
ジェームス・ムーア所長 
「プログラムの費用は、3か月で回収できます。
さまざまな手当や効果のない治療に比べると、投資効果は、はるかに大きいです。
患者が短期間で回復し、職場復帰できれば、社会にとっても大きな利益になるのです。」

社会的損失を減らせ 腰痛 新たな課題

●腰痛を理解し、痛みと向き合う授業は印象的ですね

そうですね。
腰痛っていうふうなのがあるから、いろいろできないだとかいうのではなくて、腰痛があっても、こういうふうなことができていくと。
例えば痛みがあっても、ゴルフができる、仕事ができるというふうに、どのように向けていくのか、ああいうふうな、きちっとしたトレーニングの中で、仕事にきちっと戻って、自信をつけながら戻っていけるシステムを作っていってるっていうのは、すごいことだなあと思って、本当にびっくりしました。
われわれのところでも、そういうのを導入しないといけないかなと思って、進めているところですね。

●日本では今、どういう方々に腰痛が多く見られる?

もちろん、これまでは高齢の方が多いというふうに考えられてたんですけど、われわれの研究班、あるいは仲間でやった大規模調査では、やっぱり30代、40代、50代、若い人に多いんですね。
生産年齢層の問題なんですね。
(働き盛りということですね。)
あるいは1人暮らしの人が多いだとか、そういうことも分かってきてるというところです。
そういう意味では、仕事でじっとデスクワークをしているだとか、そんな中でストレスを抱え込んでいってる人にも出てきていると、そういうふうな社会的な問題はあるのかなって、そういうふうに思われますね。

●ストレスが大きな腰痛の要因にもなりうる どう向き合えば?

やはり体と心が、腰痛の1つの大きな原因だということを考えると、心があっても、やっぱり体がついていかないと、具合が悪いですね。
デスクワークで同じような姿勢でずっとしていると、一部の筋肉は使ってるけど、一部は使っていないということになってきますので、それをやはり慢性的な痛みっていうことになると、全身運動がいいというふうに言われてますので、そのあたりをウオーキングをするだとか、ストレッチングをするだとか、足腰、それから背中、腕、そういう全身の力をつけていきながら、動く体を作っていくこと、それで好きなこと、楽しいことができるようにしていくというのが、非常に大事なのかなと、そういうふうに思いますね。
(この小さないすで、かなり腰が疲れますね。)
そうですね。
(どうしたらいいですか?)

やはりじっといると、やはり筋肉、硬くなっていきますので、ストレッチングですかね。
ぐーっと、伸ばしてやるとか。
台の上にぐーっと伸ばす、それからこっち側にも、ぐーっとしていくだとかいうのも大事でしょうね。
ねじる運動、ふだんあまりやっていないですけれども、1日に数回はしていくようなことをしていくのは、体作りにおいては、すごく大事。
(同じ姿勢を保たないということですね。)

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス