クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.33372013年4月18日(木)放送
進む都市の“木造化” ~林業再生への挑戦~

進む都市の“木造化” ~林業再生への挑戦~

大型木造建築 広がる木の可能性

日本の都市で初めての大型木造商業施設となる、横浜のショッピングセンターです。
全長12メートルの国産のカラマツを使った柱が、次々と建てられています。
2階から4階部分の建物を支える構造材に、従来の鉄筋コンクリートに代わり、木材が使われているのです。
木を活用する鍵となったのが、建築材料としての木の最大の弱点を克服する技術の開発でした。

「こちらが、火災になっても火が自然に消える、当社が開発いたしました新しい木材の柱でございます。」

柱や、はりに使われているのは、建物が火事になっても火が自然に消えるという特殊な加工が施された木材です。
木は3層の構造に分かれています。
外側は、燃えると炭素の層になり耐熱効果を発揮します。
中間にはモルタルなどの層があり、熱を吸収します。
これで、内側にある建物を支える木材の芯の部分を守る仕組みです。

実際の火災を想定して、1時間にわたり1,000度近くの炎にさらす耐火実験です。
外側は想定どおり炭になりましたが、芯の部分は燃えずに、建物を支える強度を保つことに成功しました。


大手建設会社 五十嵐信哉さん
「さらに耐火性能を高めることによって、10階建てを超えるようなさらに大きな建物、市街地の中に木がたくさんあるような空間が出来るのではないかと考えております。」


木材が大型建築物に採用される理由の一つが、鉄やコンクリートにはない、木ならではの魅力です。
先週完成した地上3階建てのこのオフィスビルには、2階以上の柱や、はりの構造材に木材を使っています。
木は鉄やコンクリートに比べ断熱性が高く省エネになるうえ、構造材をそのまま内装として見せても、ぬくもりのある空間を作り出すことができるのです。

「木に触ってみるというのが、とても気持ちよい、心地よいことだと思います。」

「この柔らかさとか、特に日本人が穏やかな気持ちになれるものだと思います。」

かつて日本では空襲などによって木造建築物が燃え、大きな被害をもたらしました。
その教訓から1950年、建築基準法で大型建築物の木造を禁止。
2000年に改正されるまで歴史の空白は続きました。
そして2010年、耐火性能が向上したとして、国は公共建築物をできるかぎり木造化すると定めた法律を制定。
学校などの公共施設から木造化が進んでいます。
背景には、日本の眠れる森林資源である木材の需要を増やし、林業を強化するというねらいがあります。

国土交通省 木造住宅振興室 林田康孝室長
「これまで木材が有効に使われてこなかったという反省があります。
さらに今問題となっております地球温暖化対策のためにも、これを長く使い続けるということが大変に重要です。」

建物を木造化する動きは民間の建築にも広がり始めています。
東京で建設中のこの集合住宅は、木造の5階建てです。
ひときわ目を引くのは、建物の周りに斜めに取り付けられた木の格子です。
この構造で、地震の水平方向の揺れを抑えることができるといいます。

品質にばらつきがありがちな木という素材でそれを可能にしたのは、エンジニアードウッド(集成材)の登場です。
鉄やコンクリートなどの工業製品さながらの精度や強度があり、耐震性能を科学的に解析できます。
そのため、法律で定められた耐震性を持ちながら、木ならではの美しいデザイン性がある設計が可能になったのです。

設計者 KUS一級建築士事務所 内海彩代表取締役
「昔の住宅だったら大工さんの勘に頼ったりするところが多かったところを、しっかり構造計算出来るようになってきたというのが、こういった大きい、あるいは高い建物を木造で造るように出来るようになってきた理由だと思います。」

この木造集合住宅を手がけた設計士や研究者が作った団体では、これまでにない斬新な都市の木造建築を提案しています。
巨大な樹木を思わせるオフィスビル。
木と同じように、しなやかに揺れを逃がす耐震性があります。
容易に壊せるという木の特性を生かして、部分的な建て替えが可能な集合住宅。
軟らかくて削りやすい木の性質を生かして、オブジェのようなおしゃれな空間を生み出す商業施設。
いずれも木造建築を街に生み出して、森林資源を活用しようという提案です。

東京大学生産技術研究所 腰原幹雄教授
「こういう木造建築を造って、こういう街を造るということが、木の文化をもってきた日本の威張れるところなんだとか、アピール出来るところなんだという方へ、日々考えながら建築を造るということがこれから必要になってくる。」

大型木造建築 広がる木の可能性

ゲスト安藤直人さん(東京大学大学院特任教授)

●今までのイメージを覆すような木造建築

住宅中心だったわけですね、木造は。
お寺さんはありますけれども、木造としては住宅ばっかり。
今のVTRに出てくるように、これからの商業施設とか、学校であるとか、より大きな建物に向かって、木造が今、推進されてると。
木材の強度、耐火性、それから耐久性、こういうものを兼ね備えた、設計できる木造、これが今これからスタートしているというところですね。

●構造計算できる材料がそれを可能にしたのか

材料もそうですし、日本の法律、あるいは今のレベルに合わせたものが供給できる、あるいはそれを工夫する、そういうことが今行われているということですね。

●大型の木造建築の流れというのは世界的なものなのか

そうですね。
日本というよりも、むしろヨーロッパを中心に、この10年ぐらい大変急速に進んでいます。
ヨーロッパは石、日本は木と思いがちですけれど、実はヨーロッパでも、石から木へ、転換がだいぶ起こっています。
その理由は、3つあります。
1つはヨーロッパでも森林資源が復活した。
もう1つは炭素の、実は蓄積になるということ。
これが評価される。

●炭素の蓄積とは

CO2の削減ということで、木っていうのは、実質の重さの半分が炭素なんですね。
ですからこれを放っておくと、燃やしてしまうとCO2ですけど、炭素で出来ているということで、ほかの材料よりはよほど有利で、それから造った建物は省エネルギー性を得やすいということがある。
こういうことで今、ヨーロッパでは木の、それも大型の建物が増えつつあるという時代です。

●断熱性について

断熱と言いますけども、要するに熱を逃がしにくい、あるいは外の環境を中と断絶できる。
ですから木というのは暖かいって表現されますけど、要は、熱を伝えにくい。
それで造った建物というのは、全体として省エネルギー性を得やすいということですね。

●加工にかかるコストについて

ほかの材料に比べたら非常に簡単に切削、切る、そしてそれを乾燥させるのに、やはりエネルギーは少なくて使える材料になるということですね。

●木造のメンテナンスについて

やはり日本の場合は、シロアリがいます。
それから夏の湿度、あるいは雪国の場合には冬の湿度、いろんな環境があります。
ですからそれにふさわしい建物を設計していく、あるいは補っていく、これも技術ですね。
これもだいぶ変わってきていると思います。

“木造化”がひらく 地域の未来

大型の木造建築を全国各地で建設している山形市の企業です。
従業員はおよそ100人。
学校や幼稚園、病院などの公共施設を中心に、この10年で500か所以上の建物を手がけています。


この会社の建物が注目されるようになったきっかけは、宮城県栗原市の庁舎です。
東日本大震災のとき周囲の建物には被害が発生したのに対し、ここでは損傷がなく、災害対策の拠点となりました。
このメーカーが耐震性が高い建物を次々と生み出すことができるのは、その工法に特徴があります。

シェルター 安達広幸取締役
「こちらが当社が開発した、“接合金物工法”の模型です。」

鍵は、この金具です。
従来は木材を加工し突起部分、ホゾを作り、それを差し込むホゾ穴を掘って木をつなぎとめます。

それに対しこの会社では、金具をボルトで留め、そこにもう一方の木に作った溝を差し込み、留めるだけです。
構造が単純なうえ従来の工法に比べて木の傷みが少なく、強度を保てるといいます。
建設現場では、工場で金具が取り付けられた材木を順に組み立てていくだけです。
熟練技術者でなくても仕事ができるため、新たな雇用を生み出すことができます。

シェルター 安達広幸取締役
「初めて見る職人さんもですね、これはここに使うってことがすぐ分かって、建て方も非常に速い。
結果はですね、工期が短縮出来て、もちろん安く出来る。」


今、この会社には、地域経済を活性化させたいと考える地方自治体からの相談が相次いでいます。
この自治体では、新たな公共施設を建てる計画が持ち上がっています。
これを木造で行い、木材は地域のものを使い、製材や建設もできるだけ地元の企業に発注し地域を活性化したいとしています。

南陽市 塩田秀雄市長
「同じ金額であれば、地元に少しでも残る、あるいは継続して地元の雇用につながる方がいいと。
これは明らかです。」


この地域は、山間部に林業関連の企業があります。
しかし、木を切り出す、加工する、という作業ごとにバラバラに仕事をしていて、売り上げは落ち込む一方でした。
そこで、このメーカーが仲介役となり、地域で取れる木材の性質や製材所の加工技術を確認しながら建物の設計・施工を行います。

米沢地方森林組合 川合要一組合長
「大量に地域の材を使っていただくというのは、非常にありがたいことだと思います。
これが無ければ山はもう壊れてしまいますからね。」


シェルター 木村一義代表取締役
「地元の大工さんや職人さん、左官屋さんとか、そういう人たちを雇用出来るんですよ。
そうすることによってお金が地元に還流される。
地域経済を活性化することにつながるわけです。」

木を建物だけでなく、町の基盤整備にも活用しようという取り組みも始まっています。
この日、大手住宅メーカーの社員が訪れたのは、東日本大震災で被害を受けた東松島市の市役所です。
メーカーでは市とともに、森林資源を地域のインフラ整備に使うなどの新たな町づくり、「木化都市」構想を進めています。
手始めに取り組んだのが、太陽光発電パネルを設置する金属製の台を木造に変えることです。

住友林業 木化推進担当 佐野惣吉チームマネージャー
「畑とか田んぼの上にこういう構造、木質の架台を使った太陽光の発電を、今考えているんですね。」

メーカーでは、これまで鉄で作られてきたガードレールや、コンクリートを使った道路整備などにも木を活用できるとしています。

住友林業 木化推進担当 佐野惣吉チームマネージャー
「これは木を軸にしておりますので、地方の都市どこにでも当てはめられるような話なんですね。
ここがトライアルとして実現していけば、汎用性が高いと考えています。」

去年(2012年)秋には、仮設の診療所を木造で建設しました。
東北産のヒノキで造られた診療所は木の香りが心地よく感じて落ち着くと、患者の間でも好評だといいます。
木化都市構想では建物やインフラ整備に可能なかぎり木を活用し、林業関連産業の活性化を目指します。
そして、木を燃料として使う木質バイオマスによるエネルギー産業や森林による癒やしを利用した医療エコツーリズムなどを興す計画です。

東松島みらいとし機構 佐藤伸寿事務局長
「徹底的に木という素材を使い尽くすというか、そういうことも含めて、今政策の中でですね、実現可能性を追いかけているわけです。」

“木造化”で林業再生 地域はよみがえるか

●ビジネスモデルを作るのに最も必要なことは

担い手を育てていく、あるいはそういう雇用を作っていく。
やはり仕事がないと、なかなか人も集まらない。
そして森林もうまく活用できない。
ですから活用策を巡って、これからビジネスモデルがいろんな所で始まるんだと思います。
人材を育てなければいけない、あるいはそういう、なり手を、旗を振る人を育てていかないといけない。
ですから今の例でもそうですけれども、いろんなところで、実は始まるんだと思いますよ。
設計の方というのも1つの理想なんですが、木材のことはあまりご存じない。
施工者は施工のことしか知らない。
これでは、なかなか連携ができない。
だから地域の中でも連携、それも地域の外まで連携をしていただいて、新しい木材の活用を図っていただくと、これには人が必要ということですね。

●木材を使うことで持続可能な社会への期待は

持続可能な国土を作っていかなきゃいけない。
そして社会も作っていかなきゃいけない。
ですからこの両輪を回していくには、林業をやはりきちっと再生していかなきゃいけない。
木を今、使ってくださいと言ってます。
ですけど同時に植えていかないと、50年後、100年後に使う木が、われわれの責任で作らないといけない。
これが今の、今のことなんですね。

●年月を重ねた木はCO2の吸収も悪くなると言われるが

ですから切る時期というのがありまして、もともと人が植えた木です。
これを回し始めないといけない。
今戦後の木が育ちましたので、いよいよ日本の木にもっと目を向けて、それをもっと加工して、利用して成形していく、これが重要だと思います。

●木材の持続可能性をその循環に埋め込むチャンスなのか

はい。
そしてそれと同時に、雇用、地域経済の活性化っていうもう1つのサイクル、今はそれも始めていくチャンス。
それとやはりその地域の持っている文化みたいなものを、そこに少し入れていくということもチャンスですね。

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス