クローズアップ現代

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No.32922013年1月10日(木)放送
急増 卵子提供

急増 卵子提供

急増 卵子提供の実態

日本人が数多く卵子提供を受けているアメリカ。
法律や学会の指針が整備され、卵子提供が広く行われています。
希望する女性にドナーを紹介する仲介業者です。
日本からの問い合わせが、ここ数年急増。
日本人スタッフが応対に当たっています。

「現在、胚(受精卵)移植に向けて渡米の準備をされている患者さまのファイルです。」

現在、200人が卵子提供を受けたいと申し込んでいます。
費用は1回およそ、500万円です。
かつては、経済的に余裕のある医師や弁護士などが中心でしたが、大きく様変わりしています。

卵子提供 仲介業者 川田ゆかり社長
「ごく一般的なサラリーマン、あるいは公務員家庭の方たちが、お子さんを授かりたい一心でこのプログラムに参加されると。
今もうゴールデンウィークのところは、ほぼご予約でいっぱいという形で。」

首都圏に住む45歳の女性です。
去年(2012年)、アメリカで卵子提供を受け妊娠しました。
4年間に9回、自分の卵子で体外受精を行いましたが、子どもは授かりませんでした。


「自分の中で育って、自分の血液と子どもの血液が行き来するわけで、実際、今とても幸せな感じ。」

卵子提供を希望する女性の新たな渡航先となっているのが、タイです。
費用は、アメリカの4分の1程度。
地元の医療関係者によりますと、日本から訪れる女性は年間、数百人に上ると見られています。
医師会の指針で医師が営利目的の卵子提供に関わることは認められていません。
しかし、規制する法律はなく、卵子提供が実際には行われています。

卵子提供を受けるために、タイを訪れた40代の女性です。
9年前から日本で不妊治療を続けてきましたが、子どもを授かることはできませんでした。
インターネットでタイの仲介業者を知り、渡航を決意しました。

「病院の先生から『もうできることは全部やった』と言われた時に、もうこれで終わりだと思ったんですけれども、海外でも妊娠できるチャンスを与えてもらうことは、すごくありがたい。」

卵子提供を受けるのは、仲介業者から紹介された民間のクリニックです。
あらかじめ、タイ人女性5人のプロフィールを見せられ、自分と同じ血液型で20代前半の女性から卵子の提供を受けることにしました。
移植の前日、担当医の診察を受けました。
タイ人の通訳が付き添いましたが、意思の疎通は容易ではありません。
移植される受精卵の状態について尋ねても、満足な答えは得られなかったといいます。

「あまりピンとくる回答がなく、自分で判断するしかないのかなって、わからないなりに。」

翌日、受精卵の移植を受けた女性。
その3日後、帰国し、結果を待つことにしました。

「もう信じるしかないかなという感じで。
私にはもう不妊治療にかける時間はあまり残されていないと思っていますので。」

卵子を提供する日本人女性

さらに取材を進めると、ドナーとなる女性までがタイを訪れている実態が分かってきました。

日本人を専門に卵子提供を仲介している業者です。
20代を中心に、日本人女性のドナー、50人が登録しています。
ファイルには、学歴や血液型、それに健康状態などが記されています。
事務所には日本から来るドナーのための宿泊施設があります。
医師の指導を受けて、ドナーは排卵を誘発する薬を、およそ10日間、注射します。
その後、一度に数十個の卵子を採取されます。
ドナーには、60万円が支払われます。
この業者では卵子提供への報酬ではなく、ドナーが学校や仕事を休み、およそ2週間滞在することへの謝礼だとしています。

卵子提供 仲介業者 横須賀武彦社長
「金銭目的で卵子提供するというのは、うちのほうではいらないというかお断りしてます。」

首都圏に住む25歳の女性です。
アルバイトを探しているとき、インターネットで卵子のドナーの募集を知り、登録しました。

「倫理的な面で、自分の遺伝子を人にあげて子どもが生まれて。
やっぱり、抵抗は少し感じましたね。」

一昨年(2011年)、タイに渡り卵子を提供しました。
誰に移植されたか知らされませんでしたが、困っている人を助けることができたかもしれないと自分を納得させています。

「(提供を受けた女性が)無事に妊娠して、子どもができない悩みから解放されたのかな。
されたかもしれないと思うと良かったなって。」

過熱する卵子提供の現場。
現地の医師たちからは、困惑する声が出始めています。

タイ産婦人科学会幹部 カントーン医師
「一部には営利目的に走るクリニックや業者が出てきているのが現状です。
リスクを拡大させないために、何らかの形で規制を強化することが必要だと思います。」

急増 卵子提供 海を渡る女性たち

ゲスト吉村泰典さん(慶應義塾大学教授)

●年間数百例を超える女性が卵子提供を受けているのか

私どもの病院におきましては、年々、確実に卵子提供を受けた妊婦さんというのは増えていると思います。
私どもが行いました厚生労働省の研究におきましても、2004年から2008年だと、分べん1万例に対して、1例程度であったんですが、2009年以降を見てみますと、1万例に対して2.7例ということになりまして、私は、この10年間で2ないし、3倍以上に増えているんじゃないかというふうに思います。
大体、そのときに妊娠される年齢といいますと、46歳から55歳ということになりまして、日本では非常に限定的にしか行われておりませんで、ドナーとしては、友人、あるいは姉妹から卵子を頂くということでありまして、二十数例ぐらいではないでしょうか。

●国内では卵子提供を受ける場が限られているのか

非常に限られていると思いますね。

●海外に子どもを求める方は不妊治療を受けられた方々なのか

少ない方でも5年、そして長い方であれば10年以上ですね。
日本において夫婦間の体外受精を行っていただいて、それでも妊娠できない方が、40代半ばを過ぎて海外に行かれるといったケースが大変多いと思いますね。

●日本では10年前から議論が行われなくなったのは

それは、これまで厚生労働省や法務省におきましても、こういった医療に関するガイドラインも出来たんですけれども、それが要するに、国会で審議されないというような状況がありまして、非常に宙ぶらりんな状況になってしまいまして、規定しているのは日本産科婦人科学会の見解のみであるというような状況になって、現在においては本当にしていいのか、卵子提供していいのかどうかということについても、非常に不安定な状況に私はあるように思いますね。
世界で最も体外受精が行われている国でありながら、こういった生殖医療に対する法律とか、ガイドラインが全くできていないということは、国としてあるいは考えなくてはいけない私は時期に来ていると思いますね。

●卵子提供 ドナーのリスクは

ドナーは、昔は留学生が大変多かったわけですけれども、最近になりますと、日本居住の女性が提供するために、海外に出ていくというケースも非常に増えているわけでありまして、やはり無理をして排卵誘発を行うということになりますと、ドナーに対しても、やはり身体的なリスクといいますか、卵巣過剰刺激症候群のようなこういった病態を起こすこともありますので、私は注意しなくちゃいけませんし、やはり要するに回数に関しても、ある程度の制限をつけていくことが、ドナーにとっても大切ではないかというふうに思いますね。
やはり金銭的な授受があるわけですから、何回も行われることが多くなってくるかもしれませんが、そういった規制も私は大事じゃないかというふうに考えています。

卵子提供 妊娠後のリスク

東京にある、出産前後の妊婦と新生児のための専門病院です。
卵子提供を受けた妊婦が、5年ほど前から目立つようになりました。
この病院では、妊婦に卵子提供を受けたか確認したうえで、きめ細かい対応をしています。
この日、訪れたのは45歳の女性です。
卵子提供で双子を妊娠しています。
胎児は順調に育っていましたが、出産の3か月前には異常がなくても入院するよう、強く勧められました。

「卵子提供妊娠ということで、リスクがあるところは理解していただきたい。」

卵子提供の妊婦に、特に注意を促すのには理由があります。
4年前、この病院で49歳の妊婦の容体が急変。
発症したのは、命の危険もある、妊娠高血圧症候群でした。
子宮からの出血が止まらず、大量の輸血で、母子ともになんとか命を取り留めました。
卵子提供の妊婦には、特有のリスクがあるのではないか。
病院が、これまでに出産した26人を調べたところ初めて、その危険性が明らかになりました。

卵子提供を受けた人と自分の卵子で体外受精をした人を比較したところ、予定日より1か月以上前に生まれる早産は1.5倍。
出産後、大量出血のおそれがある癒着胎盤を起こした人もいました。



愛育病院 中林正雄院長
「受精卵というのは多くは自分の卵子と、精子はご主人ですから、半分他人のものです。
しかし、卵子提供妊娠ですと、卵子も精子も他人のものなので、一部は拒絶反応が起こることも知られていますので、免疫反応も一部に関係するのではないか。」

卵子提供の妊婦 どう支えるか

この病院では、卵子提供の妊婦について毎朝の打ち合わせで、医師全員が情報を共有しています。

「45歳の卵子提供妊娠の患者さんです。
血圧のほうは104と59。
妊娠高血圧症候群は発生していません。」

「この管理を継続で。」

看護師が1日に何度も病室を訪れ血圧を測定したりむくみがないか確認したりしています。
しかし、卵子提供を受けた妊婦に対して、こうした態勢を整えている病院は、ほとんどありません。

愛育病院 中林正雄院長
「十分な卵子提供のリスクを知った上でそれを覚悟の上で私たち医療者、高齢者の妊婦さん、日本の社会全体が立ち向かわなければいけない問題だと認識しております。」

卵子提供 子どもにどう伝えるか

卵子提供では、無事に出産したあとも向き合わなければならない課題があります。
生まれてきた子どもに、卵子提供の事実を告げるかどうかです。
この夫婦は長年の不妊治療の末、韓国で卵子提供を受け、男の子を授かりました。
週末、公園で一緒に遊ぶひとときが、とても幸せだといいます。


「子どもが持ってくる力はすごいですよね。
彼が持ってきてくれた笑顔が増えましたね。」

しかし、妻は子どもが成長するにつれ、不安を感じるようになったといいます。


「DNA検査がもっと簡単にできる時代が来るかもしれなので、私たちが言う前に知るぐらいだったら告知した方がいいんじゃないかと。」

当時、女性が現地の業者から知らされたドナーの情報です。
仲介した業者は、すでに廃業。
遺伝上の母親について、情報を確認するすべはありません。
いつ、どのように伝えたらいいのか。
本当に伝えるべきなのか。
答えは出ないままです。


「大切なのは彼なので、言ったほうがいいと思うんですけど、どういうふうに理解してくれるのかという思いもあるので、本当に揺れています。」

どう向きあう卵子提供

●卵子提供を受けた方々の出産のリスク

やっぱり高齢妊娠が非常に多くなりますと、やはり妊娠高血圧症候群、あるいはそういったものは3倍、4倍ぐらいに増えますし、妊娠糖尿病だと8倍ぐらいに増えるというデータもあります。
早産も多くなる。
分べん時の出血が多くなるということで、非常にリスクが高くなるわけです。
そして、もう一つの問題点は、海外においてされますと、双子などの多胎が非常に多いということもございまして、二重のリスクを味わうということになってしまいますね。
ですから、一般病院においては、なかなか分べんの管理ができないということで、高次の医療機関に行かれるということも非常に多くなってくると思います。
われわれの統計によりますと、産婦人科の医師がこういった卵子提供による妊娠は、ハイリスク妊娠であるから、総合周産期センターとか、地域周産期センターというような公示の機関でお産をしたほうがよいといったことも、データとして上がっています。

●リスクが高くなる要因は卵子も精子も他人のもの

先ほどおっしゃっていましたが、免疫不全学的なものによって拒絶反応が起こっているんじゃないかということに関しては、エビデンスもまだ今のところ限られていますから、私は今後の検討課題だと思います。

●卵子提供を受けてる中での議論

私は、卵子提供を認めていくような要するにガイドライン作りとか、要するにシステム作りというものを、今後は私はしていかなければならないというふうに思っています。
そのためには、必要な条件としては、親子関係による法整備ですね。
そういったものが私はどうしても必要になってくるでしょうし。
それから、子どもの出自を知る権利というものをどう、われわれはどう考えていくのかとか、卵子のデータとか、子どもに対するカウンセリング、それからクライアントに対するカウンセリング態勢を考えるうえで、公的管理運営機関みたいなものが、私は必要になってくるんじゃないかなというふうに思います。

●卵子提供を考えている方々に

私はですね、やはりできるかぎり早い時期に、妊娠していただくということを、やっぱり私は分かっていただきたいと思いますし、もしこういった提供を受けるということになりますと、リスクがあるということをよく認識していただいて、受けていただくこと。
そしてまた、子どもにとっては、生まれた子どもにとっては出自を知る権利と申しますか、テリングを受ける権利があるんだということを認識したうえで治療に当たっていただきたいと思いますね。

●卵子提供は社会の何を映していると思うのか

要するに社会の私は縮図だと思いますね。
社会のいろいろな問題点が、この卵子提供に表れてきているのではないかというふうに思います。

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