クローズアップ現代

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No.33552013年5月29日(水)放送
顔から個人情報が流出する ~広がる“顔認証”技術~

顔から個人情報が流出する ~広がる“顔認証”技術~

身近に広がる 驚異の“顔認証”技術

年間1,000万人近い人が訪れる、日本有数のテーマパーク。
顔認証技術が使われているのは、入場ゲートです。
対象となるのは、年間パスを使うリピート客。
四角い箱に顔を向けては、通過していきます。


事前に登録した顔写真と同じ人物かどうかを、機械が自動的に判別しているのです。


「楽しい。
ちょっと特別な感じはありますね。」


「おもしろいですよね。
顔で本人って分かるってすごい。」

その判別能力はどれほどのものなのか。
事前に登録したこの顔で検証します。

「顔認証をお願いします。」

帽子に、付けひげ、あごを隠すなど、変装します。
本人と見破ることはできるのでしょうか。
表示されたWelcomeの文字。
見事、同一人物だと照合されました。

機械は、どのようにして顔を見分けているのか。
まず、膨大な老若男女の顔写真をコンピューターに取り込み、人の顔のどこに特徴が表れるのか解析しました。



例えば鼻の脇は、その1つです。
赤い場所にこの人の特徴が表れました。
別人の場合は全く色の分布が異なります。
これが照合の鍵です。


解析を顔全体で行い、その人特有の顔の特徴を浮かび上がらせます。
この特徴を手がかりにして、照合を行うのです。
的中率は99.7%に及びます。
特徴を示す色の分布は年を取っても変わりません。
そのため、若いときの写真でも照合が可能です。

日本電気 ソフト開発担当 坂本静生さん
「10年、20年、30年たって、顔が変わったときに、人間がどのくらい認知できるかといったら厳しいものがある。
そういった意味で機械の方が勝っているところが多いのではないか。」

今、顔認証技術はさまざまな使い道が模索されています。

「こちらです。」

その1つ。
カメラの前に立つだけで、男女を判定することができるシステムです。
数字は機械が顔から読み取った年齢です。
こちらの男性は、実際の年齢と僅か1歳のずれ。
この女性はぴったり一致しました。
年を取るにつれ、変化しやすい顔の場所を、顔認証技術で捉えることで年齢を照合することが可能になったのです。
この技術は、デパートなどの店舗数十か所で、すでに導入され、時間帯によってどの年齢層が多いかなど客の調査に使われています。

沖電気工業 研究開発センタ 須崎昌彦さん
「イベントや曜日によって、もし人の流れが変わるのであれば、それに合わせて商品の置き方を変えることで(お店の)売り上げをあげられる。」


顔認証技術は思わぬ場所でも利用されています。
宮城県亘理(わたり)町では津波で流された写真を被災者の手元に返すために、顔認証技術を導入しました。
大切な写真を取り戻した鈴木哲郎さん、妻の武子さんです。

鈴木哲郎さん
「残っているものは何もない。
みんな(津波に)持っていかれた。
諦めたから、水に流されたと。」


震災後、持ち主が見つからない写真は6万枚に上りました。
その中から自分の写真を探し出すのは、非常に困難でした。

「こちらに登録しているものを見ていただきますね。」

そこで顔写真を登録し、データ化された6万枚の写真の中に同じ顔がないか、顔認証技術で検索しました。

すると20年近く前の武子さんの写真が次々と発見されました。
津波で自宅と一緒に流され、もう見つからないと諦めていた写真です。
そして、ついにはアルバムごと見つかりました。
娘や孫たちも写った152枚もの家族写真です。

妻 武子さん
「写真を全部もらってきてから、写真っていいものだ、ありがたいものだって、つくづく感じるんだよね。
宝物みたいなね。
お母さん(娘)に見せたら、あらーって喜んでたよ。
でも(大切な写真は)ばあちゃんが持っているからね。」

社会を変える“顔認証” 驚異の最先端技術

ゲスト佐藤洋一さん(東京大学教授)

●社会を変える“顔認証” 精度はどこまで進んでいるか

そうですね、今はかなりできるようになっていまして、正面から撮った顔画像ですね、そういった条件のよいものであれば、ほぼ100%認識できるというレベルになっています。
例えば、眼鏡ですね、眼鏡、サングラスかけるとか、多少、マスクで隠す。
そういった部分的な遮蔽に対しても、かなり耐えられると、認証できるようになってます。
(傾きは?)これはですね、程度によるんですけれども、例えば左右40度ですとか、上下30度といった、ほぼ前を向いてるという条件であれば、認証をかけられるという状況です。
ただ一方、もっと角度が厳しいですとか、そういった、例えば防犯カメラみたいな映像ですよね、そういった限定的なものは斜めから撮ってますから、そういったもの、かつ解像度低いってなってきますと、これ、まだまだ今の技術だと難しいということで、それが今、まさに研究開発されているというところです。

●ここまで精度が上がってきたのはなぜか

これはいろんな理由があるんですけれども、1つは、そもそもその手法ですね。
われわれアルゴリズムと呼んだりしますけれども、それの改良が進んだというのがあります。
さらにもっと大きいのは、膨大な枚数の顔画像っていうのが準備できるようになりまして、それをもとにして、学習によって、人の個人差っていうのがどこに表れやすいかと、そういったものを自動的に探し出せるようになったんですね。
そうしますと、そういったところに出てくる特徴というのを手がかりに、個人の照合をかけるっていうことによって、非常に高い精度が実現できるようになったというようになってきます。

●鼻の脇の部分 一体何を見ているのか

顔のしわですとか、あとは目とか口ですね、そういったものの形ですとか、位置ですとか、そういったものを含めて、顔の画像のパターンっていうのを見てるんですね。
(しわとか?)そうですね、こういうしわですとか、そういったものですね。

●社会を変える“顔認証” マーケティングでの使用も

そうですね、そういったのは非常にマーケティング上、有効な情報ですので、それを自動的に抽出できるというのは、これは非常にメリットがあるんですね。
そういったので今、そこへの応用というのが進んでいるという状況です。

●ほかにどんな現場で導入されているか

ほかには、セキュリティーの、入退出管理に使ったり、あとは出勤の管理に使うといったのもありますし、あとは最近ですと、なじみのあるところですと、スマートフォンに入っている機能でして、顔を写すと自動的にロック解除されるとかですね、そういったところにも応用がされています。
(暮らしの中に、徐々に浸透し始めている?)そうですね。

驚異の“顔認証”技術 治安とプライバシー

南米のブラジル。
来年(2014年)、開催されるワールドカップを控え、治安の向上に取り組んでいます。
飲酒運転の取締りの現場で、顔認証技術の導入が進められています。

警察
「アルコールチェックをします。
ここに息を吹きかけてください。
ダメだ。
前に車を止めなさい。」

警察
「車にビールがあるわよ。」

取り調べを行う際、免許証の確認が行われますが、偽造が後を絶たず、本人の確認ができないケースが頻発しています。
そこで、顔認証技術を使った身元確認が試みられています。
取り調べの際、顔をカメラで撮影します。
その映像を免許証の写真データベースと照合。
こうして正しい身元が明らかになります。

「データセンターです。」

さらに、警察はこのシステムに、犯罪の記録を結び付けようとしています。
指名手配犯の情報や過去の犯罪歴などです。
顔認証技術と犯罪の記録を組み合わせることで検挙率を上げ、治安の維持に努めようと考えています。

サンパウロ州交通局 イリネウ・エインシェンベルグさん
「顔認証技術があれば、すぐにうそは見破られます。
もう他人になりすますことはできません。」

さらにサッカースタジアムでも、顔認証技術が試験的に導入されています。
スタンドで危険な行為を行うサポーターを閉め出そうというのです。
スタジアムを埋め尽くす観客を数十台のカメラで捉えます。


その映像はモニタールームに集められ、監視されます。
解像度はハイビジョン画質の14倍。
観客1人1人の顔がはっきりと認識できます。



レーザーを使って選手を妨害しようとした場合、要注意人物と見なされ、顔写真が登録される仕組みです。
小競り合いが起きた際にも、問題を起こしたと見られる人物を特定し、顔を登録します。
登録された人は、次の試合以降スタジアムに入場できません。
入り口の顔認証システムで照合されるのです。

サンパウロ サッカー連盟 安全部 マルコス・マリーニョ部長
「どんなに大勢の中にいても、私たちの目から逃れることはできません。
スタジアムの中で問題を起こす人物を、もう野放しにはしないのです。」

顔認証技術は、利用のされ方によっては、人権侵害につながるおそれがあるのではないか。
監視社会とプライバシーについて研究する西原博史さんは、その懸念があると指摘しています。

早稲田大学 西原博史教授
「この人が誰なのか、何の目的で暴れたのか。
それをどう評価するのかという人間の営みの部分が全部排除されるので、説明のプロセスが飛んでしまうことによって、機械が自動的にやったんだから、誰にも責任がなくて、ただ『あなたは入れませんよ』という形で説明されるのは問題がある。」

驚異の“顔認証”技術 プライバシーの危機

さらに、顔認証技術によって、個人情報が流出する可能性も指摘されています。
先端技術とプライバシーの問題を研究しているアクイスティ准教授です。
顔認証技術を使ったソフトを開発し、個人情報が流出する危険性を確かめました。

そのソフトが入ったスマートフォンです。
見知らぬ人の顔写真を撮った僅か3秒後。
なんと、その人の名前や誕生日、社会保障番号などの個人情報が表示されました。


こちらの女性も。
このとおり、さまざまな情報が暴かれてしまうのです。
93人に対して写真を撮ったところ、およそ3分の1の人の個人情報が特定されました。

女性
「とても恐ろしいです。
こんなに素早く誕生日まで分かるなんて。」

一体どうしてこんなことが可能なのでしょうか。
情報源はインターネット上にありました。
この女性は自分のサイトに名前などの個人情報を公開していました。
そのサイトに写真も載せていたのです。
顔認証技術を使って、この女性と同じ顔写真をインターネット上で検索することができます。
そして、たどりついた顔写真から個人情報を引き出すことができるのです。

アレクサンドロ・アクイスティ准教授
「例えばバーで、偶然隣り合わせた人が、あなたの名前や趣味、そして住所まで知っていたらどうでしょう。
街を歩けば個人情報が流出する、そんな時代が始まろうとしているのです。」

驚異の“顔認証”技術 プライバシーどう守る?

●“顔認証”技術 日本での導入は

日本でも、やはり防犯支援ですね、防犯対策に対する顔認証技術の持っているポテンシャルっていうのは十分認識されてまして、今まさに警察が導入というのを進めるために、研究開発も進みつつあるという段階です。

●“顔認証”技術 将来的に期待をすることは

やはり、防犯支援、防犯と犯罪捜査、支援ですね、そういうところへのメリットが大きいと思います。

●社会保障番号まで表示されるのは

あれは私も、非常に驚きました。
というのは、社会保障番号というのは、まさに個人情報の最たるものですので、それが顔から引き出せるというのは本当驚いたんですけれども、あれには理由がありまして、社会保障番号は生年月日と、あとは出生地ですね。
そこからある規則にのっとって、番号が割り出せるということがあったんですね。
(規則性がある?)今はもうそれはないんですけれども、あるところまではそういった形で番号を作っていましたので、それをうまく使って、社会保障番号が分かってしまったと、そういったことになっています。

●プライバシーを守るにはどういう心がけが必要か

そうですね、今のフェイスブックの例もありましたように、思いもしないような使い方をされるというのが、一番、やっぱり問題なんですね。
ですので、例えば顔画像と個人に関する情報を、ネット上に上げるときに、どういった使われ方をするのかというのを、ちゃんと理解したうえで、各自でやっぱりむやみやたらに全員に公開しないとかですね、そういったところを注意するということが大事だと思います。

●観客をカメラで撮っての顔認証 人権侵害のおそれも

あの場合は、確かに問題がある行動を起こした人ではあるんですけれども、本人が知らない間に、顔画像を登録されて、照合をかけられているというのは、少し注意しなきゃいけないと思うんですね。
というのは、やはり、残念ながら、顔画像認証の技術、完全ではありませんから、なおさら、さらにああいった遠くから撮った画像ですと、照合精度は100%にならないんですね。
というので、完全でない技術ということをちゃんと理解したうえで、運用することが大事だと思います。
あとはさらに、問題ある行動を未然に防ぐといったメリット、それがあるということと、あとは、顔画像認証というのは、必ずしも完全じゃないんだというところを、それをきちんとメリット、デメリットを十分周知したうえで、コンセンサスを得て、システム運用をするといったことが大事だと思います。

●画像情報だけの判断 権利侵害への危険性の認識も

そうですね。
ですので、完全に自動判断された結果だけで、処理を決めるんではなくて、そこにちゃんと当然、人がまた確認するとかですね、そういったバックアップをともに考えたうえで、仕組みを考えるというのが大事だと思います。

●“顔認証”技術 将来に向けて必要なことは

私は技術者ですので、まずは、顔認証技術、それをよくしていくというための研究開発、これは大事だと思います。
それと同時に、今度はプライバシーをちゃんと保護するというのも大事になりますので、そこを例えば、技術的な側面から支援する、そのために必要な技術というのも開発していくということも、必要になると思います。
あとは、運用するためのルール作りですよね。
法的な面の整備もあると思いますので、そういった法的な面での整備、きちんとそれを作って、その3つを一体として、社会のコンセンサスを得られるような形で、顔画像認証技術というのの持っているポテンシャルというのを生かしていくというのが大事だと思います。

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