クローズアップ現代

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No.33322013年4月10日(水)放送
広がる地下迷宮 ~都市の地下開発最前線~

広がる地下迷宮
~都市の地下開発最前線~

地下開発最前線 前代未聞の突貫工事

8つの路線が乗り入れる巨大ターミナル、渋谷駅です。
地上にあった東横線のホームが突然、地下に潜り、駅の構造が一変しました。

女性
「東横線乗り場はどこですか?」

駅員
「東横線はそこを下りて頂いて、地下5階になります。」

駅員
「山手線?
山手線はJRなので西口に回ってください。」

1日の乗降客は300万人。
歩き慣れた風景ががらりと変わり、迷子になる人が続出しています。

地上2階から地下5階へ。
巨大ターミナルが一夜にして切り替わる日本鉄道史上最大最速の引っ越しでした。
3月16日、0時50分最終列車が出発しました。
前代未聞の突貫工事がここから始まります。

地下化されるのは渋谷と代官山間の1.4キロ。
すでに8年がかりで地下トンネルを地上の線路の下に掘り進めてあります。
始発までの4時間でトンネルの出入り口を塞ぐ地上の線路を剥ぎ取り、新しい地下の線路とつなぎ替えるのです。
渋谷の隣、代官山駅では総勢1,200人の作業員が動き出しました。
全員に秒単位の緻密なスケジュールが割りふられています。
午前1時1分、地上のレールを106メートル切断する作業が始まりました。

作業員
「引き寄せてください。」

切断した線路を土台ごと大型クレーンで撤去していきます。
作業開始から、およそ1時間。
地面の下から地下の線路が姿を現しました。



地上の線路を剥ぎ取り終わると、今度は地上側のレールを沈め、地下のレールの高さに合わせる作業です。
76メートルにわたって線路ごと油圧ジャッキで引き下げられます。

作業員
「下げるぞ。」

28台の油圧ジャッキを同時に動かし、数十トンある線路を1.7メートル降下させます。
地上と地下の線路を一体化させるボルトを締めれば作業が完了です。

4時46分、すべての工事が終了しました。
地上線路の真下に地下トンネルを用意しておいて最後につなぎ合わせる。
この手法を使えば、あらゆる鉄道の地下化が可能だと言います。
5時6分、始発電車が無事通過。
完璧にスケジュールが守られました。

東急電鉄広報部 矢澤史郎さん
「都市化が進んで過密している中で、オンタイムで時間に正確にかつ安全安心に、間違いなく事故のないように工事を進めていく技術力というのは、本当に誇るべきものだなと心底思います。」

日本が独自に鍛えた 地下開発の技術力

日本の地下開発は数々の難工事によって鍛えられてきました。
最初の地下鉄、銀座線です。
1925年、上野と浅草を結ぶ2.2キロの区間の工事が始まりました。
主な現場は路面電車の真下です。

地上の道路を掘り返し、人が入れる深さまで掘ったところでふたをする開削工法という方法でした。
深夜、路面電車の終電が出たあとレールを一時的に撤去し、作業を始めます。
そして、始発までにまた元に戻す。
これを毎晩、繰り返しました。
当初は土木学者や研究機関から海に近い東京の地盤は緩く、地下鉄建設には耐えられないと猛反対を受けていました。
そのため、トンネルは鉄骨とコンクリートをふんだんに使い、とことん頑丈につくられました。
工事期間は2年。
強度は現在の工事と比較しても遜色ないレベルです。

その後も日本は地下鉄工事技術を進化させていきます。
1965年、東西線の工事ではシールド工法という画期的な技術が採用されました。
穴を掘りながら後ろでトンネルが崩れないよう同時に壁を構築します。
地上の交通を妨げずに工事が可能となりました。
出来たトンネルの壁を1つ数トンのコンクリート製の部品で固めていきます。
ところが、最先端部分の掘削はまだ人間に頼っていました。
最大の敵は地下水。
掘り進めていくと思わぬ場所から水が噴き出したり、水を含んだ泥が崩れます。
地下水を封じ込めるため、現場を高圧空気で満たす方法が編み出されました。
特殊な設備で密閉し、その中に人間が入ります。
気圧は最大で地上のほぼ4倍。
ひどい耳の痛みに襲われます。
気温も35度を超え、まさに命を削るような工事でした。

今や掘削作業は機械による無人化が進んでいます。
スピードは、かつて1日2メートルが限界でしたが、今では20メートル近く進められます。
鍛え抜かれた地下工事技術を駆使して作られたのが、最も新しい副都心線です。
ほかの地下鉄のトンネルを避け、激しいカーブとアップダウンを繰り返します。
副都心線、新宿三丁目駅。

「あちらをご覧ください。」

ホームの安全柵、よく見ると手前は低く、中央で少し高くなり、奥はまた低くなっています。


新宿三丁目駅が建設されることになったのは丸ノ内線と新宿線の間。
電車が通るスペースがぎりぎり足りませんでした。
そのまま掘ると、下の新宿線とぶつかってしまいます。
そこで副都心線のトンネルをアーチ状に曲げて切り抜けました。
それでも、下を走る新宿線との隙間は僅か11センチ。
この工事は機械任せではなく人間の手と目で慎重に確認。
駅の完成に7年かかりました。

東京メトロ 改良建設部 岡田龍二さん
「この下に都営新宿線が走っていますので、それを浮き上がらないように。
一方、丸ノ内線を支えながらということで、メトロとしてはかなり難易度の高い駅だと思います。」

広がる地下迷宮 知られざる最前線

ゲスト粕谷太郎さん(都市地下空間活用研究会)

●僅か11センチの空間 大丈夫なのか?

トンネル自体が長いシャフトになってますから、それは安全ですね。
列車みたいなものが通る所については、計測をしたりして、管理してますから、安全。

●トンネルが下がってきたり、上がってきたりで接触することは?

地盤が安定してますから、そういうことはありえないと思います。
(運行中でも計測が続けられている?)ですね。

●大都心の地下鉄 カーブが多いわけは?

そうですね、公共の用地の下を通るということになりますと、ほとんど道路を掘っていきますので、こういう茶筒状のトンネルを掘る機械が、道路の中を走っていきますと、交差点の所なんかでは、これは曲がらなきゃいけないと。
ところが、急カーブであれば、この機械が変化をして曲がっていけるようなものになるということであります。
(機械そのものが曲がる?)はい。
それから例えば駅部の所であれば、3つのトンネルがくっついた。
3つの所がくっついたような状態。
それから道路の幅が制限されていると、例えば2つのこういうトンネルがくっついたような状態のマシンも、技術開発がされていると。
(一気に駅のスペースが掘れる?)そう、掘れてしまうということですね。

●シールド工法 掘った土は?

後ろで枠を組んで、構造物をつくっていってしまうと。
(壁も造っちゃう?)壁をつくっていってしまう。
掘った土は、そのまま地上まで運び出して、処理をするということになります。

●シールド工法 海外での活用も

日本の技術というのは、やはり地盤の軟らかい所、悪い所で経験を積んでおりますので、いろんな要素技術が開発されています。
例えば、掘った後ろの部分でセグメントを組み立てますけど、その隙間には水が入ったりしますので、そこで水がトンネル内に入らないようなワイヤーブラシとか、テールシールとかいうのも開発されてますし、こういうものは海外のドーバーのトンネルの、ドーバー海峡のトンネルの機械にも採用されたりしてますし、先ほどのいろんな形をしたトンネルなんかは、アジアのほかの国でも使われているということになろうと思います。

●ベトナムの地下鉄建設での使用も?

今、計画がされてますし、地下鉄のほかにも、地下街も一緒に併設しようというような計画がございまして、国を挙げて、今、そういうような技術の売り込みをしているというところでございます。

●カーブが多くなった路線 用地の制約が?

先ほど申し上げたように、やっぱり道路の中を掘っていきますと、曲がるときには、交差点の所を曲がるような形になりますから。
(使える用地が、公共の道路の下だけ?)はい。
(民間の道路、土地の下を使う場合は?)用地買収をするなり、またお借りするということになろうかと思います。

●その場合コストが上がる?

上がってしまいます。
(なるべく公共の道路の)下をという発想でやられていると思います。

過密化する地下 インフラ 地球3周分

埼玉県春日部市のとある公園。
その地下に…20階建てのビルもすっぽりのみ込む巨大施設があります。
近隣の河川が大雨で氾濫の危険に見舞われたときに水を取り込む洪水対策施設です。
先週末、首都圏を襲った豪雨の際にも稼働し、地上を洪水から守りました。

都心では世界で一番長い都市の地下道路が完成しようとしています。
鉄道や河川が入り乱れる東京の地下。
その隙間を縫うように走る全長18キロの高速道路です。
電気、ガス、通信などのライフラインも人知れず地下へ地下へと潜っています。

国土交通省が管理する地下トンネル共同溝。
ライフラインを一括収容するための施設です。
都心の国道の下、すべてに整備されており総延長は100キロを超えます。


国土交通省 関東地方整備局 牧野光芳さん
「都内を見ると、これだけの人口密度の中で、電力も非常に使っているのに高圧鉄塔が一切ない。
高圧鉄塔にのっている幹線系がこの共同溝の中に入っている。」


地下開発が進むことで、これまでにない事態も発生しています。
地下の過密化です。
こうした地下施設はどれも道路などの公共地の下に集中しています。

例えば、銀座の大通りの地下。
道路工事用の特殊な地図で見てみると、さまざまなライフラインが激しく入り乱れています。
東京23区だけで、電力、ガス管、水道管、通信それぞれが数万キロになり、合計すると実に地球3周分の長さにも達します。

東京大学 都市空間情報学 柴﨑亮介教授
「都市に対して再開発の需要があるので、どんどん地下は混んでいく。
すぐ使える浅いところは、どんどん枯渇しています。」

開発はさらに深く 注目される“大深度”

地下開発促進のために国が2000年に制定したのが通称、大深度法という法律です。
地下40メートルより深い空間は通常利用されないと考え、この空間を大深度と定義。
民間所有地であっても補償金なしに地下開発を認めるというものです。
首都圏、中部圏、近畿圏の3大都市圏だけが対象で、公共の工事に限られます。
大深度法が初めて利用されたのが神戸市の中心部で進む水道トンネル事業です。
地下40数メートルの深さに大地震対策の巨大な水道管をつくる工事が進んでいます。
地震発生時には、数万トン分の飲料水タンクとしても利用できる施設です。

当初、この計画は民間の土地を避け、道路の下を掘るルートを想定していました。
しかし、実際には大深度を利用することでルートが1キロ短縮し、しかも工事費用は23億円、およそ3分の1の節約になりました。

大深度法は巨大プロジェクトの追い風になっています。
2027年の開業を目指すリニア中央新幹線。
来年度にも建設が始まります。
ルートの多くが地下を通る計画で、中でも、東京や名古屋周辺では大深度法を利用した地下トンネルになる予定です。
時速500キロで走るには、コースは極力直線であるのがベスト。
大深度地下ならそれが実現できます。
ほかにも東京の練馬・世田谷間の16キロでも大深度を利用する地下高速道路が建設される予定です。

広がる地下迷宮 知られざる最前線

●複雑で大規模な地下空間 暮らしの安全は?

ですから、例えば安全面で考えますと、地震や何かは地下に入れば入るほど、深くなるほど、揺れが少ないという特性がございますから、これはいろいろな地震のときに証明されているということがございます。
また弱点の中では、最近多発するゲリラ豪雨とか、最近注目されている津波みたいなものに対しては、出入り口の部分で対応する場合と避難する場合、2つのパターンございますので、例えば集中的に発生するゲリラ豪雨に関しましては、出入り口に止水装置をつけるということで対応をする。
(せきみたいなもの?)そうですね、それからもう1つ、津波みたいなものは一時、地震が起こったあと、安全を確認した中で、地下から高い所へ避難をしていくということになろうかと思います。
(近くのビルか何か?)そうですね、連携を模索しながらやっていく状況でございます。

●全体が見えない地下 安全な場所が分かりにくいのでは?

地下の場合は、地下街等も含めまして、停電に関しましては、非常電源がありますので、ご心配なく人が移動できるような明かりは常に確保されております。
ただいろんな複雑な地下通路、地下街ですと、高さの感覚が分かりませんので、今、われわれ、千代田区と一緒になってつくっておりますのは、東京駅周辺でも高さの違う所は、色分けをして、位置が深い、浅いが分かるようにする。
やはりそれも、訓練というものがどうしても必要になりますから、そういうものを活用できるような訓練をしていく。
当然、サインシステムも充実させていかなくてはいけませんということになろうかと思います。

●地下の防災の弱点 洗い出していく必要も?

ですから、やはり、弱点の部分は人が関わりますから、訓練というのは、やっぱり重要でありますし、例えばディズニーランドでやっておられるような、180日、年間、訓練をするというように、いろんな人が関わった訓練を繰り返すことによって、安全の対応ができていくんではないかと思います。

●これからどんな開発が進んでいくか?

例えば、東京で考えますと、老朽化している首都高に関しましては、やっぱり景観の問題もあったりします。
中では、地下化というものも選択肢の1つでありますので、技術開発なども進んでいる昨今でありますので、地下化ということが進んでいくんではないかというふうに考えています。

●地下の活用、安全なメンテナンスの両輪で考えていく?

そうですね。
やはりまだやることがいっぱい残ってますけど。

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