クローズアップ現代

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No.32782012年11月22日(木)放送
“帰れない”認知症高齢者 急増する精神科入院

“帰れない”認知症高齢者 急増する精神科入院

認知症高齢者 急増する精神科入院

群馬県高崎市にある精神科病院です。
この日、介護職員に連れられて65歳の男性が外来を訪れました。
入居している高齢者専用住宅で暴力や暴言などのBPSDが激しくなったためです。

「いらいらして頭にくる。
気に入らないと暴言、暴力。」

介護職員は自分たちでは対応できないと入院を希望しました。

介護職員
「職員も夜間では1人しかいない。
事故があると責任が持てない。」

この病院には施設や自宅などで介護が難しくなった認知症の人が年間およそ150人入院してきます。

サンピエール病院 山崎學院長
「(家族や施設が)非常に長期にわたって、すごく苦労して対応しているケースがある。
なるべく早く引き受けるようにしている。」



「こちらが認知症疾患治療病棟です。」

病棟は入り口に鍵がかけられています。
認知症専門の病棟53床は常に満床の状態。
暴力や大声など、BPSDの症状が悪化して入院してきた人たちです。

「ちっちゃい声で。」

「わー!」

「ちっちゃい声でしゃべるんだよ。」

治療は主に、興奮や攻撃性を和らげる薬を使います。
高齢者は副作用が出やすいため精神疾患に対する専門性を生かし、種類や量を慎重に調整していきます。

「ちょっと上向いてもらっていいですか、ごめんなさい。」

症状が落ち着かず他人に危害を加えたり、転倒などで本人の命に危険がある場合、資格がある精神科医の判断で患者の行動を制限することが法律で認められています。

精神科医 山崎伸子さん
「行動制限をしなくても、けがをせずに見守れることが理想だが、現実としてはうまくいかない。
ご家族に状況を説明して安全ベルトをかけて、骨折などしないのがいいか、選択してもらっている。」

“帰れない”認知症高齢者 深刻化する長期入院

入院した人の多くは1か月ほどで激しい症状は治まります。
しかし、この病棟では半数以上が1年を超える長期入院となっています。
症状が改善しても、退院後の行き先が見つからないからです。
暴力などの症状で入院した70歳の女性です。
問題の症状はなくなりましたが入院期間は、すでに3年を超えました。

「おうちに帰りたいなあとか思われることありますか?」

女性
「あります。」

「やっぱりおうちが、いいですか?」

女性
「はい。」

夫は仕事があるため自宅での介護は難しく、介護施設への入所を申し込んでいます。
しかし、頻繁に歌を歌うことが問題とされ、受け入れを断られました。
次第に女性は歩けなくなり認知機能も低下。
口から食べることもできなくなり胃に直接、栄養を入れています。

女性の退院支援担当 加藤智子さん
「待っている間に体の状態がどんどん落ちてきてしまう。
なおさら施設の受け入れが難しくなり、結局どんどん長くならざるをえなくなる。」


なぜ症状が治まっても家族や施設は受け入れられないのか。
認知症の父親を母親と介護してきた軽部久代さんです。
父親は4年前に認知症と診断され、今年7月に、埼玉県内の精神科病院に入院しました。

軽部さん
「これなんか素手でやったのかと思ったら、夜中に木刀を振り回したりとか。」

父親は2年ほど前から家の中で暴れたり、夜中に畑仕事を始めるなど異常な行動が現れるようになりました。
症状が激しくなるにつれ家族は眠れなくなり、日中だけでも介護施設に預けようとしましたが父親は拒否。
家族は次第に思い詰めるようになりました。

軽部さん
「眠れないでずっとついているのは大変だった。
父を殺してしまおうかな。
どんなに楽になるかな。
でも、そんなことはできない。」

父親が入院してから4か月。
症状が改善してきたため退院について母親と話していますが、入院前の状態を思い出し、受け入れの決心がつきません。

軽部さん
「落ち着けば、家でみなくてはいけない時がきたら、家でみなくちゃいけないかと思う。」

母親
「わたしもおじいちゃんの面倒みてやりたいよ。
でも、うち連れてきてもどうにもならない。
暴れるから。」

先月(10月)、父親は80歳の誕生日を迎えましたが、入院が長引くにつれて衰えが目立ってきました。

軽部さん
「全然、笑顔がなくなってしまった。
ちょっと寂しいそうな表情をしていた。」

このまま入院生活を続けさせていいのか。
自宅で介護できるのか。
軽部さんは悩み続けています。

軽部久代さん
「恐怖心もありますし、日常生活がめちゃくちゃになってしまう。
自分の生活と父のことを考えると、どうしたらいいのかなと。」

認知症高齢者 急増するわけは

ゲスト玉井顯さん(敦賀温泉病院院長・精神科医)

それはですね、家族や周りが本当に認知症のことを正しく理解しないと、こういった現状に陥ったのではないかなと思います。
1つは、そういう認知症の偏見というのも強いのかもしれませんね。
ご家族はやはり、精いっぱい頑張ってるわけですよね。
ただその頑張り度が認知症を知らないために、よけいに、頑張り過ぎちゃって疲弊してしまうということにもなりかねません。
それで、最終的には、最後まで頑張ってみてますので、そのときにはもう、かなり心の傷というか、トラウマがあって疲弊してしまって、もう最後のとりでの精神科病院に入らなきゃいけないということになるんでしょうね。

●家族の受け入れる自信がない

家族にとっては、病院としては、安定はしてるということを言われますけれども、ご家族にとってはやはりトラウマが大きいと、なかなか、自分のとこでまた見るという自信がなくなってしまいますよね。
やはりもう、重度化となってしまうと、なかなか戻れないケースが多いですね。

●長期入院で体調が悪化も

なかなか長期になりますと、どうなるかといいますと、身体の能力も落ちますし、生活能力も落ちますよね。
さらに長引くと、今度は身体合併がよく起こる可能性がありますので、さらにご家族としたら、受け入れがたいということで、そういう悪循環が起こるんだと思います。

●認知症高齢者 長期入院の背景は

(家などで暮らしたいという思いから起きる混乱や見誤りについて)1つはいろんな原因でなるんですけれども、例えばお薬からなる場合も実際あるわけですよね。
いろんなところから認知症の方というのは、多受診といいますか、いろんなところの病院に行って、安定剤とかいろんなお薬を複合して、飲み方のこつさえ分からなくて、たくさん飲んでしまう場合がありますけれども、そういったところで逆にお薬を抜くだけで治る場合もありますし、むしろ食べられないからといって、何も分からなかったんですけれども、結局、歯科の先生に見ていただければ、口くうの問題だって、それが治れば…。
やはりいろんな認知症の方についても、精神的なことだけではなくて、いろんな複合的に見なければならないと思いますね。
もう1つ、やはり認知症の方を外来で見るというのはなかなか場合わせもそこで見えない面がたくさんあります。

●本人は上手に対応されてるのか

そうですね、取り繕いといいますか、そういったことが上手なんでなかなかそういったことを知ってないと、なかなか聞けませんし。
僕たちはどうしてるかというと、やはり外に出向きまして、やっぱり認知症というのは、生活の場面で起こってることが多いので、そういうことを例えば、はいかいがあるということがあれば、そういう家に訪れて、そういったことを少し検証してます。
例えば、家の前に神社があって、そこにいつも行ってるんですけれども、少し離れた所から家に帰ろうとすると、森なんてどこでもあるわけですけれども、そういう1つの森を見つけると、そこが家のそばだと思ってそこで迷子になってしまったり、赤い看板があったりしたら、ランドマークになって、赤い看板もどこでもありますから、そこに行って自分の道が分からなくなるということもありますよね。

●生活の場に入らないと、混乱している要因を取り除けないのか

そうですね、そうするとやはりBPSDの根本が見えたりとか、なぜはいかいをしてるのかとか、そういったことが分かりますので、僕はなるべく、外来だけではなくて、できるかぎり在宅を見て、患者さんと共にはいかいをしたり、認知症のドライバーということもありますので、一緒に僕が運転をしてやるわけですけれども、そういったことも少しBPSDとか認知症の本当の病態が少し見えるような気がします。

模索する精神科病院

石川県かほく市にある県立の精神科病院です。
入院している認知症の高齢者はおよそ120人。
この病院でも、入院の長期化が問題となっていました。
副院長の北村立医師は4年前から退院を促すためのさまざまな取り組みを始めています。

まず取り組んだのが、家族や介護施設が抱える退院への不安を解消することです。

男性
「向田の、バカタロウです。」

この日、行われたのは2か月前に暴力などが原因で入院した男性の退院に向けたケア会議です。

北村医師
「外泊もらえるようなつもりでもいいねやん、別に。」

症状に改善が見られたため家族や介護施設の担当者を集め、退院後の過ごし方について話し合いました。

北村医師
「なんか種目(やること)をみつけてやらなきゃいかん。」

病院の作業療法士
「うち(病院)ではぬり絵している。
ぬり絵は集中して40分はしている。」

北村医師
「(退院してみて)うまくいかなかったらまた入院すればいいんだし。
やってみないことには分からんから。」

さらに退院に備えて病院の看護師や作業療法士が自宅を訪問します。

病院の作業療法士
「お邪魔します。」

「はい、どうぞ。」

症状が再び悪化しないよう生活環境を整えていきます。
この家に住んでいた男性は入院前、実際にはいない人の姿が見える幻視の症状が出ていました。

病院の作業療法士
「実はこういうガラスって良くないんです。」

病院のスタッフはその原因がガラス戸にあると指摘し、少しの工夫で予防できると伝えました。

病院の作業療法士
「テレビをつけてそこに映ると、そっちに人がいるように見えたりする。
薄い白い紙を貼っておくと大丈夫。」


「安心といったらおかしいけど、これからも相談できる。
退院したら終わりというのではなく、まだつながりがある。
うれしい。」

病院では認知症の人の入院そのものを減らす取り組みも始めました。
その1つが医師みずから介護施設に出向き、BPSDがひどくなる前に治療することです。

医師
「こんにちは。」

グループホーム施設長
「こんにちは。
いつもありがとうございます。」

施設ではBPSDが出ても付き添う職員の確保が難しく、すぐに病院に連れて行けないのが現状です。

医師
「どうやろ、だめか?」

最近、90歳の女性が夜中に大声を出すようになったと相談を受けました。

医師
「痛いんやな。」

グループホーム施設長
「痛いと言ってますね。」

北村医師は、大声の原因は足や腰の痛みにあると診断。
痛みを抑える薬を処方しました。

グループホーム施設長
「往診は症状が悪化する前に新しい発見をして、すぐ対処できることにつながっている。
できるだけ(長く)このホームにいてもらうことが可能になる。」

さらにBPSDが出ないように本人と家族を支援する取り組みも始めています。
この日、娘に付き添われて初めて外来を受診した82歳の女性です。


「昨日も時計を忘れて。」

医師
「それ、激しく言う?
ちょっともしかしたらみたいな感じ?
そんな感じだね。」

検査の結果、初期の認知症と診断されました。
翌週、病院のスタッフが自宅を訪問。
同居する息子や、近所にいる親戚地域の介護担当者に集まってもらいました。

女性の妹
「昨日も健康クラブ忘れてしまって。」

話を聞くと、女性は毎週地元の健康クラブに通うのを楽しみにしていましたが、最近、日付やバスの時間が分からなくなり、行けなくなっていることが分かりました。
認知症の症状は軽くても生活の中でできないことが増えるとストレスや不安が積み重なり、BPSDが出るおそれがあります。

病院スタッフ
「妹さんに9時に来ていただいて、薬を飲ませていただいて、バスに乗るのを見送っていただいて。」

女性の妹
「乗るときだけね。」

病院のスタッフは今までどおりの生活を続けるために家族がどう手助けすればいいのか、どんな介護サービスが使えるのか細かくアドバイスしました。

病院スタッフ
「落ちてきているところはみなさんでサポートしていただいて、他のできるところはやっていただいたほうが絶対いい。」

こうした取り組みを始めて以来、BPSDが重くなってから病院を訪れる人は少しずつ減ってきました。
この2年、入院してきた人たちの半数は2か月ほどで退院できるようになっています。

石川県立高松病院 北村立副院長
「これまでは“最後のとりで”という役割しかなかった。
今後ますます認知症高齢者が増えていく。
施設や病院に入れるだけでは対応できない。
認知症の治療、看護のノウハウを持っている精神科のスタッフがどんどん地域に出るべきだと思う。」

認知高齢者 早期支援の重要性

(家族のところに行く取り組みは)大変すばらしいことだと思います。
1つはチーム医療をやっていることですね。
特に認知症というのはチーム医療が一番大事になるんで、それを実践しているということです。
もう1つは、生活の場をやはり実際に見てるということで、かなりなBPSDの原因が少し分かりますので、その対処法をご家族に伝えられるということですね。
もう1つは、言っていたのは、保証ですよね。
再入院できる、いつでも来ていいんだよっていうことの保証があれば、要するにバックアップ体制がきちっとできてる、そういうことで、在宅に長く入れるということができますよね。
精神科病院というのは、やはりバックアップ体制はぜひ必要なんです。
これがなければ。
最後のとりでですからね。
どこかあってもそこがないとあかんのですけれども、やはりもう少し今度進化した形で、これだけ認知症の方が多くなってきた現在、やはり今度は外に行って、要するに施設でも、かかりつけ医でも、在宅でも、少し認知症の専門医の先生が、精神科の先生が行くことによって、スタッフが行くことによって、今度は、外と中でね、同じようなバックアップ体制が取れると、これはもうすばらしいことだと思います。

●認知高齢者をどう支えるか

(大切なのは)やはり啓発ですよね。
1にも2にも啓発で、やはり認知症を正しく知る、早期発見、早期治療というのが一番大事なことだと思いますね。
やっぱり一番基本的には、その病気を知るということで、頑張らない介護とかもできますので、やはりそれが一番だと思いますね。
認知症サポーターというか、世の中にいろいろ、国民1人1人が認知症の方を理解していただくということが一番大事だと思います。

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