クローズアップ現代

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No.32742012年11月15日(木)放送
“おしゃべり”で老化を防げ! ~ぎんさんの娘たち 元気の秘密~

“おしゃべり”で老化を防げ! ~ぎんさんの娘たち 元気の秘密~

ぎんさんの4人娘 “おしゃべり”の秘密

名古屋市南部の住宅街です。
4姉妹はみんな歩いて数分の所に暮らしています。

長女の年子さんと三女の千多代さん。
共に夫は亡くなり、10年前から一緒に暮らしています。

長女の年子さんはおっとりとした性格。
何をするにもマイペースです。




三女の千多代さんは母、ぎんさんに似てしっかり者。
炊事や洗濯もてきぱきこなします。




年子さん
「お茶菓子。」

千多代さん
「なーい。」

四女の百合子さんも夫を亡くして1人暮らし。
拾った猫、あかがパートナーです。
毎朝、声に出して新聞を読むのが日課です。

百合子さん
「都知事というポストはそれほど軽いものだろうか。
本当だわねー。」

五女の美根代さんは活動的です。

美根代さん
「あっ、来た来た。
いつも3人だもの。
あの人(年子さん)留守番。お姉さま。
そして買ったものを文句言う人。」

58歳のとき車の運転免許を取得。
姉たちを積極的に外に連れ出します。
そんな4姉妹が楽しみにしている日課があります。
昼下がりになると姉妹は美根代さんの家に集合。
ぎんさんもよく過ごしていた縁側で始まるのがおしゃべりです。
この日は、20年前に行った動物園で迷子になった話で盛り上がりました。

百合子さん
「動物園に行ったら、出るに出れんようになっちゃったの。」

千多代さん
「方向音痴でよ、行き先がわからん。
西か東かわからんでよ。」

ようやく外に出て入ったすし屋では…。

百合子さん
「そんでもう地下鉄のとこで会って。
まずくて、まずくて、すし屋が。」

年子さん
「それは動物の食堂だ。」

長いときには4時間も続くおしゃべり。
4姉妹が今、最も大切にしている時間です。

「元気の秘けつは?」

4姉妹
「雑談、雑談。」

百合子さん
「利口な話せんでもええ。」

千多代さん
「よた話してよ、あははって笑ったら一番ええじゃないかなと思う。」

百合子さん
「利口にはなれんよ。」

千多代さん
「博士になるんだったら、これはいかん。
バカセだ。」


4姉妹の心の健康状態に注目する研究者がいます。
国立長寿医療研究センターの下方浩史(しもかた・ひろし)さん。
2000人以上を対象に生活習慣と老化の関係を調べてきました。

下方浩史さん
「こうやっていつも4人お集まりになってお話されてるんですか?
毎日?」

百合子さん
「毎日懲りもせんとなあ。」

下方さんたちが4姉妹の心理調査を行ったところ、驚くべき結果が出ました。
これまでの調査では多くの高齢者が70代、80代になるとうつ傾向の数値が高まるという結果が出ています。
ところが、4姉妹は平均93歳にもかかわらず、極めてうつ傾向が低かったのです。

国立長寿医療研究センター 下方浩史予防開発部長
「年をとってくると、どうしても抑うつ傾向、うつになってくる人が多い。
4姉妹はうつがほとんどないですね。
みなさん非常に前向きで元気で生きていることがわかりました。」

“おしゃべり”で認知症を予防!?

4姉妹のおしゃべりの中に認知症予防のヒントを見つけようとしている研究者もいます。

「はじめまして。」

日本認知症学会の理事、遠藤英俊(えんどう・ひでとし)さん。
脳の血流が増加する機会が多いと認知症になりにくいと考えています。
実際に4姉妹がおしゃべりするとき血流の量はどうなっているのか調べてみることにしました。
姉妹の平均年齢93歳に最も近い三女の千多代さんで測定します。

初めは、初対面の人と会話してもらいました。

会話のテーマは季節に関することと限定しました。

「朝晩、寒くなりましたけど。」

千多代さん
「そうですね。」

「なにか体に気をつけてることありますでしょうか?」

千多代さん
「カゼをひかんようにと思ってね。
気をつけております。」

このときの千多代さんの脳の画像です。
ほとんどが緑色のままで血流は、あまり増加していないことが分かります。
次に妹の百合子さんとの会話です。

百合子さん
「季節の話するんだそうですけど。」

千多代さん
「はい、しましょう。」

百合子さん
「なんでしょうね、今は?」

千多代さん
「かえでのな。」

百合子さん
「あら、そんないい話するの?」

千多代さん
「そりゃ山の話をしないと。」

百合子さん
「あらま、そうかね。
私、食うことだけかしらと思って。」

千多代さん
「食わないかん、食わないかん。」

百合子さん
「そりゃもみじきれいだよ。」

画像に黄色や赤の部分が現れました。
血流が増加していたのです。
初対面の人と比べて姉妹で話したときはおよそ2.5倍に増加していました。


日本認知症学会 遠藤英俊理事
「びっくりしました。
一気に血流増えてます。
ぜんぜんパターンが違う。」


さらに、4姉妹全員の会話でも測定。

百合子さん
「いい季節が来ましたから、またよろしくお願いいたします。」

千多代さん
「お願いします。」

美根代さん
「もみじ狩りに行きますか?」

百合子さん
「はい、もみじ狩りに(車で)連れてってください。
あなたがあってこそだよ。」

千多代さん
「最敬礼。」

百合子さん
「やりなさい、最敬礼を。
頭に乗ってるで。」

千多代さん
「これが邪魔で最敬礼やれんで。」

姉や妹に負けまいと発言しようとする千多代さん。

2人での会話と比べてさらに赤い部分が増え、脳全体を活発に使っていました。


日本認知症学会 遠藤英俊理事
「他人だと遠慮があったり、丁寧語でしゃべったりしますけど、4人そろった時にはよりユーモアやジョークを交えて、積極的に会話されているのがわかって、姉妹でしゃべるメリットがすごく大きいんだなと思いますね。」

千多代さん
「ありがとうございました。
やったことないことやれるっていうのは、生きとる証拠。」

“おしゃべり”で記憶力を強化!?

4姉妹の会話の内容に脳の機能を強化するためのヒントを見つけた研究者もいます。

ロボット
「おしゃべりは楽しいですね。」

ロボット
「そのとおりですね。」

人工知能が専門の大武美保子(おおたけ・みほこ)准教授。
高齢者の脳によい影響を与える会話ロボットを開発しようと研究してきました。
大武さんは4姉妹のある日のおしゃべりを分析。
すると、姉妹が無意識のうちに記憶力を強化する会話をしていたのです。
例えば先日4人で東京駅を訪れたときの話。

千多代さん
「昨日は久しぶりに東京駅で降りた。」

百合子さん
「よかったねえ、駅新しかったもの。
レンガの。」

年子さん
「本当によかった。」

千多代さん
「まだ、半分だわね。」

百合子さん
「そうそう。」

美根代さん
「まだ囲ってあったね。
表の方をきちんとやるんだね。」

千多代さん
「そうそうそう。」

美根代さん
「屋根の上の方は、きれいだったけど。」

百合子さん
「壁のとこはかけておった。」

美根代さん
「そうだ。」

この会話に見られたのが“そういえばそうだった”効果です。
4人が一緒に行った東京駅についてそれぞれが覚えていることを会話によって出し合います。
すると、1人では細かく思い出せなかった事柄がはっきりとよみがえってきます。
これを、それぞれが再び記憶することで、脳の記憶機能が強化されていくのです。

千葉大学大学院 大武美保子准教授
「4つの脳が一緒になって協力しあって、まるで1つの脳のように働いている。
みんなで『その時はそうだったね』と言って、みんなの記憶がどんどん定着していく、そういう効果がある。」

“そういえばそうだった”効果といえる会話は80分間のおしゃべりの中に6回もありました。

この会話もその1つ。
11年前、母親、ぎんさんが亡くなったときのエピソードです。

千多代さん
「4時か5時ごろ(私たちが)ここでみかん食べとった。」

百合子さん
「そうそうそうそう。」

千多代さん
「あんたここで寝転んどった。
このみかんおいしいなあ、うみゃあなあ、そんな話をしながら食べた。
そこら辺で(ぎんさん)寝とって、『うん、よこせ』ちゅうて。」

百合子さん
「そうそう。」

美根代さん
「ほんでよ、あんたがよ、おばあさん、みかんの汁飲ましたらよ。
にこっと笑ったってあんた喜んどった。」

千多代さん
「わしが末期(まつご)の水やっただけ、よかったな。」

百合子さん
「そうそうそう。」

千多代さん
「そのみかんが末期の水だわな。」

美根代さん
「そうだな。」

千多代さん
「ごくんと言った。
にこっと笑った。」

科学者たちから注目を集める4姉妹のおしゃべり効果。
当の本人たちは特に意識することもなく、いつもどおりの暮らしを続けています。

年子さん
「ごちそうさまでした。」

千多代さん
「残っとるよ。」

年子さん
「食べれん。」

百合子さん
「もったいにゃあが捨てるの。」

年子さん
「いいが、明日の朝食えば。」

百合子さん
「その手があった。」

年子さん
「まだ(明日も)生きとるもん。」

美根代さん
「死んだりしんもん。」

千多代さん
「知らなんだ、生きとるとは。」

百合子さん
「もう死んだと思ったがな。」

千多代さん
「なんでそういうこと言うの!」

ゲストぎんさん4人娘(年子さん・千多代さん・百合子さん・美根代さん)

●おしゃべりが記憶力の強化や認知症の予防になっていることに

美根代さん:そんなこと思ったこともない。
思わずになんでもしゃべってる。

千多代さん:認知症とはどういうことだどういうことかなと思う。
なんかことばが変わってくるわけだわね。

●おしゃべりですごい頭が活発になってる感覚は?

千多代さん:なんにもない。

百合子さん:ないね。

美根代さん:考えたことない。

千多代さん:なんにも感じない。
(頭につけて調べたことに)一体これ、何をするがためにやるのかなあと思うようなこと。

●間近でおしゃべりを見て、発見は?

ゲスト下方浩史さん(国立長寿医療研究センター予防開発部長)

下方さん:言葉がすぐ出て1人の方がお話をするとすぐ答えが返ってくる。
本当にキャッチボールをしてるように話が弾むんですね。
これはすごいことだと思います。
私は実際、お年寄りとお話をするときは、お嫁さんだとか娘さんと一緒に見えていちいちお話をすると振り返って娘さんやお嫁さんに確認をする振り返り現象っていうんですけども、そういうことをされる方が多いんですけども、そういったことが全くなくて皆さん自信を持って明るくポンポンポンって話をされる。

千多代さん:それをやるとな、おしゃべりだっていって叱られる。

下方さん:いやいやいや、それがいいんですよ。

千多代さん:いいだと。

下方さん:そういうことをすることによって頭を活発に使うんですよね。
いかにおもしろいことを言って、みんなを笑わせようだとか楽しい気分にさせようだとか、そういうことを考えて言葉がすっと出る。
それを毎日毎日やってると。
これが頭をいつも使う訓練をしている。
だから認知症の予防にもなるんです。

百合子さん:ああ、そうですか。

千多代さん:それでわしは叱られるんです。

●丸いテーブルのこの場で和まれるんですよね?

百合子さん:そうですね。
ちょっとすぐ顔が見えるもんね、4人が。

下方さん:このちゃぶ台っていうのはすごい、すばらしいと思うんです。

千多代さん:丸いっていうのは。

下方さん:丸くてね、みんなで近くに寄って話ができる。
この距離の近さがいいんですよね。
テーブルとイスではこうはいかないんですよ。

千多代さん:そうだな。

下方さん:ちゃぶ台を囲んで、お互いに肌と肌が接する体温を感じるぐらいの近さでお話ができる。
これがやっぱり会話が弾む要因になると思うんですよ。

千多代さん:そうですな。

下方さん:この近さでお話をすることが、お互いを思いやったりですね、そういう気持ちにもつながってくんだと思うんです。

百合子さん:そうですかね。
なんの気なしにこうやって…。

美根代さん:長女がね、一番最初10年ぐらい前にね、ちょっと痴ほうにかかったんですわ、姉さんがね。
そんときにね、病院、養老院に入れるっていって息子が言うもんだ。
私は怒ってね、こんなまだ自分のことは自分でやれる、何言っとんだっていうようなもんでね、それでこの姉にね三女の千多代にね、悪いけどもちょっとあんたも1人暮らしだて面倒見たってくれないか言ってね、ほれで頼んでね面倒見てもらった。
そうしたら、この人ね、生き返ってきたの。

下方さん:そうですね。
こうやってお話をすることによって皆さんの生きる希望だとか生きがいだとか、そういうものが出てくるんですよね。
そういうことが私のそういう研究専門なんですけども、ずっと地域に住む人たちのそういう生き方だとかそういうのをずっと調べてきましたけども、生きがいを持つこと、明るい気持ちで生きること、それから趣味やなんかを持つこと、そういうことが認知機能を維持して、認知症を予防して、ひいては健康長寿につながるっていうことがね、分かってきたんでこうやってお話できることが本当にすばらしいことだと私は思います。

千多代さん:それからあんたうち来てからね、おかずができるようになった。
料理ができるようになってね。

年子さん:包丁が持てなんだ、怖くて。

千多代さん:(リンゴ)むけるようになった。
それで、おかずができるようになった。
味も分かるようになった。

●おしゃべりに参加していないときに調子わるいことは?

百合子さん:しょっちゅう来とるもん。
かぜひいたぐらいなら3日か4日だもんだでね。
ほで、すぐ治る。
寝とると、またみんなが見舞いに来てくれるしね。
ほだで、そういう感じはしたことないですね。

千多代さん:一日しゃべらんぐりゃあが、一番長あな。
一日しゃべらんのが一番長い。

●誰が一番おもしろい人とか、だじゃれとかは?

美根代さん:だじゃれは一番最初、この人(千多代さん)。
この2人(千多代さんと美根代さん)置くならば、まあ漫才聞いとるよう。

●4人そろうと会話がポンポン出てくるのは不思議

百合子さん:ねぇ、本当。
知らん人だとなんか話しにくいもんね。
何をしゃべっていいか。
(一番盛り上がるのは)きょうだいだとね、昔の話してもね、近所の人の話してもみんな通じるでしょ。
ほだから話しいいですわ。
お上手も言わんでもいいし。
下品だもんだ。

●おしゃべりを通して 健康長寿に向けた鍵は?

下方さん:こういうおしゃべりできるって環境はすばらしいと思いますけども、今の日本の社会っていうのはそれと逆方向に向いてるんですね。
高齢者が1人で暮らしてて家の中に閉じこもってしまうようなそういうケースも非常に多いので、こういう4姉妹のような恵まれた環境にいる方はなかなかいない、珍しいぐらいですよね。
ですので、自治体だとかNPOだとか、いろんな方々が努力をして、お年寄りがこういうコミュニケーションを取れるような場、機会をどんどん作るべきだというふうに思います。

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