クローズアップ現代

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No.33332013年4月11日(木)放送
“偽装質屋”狙われる高齢者たち

“偽装質屋”狙われる高齢者たち

安物に多額の貸し付け “偽装質屋”の実態

偽装質屋で金を借りていた74歳の男性です。
2か月に一度支給される年金は15万円。
糖尿病や白内障の治療で医療費がかさみ、一昨年(2011年)、福岡市の偽装質屋に通い始めました。


偽装質屋の利用者
「最後に預けてたの、これね。」

預けたのはリサイクルショップで買った2,000円の時計です。
借りられたのは10万円。
元の金額の、実に50倍でした。

偽装質屋の利用者
「2,000円くらいの時計を持っていたから、持っていった。
『10万円出ますよ』と言うから、そんなに出るのかなと思って。」

本来の質屋との違いは

偽装質屋が10万円の値段をつけた時計を、創業50年の質屋で査定してもらいました。

「この時計を見ていただきたいんですけども。」

質屋経営者
「ちょっと、うちではちょっとお値段がつかないんですよね。
申し訳ございません。」

本来、質屋で10万円を借りるには、どんな品物が必要なのか。

質屋経営者
「10万円ですね。
これ、カルティエの時計ですけど、こういうのは、まあ10万は間違いなく出ます。」

「定価でいうと、いくらぐらいするもんなんですか?」

質屋経営者
「(定価)52万5,000円ですね。
それなりの担保価値がないと、10万円以上にはならないですね。」

高齢者狙う “偽装質屋”の手口

なぜ偽装質屋は、担保価値のない時計で10万円も貸したのか。
どのような手口で利益を上げているのか。
関係者が取材に応じました。

偽装質屋の関係者
「年利で見たら(貸し金業より)質屋の方が高い。
質屋として登録して、質屋でとれる金利の範囲内でやって。
いいこと尽くしじゃないか。」

業者が目をつけたのは、質屋だけに許されている高い金利です。
質屋は預かった品物の管理に多くのコストがかかるため、法律上は最大109.5%の金利が認められています。
次に業者が狙うのは、高齢者の年金を実質的な担保に取ることだと言います。

偽装質屋の関係者
「年金の方が安定してますよね。
入ってくる金が決まっているから、年金受給者は条件がそう変わらない。」

業者は高齢者に、貸した金を口座引き落としで返済する契約を結ばせていました。
年金の支給日。
2か月分の年金15万5,000円が振り込まれた直後、12万4,000円が引き落とされます。
借りた10万円に対する利息は2万4,000円。
年利に換算すると、実に96%の高金利です。
価値のない品物を預かり、実際には年金を吸い上げる仕組みです。

偽装質屋の関係者
「こちらから頼んで、“借りてください”とは言っていない。
あなたたちが借りに来たんでしょ、こういう条件で“いいか”と、“いいです”と。
貸してるほうからすれば、助けてやっている。」

警察は質屋を装って違法な貸金業を営んでいた疑いで、この業者を家宅捜索しました。
利用者は3,000人以上。
立件に向け、捜査が続いています。

質屋装う 新たなヤミ金

摘発された偽装質屋の関連会社が所有するビルです。
裏側には貸金業の看板。
この業者は、かつて高齢者を相手にする貸金業者でした。
方向転換を迫られたのは平成19年。
グレーゾーン金利の撤廃が決まったことでした。
多重債務者が社会問題化し、29.2%まで認められることもあった金利の上限が、20%に引き下げられました。
そこで、新たな稼ぎ口として法律上高い金利が認められている質屋を偽装したのです。

高齢者を逃さない 巧妙な集金システム

さらに、巧妙なシステムも編み出していました。
口座引き落としを利用して、高齢者が何度も偽装質屋に通い続ける仕掛けです。

この高齢者の場合、15万円の年金が支給された同じ日に、借りていた10万円とおよそ2万円の利息が引き落とされます。
借金は完済しますが、手元には3万円しか残りません。
これでは生活ができない高齢者は再び偽装質屋から10万円を借ります。
2か月後、15万円の年金が振り込まれると、同じように、借りた10万円と利息が引き落とされます。
生活ができない高齢者は、またも偽装質屋から金を借ります。
こうして偽装質屋から繰り返し金を借りざるをえない状況に陥った高齢者は、多額の利息を払い続けることになるのです。

被害を受けた男性
「年金の期日が来たら、自動的に払うから借金が残らないでしょう。
借りた感覚がなくなる、不思議だね。
汚いよな、年寄りの年金狙い。
弱いものいじめになる。」

各地に広がる “偽装質屋”

摘発された業者は廃業しましたが、偽装質屋は九州を起点に各地に広がっています。
NHKの取材で、偽装質屋が確認できた都道府県は15に上っています。

「どんなものを質に入れた?」

偽装質屋の利用者
「どんなものでもいいから、値なんか付いても付かなくてもいいから。
一応形として質屋だから、形として入れてくださいということで。
高価なものは入っていない。」

価値のない品物で金を貸し、多額の利息をむさぼる偽装質屋。
警察庁はヤミ金の新たな手口として警戒を強めています。

“偽装質屋” 狙われる高齢者たち

ゲスト黒瀬総一郎記者(福岡放送局)

●高齢者狙う “偽装質屋”の実態

今回、偽装質屋を利用する数多くの高齢者に話を聞いてきました。
多くは貯蓄がなく、1か月7万円から8万円ほどの年金に頼る人たちでした。
高齢者でも安心だなどと書かれたチラシを見て、利用を始めていました。
病院代ですとか、冠婚葬祭、ほんの2、3万円の出費がきっかけで、借りることを始めて、一度借りると、深みにはまって、なかなか抜け出せなくなるんです。
ただ、従来のヤミ金のように、偽装質屋は厳しい取り立てもなく、生活が破綻するほど貸し付けられることもないです。
貸し付けは年金の収入の8割から9割にとどめられ、生かさず殺さずで、長期的に搾取されるんです。

●本来の質屋 非常に腹立たしい状況では?

そもそも質屋に109.5%の金利が認められているのは、預かった品物を鑑定したり、倉庫で保管したり、売却したりするコストがかかるためです。
それでも質屋は、競争の中で金利を下げる努力をしています。
偽装質屋はこうした質屋のコストですとか、リスクを負わずに、一律に高金利を取っているので、悪質です。
また本来の質屋は、担保は品物ですから、客の年金額や収入を確認することはありません。
また本来の質屋が口座から自動引き落としで返済させることもありません。

●“偽装質屋” 取り締まりは?

これまでに福岡県ですとか、鹿児島県など、4つの県で業者が摘発されています。
ただ、お年寄りの被害は目立つものではなく、広く、薄く、水面下に広がっているので、なかなか摘発が進んでいません。
しかし、一度使うと抜け出せなくなり、被害も大きくなるので、取り締まることが求められます。

“偽装質屋”頼る 高齢者の実情

「通帳。」

「出てきた。
お金を持っている。」

2か月に一度の年金支給日。
偽装質屋には、朝早くから次々と高齢者が訪れます。

「すみません、NHKの者なんですけれども。
利子高くないですか?」

偽装質屋の利用者
「高いよ、それを承知で行っている。
金がないから。
国が高い利子を取るところを挙げるじゃない、どうしてするのか。
なくなったら困る。」

「他に借りられるところは?」

偽装質屋の利用者
「どこも知らない、教えて。」

偽装質屋の利用を続けている76歳の女性です。
夫は入院中。
医療費や生活費を補うために安物の財布を質に入れ、金を借り始めました。
年金以外に収入はありません。
消費者金融には年齢を理由に融資を断られました。
離れて暮らす2人の子どもも、それぞれ子育て中のため、お金の相談はできないと言います。

偽装質屋の利用者
「今の子どもは頼れん、絶対頼れん。
自分の生活がいっぱいいっぱいだから。
嫁さんもかわいそうだし、そういう時代やないの。
子どもに迷惑かけたらいけないとも思う。」

年金支給日の前日、生活費は底をつきます。

偽装質屋の利用者
「今あるのはこれだけ。
221円。」

金利は高いが、誰にも迷惑をかけずに金が借りられる。
偽装質屋だけが頼みの綱だと言います。

偽装質屋の利用者
「あしたが楽しみだ。
楽しみか苦しみか分からないけど。
不安な人生。」


偽装質屋を頼る高齢者には、共通点があることも分かってきました。
多くのお年寄りが唯一、年金を担保にすることが認められている国の貸付制度を利用していたのです。
年金額の1年分を上限に融資が受けられます。

福岡県に住む66歳の男性です。
3年前、仕事で使う車を購入するため、上限いっぱいの97万円を借りました。
返済は7万円ずつ。
2か月に一度支給される厚生年金15万円から自動的に引かれます。
受け取る年金が半分になって、生活が苦しくなり、偽装質屋を頼るようになりました。
多額の金を借りられる国の制度を使ったことで、かえって苦境に陥ったのです。

偽装質屋の利用者
「実際借りてみると、なかなか返済も厳しいんだなと痛感。
借りた時はそうは思わなかったが、限度があったんでしょうね。
それで最終的に(偽装)質屋まで行ったのが流れです。」

去年(2012年)2月、母親が亡くなり、男性は急きょ、葬儀代として50万円が必要になりました。
当時、国の制度からの借金が35万円残っていて、追加の融資は受けられない状況でした。
頼ったのは、またも偽装質屋でした。
偽装質屋は男性に35万円を貸し付けて全額を返済させ、新たに94万円を借りさせました。
そこから5万円の利息をつけて、40万円を回収。
結果的に偽装質屋は5万円をもうけ、男性には94万円の借金が残りました。

偽装質屋の利用者
「借金してでも葬儀だけは終わらせたいという気持ちが強かった。
業者が悪いという気持ちは正直ない。
借りる側としては、本当に助かりましたね。」

ゲスト宇都宮健児さん(弁護士)

●“助かっている” 被害者の声をどう聞くか?

この問題は、ちょうど2000年代の初めごろ、やはり貸金業者が年金を担保に取って、違法行為をやってたんですけど、そのときも同じような声が聞かれたんですけど、まず、年金が担保に取られてますから、強行的な取り立てが行われないんですね。
だからあまり被害者意識を持ちにくい。
それから、年金が入るたびに、借りに行って、実際は借金をしてるんですけど、年金生活者の立場からすれば、生活費をもらってくると、そこに行ってですね。
そういう感覚に陥ってしまうので、むしろ助けてもらってる、こういう感覚を抱きやすいやり方なんですね。
(それだけお年寄りにお金を貸すところがない?)そうですね。

●“偽装質屋”被害 年金担保制度の課題

VTRにも出てきましたけど、国の唯一、年金を担保に貸し付けることができる福祉医療機構というのがあるんです。
ただ、ここは年金を担保に取って貸すんですけど、その間は、年金が全額支給されないんですね。
減額だったり、あるいは半額しか支給されない。
生活が苦しいから、それを補うために、またヤミ金なんかの被害に遭うという問題がありますね。
それから公的な融資制度として、社会福祉協議会がやっている生活福祉資金貸付制度があるんですけど、これはあんまり知られてないんですね。
なぜかというと、かなり融資した、焦げ付きが多いので、大々的に宣伝すると、またそれが膨らんじゃうということで、本来なら、そういう公的な融資制度をもう少し利用しやすくして、広報を徹底的にやれば、こういう偽装質屋が出てくる余地はないと思うんですけどね。
(その社会福祉協議会がやっている融資はどれぐらいの金利で貸してくれるか?)それは今、1.5%だったと思います。
さらにもし、連帯保証人がつけられる場合には、0%で借りられます。
(そういったところが機能すれば?)業者に頼る必要はないですね。

●高齢者支える 融資のあり方

2006年の法改正のとき、高利を規制するけど、やはり低所得者に対する、セーフティーネット貸し付けの充実が必要だと。
当時、言われたのは日本版グラミン銀行を広げる必要があると、そういうスローガンがあったんですけど、あまりまだ広がってないんですけど、例えばそういう試みとして、福岡のグリーンコープ福岡という、生協の事業の一環として、融資もするし、利用者の生活の再建のために、家計チェックをやると。
だからより伴走型支援というんですかね、パーソナルサポートを支援しながら、融資もしますので、確実に回収できる。
ところがそのパーソナルサポートなんかをやってる民間団体には、資金がありませんので、やり方としては公的資金をそういう民間団体に、援助するのと同時に、そういう民間団体がもう少し、利用者の立場に立って、利用者を生活再建できるように、支援していくっていうことが、そういう制度が広がればいいなと思っています。

●高齢者にアドバイスするような人材が必要か?

やはり家計状況全般を点検してあげて、そして利用の仕方、返済の仕方、そういうことをアドバイスすることが必要ですよね。
もちろん、セーフティーネット貸し付けというのは、返済可能な人が、そういう所を利用できるところで、もともと返済ができないぐらい、年金が少ない場合は、場合によれば、生活保護の利用なんかも考えるべきですよね。

●“偽装質屋” 被害者はどうすれば

私は直ちに、全国の弁護士会に相談窓口がありますから、そこに相談をしていただきたいと思うんですね。
大体、多重債務の相談は無料になってます。
そして弁護士が間に入れば、年金を取り戻すことができます。
また、偽装質屋の業者と交渉して、支払いをストップしたり、あるいは払い過ぎたお金を取り戻すこともできるんですね。
基本的にはヤミ金の場合は、払ったお金全額取り戻すっていう判例もあるんですけど、少なくとも利息制限法で引き直し、計算した。
(上限が20%ですよね?)そうです、その差額については、払い過ぎたお金を取り戻すことができるということですね。
これは司法書士会でも同じような相談をやっていると思います。
(セーフティーネット的な融資制度が不十分?)そうですね。
まさに日本版グラミン銀行の普及が求められているということですね。

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