クローズアップ現代

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No.33362013年4月17日(水)放送
“一人一人が勇気を” スー・チー氏からのメッセージ

“一人一人が勇気を” スー・チー氏からのメッセージ

スー・チー氏 単独インタビュー

ゲストアウン・サン・スー・チーさん(ミャンマー野党党首)

●議員になって1年 ミャンマーの改革は進んでいるか?

議会の改革という意味では、大変満足しています。
議会で起こっていることはテレビ放送され、透明性が高まっています。
人々が議会を批判できるようになり、議会の動きも早まりました。
ただ本当の改革とは、国民の生活が変わることだと考えています。
それはまだ実現できていません。
国民の多くが本当の改革は、まだこれからだと感じています。

ミャンマー民主化 スー・チー氏の闘い

先月(3月)行われたミャンマー国軍の創設を記念する軍事パレード。
そこに、軍の幹部と並んでスー・チー氏の姿がありました。
これまで鋭く対立してきた軍の式典に、スー・チー氏が参加するのは初めてのことでした。

ミャンマー独立の英雄アウン・サン将軍の長女として生まれたスー・チー氏。
1988年、当時の軍事政権に対する反政府デモに加わり、一躍、民主化運動のリーダーとなりました。

アウン・サン・スー・チー氏
「建国の父アウン・サンの娘として、皆さんの運動に参加します。」

しかし、軍事政権は武力で運動を弾圧。
スー・チー氏は自宅に軟禁され、延べ15年にわたって自由を奪われました。

転機が訪れたのは、一昨年(2011年)。
軍出身で穏健派のテイン・セイン氏を大統領とする新政権が発足しました。
新政権は民主化の進展を国際社会にアピールするために、スー・チー氏の政治活動を認めたのです。
スー・チー氏は政権の思惑も承知の上で補欠選挙に参加。
圧倒的な勝利を収め、議員として国の改革に乗り出します。

スー・チー氏の闘い 立ちはだかる軍

スー・チー氏が目指したのは、軍の強大な権限を保障している憲法を変えることです。
憲法では非常時に軍が政府の全権を掌握できると定めています。
議会でも4分の1の議席が軍人に無条件で割り当てられています。
憲法の改正には4分の3以上の賛成が必要で、軍の協力なしには不可能なのです。
残りの議席も軍とのつながりの深い与党が大半を占め、野党のスー・チー氏は厳しい立場に置かれています。

スー・チー氏の側近 ウィン・テイン議員
「スー・チー氏はいずれ大統領になって、改革の先頭に立ちたいと考えています。
次の選挙は2年後です。
彼女は70歳になります。
恐らく最後のチャンスでしょう。」

現実に向き合う スー・チー氏の闘い

圧倒的に不利な現実を前に、スー・チー氏は驚きの行動に出ます。
対立する与党のパーティーに足を運び、協力を呼びかけたのです。

アウン・サン・スー・チー氏
「私たちの党は議会の少数派です。
このままでは何も改革できません。」

さらに、軍事政権下で利権を独占してきた財閥にも接近。
国の発展に力を貸してほしいと訴えました。

アウン・サン・スー・チー氏
「貧しい地方の人たちは毎日懸命に生きています。」

建設会社やホテルなどを経営するキン・シュエ氏。
ミャンマーの不動産王と呼ばれています。
軍のトップとも緊密な関係を築き、巨万の富を手に入れてきました。
軍事政権を支援したとして、アメリカ政府による経済制裁の対象となっています。

キン・シュエ氏
「3か月前にスー・チー氏から声をかけてきました。
国の改革には、あなたたちの力が必要だと言っていましたよ。」



しかし、国民からはスー・チー氏が軍寄りの立場になるのではと危ぶむ声も出始めています。

男性
「スー・チーさんはもっと慎重に行動すべきです。」

女性
「スー・チーさん、あなたにはがっかりです。」

住民たち
「開発反対!反対!」

先月、これまでのミャンマーでは考えられない出来事がありました。
スー・チー氏が激しい非難の声を浴びせられたのです。
住民は軍の関連企業などが進める銅山の開発を中止するよう求めていました。
しかし、政府の調査委員会のトップを引き受けたスー・チー氏が、開発は国に利益をもたらすとして継続を認めたのです。

女性
「私の希望が打ち砕かれました。」

アウン・サン・スー・チー氏
「地域の発展に必要なんです。」

男性
「あなたは政権に利用されています。」

アウン・サン・スー・チー氏
「国のために利用されるならかまいません。」

民主化運動のリーダーから議員となって1年。
スー・チー氏は大胆ともいえる現実路線を歩み始めています。

●協力の重要性 その考えとは?

私たちはこの国のよりよい未来に大切なのは、国民和解、そして協力だと言ってきました。
共通の願いや目標に向かって協力することです。
これは決して変わりません。
常に私を導く理念でした。
何もかもこちらの欲しいものを手に入れるということではありません。
ギブ・アンド・テイクは100%こちらの要求を通すということではなく、相手の立場もよく理解することです。
そして両者が新しい状況で何かを得るということです。

●権力の移譲 その戦略は?

まず、私は、軍に対して権力を移譲するように求めているわけではありません。
軍として、より価値のある役割があることを理解してほしいということなんです。
人々が頼りにし、信頼し、愛するような軍ということです。
権力を手放すということではなくて、より名誉ある、よい役割を引き受けてほしいということなんです。

●2015年の総選挙での議席獲得 目標達成の見通しは?

ある憲法の専門家によると、今の(ミャンマーの)憲法は、世界で最も改正するのが難しいものだそうです。
こんなに改正のための条件が厳しいものはほかにありません。
憲法の主要な部分を変更するためには、議会で4分の3以上の賛成が必要です。
仮に私の党が、軍以外に割り当てられた議席のすべてを獲得しても、残り4分の1は軍人です。
ですから、選挙に勝つだけではなくて、軍の支持を得ることが大事だと思います。

●民主化の過程において、軍部を安心させることの重要性とは?

人々が変化を引き受けるには、安心感というものが必要です。
変化とは、何か未知の新しい領域に足を踏み入れることです。
それをしても大丈夫だと思えることが必要です。
それは軍だけでなく、誰にも言えることです。
何か新しいことを始めるときは、新たな場所に行ったとしても、大丈夫だという自信が必要なのです。

●交渉を通じた歩み寄りの重要性 その理解は容易ではないと?

交渉を通じた歩み寄りの文化がまだ根づいていません。
(それはなぜ?)これまでこの国では勝つことがいいと考えられてきたからです。
(勝つこと?)成功すること、勝つことです。
ですから私は、人々に、ただ勝てばいいのではなく、どのように勝つかが大事だと言っています。
信念や価値観を犠牲にして成功しても、それは本当の勝利とは言えません。
それは実際、失敗です。
敗北です。
ですから、どのように勝つのかということが、とても大事なんです。
また敗北も必ずしも敗北ではありません。
それで信念が強まった、あるいは、社会にとって一番よい価値観のために立ち上がったというのであれば、それは勝利と言えるかもしれません。
ですから、敗北と勝利は表面的に考えてはいけないんです。
信念、希望、未来の可能性をいつも考えるべきだと思います。

●そうした努力を阻む最大の問題は?

自分の進む道を見つけるには自信が必要です。
ほかの人に頼ってはいけません。
みずからへの自信です。
それから冒険心も必要です。
人生は冒険ですから。
そのような姿勢を持って失敗を恐れないことです。
失敗を恐れていれば、失敗すると思います。

●軍事独裁政権の復権に国民はおびえているか?

まだおびえている人はいると思います。
国民はまだ、民主化のプロセスの中で、安心感を得ている、そういう状態ではありません。
先ほども言いましたように、生活の変化を実感できていないのです。

スー・チー氏 父から受け継いだ“勇気”

今回の訪日で在日ミャンマー人の集会に参加したスー・チー氏。
祖国から離れて暮らす人々に語りかけました。

アウン・サン・スー・チー氏
「民主主義は人に頼らず、自ら勝ち取るものです。
勇気を持って共に祖国を変えましょう。」

スー・チー氏が強調した“勇気”という言葉。
今は亡き父親から受け継いだものです。
スー・チー氏の父、アウン・サン将軍。
独立運動の先頭に立ち、自らの言葉で人々を奮い立たせました。
人に頼るだけではいけない。
1人1人が犠牲を払い、勇気を持った英雄となれ。
アウン・サン将軍はすべての国民が自らの責任を果たすよう訴え、独立を勝ち取ったのです。
物心ついたときには、すでに父を亡くしていたスー・チー氏。
学生時代に父の足跡をたどり、その言葉に出会ったと言います。
その後、民主化運動に身を投じ、弾圧を受けたスー・チー氏を支えたのも、父の言葉でした。

スー・チー氏が当時の思いをつづった著書「恐怖からの自由」。
1人1人が自らの心を恐怖から解き放ち、自由を求めないかぎり国は変えられない。
欠かせないのは何事も恐れない勇気だと、父の言葉を引用していました。
改革の動きを決して後戻りさせてはならない。
スー・チー氏は人々に訴え続けています。

アウン・サン・スー・チー氏
「真の民主化の実現はこれからです。
私は決して勇敢ではありませんが、自らの役割を果たしてきました。
皆さん1人1人も自分の務めを果たしてほしい。」

●国民が勇気を持つこと 今の勢いを維持、加速するために必要

私は国民に自立してほしいとも思っています。
私や、私の党やほかの党に頼って、自分の望みをかなえようとせずに、参加してほしいのです。
人生でただで手に入るものは何もありません。
何かを求めるのなら努力しないといけないのです。
何もせず、ただ希望しているだけ、ほかの人がやってくれると期待するだけではだめです。
自分でやらなければなりません。
誰でも究極的には自分しかありません。
勇気にはいろんな形があります。
体で示す勇気だけではありません。
道徳的な勇気、その最高の形は、自分を真正面から見据えて、自分が正しいことをしているかどうかを決めることです。

●恐怖に支配された国民の意識を変えることは難しいのでは?

それが簡単なことだと言った覚えはありませんよ。
課題が大きければ大きいほど、やりがいも大きくなるはずです。
誰でも人生を始めたときよりも、それをやることで自分が成長することが分かっているのに、その課題に取り組まないような人生を望まないと思います。

●父から大きな影響を受けてきた?

はい。
しかし育ててくれた母のことも忘れてはなりません。
父は私が2歳のときに亡くなりました。
母は私を育て、父の信念を伝えてくれました。
(今、この部屋に入ってきたら、なんと言いたい?)私はベストを尽くしています、見守ってくださいと言うでしょう。

●以前は政界に魅力を感じないと答えていたが?

人はただ魅力的だから何かをするわけではありません。
しばしば人はやるべきことを考えて、状況にみずからを合わせます。
ただ、したいことをするのではなく、やるべきことをするのが人生です。
(大統領になる自信は?)私が大統領になれる可能性はあると自信を持っています。
しかし、大統領になるという自信があるとは言いたくありません。
それは、人々が私に投票してくれるということだからです。
それは国民が決めることで、私が決めることではありません。

●時間との闘いという気持ちは?

いいえ、そうは思いません。
与えられた時間を最大限に活用しています。
時間との闘いとは思いませんが、時間は大切に使おうと思います。
(2015年まで2年しかありませんが?)政治の世界では2日でも長い時間です。
まして2年は長いと思います。

●スー・チー氏にとっての希望とは?

私の希望は、この国を安心で自由のある、よりよい国にしたいと願うすべての国民が、結束力とそして、懸命の努力によって、その夢をかなえることです。

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