クローズアップ現代

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No.32912013年1月9日(水)放送
アスリートごはん ~最新科学が支える究極の食~

アスリートごはん
~最新科学が支える究極の食~

サッカー川島選手 肉体支える食の秘密

2010年からベルギーのサッカーリーグでプレーする川島選手。
練習が休みの日に向かったのは、地元のスーパーです。
週の半分は自炊をする川島選手。
食材にもこだわります。

サッカー日本代表 川島永嗣選手
「これ、チコリ。
結構、ベルギー有名だと思います。
オーブンで焼いてもおいしい。」

川島選手の食事へのこだわり。
それは、海外の選手との戦いの中から生まれてきました。
体格のいい選手が体ごと当たってくるベルギーのリーグでは、体力を激しく消耗します。
そのため、より強じんな肉体を作る必要に迫られたのです。

サッカー日本代表 川島永嗣選手
「日本にいた時の感覚だと、自分が少し飛ばされる感じがあったので、より自分自身も強くならなきゃいけないと感じたし。」

この日、チコリを買った川島選手。
ある栄養素に注目していました。

サッカー日本代表 川島永嗣選手
「カリウム、マグネシウムが含まれている食材です。」

チコリに含まれるカリウムには筋肉の収縮を助け足がつるのを防ぐ効果があります。

サッカー日本代表 川島永嗣選手
「カリウムとか足りなくなると、筋肉に負担がかかった時に、足がつりやすくなる。」

そして体力の消耗を補うために、川島選手の定番となっているのが豚肉料理。
ビタミンB1が多く含まれ疲労の回復に効果があります。
このとき、必ず加えるのがタマネギです。
タマネギに含まれる成分、アリシンが体内にビタミンB1をとり入れやすくするからです。

これが川島選手のアスリートごはん。
こだわりの食事が支える強じんな肉体で、世界の一流選手と渡り合います。



サッカー日本代表 川島永嗣選手
「食事っていうのは、やっぱり自分たちの体だったりとか、そのアスリートのコンディションを作るうえで非常に大事なものだっていうのをやっぱりすごい思います。」

メダル獲得の裏に“究極”のメニュー

日本が過去最多のメダルを獲得した、ロンドンオリンピック。
最新のスポーツ栄養学を極めることで悲願のメダルにつなげた選手がいます。

フェンシング男子フルーレ団体、千田健太選手。
この大舞台で驚異的な瞬発力を見せました。

実況
「これだけ前に出る千田選手というのは?」

解説
「いや、初めて見ました。
すばらしいです。」

今から4年前。
千田選手はある課題を抱えていました。
スタミナ不足から来る、瞬発力の低下です。
多い日には、1日10試合以上こなすフェンシング。
後半になると、体に疲労がたまり、瞬発力が落ちることがあったといいます。

フェンシング男子フルーレ団体 千田健太選手
「やっぱり僕の場合は、身長も低いし、スピードとスタミナで勝負しなきゃいけないので、そこの体の動きっていうのがすごい重要になってくるんですよね。」

そこで千田選手が相談をしたのが、管理栄養士の長坂聡子さんです。

長坂さんが勧めたのが、こちら。
スタミナ不足を解消するためのアスリートごはんです。
ビタミンB1が含まれる豚肉。
それに加え、糖質をできるだけ多くとるよう、ごはんと里芋を用意しました。
そして、長坂さんはこうした食事を、練習直後にとるよう指導しました。
運動の主なエネルギー源となる糖質。
糖質は筋肉の中で、筋グリコーゲンとして貯蔵されます。
これが、なくなると運動を続けられなくなります。
いわゆる、疲労した状態です。
このとき、適量の糖質をできるだけ早く補給すれば、筋グリコーゲンがより早く、より多く貯蔵され疲労も回復しやすくなります。
さらにビタミンB1を加えると、糖質の代謝を高め、エネルギーとなるのを助けるのです。

フェンシング男子フルーレ団体 千田健太選手
「意外と炭水化物(糖質)を、僕はとっていたつもりだが、意外と足りていなくて、試合でも後半とかスタミナ切れはしなくなりましたね。」

千田選手には、もう一つ課題がありました。
体重が増えやすく、瞬発力に影響を与えることがあったのです。
長坂さんが毎日の食事を調べたところ、その原因が浮かび上がりました。

千田選手の食事の栄養素です。
たんぱく質と脂質が目安の量を大きく上回る傾向がありました。
筋肉をつけようとして、肉類などを多く食べていたのです。
実は、必要以上にとったたんぱく質は、脂肪として蓄積されます。
これが体重を増やす一因となっていました。

国立スポーツ科学センター 管理栄養士 長坂聡子さん
「たんぱく質が一番体とか筋肉を作るもとになるっていう知識は、やはりアスリートは持っているので、どうしても、たんぱく質をとらないとっていう気持ちが強い。」


たんぱく質などを適切な量にするなど千田選手は、3年間にわたって食事を科学的にコントロールし続けました。
そして迎えたオリンピック。
この日、9試合を戦った千田選手。

実況
「千田が行った!」

解説
「いいアタックです。」

高い瞬発力を、最後まで維持しました。

フェンシング男子フルーレ団体 千田健太選手
「食事でここまでパフォーマンスが変わるんだなと思いました。」

国立スポーツ科学センター 管理栄養士 長坂聡子さん
「世界との僅かな差を埋めるために必要なことっていうので、突き詰めていくと徹底した栄養管理というところが必要なのかなと思います。」

最新科学が支える“アスリートごはん”

ゲスト田口素子さん(早稲田大学准教授)

●好成績の陰に科学的にコントロールされた食事

私が選手に関わりだしたころは、食事に対しての意識が全くなかったり、知識がないという選手が非常に多かったんですね。
特に若手選手でそういう傾向がありまして、いっぱい運動するので、いっぱい食べなくてはいけないのに、朝ごはんを抜いたり、あるいはですね、先ほどの千田選手の食事でも出てきましたように、筋肉をつけようとして、肉ばかりに偏った食事をしたりというふうな、間違った食事法をする選手もいまして、その結果として、コンディションが悪いとか、けがが多いというような問題点がありました。

●千田選手がとっていた瞬発力を高める食事

肉や魚介類や、そして野菜がたくさん入っています。
筋肉をたくさんつけようと思うと、やっぱり肉、肉というような、肉がたくさんある食事になりがちなんですけれども、いろいろ取り混ぜていただき、そして豆腐、あるいはスープに卵を入れるなどというふうにすることによって、必要なたんぱく質というのはとることができます。
このようなとり方をすれば、余分な体脂肪を抑えながら、筋量を増やすということが可能になります。
また、筋肉つけるだけではなくて、けんやじん帯を強化するということも大変重要なことですが、そのけんやじん帯の材料になっているコラーゲンの合成にビタミンCが必要なんですが、それが果物あるいは野菜類からとれますし、川島選手がおっしゃっていたカリウムやマグネシウムなどのミネラルも、こういうメニューでしっかりとることができるわけです。

●ウエイトコントロールも必要な選手たち

600キロカロリー程度なんですけども、牛肉はしゃぶしゃぶにすることによって、余分な脂を落としつつ、牛肉からは鉄分を多く確保できます。
たんぱく質もとれます。
そして副菜として緑黄色野菜や貝類、そして汁の中も具だくさんにしていただくことによって、ビタミン、ミネラル、かなり食物繊維もかなり豊富にとれる、栄養密度の高い食事というのが、こちらのメニューの特徴になります。

●一般的な食事の参考になるのか

非常にバランスのいいメニューになっていますので、まさにこのとおり、実践していただければ、お父さんのメタボ予防もできるかもしれません。

●食べるタイミングも大事

なるべく練習終わったあと、あるいは試合が終わったあとに、なるべく早く食べる。
30分程度を目安にしていただければと思いますけれども、早く食べることによって、エネルギー源になる筋グリコーゲンの回復を早めたり、あるいは分解されたたんぱく質の合成を高めるというような働きもありますので、運動に見合う、活動量に見合うエネルギー量、そして中身、そしてタイミング、これをそろえて食べるということが重要になります。

アスリートが飲む“初乳”病気の予防・改善にも

ロンドンオリンピックに出場したイギリスの選手が飲んで、注目を集めた飲み物があります。
子牛を分べんした牛が1週間以内に出す乳、初乳です。
病原菌などから子牛を守るため、免疫を高める成分が含まれています。
この初乳を飲んでいるのが重量挙げのジャック・オリバー選手。

体には、こう刻まれています。

「この肉体があれば思いのままだ。」

オリバー選手は、初乳を飲むことで体のコンディションを整えていったといいます。
粉末状の初乳をプロテインなどと混ぜた特製シェークです。

重量挙げ 男子77kg級 ジャック・オリバー選手
「これが朝食だよ。」

「味はどうですか?」

重量挙げ 男子77kg級 ジャック・オリバー選手
「味はよくないけど、毎朝飲まないといけないんだ。」

なぜ初乳がアスリートのコンディションを整えるのか。
胃腸病学が専門のプレイフォード教授は、初乳がアスリートの腸によい影響を与えることを突き止めました。
腸管の粘膜は一つ一つの細胞が結合することでバリアを作っています。
これが腸内にある菌や毒素をブロックし、体内へ侵入するのを防ぎます。
しかし、アスリートが激しい運動をすると体内の温度が2度程度上昇。
すると、結合が弱まって菌や毒素が侵入しやすくなり、深刻な症状に至ることがあります。
初乳は、この細胞どうしの結合が弱まるのを防ぐ効果があることが分かったのです。

プリマス大学 レイモンド・プレイフォード教授
「初乳をとると激しい運動をしても腸管が漏れやすくなりません。
初乳が腸管に隙間が出来ることを防いでくれるのです。」

プレイフォード教授は、こうした初乳の力を病気の患者にも応用できないかと考えました。

プリマス大学 レイモンド・プレイフォード教授
「これが私たちが実験した『潰瘍性大腸炎』です。」

日本でも近年急増し、13万人を超える患者がいる潰瘍性大腸炎。
教授によると、この病気でも腸管のバリアが弱まるといいます。
そこで軽症の患者を中心に通常の薬に加え、初乳を与える実験を行ったところ病状が改善する傾向が見られました。

プリマス大学 レイモンド・プレイフォード教授
「初乳を与えた患者は、薬だけの患者より病状が早く改善しました。
初乳をアスリートだけではなく、様々な病気に応用したいと考えています。」

“アスリートごはん”高齢者への効果は

アスリートの食事の研究を、高齢者の健康作りや老化の予防にも役立てられないか。
そんな研究が始まっています。
サンパウロ大学のブルーノ・グアラノ教授です。
筋肉が衰えた高齢者でも、より長く運動を続けられないかと考えある成分に注目しました。

その成分とは七面鳥に多く含まれるアミノ酸の一種、βアラニン。
マグロやエビなどにも多く含まれているといいます。
最新の研究でアスリートの激しい運動を長く持続させる可能性が明らかになってきています。
そのメカニズムです。
激しい運動をすると、筋肉に乳酸がたまります。
すると、筋肉が酸性に傾き収縮しにくくなります。
いわゆる疲労した状態です。
しかし、βアラニンを一定量とり続けると、筋肉の中にカルノシンという物質を増やします。
このカルノシンが筋肉が酸性になったのを中和することで、より長く激しい運動を続けられるというのです。
グアラノ教授は、このβアラニンのサプリメントを60歳から80歳の高齢者に、12週間与える実験をしました。
その結果、筋肉のカルノシンの量が1.8倍に増え、運動を持続できる時間が12%余り長くなることが分かりました。
βアラニンが高齢者の運動能力を高める可能性が示されました。

サンパウロ大学 ブルーノ・グアラノ教授
「高齢者は年齢とともに日常的な活動量が減っていきます。
βアラニンはそうした状態を改善し、高齢者がより活動的な生活を送るのを助ける可能性が あるのです。」

“アスリートごはん”研究の最前線

●初乳や七面鳥、刺身などからとれる新しい成分の研究

私たちが今まで何気なく食べてきた食品から、比較的最近になって新しい成分が見つかって、特に栄養補助食品、あるいは競技力向上を目的としたエルゴジェニックエイドに関する研究というのが行われています。
しかし、効果があるとする論文もありますけれども、効果がないという論文もあって、実はまだ、研究の途上にあるという状態なんですね。
ですので、安全性、合法性などもしっかりと検討したうえで、今後の研究が進んでいけば、新しい可能性も開けるかもしれません。
また、こういった特殊な成分だけで日々のトレーニングをしたり、日常生活をするということはできませんので、やはり土台にはきちんとした食生活があるということを忘れないようにしなくてはならないと思っています。

●アスリートから学ぶ食の大切さ

例えば、吉田沙保里選手が何を食べているかっていうのは皆さん、大変興味があると思うんですけども、彼女が食べているのも、本当に普通の食事、しかも日本食なんですね。
それを毎日トレーニングとともに、食生活を積み重ねてきたことによって、あれだけの強さを誇っているということになりますが、その日本食のよさというのは、まず主食が米であるということですね。
糖質がしっかりとれて、そして脂肪を使わない料理なんかも非常に合うわけですね。
いろいろな応用ができる主食ということになります。
そして、野菜類なんかも、非常にとりやすいということになりますので、エネルギーもとりながら、ビタミン、ミネラルもしっかりとって、疲労回復やコンディション調整に役立てることができる、まさに世界が注目をしている食事であるといえると思いますので、今こそやはり、もう一度見直したいなというふうに考えます。

●野菜をたくさんとると疲れにくいのか

疲労回復にもなりますし、コンディションもよくなるということも明らかですね。

●私たちにとって大事なものは何か

特にですね、ジュニア選手、あるいは一般の方でも、若い人たちの食事が乱れているという傾向があるんですよね。
ですから、やっぱり栄養について、もう一度見直して、正しい知識を身につけて、正しい食習慣を形成していくというのが非常に大事だと思います。
そういった次世代を担う子どもたちの生涯の健康作りの礎になるわけですから、それによって心身共に健康で、元気な社会の実現ということに役立つのではないかというふうに考えます。

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