クローズアップ現代

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No.32622012年10月22日(月)放送
“つながり”から抜け出せない 〜広がるネットコミュニケーション依存〜

“つながり”から抜け出せない 〜広がるネットコミュニケーション依存〜

広がる“つながり依存”

朝8時、東京都内に暮らす、この30代の主婦は夫が出かけるとすぐにスマートフォンとタブレット端末を開きます。
目当ては、ツイッターなどソーシャルメディアでつながる80人の友人。
1日8時間以上もやり取りを続けます。

主婦
「育児のイライラとか旦那へのイライラとか、愚痴ったら『大変だったね』って慰めてくれたり、それが最高だなって思います。」

ネットのつながりに夢中になるあまり、掃除や洗濯に手が回らなくなったといいます。

主婦
「洗い物をためすぎて、排水溝が詰まっちゃったりとか。
これをやめれば、洗う時間はいくらでもあるんですよ。
でも、これをやっていると一日がものすごく早くて、洗い物もたまってしまう。」

人々をとりこにするネットのつながり。
今、そこから抜け出せなくなり、医療機関で治療を受ける人も増えています。
この病院では、去年(2011年)7月全国で初めて、ネット依存専門の外来を開いたところ毎月およそ60人が相談に訪れるようになりました。

中学生の母親
「一日に130から150つぶやきますので、全く鉛筆を持たないほど学業がおろそかに。」

年齢は10代から80代までと幅広く診察は、ひとつき先まで予約でいっぱいです。

大学生
「起きてから夜までずっとやってて、それに見かねて両親がパソコン取り上げて私が家出したこともちょっとあったり。」

ここでは、1日の行動を記録してもらい依存症であることを自覚させることから治療を始めます。

久里浜医療センター 樋口進院長
「例えば、仕事に身が入らなくなるとか、あるいは夜遅くまでやっていて次の日の朝、なかなか起きづらいとなったら、もう依存はそこまできている。
そのような方は潜在的にたくさんいるんじゃないか。」

この女性も、2年半の間ソーシャルメディアのつながりから抜け出せず、ついには2度にわたって会社を辞めました。
女性がつながり依存になったのはツイッターでの何気ないつぶやきがきっかけでした。
好きなタレントについて書き込んだところ思わぬ反応が返ってきたのです。

「読んでいて胸が熱くなりました。」

「幸せな気持ちになりました。」

数百人もの人がこのつぶやきを評価。
やがて女性は、一日中ひっきりなしに書き込んでは反応を心待ちにするようになったのです。

40代の女性
「現実の生活で普段の生活で『すごーい』とかって言われないですよね。
逆はいっぱいあると思いますけど。
人から評価とか注目を失うのが怖かった。」

“つながり依存”メカニズムは

なぜ多くの人が、ここまでソーシャルメディアにのめり込むのでしょうか。
ギャンブル依存などを研究してきた脳科学者、篠原菊紀教授です。
篠原教授は、ソーシャルメディアには、脳が快感を得やすい仕組みがあるといいます。

諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授
「一番最初はとにかく書いてみたんだけど、いきなり『いいね(評価)』と言われると、ほめられた、認められたということになる。
そういうことが繰り返し、ソーシャルメディアにはまっていく。」

篠原教授は依存のメカニズムには快感をもたらす脳内の物質、ドーパミンが関係していると考えています。
ソーシャルメディアに書き込んだことが評価されると、脳内でたくさんのドーパミンが放出され、快感を感じます。
ところが、次に評価を期待して書き込んだことに反応がないとドーパミンの量が減って大きく落胆してしまいます。
落胆したあとに再び評価されると、今度は喜びが倍増し、さらに多くのドーパミンが放出されます。
これが繰り返されると、快感がどんどん大きくなってやめられなくなるというのです。

諏訪東京理科大学 篠原菊紀教授
「例えば『いいね』だとかプラスのメッセージ、リツイートだとか、そういう形でドーパミン分泌を増やすような仕組みというのがたくさんある。
非常に簡単に我々にドーパミン分泌を与えてくれるシステムのひとつ。」

断ち切れないネットの“つながり”

スマートフォンの普及により誰もが、いつでも、どこにいてもネットにつながるようになった現代。
自分の意思に反して、ネットのつながりに巻き込まれてしまった人もいます。
大阪の私立高校で国語の教師をしている頼富雅博さん51歳です。
去年、はやりのスマートフォンに買い替えました。

頼富雅博さん
「まだ使いこなせないですよ。」

「パソコンやネットはよくするんですか?」

頼富雅博さん
「苦手ですね。」

かつては家で読書をするのが日課だった頼富さん。
スマートフォンによって生活は大きく変わりました。
生徒に勧められて、何気なくソーシャルメディアに登録したところ、昔の教え子たちからも続々とメッセージが届き始めたのです。

頼富雅博さん
「せっかく(メッセージを)送ってくださったら、やっぱり返してあげたいな。」

ソーシャルメディアには、登録した個人情報を分析し、共通の知り合いを自動的に探し出す機能があります。
長い間、疎遠になっていた旧友や知り合いなど、人生で関わったあらゆる人と再び、つながってしまうのです。


頼富雅博さん
「思い出せない人もいますよね。」

頼富さんは、30年以上連絡を取っていなかった知り合いなど、50人ものつながりができ、やり取りに追われるようになりました。
気が付くと、深夜までスマートフォンを触っていることが増えたといいます。

頼富雅博さん
「やっていること自体が自分を幸せにしていないのかなと思う。」

広がる“つながり依存”

ゲスト津田大介さん(ジャーナリスト)

●どういう心理でつながり依存に陥るのか

やはり先ほど、VTRで篠原教授が、ソーシャルメディアっていうのは、反応をどんどん表示するので、それがドーパミンというか、快楽を生みやすい仕組みになっているというお話がありましたけど、なんか、やはり今、ここに僕、パソコンの画面の中にもツイッターを表示させているんですけども、やっぱりそういう意見とか見ていると、だって返信があるからうれしいんだもんみたいなね、そういうツイートとかがあるんですよね。
やっぱりそういうふうに、反応が自分が書いたことによって、反応があることが、より快感につながっていくし、快感になると、やっぱり、自分も、僕自身も経験ありますけど、なんかこれ、反応あるだろうなと思って書き込んだときには、やっぱりちょっと頻繁に何度もアクセスして、どんな反応になるかなみたいな、やっぱ見ちゃうんですよね。
見てしまいますし、かつ、何人が「いいね」って押したとか、何人がリツイートしてくれたっていうですね、数字で自分の発言に対しての反応っていうのが、見えるようになっちゃうので、そうすると、またよりそれを求めて、ゲーム感覚みたいにやっていくっていう、そこから依存につながっていくというのがあるのかなと思いますね。

●膨大な人とつながりで振り回されている

そうですね、やはりイギリスの進化学者のロビン・ダンバーという方が、研究で発表していて、人間がもう、交友できる、コミュニケーションできる数っていうのは限りがあるって言ってるんですよね。
大体それは150人ぐらいだって言ってるんですけど。
これ、ツイッターとかフェイスブックやってると、そういった150という数を超えて、いろんな人とつながってしまうというところが、それがまた1つの障害になってしまうところがあると思うんですよね。
たぶん、だからこれ、結論から先に言うと、携帯電話とかと一緒で、便利なツールなんですよね。
便利なツールだから普及したんだけれども、普及したから、それが便利すぎて依存状態に陥る、なので、節度を持って使いましょうというのが結論ではあるんですけども、なかなかやっぱりそれが難しいっていうのが、今の状況をもたらしているんでしょうね。
やっぱり全然、一回だけ名刺交換したような人と、フェイスブックの友達申請とか来ると、プライベートな情報を書き込むので、この人、友達じゃないんだけれども、でもなんか断るのもなんだなといって承認しちゃうというのがあって、そういうのがやっぱりストレスになる。
新しい、やっぱり本来だったらつながらなかった人とつながることによって、生じる面倒くささというのはある気がしますね。

“つながり依存”低年齢化の対策

世界で最も早くブロードバンドが普及した韓国。
今、ブームとなっているのがスマートフォン専用のソーシャルメディア、カカオトークです。

「家族全員がカカオトークに夢中になり、会話はすべてカカオトークです。」

「スマートフォンのチャットに夢中になって、家族と会話をしなくなりました。」

スマートフォンの普及に伴い問題となっているのが依存の低年齢化です。
そこで力を入れているのが、依存を早期に発見し、予防する取り組みです。
韓国では、全国の小中学校などで検査を行い、重度のネット依存と判明した子どもをインターネット治療合宿に参加させています。
携帯電話やスマートフォンを回収し、ネットのない環境で過ごすことを徹底させるのです。
参加者の中に、なかなかスマートフォンを手放さない子どもがいました。
中学3年生のイム・ジフン君です。

イム・ジフン君
「いつも使っていた物を取られたから心がさびしい気分です。
持っていないと手が震えますね。」

朝方まで友達とカカオトークで会話をし、授業中は寝る生活だったというジフン君。
学校の成績は下がる一方でした。

合宿には、必ず親も一緒に参加して共に解決を目指します。
2週間、仲間と協力してゲームやスポーツをすることで、現実のコミュニケーションのスキルを学びます。
さらに、なぜネットのコミュニケーションにのめり込んだのかカウンセラーがその原因を探ります。
カウンセラーの問いかけにジフン君は、両親の期待が重荷だったと語り始めました。

イム・ジフン君
「テストで80点90点をとっても、どうして100点をとれないかと。
テストの点数のことで叱られるから、負担を感じて勉強に集中できないんです。」

ジフン君はソーシャルメディアで両親への不満を友達にぶつけていたのです。
カウンセラーは母親を呼んで家族のコミュニケーションの在り方に問題があるのではないかと伝えました。

カウンセラー
「ジフン君は家庭内のストレスや不安を解消できないでいます。
そのためにネットコミュニケーションに逃げ込んでいるようです。」

母 イ・スギョン
「親のことを考えない手のかかる子だと思っていました。
でもそうではなかったとやっとわかりました。
これからは毎日、欠かさず寝る前には息子と話をしようと思います。」

これまで合宿に参加した子どもは1100人。
およそ6割がネットの使用時間を減らし、依存から回復に向かっているといいます。

“つながり依存”タイマーで防止

ソーシャルメディアが急速に普及する日本でもあえて利用を制限する人も現れています。
IT会社を経営する只石昌幸さんです。
只石さんは去年まで1日100回以上ソーシャルメディアに書き込む生活を送っていました。
今ではタイマーを使い1日の利用時間を20分に制限しています。
ネット上のつながりは、4,000人を超えますが、頻繁に連絡を取り合う相手は100人程度に絞るようになりました。

只石昌幸さん
「翻弄されているから(タイマーで)縛ってみたり、投稿も一日一回とルールをつけている。」

かつては家族との食事や旅行のときも、パソコンから目を離さなかった只石さん。
今では、週末はあえてネットは使わず、意識的に家族との時間を作る努力をしています。

只石昌幸さん
「昔の自分じゃ本当に信じられない。
一時間パソコンを見ないだけで、不安でしょうがなくなる過去に比べたら、本当に変わったと思う。」

“つながり依存”抜け出すカギは

●どんな工夫とか予防法があると思うか

今、VTRで只石さんのやり方があったんですけど、あれすごくいいと思います。
具体的ですし、実践的だなと。
やはりルールを作るってことはすごく大事で、只石さんみたいに、1日20分って決めるというやり方もあるでしょうし、例えば自分は電車に乗ってる、移動中にしかやらないというルールにするとか、あとは5時間以上前の情報っていうのは、もうそこからさかのぼらないというふうに決めたりっていうのもいいかもしれないですし、あとは前日なんか2時間くらいツイッターやっちゃったから、ああ、じゃあ、もう現実のコミュニケーションを今日はやろうっていって、翌日は友人と会食をするとか、あとは飲み会のときはもう携帯しまって、絶対にツイッターやらないとか、自分でルールはどうでもいいんですよ、どういう形でもいいんですけど、自分がルールを決めることで、ソーシャルメディアに振り回されるってことが少なくなると思いますね。

あともう一つ重要なのは、通知を切るってことですね。
携帯電話でメールが届くと、メールが通知されますよね。
今、ソーシャルメディアで、スマートフォンとかでアプリ入れてると、「いいね」がついたりとか、コメントがついたりだとかが、全部画面に出るんですよ、最初の設定だと。
そうすると、本当に重要な連絡以外は切っておくほうが、いちいちそれでアクセスしてるときりがないので、いちいちそれでアクセスするのが依存につながっていく部分があると思うので、できるだけ通知機能は切って、3時間に1回アクセスしてぐらいの、そういう自分のペースをつかむってのが大事だと思いますね。

●子どもたちにとっての対策

これはやっぱり、ネットのコミュニケーションツールって、どんどん新しいのが出てくるんですよね。
例えば、1年ちょっと前にLINEっていうのが今出てきて、すごくそれが普及してるんですけど、なかなかこれだから、新しいのがすぐ出てきちゃうんで、教科書の中で教えるっていうのができないんですよね。
だから、もう新しいツールっていうのが、どういうふうに普及してるのかっていうのを親がちゃんと把握したうえで、少しどういうものなのかなっていうのを見て、それでコミュニケーションを取るっていうことが大事だと思いますね。

●ソーシャルメディアを使わないという選択肢

ソーシャルメディアを使って、使ってなかったときのほうが楽しかったなっていう人はやめてもいいと思うんですよね。
使うことで振り回されるぐらいだったら、僕はやめたほうがいいと思うんですけど、たぶんやっぱり、適切なコミュニケーションのペースがあると思うんですね。
適切なコミュニケーションのペースをつかむことが大事で、それをルールを決めて作ることも大事でしょうし、でもまたソーシャルメディアって、すごくリアルなコミュニケーション、お互いの近況というのを離れた場所でも知れるので、それで実際に会ったときに、話が濃くなったりとか、そういうことにも、コミュニケーションのやっぱり潤滑油になってるところもあるので、今はそういう意味でいうと情報があふれすぎて、何度もアクセスすることによって、油まみれになっちゃってるっていう、そこがやっぱり問題だと思うので、本当に便利なツールなので、便利なツールだけれども、節度を持って使いましょうっていう、当たり前の結論かなという感じですね。

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