クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.33142013年2月21日(木)放送
続発するアレルギー事故 学校給食で何が?

続発するアレルギー事故 学校給食で何が?

守れるか給食の安全 検証 アレルギー事故

“わたしは みんなとちょっとちがう
ちょっと しっぽが みじかいし
ちょっと ひげが ながい
でもママが「それでいいのよ」っていってたの”


給食を食べて激しいアレルギー反応に見舞われ、亡くなった女の子が作った、詩と版画です。
友達とは違うアレルギーがある自分を例えているかのようです。
病気を前向きに捉え、将来はアレルギーなどを研究する科学者になることが夢でした。

事故は、国の方針に沿ってアレルギーのある子どもにも給食を提供しようという取り組みの中で起きました。
その日のメニューは牛乳、わかめごはん、肉団子汁ナムル、ジャガイモのチヂミ。
学校の給食室で作られたものです。
この中のチヂミに、女の子が食べるとアレルギー反応を起こす、粉チーズが使われていました。
学校では、アレルギーに対応した給食であることが分かるように工夫をしていました。
チーズが食べられる児童には、緑色のトレー。
チーズが食べられない女の子には、黄色のトレーを使います。
そのトレーにチーズを抜いて作った除去食を盛りつけ、調理の担当者が直接手渡していました。
こうした対応をしていたのは、国が食育の一環として給食を教材の一つと位置づけたためです。
文部科学省は5年前、学校給食法を54年ぶりに改正。
その際、食物アレルギーのある子どもにも可能なかぎり対応に努めることと通知し、学校ごとに取り組むよう求めていたのです。
午後0時50分ごろ、女の子は担任の先生にお代わりを求めました。
学校ではアレルギーのある児童がお代わりを求めたときに、担任が確認するリストを用意していました。

栄養士と保護者が毎月打ち合わせて作る、除去食一覧表です。
児童のアレルギーに合わせて、お代わりをしてはいけない料理に×印が記されています。
しかしこの日、担任は除去食一覧表を確認することなく、粉チーズ入りのチヂミを渡してしまったのです。

富士見台小学校 石川浩彦校長
「食物アレルギーに対する細心の注意を怠ったというところだと思います。
本当に申し訳ない。
管理者としても、教員を指導する立場としてもですね、十分なことが指導できていなかったと反省しています。」

お代わりからおよそ30分後、担任は女の子の異変に気付きます。
持病のぜんそくの吸引器を使いながら、「気持ちが悪い」と訴えてきたのです。
担任はランドセルから、エピペンと呼ばれるアレルギーのショック症状を改善する注射器を取り出し「これ、打つのか」と尋ねました。
女の子は、「違う、打たないで」と答えたといいます。
ぜんそくの症状が出たと思っていたと見られます。
担任は、アレルギーのショック症状かもしれないと思いながらも、この時点でエピペンを注射しませんでした。
1時25分ごろ、養護教諭が教室に駆け込んできます。
担任は救急車を呼び、女の子にトイレに行きたいと求められた養護教諭は、背負って教室の向かいのトイレに入りました。
名前を呼んでもすでに反応はありませんでした。
養護教諭はAEDを手配し胸をたたきながら呼びかけ続けました。
1時35分ごろ校長が駆けつけます。

富士見台小学校 石川浩彦校長
「顔色も顔面がそう白といいますか、血の気が引いている状況でしたので、これは完全に血圧が低下しているなと。
なんとかせねばというところで…。」

アレルギーによるショック症状だと判断して、エピペンを右の太ももに注射しました。
異変に気付いてから15分ほどあとのことです。
救急車が到着したのは1時40分。
その場で心肺停止が告げられました。
気分が悪いと訴えてからおよそ20分後。
お代わりで食べたチヂミに入っていたチーズは、1グラムにも満たなかったと見られています。

女の子の両親からの手紙
“娘の死をきっかけに、食物アレルギー対策の重要性が再認識され、多くの人たちが改めて動き始めるのであれば、娘は「うん、それならいいや」と言うような気がしています。
彼女の未来に向けた思いに応えてほしいと思います。”

事故を受けて、学校給食の関係者の間には動揺が広がっています。
国からアレルギーに対応した給食を求められる一方で、安全を確保する適切な方法を見いだすのが難しいためです。


学校関係者
「学校によって児童の状況が変わるので、本当に大変で。
みんなで助け合わないと危ないっていう。」

学校関係者
「設備の問題も含めて、人の問題も含めて、財政のことも含めて、とても難しいなと。」

国が示すガイドラインにはおおまかな方針しかなく、配膳の注意点など具体的な方法は書かれていません。
ガイドラインが出来た平成20年以降も、給食でのアレルギー事故は増え続けています。



文部科学省 学校健康教育課 大路正浩課長
「我々としては重く受け止めないといけないと思っております。
学校の現場の状況に則した方針を、示していく必要があると思っています。
今までもやってきたつもりですが、学校現場の状況、どの点が足りないか。
我々も直接耳を傾けてまいりたいと思っています。」

守れるか給食の安全 検証 アレルギー事故

ゲスト宇理須厚雄さん(藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院)
ゲスト小島康英記者(首都圏放送センター)

●事故を招いた原因は

小島記者:今回の事故は、ショック症状が起きる前と起きたあと、その危機管理の対応が問われました。
給食のアレルギー対策では、食べてはいけないものを絶対に渡してはいけないという事前の対応と、ショック症状が起きた場合に、どれだけ迅速に対応できたかが求められます。
今回の事故について女の子の両親は、教職員全体のアレルギーに対する認識が不足し、症状が起きる前とあと、双方の対応に問題があったのではと受け止めています。

●緊急時の備えや訓練などは行われていたのか

小島記者:女の子の担任は、受け持った去年の春にアレルギーのことを一から学び、事故が起きるまで、エピペンに触ったこともなかったといいます。
アレルギーのある児童が増加している今の教育現場で働く教職員は、突然の事態に即座に対応できる知識や経験までも必要になっています。
しかし、すべての教職員がアレルギー対応に精通しているとは言えず、全国の小中学校はこうした危うさの中で、日々の給食を提供しているのが現状です。

宇理須さん:いざというときにこのエピペンというのを打つのは難しいです。
学校の先生は医療従事者ではございませんので、エピペンの打ち方を学ぶということも難しいでしょうし、ましてやいつ打ったらいいかというタイミング。
これは非常に難しいだろうというふうに思います。

●今回の事故をどう受け止めているか

宇理須さん:こういった「ひやりはっとの事例」がたくさん集まっているんですけれども、例えばその中でも、調味料が発売中止になって違う調味料を使ったら、ピーナツアレルギーのお子さんが症状を出してしまったと。
残念ながら、その違う調味料にピーナツが入っていたわけですね。
表示をちゃんと見てほしいという教訓があります。 それから2例目は、担任の先生がいなかったために、別の先生が来て、パンケーキを出したら、その中に小麦や牛乳、卵が入っていて、アレルギーを起こしてしまった。
先生どうしの情報共有が不足していたという例です。
それから3例目は、お代わりのシチューを食べたわけですけれども、牛乳の入っているものと入っていないものが色違いの表示だけで、文字で表示がされていなかったために、間違えてしまった。
やはり表示をきちんと文字で、誰にでも分かるようにしてほしいという教訓なわけです。
多くのものがヒューマンエラーだと思います。
人間というのは、エラーを起こしやすい動物というふうに言われております。
しかしそこに手を打つということが、非常に大事だと思います。

●国が出しているガイドラインは十分なのか

宇理須さん:平成20年度に、学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインというものが、世に出たわけです。
でもそれが出たおかげで、その後、学校のアレルギー対応っていうのは非常に進んでまいりました。
ただ地域差、学校差があるというのが現状なわけです。
ただ、あれは大枠を決めているものであって、やはり現場で必要な具体的なマニュアルというものが、これからは必要になるんじゃないかというふうに思います。

●アレルギーを持った子どもに給食を提供すべきなのか

宇理須さん:いわゆるアレルギーの対応としては、代替食と除去食と弁当というのがありますけれども、仮に弁当を持ってきてもらったらその子はもう安全かというと、必ずしもそうじゃないんですね。
実際には隣のお子さんの給食を食べてしまったとか、牛乳がこぼれて、そのこぼれた牛乳を触って、アレルギーが出てしまったというように、そういう弁当以外のことでも、かなりの数、そういった食物アレルギーの事故が起こっているわけなんです。
そういう意味では、アレルギーの認識を広げていく必要があります。

コストをかけて 事故リスクに対応

国の方針に沿って可能なかぎりアレルギーに対応するには、コストと手間が課題になります。
大阪狭山市の給食センターです。
市内の小中学校5,400人分の給食を調理しています。
この日、作っていたのはハヤシライス。
3年前(2010年)までは小麦粉と麦飯を使っていましたが、小麦アレルギーの子どもも食べられるように米粉と白米に切り替えました。
クリームスープは牛乳アレルギーの子どもでも食べられるように、豆乳で作っています

大阪狭山市教育部 大月和子栄養教諭
「いろんなバランスも考えて味も遜色ないようにできるならば、みんなが食べられる食材を使えればってことで使っています。」

「いただきます。」

「いただきます!」

小麦や卵など6種類のアレルギーのある、3年生の田野ちなりさん。
ちなりさんは、入学当初は毎日弁当を持参していましたが、今では週に3日は同級生と全く同じ給食を食べています。


田野ちなりさん
「おいしい。」

「家とどっちが好き?」

田野ちなりさん
「学校。」

こうしたアレルギー対策にはコストがかかります。
米粉や豆乳などの食材は、小麦粉や牛乳に比べて割高です。
また、アレルギー物質を取り除いた除去食を作るために整備した専用の調理機器や容器などには、およそ600万円かかりました。
専任の調理担当者の人件費は年間500万円に上ります。
そこで市は、4年前から調理を民間業者に委託するなどしてアレルギー対策の費用を捻出してきました。

大阪狭山市教育部 大月和子栄養教諭
「安心して安全な給食を食べられるのが一番だと思っていますので。
そういった根底、土台があって、その上に何かを積み重ねていくというのが学校給食かなと考えてます。」

給食の安全を支えるアレルギーへの理解

学校給食でのアレルギー対応には限界があるという前提で保護者に協力を求めているのが、三重県伊勢市の小学校です。
校内の給食室で400人分の給食を3人の担当者で作っています。
そのため、アレルギーのある児童すべてに対応できません。

6年生の安藤秋穂さんです。
牛乳や小麦など6つのアレルギーがあります。
この日のメニューはマカロニグラタン。
牛乳と小麦を使っているため秋穂さんは食べることができません。
そこで秋穂さんは、母親が作った弁当を持ってきています。

豆乳と米粉を使ってグラタンに似せて作ったおかずです。
こうした弁当を食べる児童が仲間外れになったり、疎外感を感じたりしないよう、学校が力を入れてきたのがアレルギー教育です。
この日、1週間後に行われる調理実習に向けて同級生が、ある提案をしました。

「ホットケーキを作るんですけど、みんなで一緒に食べられる米粉のホットケーキを作ろうかと思います。」

「どう?」

「いいよ。」

秋穂さんが一緒に食べられるよう、小麦粉ではなく米粉を使ってホットケーキを作ろうという提案です。

「味とか変わらないんですか?」

「味も少し違うそうです。
どんな味がするか楽しみにしておいてください。」

こうして、この学校ではさまざまな機会を捉えて児童がアレルギーを理解するように指導しているのです。

「調理実習の時とか考えとる。
秋穂の食べれへんものとか。」

「アッキーに牛乳がかぶらんようにするとか。
牛乳に近づけさせないとか。」

伊勢市立城田小学校 宮城弘明校長
「クラスの他の子どもたちも、秋穂さんのアレルギー疾患のことでいろいろなことを学べたのではないかなと。
お互いにいいふうにかみ合って、6年間子どもたちは育ってきてるのではないかなと思ってます。」

給食の安全を支えるアレルギーへの理解

●アレルギー教育について

宇理須さん:この社会には、学校もそうですけれども、いろんな病気のお子さんがいるわけですね。
腎臓病、糖尿病、それに食物アレルギー。
そういう人たちに、それぞれの食事療法というのが必要なわけです。
そういったことを学んでもらうのは、非常にこれは食育の非常に大事な一つだろうというふうに思います。
そういったお子さんどうしが、共に生きていくという社会を学んでほしいなと。
お互いに助け合ってやっていこうと、これは非常に大切な教育ではないかというふうに思いますけれども。
ほかに、アレルギーを隠さないという例として、私が経験した学校では給食の前に、その日の料理の原材料を子どもが読み上げるんですね。
そうすれば、そういった料理にどういうものが使われているのかという食教育にもなりますし、また、誰々さんはこれは食べれないんだよというような、確認にもなるわけですね。
そういったようなことを実践している学校もございます。

●アレルギー事故防止対策とは

宇理須さん:まずは、現場で役に立つような具体的なマニュアルを作って、そしてそれを実践できるように研修をして啓発していくということと、そしてそれをまた、「ひやりはっと」を集めて、マニュアルをブラッシュアップするという、そういうサイクルですね、そういうものをおこなう常設の委員会というものが望ましいというふうに思います。

●緊急時対応には何が必要か

宇理須さん:そうですね、一番最たるものはやっぱりエピペンだと思いますけれども、そういったエピペンというのは、注射でなかなか大変ですけれども、それを打てるように実地訓練・トレーニングを、ぜひ先生たちにやってあげたいというふうに思います。

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス