クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.33122013年2月19日(火)放送
パロディは文化?それとも違法?

パロディは文化?それとも違法?

パロディ裁判 白い恋人 vs 面白い恋人

新大阪駅の土産物売り場です。
面白い恋人は1日100個以上売れる主力商品です。

「結構出ますね。
まだブームは去ってないですね。」

今や関西では定番のお土産になりつつあります。

「それ買ってみたら。
ジョークで。」

「一つ買います。」

「大阪らしいネタとしては好きですね。」

このパロディ商品を当初、白い恋人を製造する石屋製菓は黙認していました。
しかし大阪以外にも販路を拡大していくのを目の当たりにし、発売から1年以上たって提訴に踏み切ったのです。

石屋製菓 島田俊平社長
「『東京でも売ってたよ』『えっ東京まで?』と驚いて、これはちょっと見過ごせないなと。
いくらなんでもちょっと悪のりしすぎてるんじゃないか。」


石屋製菓にとって白い恋人は今や、売り上げの8割を占める看板商品です。
発売は36年前。
ロマンチックな名前が評判を呼び、創業以来の大ヒットとなりました。
長年守ってきたブランドイメージを勝手に利用されたことが許せなかったといいます。

石屋製菓 島田俊平社長
「企業のモラルというものがあると思う。
明らかに“白い恋人”という名前に便乗して売り上げを作ろうとしている。
これは誰が見てもそうだと思う。
果たしてそれは商道徳としてどうなんだろうと思うんです。」

一方、吉本側はどうしてもこの裁判に負けるわけにはいきませんでした。
笑いを売りにする吉本。
最近は笑えるパロディ商品の開発に力を入れています。


例えば、こちら。
一見、薬に見えますが、実はお菓子です。

「せっかく吉本に遊びに来た帰りのお土産なんで、笑ってもらえるような商品が多い。」

面白い恋人を否定されることは、パロディ商品すべてを否定されることにつながると考えていました。

吉本興業 渡邉宙志執行役員
「ちょっとしたクスリとした笑いやユーモアは、非常に心が温かくなるものですから。
そういったものにこだわる思いは、日本のどこの会社よりも強い。」

両者の対立は根深く、裁判は予想以上に長引きました。

石屋製菓
“デザインが似ているため、間違って買われる。”

吉本興業
“パロディ商品なのである程度似ているが、間違われるほどではない。”

石屋製菓
“白い恋人の知名度にただ乗りして、不正に利益をあげている。”

吉本興業
“ただ乗りではない。
アイデアや創意工夫によるパロディ商品だ。”

石屋製菓
“これがパロディでまかり通ると、これほどたやすいビジネスはなく多くのものが後追いする。”

この裁判は、同じような菓子を作っている全国のメーカーに動揺を与えました。
長野県にある社員27人の菓子メーカーです。
4年前(2009年)から販売している黒部の恋人は、黒部ダム周辺の売店で一番の売れ行きです。

「“白い恋人の”パロディというか、ちょっと意識したようなところは?」

田中屋 曽根原光重代表取締役
「そうですね。
それもまあ“無きにしもあらず”ということですね。」

自分たちの商品にもいずれ矛先が向くのではないかと危惧していました。

「商標がだめと言われたら?」

田中屋 曽根原光重代表取締役
「もう作りません。」

しかし裁判は終盤になって急展開を見せます。
裁判所の和解勧告をきっかけに、吉本側が譲歩を申し出たのです。

販売地域を関西に限定しデザインも変更。
リボンや四角い外枠など白い恋人の特徴をなくす代わりに、販売継続を訴えました。
そして先週、和解が成立しました。
結局、面白い恋人が違法かどうかの判決は下されぬまま裁判は幕を閉じました。

吉本興業 渡邉宙志執行役員
「われわれが考えているだけには(パロディと)とってくれないので、いろいろなことを考えながら商売しないといけない。
非常に勉強になった。」

石屋製菓 島田俊平社長
「これ以上長引かせても、われわれに何のメリットもない。
むしろ先方(吉本側)からすれば、話題になるほど売れるからいいかもしれない。」

「100パーセント納得してるわけでは?」

石屋製菓 島田俊平社長
「ではないですね。
やはり名前には抵抗があります。」

どこが違う?パロディと盗作

ゲスト福井健策さん(弁護士)

●今回の和解をどう見たか

今回は、商品のパッケージが問題になっていますから、商標権なんですよね。
この商標権の場合のポイントっていうのは要するに、オリジナルの商品と間違って、勘違いをして買ってしまうかどうかっていうのが大きな要素なんです。
それでパロディ商品というのは、本当に正しくパロディとして成立していれば、間違えないはずじゃないですか。
オリジナルの商品があって、それをもじった別の商品だよっていうところにおもしろさがあるわけだから。
その意味で言うと、本当にパロディとして成立していれば勘違いを起こさないから、商標的・法律的にはオッケーのケースが多いはずなんです。
その目で今回のケースを見ると、まあちょっと微妙かなと。
やっぱり、あの商品名、パッケージで見たときに、そばに並んでいれば、間違って買っちゃう人もいるかもしれないと思ってしまうところも確かにあった。
その意味で、デザインを変更して、売り場も住み分けて、いわばパロディとしてより成立しやすくしたっていう今回の和解は、まあ納得のいきやすいものかなと。
ただ、判決は見てみたかったなという気持ちはちょっとあります。

●映画や小説ではどうなるか

例えば「スター・ウォーズ」という映画ありますよね。
あれのパロディ映画で、「親指スター・ウォーズ」というのがあるんです。
親指に「スター・ウォーズ」をさせちゃうんですよね。
例えば店頭に並んでいるときに、今日は「スター・ウォーズ」を見ようかな、それとも「親指スター・ウォーズ」を見ようかなって、あまり迷わないじゃないですか。
「スター・ウォーズ」を見たい気分のときと、「親指スター・ウォーズ」を見たいときの気分は、明らかに違うわけで。
そんなふうに本当に正しくパロディとして成立していれば、あんまり市場で競合しない、いわばオリジナルの売り上げを食ってしまわないというところが特徴としてあるわけです。
それが、単なる海賊版とは違う。
それからもう1つ、よくパロディの特徴としていわれるのは、例えば典型的な盗作っていうのは人の作品をまねして、あたかも自分が全部創作したような振りをして世の中に公表しちゃうわけです。
ということは、人のものになるべき名声を自分が奪っているわけです。
名声を盗んでいるわけですね。
パロディって、そういう性格はないですよね。
「スター・ウォーズ」見たことない人に「親指スター・ウォーズ」見せたって、あんまりおもしろくないわけであって、オリジナルを知ってるからおもしろい。
その意味でも、パロディって割と許容されてもいい、全部が全部じゃないけれども、許容されてもいいパロディってあるよねっていう、こういう認識っていうのは割と世界的にありますよね。

●許可を求めても下りないケースが多いが

意外と許可が下りない。
みんな人のパロディは好きなんだけど、自分の作品のパロディはちょっと好きじゃないっていう人も多いですからね。
そのあたりが難しい。

広がるパロディ あいまいなルール

日本有数のパロディ市場、漫画やアニメファンによる祭典「コミックマーケット」です。
年に2回開催され、来場者は実に100万人を超えます。



目当ては同人誌と呼ばれるアマチュア作家の作品。
有名漫画などの登場人物を使い、原作にはないストーリーを描いたもので、ほとんどがパロディです。
その売り上げは数十億円に上るといわれています。

「いくらぐらい使いました?」

参加者
「4万くらいですかね。」

参加者
「公式なもの(原作)ではやらないことをやってくれる。
こういう話面白いなと思うと、そういうの(話)を出品する人もいるんで。」

プロの作家を輩出しており、日本の漫画文化を支えるすそ野となっています。
しかし今、アマチュア作家たちは大きな不安を感じています。

アマチュア作家
「結構著作権の問題で逮捕されてる人とかも同人誌界で出ている。」

アマチュア作家
「著作権者の人たちが困らないぐらいの遊びをさせてもらってる自覚は持っていないと。
二次創作は禁止と言われればしかたがない。」

実はこうしたパロディ行為は、著作権法ではなんら規定されていません。
そのため多くの場合、違法となります。

ただ、著作権を持つ人が黙認や許諾をしていれば問題となりません。
ところがもし気分を害し訴えれば、有罪となる可能性が高くなります。


パロディが許されるかどうかは著作権を持つ人の気分しだいなのです。
このあいまいな状況に対し、文化庁は今年度から著作権法に新たな規定を定めるべきか検討を始めました。
専門家などによるパロディワーキングチームを結成し、議論を重ねています。
メンバーの1人、上智大学の駒田泰土教授です。
現行の著作権法では裁判になったときに対応できないと指摘します。

上智大学 法学部 駒田泰土教授
「パロディなんですこれは、だから救ってくださいと被告が言っても、原告としてはそんな規定はないんだと。
そんな抗弁をされても困ると返しちゃうわけですね。」

“パロディは文化だ” フランスの法律

そこで参考にしているのが、パロディを明確に規定している海外の事例です。
例えばフランスでは、パロディが法律で広く認められています。
著作権法は、権利者はパロディを禁ずることはできないと明記。
こうした法律の後押しもあり、本屋にはたくさんのパロディ作品が並び人気を集めています。
原作と間違われるおそれがなく、かつユーモアがあるという条件を満たせば、許可なくパロディを行うことができるのです。

「今は暗い時代だからユーモアがある本はいい。」

たとえ訴えられても、法律があるおかげで作家たちのパロディ活動は守られています。
小説家のゴルドン・ゾーラさんです。
ゴルドンさんは4年前、世界的に有名な漫画「タンタンの冒険」のパロディ小説を書き始めました。
サン・タンという名の主人公が世界中を冒険する話で、これまでに18巻、およそ10万部を売り上げています。

パロディ作家 ゴルドン・ゾーラさん
「例えばこの『タンタンチベットへ』を見てみましょう。
こちらの私が書いた本では『サン・タン絞首台へ』となっています。
この表紙にはパロディの要素がたくさんありますよ。
どちらも同じ雪山ですがよく見てください。
私の本では雪男に驚いて転んでしまっています。
おもしろいでしょう?」

発売から僅か3か月後に、原作者側から海賊版だと訴えられてしまいます。
しかしフランスの裁判所はこの作品のユーモアを認め、正当なパロディだと判断しました。
ゴルドンさんは今も続編を執筆中です。

パロディ作家 ゴルドン・ゾーラさん
「パロディの権利というのはすばらしいです。
なぜならこれまで見たことのなかった角度から、原作をまた違った読み方をすることで再考できるからです。
これが創作の糧となるのです。」

評論始まる 日本の“パロディ法”

文化庁パロディワーキングチームの駒田教授は、多様な表現を生むには日本にもこうした法律を作る必要があると考えています。

上智大学 法学部 駒田泰土教授
「自由にものが言える社会のありがたみをわれわれは実感して、新しい考え方やいろいろなものが生まれてくる。
そこは法律の規定を変えて救ってあげないといけない。」

こうした国の動きに対し、多くの著作権を持つ出版社からも歓迎する動きがあります。
大手出版社の角川歴彦会長です。
パロディを認めることは将来の作家を育てることにつながり、自分たちにもメリットがあると考えています。

角川グループホールディングス 角川歴彦会長
「新しい創作家というのは模倣から生まれたりするわけですよ。
好きな作品をまねて描いていくうちに、新しい世界が開けていくわけですよ。
そういう場を僕たちは大事にしなければと思う。」

日本と欧米 パロディの違い

●欧米と日本におけるパロディの特徴の違いとは

もちろん重なるところっていうのはあると思うんですよね。
ただ特徴で言うと、欧米あるいは英米でパロディっていうと、社会批評的、風刺的な性格がより強いと思う。
だから許可もらってやるようなものじゃないんだっていうところがありますよね。
ところが日本は、そういうパロディもあるけど、さっきのコミケなんかを含めた広い意味での…二次創作なんてよく言いますけど、長い文化の伝統を持ってて、それを特徴づけているのは、どちらかというと原作への愛で、自分が好きな原作をさらに展開させた世界を書いてみたいとかそこで遊んでみたい、そういう性格が強いと思うんです。
だからさっきの発言にもあったけれども、怒られたらやめる。
ちゃんと間合いをはかって、迷惑にならない範囲でやるっていう性格がある。
これは社会批評からあまり出てこない発想ですよね。
いわば「あうんの呼吸」です。
日本人は契約や交渉ではっきりさせるのは得意じゃないかもしれないけど、こういうグレーゾーンの使い方がわりとうまい。
ただ社会の変化の中で、ちょっとグレー領域が狭くなってきている。
法律を意識しないといけない、権利を意識しないといけないっていう場面はちょっと増えてきているなっていう気はします。
それが、パロディ規定を導入しようっていう話にもつながっているのかもしれないですね。

●日本でもパロディを認める法律が必要なのか

ただし全く同じではなくて、日本ならではの二次創作の特質をちゃんと踏まえた、そういう日本型のパロディ規定をちゃんと議論して入れるならいいと思います。
例えば日本なりの工夫として、こんなのもあります。
法律で規定を決めてもらうだけじゃなくて、作家・権利者の側が、オリジナルの作品を発表するときに、こういうルールでみんな二次創作していいですよというガイドラインを、一緒に公表するんですよね。
これでうまくいったのが、代表例はやっぱり「初音ミク」。
「ボーカロイド」っていわれるあの初音ミクっていうデザインを出してきたその会社は、これで映像や音楽を使うのはもう自由ですよ、それで自由に公表してくださいってガイドラインを一緒に発表したんです。
そうしたらユーザーによる二次創作の動画とかイラストとかが、もうどんどんネット上に増えて、オリジナルの人気も高まった。
こういう試みなんかもおもしろいですよね。

●著作権に対しての考えを変えるということ

著作権っていうのは、言ってみればそれ自体が目的じゃない。
それはツールですよね。
より文化が豊かになって人々のアクセスが守られる。
このことのためのツールだから、だから文化のありようが変わってくときには、著作権のありようもそれに合わせて変わっていく。
ただしその中で、オリジナルの作家にもちゃんと還元が行くように。
それこそが本当の文化立国、豊かな文化かなと思うんです。

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス