クローズアップ現代

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No.32642012年10月24日(水)放送
アップサイクルの挑戦 ~動きだした循環型環境ビジネス~

アップサイクルの挑戦
~動きだした循環型環境ビジネス~

古着のアップサイクル 難問への挑戦

私たちが1年間に消費し、不要となって捨てられる服はおよそ130万トン。
そのうち、古着として売られたり、雑巾などに加工されてリサイクルされるのは19%に過ぎません。
それ以外の衣類は異なる素材が混ざっていて、仕分けが難しいため、これまで廃棄処分するしかありませんでした。

ごみとして捨てられてきた古着をなんとか再利用できないか。
難しいリサイクルを独自に切り開いたのがこの大手繊維メーカーです。

「こちらは弊社の繊維製品をリサイクルする工場になります。」

このメーカーが主に扱うポリエステル素材は石油を原料としています。
将来的な資源の枯渇という問題を見据えて、古着を新品の服によみがえらせるアップサイクルに取り組んできました。

繊維メーカー経営戦略チーム 池田裕一郎さん
「ぼろぼろになって着られなくなった物も、リサイクルすることによって、まっさらな、例えば高級な衣類に生まれ変わらせることもできるので、まさにアップサイクルも可能。」


このメーカーはポリエステル製の古着を分子レベルに戻して再生する最先端の技術を開発しました。

その工程では、まず古着を機械で細かく砕き、ペレット状の繊維くずにします。
この時点では着色剤やポリエステル以外の繊維が混ざっているため再生できません。


そこから着色剤を取り除き化学反応によって分子レベルにまで分解するのが特徴です。

そして、ほかの素材をろ過して取り除き、最終的にポリエステルの原料を抽出するのです。


「これが使い終わった衣類を回収して、そこから作ったポリエステル。
品質は石油から作ったものと同じポリエステルになります。」



こうして出来た再生ポリエステルの糸は、石油から製造するものと比べ品質が落ちることなく、何度も繰り返し再生できる画期的な素材です。



しかし、この新技術は開発当初、すぐにビジネスに結び付くことはありませんでした。
実は再生ポリエステルはその過程でコストがかかり、石油から製造するものに比べて2割から3割、割高になるため、この糸で服を製造しようというアパレルメーカーはなかなか現れませんでした。

繊維メーカーとしてはアパレルメーカーを募って、再生した糸を使った商品を販売しそれを回収して永久に循環させるビジネスを目指していました。
しかしアパレルメーカーにとっては、材料費が割高になる上、さらに新たな費用をかけて古着を回収するのは大きな負担でした。
志には賛同するものの簡単には踏み切れなかったのです。

繊維メーカー経営戦略チーム 池田裕一郎さん
「スタート時点では、使い終わったユニフォームや衣類を燃やしてしまえば費用も安く済みますし、問題なく処理することができる。
より一歩進んだことをやろうというと、余計なお金っていうのもかかりますし、余計な手間っていうのもプラスアルファでかかってきますので。」

そんな中、重要な賛同者が海外から現れました。
衣類のリサイクルに関心を持っていた、アメリカの大手アウトドアメーカーとの提携が決まったのです。
割高な再生ポリエステルを使って、どのようなアップサイクル商品を生み出すのか。
日米共同のプロジェクトが動きだしました。
開発チームはハンデを逆手に取り、少々値段が高くても買いたくなるような高品質の商品作りを目標に掲げました。

繊維メーカー開発担当 尾形暢亮さん
「売れないと困るので、消費者が好むような柄であったり質感を色々と考えて。
エコはストーリー(理念)だけであって、売れていくのは商品なので。
商品として、どう付加価値をつけるか。」

商品の開発では生地の強さや乾きの速さ、抗菌防臭の機能など20以上の項目で品質テストを行いました。
開発に2年を費やし、200点を超える試作を繰り返した末に再生ポリエステルを使った最初の商品が完成しました。

商品開発と並行してアウトドアメーカーは、古着を回収する専用のボックスを店頭に設置しました。
国内のみならず海外も合わせた70以上の直営店で回収し、それを再生工場に運搬するという画期的なものです。
こうして、ついに今までごみとなっていた古着を何度も繰り返し循環再生できるシステムにたどりついたのです。

新商品は従来のものに比べて価格は上がりましたが、売り上げ枚数は2割増加。
今では商品の半分近くがアップサイクルしたものとなりました。
回収量もこれまで36トンと順調に伸びています。

この成功によって新たに賛同する企業が次々と現れました。
この国際的なファッションブランドもその1つです。

「ワンピースなんですね」

再生ポリエステルだけを使った服で、今年デザイン界のオスカーといわれるデザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。




1つの繊維メーカーが技術の力で立ち上げたアップサイクルビジネス。
今では参加企業は世界155社に拡大しました。
今後はさらに再生工場をアジアにも建設。
ビジネスの拠点を広げていこうとしています。

繊維メーカー経営戦略チーム 池田裕一郎さん
「これを使っていかに成長できるビジネスに発展させていけるかが次のステージになると思う。
アップサイクルのリサイクル技術を持って、進めていかなければビジネスは拡大していかない。」

“永久循環”に挑む アップサイクル

ゲスト長沢伸也さん(早稲田大学ビジネススクール教授)

(永久に循環できるこのビジネスモデルは)すばらしいと思いますし、まさに画期的、原理的には永久にある。
しかもちゃんと市場原理に基づいてビジネスとして成り立って、多くの会社を巻き込んで循環していくわけですから、その意味では大変画期的だと思っております。

技術だけじゃない問題として、大きくは2つあったんではないかと思います。
1つ目はやはり(古着を)集めるということ、2つ目は商品力だと思います。
1つ目の集めるということに関してはですね、古着というのは、なかなか法律の裏付けもありませんので、要するに民間企業が自主的に、それこそ法律でもなく、補助金でもなく、集める仕組みを、システムを作ったというところがやはり画期的ではないかと思います。

●集めることを優先 その背景とは?

この繊維メーカーは、実は10年ほど前に、ペットボトルをまたペットボトルに再生するという技術を開発して、プラントも造ったんですね。
ところが、当時、資源が高騰して、肝心の使用済みペットボトルがなかなか集まらない、具体的にはアジアの国に流れていって、その工場に入ってこなかったと、そうすると肝心の技術もプラントも生きなかった。
恐らくそのときの教訓があってですね、やはりものを、ぶつを集めるということがこういうリサイクル、完全循環ビジネスのキーポイントだというところにこのメーカーは気がついてシステムを、仕組みを作ったというふうに思っております。

●多数企業が加わる背景とは?

この技術をもってしても、(素材が)2割、3割高くなりますが、反対に使用するエネルギー、あるいは(素材を作るときの)CO2排出で言うと、8割減できるという、こういうメリットがあります。
そういういいところはあるんですが、やはりなんといっても価格が、コストが高くなれば当然価格も高くなると。
そこでこのケースでは、非常に商品力というところに力を入れた。
具体的にはデザインなりに力を入れてるわけであります。
そうすると、一般消費者は、とにかく『わっ、素敵』と言って手に取ってみると、しかも環境に優しい、リサイクルに基づいて作られた商品だと。
そうすると、2、3割高いものをはねのけて売れると、そうすると、回り始めるわけですね。
参加する企業もCSR、社会的企業の社会的責任という観点からやはり環境に優しいことをしよう、単に売り切ってごみになるよりは循環して回そうと、そう考えると、この2、3割のコスト高というのは十分回収できて、市場原理が回っているというふうに見ております。
もちろん、この繊維メーカー中心に1社1社増やしていったと思うんですが、ある程度のところになって、VTRでも紹介がありましたあのアメリカのアウトドアメーカーが入ってきた。
そうすると、今度はあのメーカーが入ってるんならばってことで、国内外のメーカーがさらに参加するということで、155社にまで膨らんでいった。
だからちょうど好循環が回りだしたのではないかと思います。

アップサイクルの挑戦 廃品をブランド商品に

東京・原宿のファッションビル。
その一角にある雑貨のショップが今、注目されています。
店内に並ぶカラフルなアクセサリー。
そして鮮やかな色使いの財布。
実は、この店の商品はすべて廃材から出来ています。

「(素材は)ウェットスーツでした。
だまされた気になる。」

例えばこのおしゃれなバッジ。
実はファッショングッズを作る過程で大量に出るアクリル板のはぎれで出来ています。



「いすのバックボード(背板)、小学校の。」

小学校から廃棄されたいすの背板からは、味わい深いハンガーが生まれました。


3年前から有名デザイナーと組んでこうした商品を手がけているのが青山雄二さんです。
廃材から高品質な商品を生み出す持続的なアップサイクルビジネスを目指しています。
現在、国内の工場から排出される産業廃棄物のうち、再利用できないものは年間2億トンに上るといわれています。

例えば毎年400万台が廃車となる自動車。
中でもエアバッグとシートベルトは安全性を守るため、同じ用途での再利用が禁じられすべてが廃棄されてきました。
この工場だけでもその量は年間10トンを超えます。

「ちょうど今、欲しかったんです、本当に。」

このシートベルトをなんとか商品化できないか。
青山さんは光沢のある高級な質感に目を付けました。
さらに色と柄も300種類に上ることが分かりました。

その素材を生かしたデザインを施し、ファッション性に富んだ高品質の蝶ネクタイに生まれ変わらせました。




こうした廃材のアップサイクルを進める上で青山さんが重視しているのが、販売戦略です。
これまでのエコ商品のように環境を売り物にせず、品質に見合う思い切った値段をつける。
そして、あえて青山や代官山などにある最先端のショップで展開する方法を取りました。
その結果、都内の1店舗からスタートした販売網は僅か2年で全国100か所の店舗にまで拡大しています。

NPO副理事長 青山雄二さん
「環境にいいとか負荷が少ないっていうのも大事だと思うんですけど、僕らはデザイン的にどれくらい優れているかとか、多くの人にどれだけ欲しいと思ってもらえるかというところに力を注いでる。」

今、アップサイクルの動きをリードするのが欧米の企業です。
アメリカでは大学生が立ち上げた企業が年商16億円と急成長しています。

一般家庭や工場から大量に出るお菓子のパッケージなどを回収し、1500種類もの商品を生み出しています。
それによって数十億個以上の廃材をよみがえらせてきました。



先月(9月)、青山さんの取り組みにも大きな動きがありました。
大手の産業廃棄物処理会社から提携の申し出があったのです。

「容器として使っているものです。」

この会社は全国3000余りの工場と契約を結び、そこから出る廃材およそ3万点の処理を行っています。
どこにどんな廃材があるかほとんど情報がない中で、材料の安定確保に苦労してきた青山さん。
提携すれば、より豊富な材料でさらなる事業の拡大も望めます。
一方、廃材を出す工場にとっても全国に販路を持つ、青山さんのアップサイクルビジネスは魅力的に映りました。
これまで工場は経費を払って廃材の処理をしてきましたが、今後はアップサイクル商品の材料として逆に利益を生む可能性があるからです。

独自の模索を重ねる廃材のアップサイクル。
青山さんは新商品のアイデアを一般から募集するコンテストを始めるなど、新たな挑戦を続けています。

NPO副理事長 青山雄二さん
「取り扱う店がどんどん増えていくというのが僕らの思いですね。
日本全国でアップサイクルした商品が買える。
もっと流通させていくのが僕らの思いです。」

アップサイクル 進めるカギは?

(廃材からデザイン性の高い商品を作る取り組みについて)これもまた、すばらしいと思います。
やはり廃材とは言うものの、青山さんは、素材というふうに見てるわけですね。
その素材、あるいはカラフルな色とかを生かした、非常に商品力のある商品を作っている。
商品力があるから売れる、それで店舗も100店舗まで増えて、今度は販路が確立したわけですから、逆に販路が多いことによって、提携を申し込まれたりしてだんだん広がっていくと、これも非常に好循環が回り始めた例ではないかというふうに思っております。

●廃材を素材に 新しいものづくりへ

シートベルトっていうのは、非常に、1メートル当たり2万円ぐらいするとっても高いもので、普通に買ったりできるものじゃないものが、廃車になったとこから切り出して使ってると、だからこの廃棄物でないと得られない素材ということになろうかと思います。
そういうのを生かして、これまでは環境に優しい商品というのは、必ずしも商品力がない、必ずしも売れない、消費者からすると環境に優しい商品は品質が必ずしもよくない、デザインがよろしくない、でも環境に優しいから我慢して買えみたいな、こう、非常に押しつけがましいイメージがあったものを、環境は二の次で、むしろデザインとか商品性を重視して作っていると。
その結果、うまく回りだしたというふうに見ております。

結局、消費者も環境に優しい商品はデザイン、品質が悪いものばっかりではないんだというふうに変わりますし、メーカー側も環境に優しい商品はこれまで売れるはずといって売れないで、だいぶ、痛い目に遭ってきたものが両方、意識が変わるんではないか。
逆に先ほどの繊維メーカーの例のように海外のメーカーまで巻き込んでおりますので、日本の優秀な技術力やデザイン力を生かして、まさに地球を救うという動きにつながるんではないか。

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