クローズアップ現代

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No.33622013年6月11日(火)放送
“ぱみゅぱみゅ”“じぇじぇじぇ” 〜「オノマトペ」大増殖の謎~

“ぱみゅぱみゅ”“じぇじぇじぇ” 〜「オノマトペ」大増殖の謎~

“オノマトペ” 大増殖の謎

コンビニ業界で今、魔法のオノマトぺとあがめられているのが…。

大手コンビニチェーン 広報
「“もちっと”ホットケーキや、“もちもち”くるみパンが人気があります。」

商品名に、“もちもち”と付けると、売り上げが5倍に増える。
そんな都市伝説のようなうわさが、駆け巡っているというのです。

「じぇじぇ!」

「“もちっと”の商品、ちょっとありすぎでは?」

大手コンビニチェーン 広報
「“ふんわり”とか、“サクッ”としていない商品は、比較的“もちっと”。」

おいしいを感じる言葉のアンケート調査でも、“もちもち”や、“もっちり”がどんどん急上昇する一方で、“コシのある”や“舌ざわりのよい”は、“ひゅるひゅるっと”急降下。
短く直感的に伝わるオノマトぺが、ランキングを席けんしています。

(グラフ出展:(株)BMFT 「おいしいを感じる言葉 2012」)

オノマトペは、“パキッと”堅いイメージのある国会でも増殖しています。

「日米関係を“ぐっちゃぐちゃ”にした。」

「通貨を“じゃぶじゃぶ”やっても…。」

「そんな、“ぼろぼろ”になった国土を…。」

20年前には、年間1万5,000回ほどだったオノマトペの使用回数は、“じゅわじゅわーっ”と増え、2年前には4万回近くまで増加しているというのです。

「じぇじぇじぇじぇじぇ!」



街なかから国会まで、増殖し続けるオノマトペ。
いったい、なぜ今、これほどの人気を博しているのでしょうか。
その背景には、オノマトペが、普通の言葉とは比べものにならないほどの豊かなイメージを伝える力を持っていることがあります。


脳科学研究所 松田哲也准教授
「これ、いちばん上の脳の画像がですね、オノマトぺを処理しているときの脳活動。
ちょうどこれ処理しているときに、いちばん脳の全体がですね、活動してると。」

音の爆弾とも言われる、オノマトペ。
副詞や動詞と異なり、五感を総動員しなければ処理できないほどの、膨大な情報量を持っているのです。

脳科学研究所 松田哲也准教授
「オノマトペという言葉だけを聞いただけで、そこまで想像力を深められることができるということじゃないかと思います。」




慶應義塾大学 今井むつみ教授
「例えば、“ずんずん”っていうふうに言ってるときに、単に急いでいるっていうだけではなくて、かなり気持ちが高ぶっているとか、大胆な気持ちになっているとか、豊かな情報というか、イメージを喚起するような、そういう種類の言葉なのではないかなと。」

“オノマトペ”が持つ 豊かな情報量

オノマトぺが持つ豊かな情報量。
その力に今、熱い視線が注がれているのが、スポーツの世界です。

「“ケンケン”走る走るを、“ケンッケ”走る走る“ケンッケ”走る走る。」

日本記録保持者を数多く輩出している福島大学陸上部には、さまざまなオノマトぺが響き渡ります。

福島大学 陸上部 川本和久監督
「はーっと息吐いて、もう1回作り直せ、作り直していけ丁寧、丁寧にやっていけ。
“ずいずい”いくなよ。」

「“ぐいぐいぐい”。」

福島大学 陸上部 川本和久監督
「“ぐい”になってねえだろ。」

福島大学 陸上部 川本和久監督
「なんか“ぽんぽんぽん”て跳んでるじゃん。
“ぐいぐいぐい”だよ、“ぐいっ”、もっと“ぐいっ”。」

オノマトぺの魔術師の異名を持つ、川本和久監督です。
オノマトペを指導の現場に持ち込み練習方法に革命をもたらしました。

「“ぐいぐいぐい”。」

福島大学 陸上部 川本和久監督
「もっと軽い感じで“ぐいぐいぐい”。
気張りすぎだよ。」

福島大学 陸上部 川本和久監督
「少し膝の屈伸も使いなさいという意味で、“ぐい”を言ってみました。」

「“ぐい”を使わずに言うと、どういう言葉になりますか?」

福島大学 陸上部 川本和久監督
「いいか、足首を曲げて、膝を下に向けて、そして今度は自分の重心を前に行った時に、逆の膝を引き上げて、それもな地面と水平になるように、っていうのを、いろいろ言わなきゃいけないんです。」

川本さんがオノマトペを指導に取り入れた背景には、この10年で陸上の理論が急速に進化し、頭が“くらくら”するくらい複雑になっていることがあるといいます。
チェックしなくてはならない動きのポイントは、10年前と比べて30倍にまで増え、普通の言葉では、一個一個をとても選手に伝えきれません。

福島大学 陸上部 川本和久監督
「選手たちというのは、コンピューターみたいに命令してあげたら、ここのボタンを押したらこういう形が出ますよ、というわけではないので、やっぱりオノマトぺで新しく感覚を作ってあげたほうが早いですね。
“ポン”とか、“ピュン”とかいう擬態語を使ってあげたら、脳の中に神経回路ができるので、そこを手がかりに、どんどんどんどん自分の中で運動のイメージが広がってきますね。」

オノマトペが持つ豊かな情報量は、医療現場でも今、注目されています。
この大学病院では、うつ病や不安障害の患者の普通の言葉では言いようもない不安を、オノマトペで表現してもらうカウンセリングを行っています。

患者
「頭のほうが“かあーっ”としてきて、なんか目が“ぼおーっ”としてきて…。」

患者の言葉に耳を傾けると、不安を表す同じようなオノマトペでも、それぞれに全く異なるニュアンスが込められていることが分かってきました。

滋賀医科大学附属病院 特任助教 田中恒彦さん
「“ズキン”としていると言ったら、刺すような痛みを不安の中で感じているとか、体が“ゾゾッ”としている人もいれば、お腹が“キリキリ”痛む人も、不安でそれぞれ違う。」

「確かにそうで、“ザザッ”ていう不安と“もわーん”という不安と、“ゾゾッ”という不安と“ドキドキ”する不安と違うかもしれない。」

通学バスに乗ると頭が“ふわふわ”し、足が“カチカチ”になってしまうという高校生。
1人でいると孤独感が募り、シャワーを浴びたように、頭の中が“ワーッ”となるという男性。
社会の複雑さが増す中で、人々が感じる不安のありようも複雑になる一方だといいます。

滋賀医科大学附属病院 特任助教 田中恒彦さん
「頭が“もにょっ”とするとかもそうですし、あるほかの患者さんは、頭が“メリメリ”するとか、“もにょもにょ”するっていうときは、頭の中がこうすごく混乱していて…。」


オノマトペによるカウンセリングは、医師が患者をより深く理解するだけでなく、患者自身が、自分の症状に正面から向き合う力を与える効果があることも分かってきました。

女性患者
「頭の中が“むにょむにょ”するときがあって…。」





この女性は、それまで漠然と感じていた言葉にできない不安を、“むにょむにょ”という具体的な単語に置き換えて語るうちに、その不安に慣れ、コントロールできるようになってきたといいます。

女性患者
「“むにょむにょ”した感覚の中に入っていって、そこで“じーっ”としていたら、だんだん慣れてきた、みたいな。
まるで自分の子どもをあやすようにして、そうしたら、だんだん“むにょむにょ”が消えていったんです。
今まで急いで頑張っている自分ばかりだったんですけど、自分に優しくなって休憩もしたら、いいんや、みたいな感覚が出てきた。」

普通の言葉では伝えきれないものを表現する、オノマトペ。
その力が今、“じわじわーっ”と社会に広がっています。

“オノマトペ”大増殖 不思議な力とは?

ゲスト小野正弘さん(明治大学教授)

●情報量が豊富なオノマトペ スポーツ指導の現場で通じるもの?

それは昔は、それが分からないっていうはずだったんですね。
つまり、監督の“ぐい”と、私の“ぐい”は違うでしょうっていうふうに、昔は思われたと思うんですけども、どうもあれを見ていると、監督は“ぐい”だけれども、でも私の“ぐい”でもいいんだっていうふうに思えてるんだろうなというふうに思いましたね。
だから、あれはやはり監督と選手の間に信頼関係があって、つまりそのことによって、オノマトペが高い効果を発揮しているというふうに言っていいんじゃないでしょうか。

●どこかで論理的に“ぐい”の意味を説明されている背景もあるのでは?

そうですね、川本監督を見ていると、どうも最初からオノマトペを使っているわけではなくて、あんなにたくさんの論理的な言葉をお持ちですよね。
ですから、論理的な言葉を経たあとに、つまり、1周回ったあとに、陸上じゃないですけど、1周回ったあとに、オノマトペにたどりついているというところがすばらしいと思うんです。
それによって、しかしもさらにそこに信頼関係が加わって、オノマトペの持つ力というのが、何倍にも爆発的に発揮されているんだというふうに思っていいんじゃないでしょうか。

●医療現場で活用されるオノマトペ 自分の心と向き合えた患者の例

あれもすばらしいですね。
今までは、あんまり医療の場では、オノマトペっていうのが重要視されていなかったっていうこともあるらしいんですね。
ですけれども、あそこではオノマトペを効果的に利用しているな、というふうに思いました。
考えるんですけども、今の世の中っていうのは、例えば何かをしてもらいたいときに、何々してもらってもいいですか?
っていうような、そういう許しを得る、許しを得て、そして自分は我慢するというような、そういう世の中なんだと思うんですね。
ですから、そういうことで、かなり抑圧されてしまうと。
ですけれども、自分がそうやって抑圧されたあとに、この感覚って何なんだろう?
“むにょむにょ”じゃないかっていうふうに思ったときに、心の解放が始まるんじゃないでしょうか。
だからあれは、とてもオノマトペを利用した見事な実践例なんだろうなと思いました。

●自分の実感をオノマトペで表現すると、楽になる?

そうですね、オノマトペの特色っていうのが、やっぱり実感が伝わる言葉っていうことなんですね。
ですから、実感を伝えることができるっていうことが、どれほど人の心にとって解放をもたらすかということですね。

“オノマトペ”を活用 研究最前線

ロボット
♪「さいたさいた」

オノマトペは今、人間と機械のコミュニケーションを、より円滑にするための道具としても注目されています。



「“ガシガシ”。」







「“モタモタ”。」

このロボットはオノマトペの音を認識し、その響きに近い動きをするように設計されました。






中京大学 加納政芳准教授
「オノマトペの持っている、その音の印象を動きに変換していますね。
例えば、“ガシガシ”っていうとその音の『ガ』とか『シ』が持つ力強さが、このロボットの動きに現れています。」

将来こうした技術が実用化されれば、人間がさまざまな機械に対して、より微妙なニュアンスの指令を出せるようになると期待されています。

“オノマトペ”を活用 新製品開発

オノマトペの音の響きを科学的に分析することで、企業の新製品開発の新たな指標にしようという研究も進んでいます。

女性
「“ゴツゴツ”。」





女性
「“トゲトゲ”。」

男性
「これは“ぴちょぴちょ”。」



この大学では、オノマトぺの音の響きと被験者へのアンケート調査から、オノマトぺが持つ微妙なニュアンスを43の評価項目に分解して調べました。
すると、私たちが無意識のうちに使い分けている、さまざまなオノマトぺの意味の違いが、具体的に明らかになってきたといいます。

電気通信大学 坂本真樹准教授
「最近、“もふもふ”っていうのがネットではやってるんですけど、“ふわふわ”と、どこが違うのか。
“もふもふ”って入れると、温かくて厚みがあって、っていうところが強く出るってことが分かって、“もふもふ”のほうが温かさ感が強いんですね。」

この大学を、車の内装を手がける大手自動車部品メーカーの開発担当者が訪れました。
このメーカーが開発に力を注いでいるのは、見た目が金属に見えるプラスチック素材だといいます。

使われるのは、こんなところ。
ところが、これまで15種類もの試作品を作ったものの、どうしても金属に見えるものが作れないというのが悩みでした。
大学側が提案したのは、オノマトぺを指標にした評価実験でした。



被験者には両方とも金属だと伝え、直感的に浮かんだ感覚をオノマトペで表現してもらいます。





被験者
「左は“キラキラ”してます。
右は“スルスル”。」

被験者
「左は“ザラザラ”で、右は“ツルツル”。」

本物の金属に対しては“ザラザラ”という回答が多かったのに対し、メーカーが作ったサンプルには“ツルツル”という言葉が数多く飛び出したのです。
金属に近づけようと、表面を滑らかに仕上げていたことが、逆に金属に見えない原因になっていたことが分かりました。




メーカーでは、方針を180度転換。
表面の凹凸の深さが0.2ミリだったものを、滑らかさを消して“ザラザラ”感を出すために0.6ミリにしたところ、80%の人が、より金属に見えるようになったと回答しました。



カルソニックカンセイ グローバルテクノロジー本部 
荒井和夫さん
「なかなか物理的に測ることができないような差がですね、オノマトペを使うと、区別できるようになった。
新しいツールが1つ手に入った気がします。」

“オノマトペ”大増殖 不思議な力とは?

●機械と人間をつなぐのがオノマトペというのも、おもしろいですね。

全部おもしろかったですね。
(ロボットに人間の動作を理解させるは難しいことでは?)
あれがまたすごい。
普通、今まではできなかった、さっきから何度も言ってますけども、なかなか難しかったはずなんですよね。
ですから、あのようなオノマトペの動作にロボットが反応するっていうのは、とてもすばらしくって、どういうようなプログラミングをしたのか、ちょっと伺ってみたいです。

●オノマトペを使ったマーケティング “もふもふ”と“ふわふわ”は違う?

そうですね、おもしろかったですね。
あれを使って、“もふもふ”毛布とかですね、なんかそういうのを作ると。
(暖かい感じ?)
暖かそうな、なんか膨らみがありそうな、なんかそういう感じがしますよね。

●オノマトペ 多彩なマーケティングの可能性

いい言葉ばかりに使わなくてもいいと思うんですよ。
だから例えば、ダイエット食品かなんかに、あえて悪いイメージの名前を付けちゃう。
例えば、“ざらざら”がゆとかですね、“がりがり”茶漬けとかですね、なんかそういうのを付けてしまって、そしてそれを食べると、なんかおいしいんだけど、でもこれ“ざらざら”だよな、と思っているうちに食欲が失せますよね。
と、気がついてみたら、俺、ダイエットしてるじゃないかって。
(量は少なめにしておくとか?)
そうそうそう。
先にそうしておくんですよ、そうすると、その名前と相まって効果が出るとかですね、なんか、妄想ですね。

●なぜ日本では、オノマトペが豊かなのか?

まずはやっぱり日本語っていうのが、情感を尊ぶ言葉であるとようないうことなんじゃないでしょうか。
伝統的な美意識を表す、あわれでしょ、おかしでしょ、わびでしょ、さびでしょ、全部、情感的な言葉ですよね。
それがなんというか、非常に文化財的なものだとすると、例えば“ふわふわ”とか“ほよほよ”とかいうのは、なんかちょっと庶民的ではあるけれども、それでもやっぱり大事な情感を表す言葉ですよね。
ですから、そういう文化的なものと庶民的なものが両輪のようになって、今に至っているという、そういう側面があるんじゃないでしょうか。

●増殖しているオノマトペ 作りやすいもの?

そうですね。
日本語には、オノマトペをたくさん作れるようなシステムがあるんですね。
(システム?)
システムがあります。
ちょっとやってみましょう。

ここに、“びゅ”というオノマトペがありますね。
で、それに例えば、これを…こうやると“びゅー”ができました。




さらにこれに、これを持ってくると、“びゅーっ”できましたね。
(ちょっと速くなりましたね。)
だけども、ここをこうやって、ここにこれをまた持ってきますと、“びゅーん”ってのができましたね。
(速いですね。)
速くなりましたね。
しかも、これは2回繰り返すと、“びゅーんっびゅーんっ”ですからね、大変なことになります。
こんなふうに伸ばす音とか、跳ねる音とか、詰める音とかっていうのをいろいろ組み合わせて使えますから、それによって、しかも細かいニュアンスが出せるわけで、これがオノマトペが増殖できる秘密なんです。
(無限に作っていける感じがありますよね。)
目指せ無限ですね。

●オノマトペの増殖 論理的に言うことの劣化や衰退という見方も?

それは痛い指摘なんですよ。
でも今のところ、だからオノマトペが少し優位ですけれども、しかし、そのうちにやっぱりバランスを考えて、論理の言葉をもう少し発達させましょう、ということになっていくと、情感の言葉のオノマトペと、それから論理の言葉が車の両輪のようになって、そして現代の中で表現力がどんどん高まっていくんじゃないかっていうふうに思うんですよね。

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