クローズアップ現代

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No.32462012年9月12日(水)放送
リッチをねらえ ~富裕層ビジネス最前線~

リッチをねらえ ~富裕層ビジネス最前線~

“リッチ”をねらえ 富裕層ビジネス最前線

大手百貨店の宝石売り場。
この奥に、急激に売り上げを伸ばしている特別な部屋があります。

 

「いらっしゃいませ。」

エクセレントルーム。
主なターゲットは、買い物の時間が作れないものの、お金には糸目をつけないリッチな人々です。

 

「はい、福岡天神大丸エクセレントルーム、久保田です。」

「プライベート用でワンピースがほしいんですけども。」

この部屋では専属のアドバイザーが洋服からバッグ、靴まで、全身をコーディネートしてくれます。

「お好みのブランドだとかはおありですか?」

「お仕事柄、ジョルジオ・アルマーニさんを着ているのですけども、他のブランドを着てみたいというのもあります。
“大人かわいいみたいな”。」

この日、50代の女性から入った依頼は、休日のお出かけに着る華やかなブランド物のワンピース。

「すみません。
じゃあ、お借りします。」

アドバイザーはデパートに入っているブランド店を回ります。

 

「大人の方じゃないと着こなせないものを、ご準備できれば。」

こうして、要望に合う洋服とそれに合わせたかばんや靴をそろえ、全部で12通りのコーディネートを用意しました。
2日後、電話で依頼してきた女性がやって来ました。

「あ、こんにちは。」

「こんにちは。」

「先日お電話しました大野です。」
 

「どうも、今日はどうも。
お待ちしておりました。」

「お願いいたします。」

2つの会社を経営する大野祐子さんです。
仕事が忙しく、なかなか買い物ができません。
知人の紹介でこのサービスを知り利用したといいます。

大野さん
「お買い物に来る時間がなくて、来て、バタバタっと買って、結構、失敗することすごく多いんです。
助かります、私たちみたいに忙しい人には。」
 

この事業に百貨店が乗り出した背景には、消費の低迷があります。
この百貨店でも売り上げは5年でおよそ20%ダウンしています。
そこで目をつけたのが、買い物の時間を作れずにいる裕福な人たち。
眠っている消費を掘り起こし、業績回復の糸口にしようと考えたのです。
結局、大野さんは洋服を3着、購入しました。

「トータルで20万と550円になります。」

大野さん
「はい、分かりました。」

エクセレントルームの客単価は30万円。
売り上げも4年で2倍に急成長しています。

博多大丸 久保田敬子さん
「必要でなかったものも、思いがけなくお求めいただくような、想定されている金額の倍になる方が結構多いです。」

 

リッチな人々の消費を開拓するビジネスは、全国に広がっています。
兵庫県の山あいを行く大型バス。
観光バスかと思いきや中にずらりと並んでいたのは高額の婦人服やバッグそして宝飾品。
大手化粧品会社が去年(2011年)10月に始めた高級移動販売車です。

「いらっしゃいませ。
お帰りなさい。」

最近、地方ではデパートの閉店が相次いでいます。
そうした地域を中心にふだん、なかなかできない高額の買い物をしてもらおうという作戦です。

「これ、6万円。
いいから買うだけです。」

「ご予算はどれくらい?」

「一応、30万円までということで。」

この日の売り上げは120万円。
会社では、バスをさらに増やし事業を拡大しています。

ポーラ 多様化拡販部 高橋徹さん
「(地方にも)想像以上にレベルの高いお客様がいらっしゃるということがわかりました。
全国津々浦々、さらにですね、私どもが知っている限りの地域だけでなくて、さらに一歩深く展開していきたいなと思っています。」

脱・安売り競争 リッチねらう中小企業

経済的にゆとりのある人々を狙う動きは、中小企業の間でも広がっています。
愛知県で開かれた富裕層ビジネスの勉強会です。
青山信春さん。
富裕層ビジネスに進出。
経営を立て直したといいます。
青山さんが経営するのは工務店です。

青山さん
「当時のちらし。」

3年前まで低価格を売りに住宅のリフォームを主に行っていました。

青山さん
「同業他社も同じようなちらし。
こういうのが1日にこうやって3、4枚入ってくるわけですよ。
そうするとお客さんは、どこにしようかなと単価だけ見て、一番安いところに依頼する。」

壁紙など既製品を1円でも安く売る価格競争。
利益は全く出なかったといいます。
これでは未来がない。
そう考えた青山さんは路線を転換します。
まず専属のデザイナーを雇い、既製品をなるべく使わず、個性的なデザインを追求することにしました。
さらに広告も刷新。
あえて値段は書かず、高級感を前面に打ち出しました。

青山さんが最近手がけた物件です。
注文したのは会社を経営するご主人。
将来、料理教室を開きたいという奥さんの要望に応え、本格的なキッチンをオリジナルで作りました。
客の要望をかなえる、こうしたオリジナルデザインが評判を呼び、客単価は6倍に上昇。
利益も出るようになりました。

工務店社長 青山信春さん
「やりがいはめちゃくちゃあります。
こちらの考え方とか物をしっかり理解いただいて、その価値に対してしっかりお金も払っていただけると。
本来の仕事の形じゃないですかね。」
 

ゲスト森剛志さん(甲南大学准教授)

●富裕層に向けたビジネスの開拓

非常におもしろいですね。
ただ、市場開拓は始まったばかりだという印象を受けています。
百貨店のエクセレントルームの話ですね。
これは、時間を節約したい人たちの需要に、ちょうどマッチしたものだと思います。
こういった時間節約型の消費というのは非常に進んでまして、例えば大阪のキタのタワーマンションがあるんですけれども億ションといいますか。
大阪の梅田近辺ですね。
不動産開発が進んでまして、1億円以上の物件が非常によく売れていると。
あるいは、時間節約型の消費でいいますと成田までの、ヘリコプターで直接、輸送してくれるそういったサービスを金融機関が、こぞって参入してきているということがありまして、本当に時間を10分でも1時間でも節約できるんだったら、それに対する付加価値を非常に高く見て、お金を糸目なく使うという人たちがいるというふうな例だと思います。

●ビジネスモデルの変化

販売戦略を180度変えたわけですね。
今まで低価格路線で安いものを追求してきたと。
そうすると、やはり、ジリ貧になってしまってどこまで行ったらいいのか分からない状態だったのが高付加価値のものを提供するようになったと。
そうすることによって非常にいい仕事に見合った収入が得られるようになったといういい例だと思います。

●ビジネスを開拓していくうえでの鍵

参照価格のないもの。
ない財であるとか商品サービスを提供することだと思います。
例えば、歯ブラシでしたら100円とか200円を想像すると思うんですけれども、今までない磨き心地いい触感、いい感覚であるとかそういったものを与えられるものでしたら10倍、20倍の価格で出してもいいと思う。
それが例えば、電動歯ブラシという形でわれわれ、実際経験してきているわけです。
あるいは携帯電話も同じでして、10年前に1万円も使わなかった携帯電話が、今では非常に便利なものが出てきて、そこには3万円、5万円も払ってもいいというような非常に求めていたものがあればいいんですが、今までない財をどれだけ提供できるかここが気になると思いますが。

●今まで開拓してこなかった理由

それは、やはり日本が今まで一億総中流社会だったと。
戦後長らく、一応みんな中流社会だったというところがあるんですけれども、2000年代ぐらいになってからこれが大きく変わりまして、二極分化しまして下流の中流が崩壊して購買力の非常にある人たちも増えてきたというところがあると思います。
企業はそれに着目したと思います。

超豪華列車の旅 リッチの心どうつかむ

今年(2012年)、日本の鉄道の歴史に残る超高額な寝台列車の旅が発表されました。

JR九州 社長
「新しい鉄道の旅を作る挑戦をいたします。
それがクルーズトレイン『ななつ星in九州』です。」

豪華な寝台列車に乗り3泊4日で九州を1周。
来年、秋に始まるその旅の値段は2人1部屋で最高1人55万円になります。
グランドピアノが置かれダンスもできるラウンジカー。
客室は僅か14部屋。
乗客は、たった30人というプレミアムツアーです。

JR九州 社長 唐池恒二さん
「今までにない世界で、ただ一つの、そして世界で最高の列車を作ろうと。
九州の観光資源の大きな物の一つになればなと。」

これまでに例を見ない鉄道の旅。
どうすればお客を呼び込めるのか。
鉄道会社では専属のプロジェクトチームを作り、旅の中身を検討してきました。
しかし、メンバーは皆、普通のサラリーマン。
裕福な人々が求めるサービスとは何か。
考えるのは至難の業でした。

JR九州 次長 仲義雄さん
「何を基準に作れば正しいのか、何が豪華と感じていただけるのかというところが、正直、雲をつかむような感じですよね。
富裕層と言われても、お金持ちと言われても正直わからないですし。」

まずプロジェクトでは、リッチな人々を研究しました。
その結果、さまざまなタイプがあることが分かりました。
例えば、オールドリッチ。
昔からの金持ちは、倹約家で派手な消費はしないといいます。
注目されたのはリタイアリッチ。
退職して、お金にもゆとりのあるこの層は、人数も多く新たな体験に挑戦する意欲も強いため有望なターゲットと考えられました。
そんな人々を満足させるにはどうすればよいのか。
プロジェクトは海外にヒントを求めました。
視察のため乗り込んだのは、エルトランスカンタブリコ。
スペイン北部を1週間かけて巡るヨーロッパを代表する豪華寝台列車です。

「車内の映像です。」

料金は最高1人70万円以上しますが、多くのリピーターがいます。
プロジェクトがこの列車に注目したのは、車両そのものに加え、旅の仕組みです。
列車に乗りっぱなしではなく、途中下車してはその土地ならではの絶景やレストランに案内します。
それが高額の料金にもかかわらず人気を集める秘密の一つでした。
豪華な旅にふさわしい特別な体験を提供できないか。
プロジェクトでは、予定ルートの沿線を巡って探しています。

この日、訪ねたのは元薩摩藩主、島津家の屋敷。
庭はすでに一般公開され、観光名所として有名です。

「お世話になります。
JR九州の日野と申します。」

「島津でございます。
こちらこそよろしくお願いいたします。」

「例えば仙巌園さんで観光される方に飲みものをサービスとかですね、そういったものをしていただけないかなと。」

ツアーの乗客限定で特別なサービスをしてもらえないか相談したところ…。

「一般公開していないもう一つの幻の庭園が実は奥に隠れてまして。」

「宝の山ですね。」

「自称鹿児島のアンコールワットと自称しておりますが。」

「すごいですね。」

地域興しにつながるなら未公開の庭園を特別に見せてもよいという提案でした。

島津興業 常務 安川周作さん
「九州の良さというか、そのすばらしさを再発見していただける旅にもっていきたいな。
そのために我々としてはできるだけご協力していこうと思ってます。」

JR九州 次長 仲義雄さん
「僕らがちゃんと選ばないといけない視点は、間違いなく本物であることであって、一級品であることであって、僕も今日見て、やっぱりこれは間違いないなと思いました。」

今回の旅では、鹿児島のほかにも各地で途中下車する予定です。
果たしてリッチな人々を満足させるサービスを提供できるのか。
来年(2013年)秋の開業まで、あと1年です。

●余裕のある人々が本当に乗ってくるのか

お金持ちの人たちも一般の人たちと同じなんですね。
ふだんは安い服を着ている。
あるいは倹約家であると。
けれど、自分たちが本当に求めてたもの、例えば夢であったり今まで経験してないものがあれば、そこに糸目もなくお金を使うという傾向があると。
それを、どういうふうに心をつかむかというのが重要だと思いました。
ヨーロッパの列車の豪華列車の例がありましたよね。
あれは途中下車ができると。
つまり、途中の地域を自分たちで経験できるわけです。
そこには今まで経験したことがない発見があったり、体験ができるということですからそこに大きな価値を見いだしてる。
単に列車が豪華だけでは、それだけのお金を払おうとは思わないと思います。
ですから、九州のJR九州の例ですか。
あれも、島津家の今まで一般公開されてないもの、誰も経験してないものを経験できるんじゃないかという非常にわくわく感があると思いますね。

●直接的な経済波及効果

それは私、VTRを見ましてアジアのオリエント・エクスプレス豪華列車の例を思い浮かべたんです。
バンコクからマレーシアを通じて、そして途中下車もするんですけれどもシンガポールまで通じてる豪華列車です。
価格帯も実はこのJR九州の価格帯とほとんど同じなんですけれどもそこでは、1か月前から予約しないと乗れない。
つまり、乗れない人もたくさんいるわけです。
そうすると、自分は乗れなかったと思って、その場所へ行ってみたいというふうに思うわけですね。
つまり地域のバリューも非常に上がるということです。
ですから波及効果は30人の乗客だけが経済価値ではなくて、その波及効果というのは非常に大きいと思います。

●生活に余裕のある人々へのマーケティング

日本経済、国内の消費が停滞しておりまして縮小経済、縮小化していくだろうというふうに考えられている中、購買力のある人たちが一方ではたくさんいると。
その人たちにお金を使ってもらえるマーケットというものを開拓していくことで購買力のある人たちの消費を進めれば雇用も生まれると。
つまり、経済にとっても非常にプラスでウィンウィンの地域のバリューも上がるということになれば経済波及効果も大きく、いい感じいい形になると思います。

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