クローズアップ現代

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No.33232013年3月12日(火)放送
“3Dプリンター革命” ~変わるものづくり~

“3Dプリンター革命” ~変わるものづくり~

夢の印刷機 3Dプリンター

今、1台の車が脚光を浴びています。
ボディーを3Dプリンターで作った電気自動車です。
目を引く近未来的なデザイン。
製品化を目指して開発が進められています。

実はこの車、製造したのは自動車メーカーではありません。
自動車が好きな人たちが集まって作りました。

「電気系統を担当しています。
仕事は航空産業です。」

「ボディと内装をデザインしています。
環境関係の仕事をしています。」

彼らは工場を持っていません。
一体、どうやって自動車を作ったのでしょうか。
開発チームのリーダー、ジム・コーさんです。
この日、訪れたのは3Dプリンターの製造会社です。
電気自動車は、ここにある3Dプリンターを借りて作っているのです。
今、印刷しているのはバンパー。
素材は、硬くて熱に強いプラスチックです。

通常、バンパーは金型から作った複数の部品を工場で組み立てています。
一方、3Dプリンターなら1つの部品として一度に作ることができます。
時間とコストを大幅に減らすことが可能です。


開発チーム ジム・コーさん
「3Dプリンターがあれば、工場のような生産設備を持たない小さなグループでも車を作れます。
3Dプリンターの可能性は無限大です。」


3Dプリンターによるものづくりはさまざまな分野に広がっています。
3Dプリンターで作ったバイオリン。
あの名器、ストラディバリウスのコピーです。
本物のデータがあれば、簡単に作ることができるのです。
ファッションの世界でも使われています。
3Dプリンターなら今までになかった洋服も作れます。

世界で活躍するミュージシャン、レディー・ガガさんが着ているこのドレス。
複雑なデザインも自由自在です。

デザイナー
「3Dプリンターがあれば、デザインの制限がなくなります。」

3Dプリンターは医療現場にも導入されています。
東大病院が3Dプリンターで作ったのは、なんと人工の骨です。
事故や病気で骨を失った人に移植します。
使うのは、骨に近いリン酸カルシウムという物質です。

「非常に大きな人工骨を移植していますけれども。」

3Dプリンターで作った人工の骨は、あごにぴったりとはまります。
CTスキャンしたデータを使うので、形が合うのです。
さらに海外ではこんな研究も進められています。

「細胞を一つ一つ打ち出して、臓器を作ります。」

3Dプリンターで細胞を積み重ね、血管や臓器を人工的に作ろうというのです。

「SFの世界が現実になろうとしています。」

東京大学医学部附属病院 髙戸毅教授
「将来は恐らく肝臓、腎臓、心臓といったものも再生が可能だというふうに考えられておりますけれども、そのためにもこの形を作る技術というのは、大きな研究の一翼を担うと考えます。」

3Dプリンター 広がる可能性

ゲスト小林茂さん(情報科学芸術大学院大学准教授)

●3Dプリンターでできるもの

これは僕の顔の写真を2枚送ると、そこから、3Dプリンターでこういうのを作ってくれるというサービスで作ったものなんですね。
この色はあとでつけたものではなく、色もついた状態で出てきます。
これらはすべて3Dプリンターで作ったものです。


ドライヤー、スマートフォンのケース、タイヤ、さきほどの人工骨。
プラスチックが多いんですが、金属のものもあります。
アイアンや、航空機のジェットエンジンの部品。
これはもう実用化されているものです。


金属の場合も、粉状にした金属にレーザーを当てて、それで焼いて固めて作るんですね。
ちょっと前までやっぱり3Dプリンターって、かなり高かったんですね。
例えばさきほど出てきたようなプリンターでも、1,000万円ぐらいとかしていたんですが、今、あれだったら200万円ぐらいに下がってきたりとか。
最近、もっとホビー用のものなんかになると、十数万円、場合によっては数万円ぐらいの安いものも出てきたんです。
実は私も個人的に買ったのが1個あるんです。

●3Dプリンターによるものづくりの変化

従来の作り方でいくと、例えば、いろんな家電製品の外側のところを作るときなんかは金型というのを作って、枠組みを作って、その中に樹脂を流し込んで形を作っていくというようなことをやっていったんですね。
そうするとやっぱり1個1個の金型にお金がかかりますので、じゃあ、気軽にいくつかのアイデアを試してみようということはできないんですけど、それが3Dプリンターを使うと、3Dのデータからいきなり形が作れます。
例えば10個ぐらい、いいアイデアがあって、昔は1個に絞り込んでいたのが10個作って、実際に触って試して、じゃあこれが一番いいからこれにしようというような、そういう作り方ができるようになってきたんですね。

ものづくりが変わる “3Dプリンター革命”

ニューヨークに住んでいるスティーブ・スコットさんです。
恋人や友人に、自分でデザインしたものをプレゼントするのが趣味です。



スティーブ・スコットさん
「彼女に以前贈った指輪です。
ありきたりの物はあげたくないんです。」

世界に1つしかないオリジナルのプレゼント。
デザインは自宅のパソコンでしています。
スコットさんは、そのデータをインターネットで3Dプリンターの印刷会社に送っています。
プレゼントが作られ自宅に届けられる仕組みです。
作製を依頼してから2週間後、プレゼントが完成しました。

スティーブ・スコットさん
「すばらしい、本当にきれいだ。
友人も気に入るよ。」



スティーブ・スコットさん
「心の底から作りたいものが作れます。
3Dプリンターは、すべてのものに個性を与えてくれます。」

このサービスを行っている、3Dプリンターの印刷会社です。
この日、開かれた工場見学会には多くの利用者が集まりました。
オンリーワンの商品が欲しい。
3Dプリンターによって、消費者の意識が少しずつ変わろうとしています。

「趣味の立体パズルが自由にデザインできるんですよ。」

「自分の家の雰囲気に合ったコップや花瓶を作りました。
いつも完璧なものが手に入ります。」

こうした消費者の意識の変化を捉え、新たな市場を切り開く動きも出ています。
東京・秋葉原にある、社員8人の家電ベンチャーです。
社長の岩佐琢磨さん。
目指しているのは、大手が作らない製品を作ることです。

例えば、ビデオカメラの上に取り付けた小さな装置。
撮影した映像をインターネットで生中継することができます。
これまでになかった製品です。
6年前まで大手家電メーカーで商品の企画開発をしていた岩佐さん。

独立したのは、大手が手を出さない市場に大きな可能性を感じたからでした。
大手メーカーは、万単位の販売が見込める製品を大量生産しています。
一方、岩佐さんが目をつけたのはいわゆる多品種少量の市場。
一つ一つの販売数は数百から数千でも、合わせれば大きな利益が見込めます。

家電ベンチャー社長 岩佐琢磨さん
「僕らしか世界で出してないような商品なので、価格は僕らが自由に決めることができます。
だったら小さな会社を起こして、最初のマーケットの、会社としてうまみのある部分を取りにいこうじゃないかと。」

多くの製品を、資金力がないベンチャー企業がどう開発するか。
それを可能にしたのが3Dプリンターです。
これは子ども向けの音が鳴るフォーク。
大学と共同開発中です。

家電ベンチャー社長 岩佐琢磨さん
「さすがにこの太さで製品は難しいんで、子どもが握れるぐらいのサイズにしたい。」

フォークの持ち手を小さくすることにしました。


「スタートボタンを押してもらえますか?」

通常は業者にお金を払って改良しますが、3Dプリンターを使えば自分たちでできます。
こうして開発コストを10分の1に抑えることに成功。
多くの製品を生み出せるようになりました。

家電ベンチャー社長 岩佐琢磨さん
「こういったものが、1品種だけではなくて100品種200品種出てくると、そういう世界になっていくのかなとは思っています。
新しいものづくりの形なのかなとも思っているので、僕らもまだまだ模索し始めた段階なんですけど、継続してトライしていきたいなと思っています。」

一方、大手の企業の中にも3Dプリンターを積極的に活用する動きが出ています。
アメリカ2位のバイクメーカー。
年間1万4000台を製造しています。
これまで1、2年に1回だった商品の発表。
それを半年ごとに行うようにしました。

バイクメーカー ロス・クリフォードさん
「いま消費者は新しいバイクを求めています。
待ってはくれません。」

こんなバイクに乗りたいというリクエストが、メールで毎日のように送られてきます。

「欲しいものをリストで送ってきます。
変わったハンドルやミラー、クールなLEDライトなどです。」

このメーカーに協力し、部品を作っている会社です。
3Dプリンターでパーツを開発しています。
こちらは、スマートフォンで音楽を聴くためのリモコン。
消費者のニーズに応えて作りました。


バイクメーカー ロス・クリフォードさん
「他人と同じものは欲しくないのです。
素早く商品を出すため、3Dプリンターは欠かせません。」

ものづくりを変え始めた3Dプリンター。
国の政策にも影響を与えています。
オバマ大統領は、3Dプリンターを製造業復活の切り札に掲げています。

オバマ大統領
「製造業改革のため3Dプリンターの研究機関を作ったが、さらに15の施設の設立を要請したい。
アメリカから新たな産業が生まれるにちがいない。」


新たな産業を作り出す。
オバマ大統領はその第一歩として、全米1,000の学校に3Dプリンターの導入を始めています。
この学校では、一足早く最先端の3Dプリンターの使い方を教えています。

これは生徒が作った無重力空間で動く機械です。
将来、国際宇宙ステーションで使われる日が来るかもしれません。

「アイデアがひらめいたら、いつでも形にすることができます。」

「将来はエンジニアになりたいです。
3Dプリンターを学ぶことは大きな一歩です。」

アメリカに広がる3Dプリンター革命。
未来を担う人材が着々と育ち始めています。

3Dプリンター 日本の現状

●多品種少量という市場が与える影響

3Dプリンターが出てくることで、大量生産じゃなくて、1つだけのものっていうのが作れるようになって、それが多品種少量の市場っていうものにつながっていくと思うんですね。
実際に今、日本の大手家電メーカーの中でも、多品種少量の市場をねらって家電を開発しているところがあるんですね。
例えば新しい照明が提案されました。
これは置く場所とか、個人の好みに応じて形を変えて生産できるというものです。 こういったものをまずは富裕層なんかにもターゲットを絞って、商品化を目指してるっていう、そういう動きがあるんですね。

●3Dプリンターに対する日本の姿勢

残念ながら今のアメリカみたいな動きはないんですけど、近い将来のことを考えると、例えば図画工作や技術というところに、コンピューターのツールを使って作る、手で作ることに加えて、そういうものを入れていくというのは、教育の現場においてもたぶん必要になってくると思うんですね。
そうすると、ふだん身の周りにある工業製品の見え方っていうのが、変わってくると思います。
小さな頃からそういうことをやることによって、長い目で見たときに、そういうものづくりの文化というのが出来てくると思うんですね。
あとはもう1個、そういった3Dプリンターとかを備えていて、かつ、それを使いこなすことができる。
例えば何か、こういうものを試作したいというときに、こういう方法でやればできますよというところまでアドバイスできるような人がいるような、そういう拠点というのを全国各地に作っていく。
そこに中小企業が集まってきて、いろいろワイワイガヤガヤやりながらそこで試作をして、試作ができたら自分たちの得意な製造方法で作っていくっていう。
そういうネットワークを作っていくというものも、教育に加えて、さらに必要になってくるんじゃないかと思います。

●3Dプリンターの課題

やっぱりネガティブな面もありまして、例えば3Dプリンターを使って、実際に発射することができる、殺傷能力がある銃を作ったっていう人たちが現れたわけなんですね。
こういうものの3Dのデータが流通するということは非常に危険なことですし、同じように、例えば何かキャラクターグッズとかフィギュアなんかのデータを使って、勝手に作っちゃうっていう人も出てくるっていう、そういう危険性があります。
一方で、例えば自分の耳の正確なデータをもとに、ぴったりフィットするイヤホンだったりとか、足のデータを持っていればぴったりフィットする靴が作れる、その体にぴったり合うものが出来るっていうのも、1つの大きな市場だと思うんですね。
だからそういう3Dデータのビジネスだったり、それに対するいろんな課題だったりっていうことを考えていく、そういうディスカッションを始めなきゃいけないと、今まさに、そういうタイミングに来てると思います。
これは非常に大きなビジネスになると思います。

実際には3Dプリンターって、いろんなものを作るときの、方法の1つでしかないんですね。
ほかにもいろいろな工作機械があり、いろんな作り方がある中での1つなので、どこに使うとそれが強いのか、例えばそれで試作して、みんなでそれを手に取りながらディスカッションする。
そういう使い方が得意だったりとか、こういうときには使えると。
なんでもできる魔法の箱ではないので、3Dプリンターの使いどころっていうのをちゃんと把握したうえで使い分けていくっていうことが、今後の産業のことを考えると、必要になると思いますね。 そういうものを使ってみんなでイノベーションを起こして、より豊かな社会にしていくっていう、そういう未来が描ける、そういう起爆剤になると思います。

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