クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.32282012年7月11日(水)放送
密着!女性起業家1000万コンペ

密着!女性起業家1000万コンペ

密着!女性起業コンペ 賞金1千万に挑む

日本政策投資銀行が半年かけて実施してきた女性起業家ビジネスコンペ。
最終審査に残ったのは、20代から60代までさまざまな地域、分野で活躍する女性起業家たち10人です。
その頂点に立ち、1000万円の賞金を獲得するのは誰なのか。
この銀行が異例のコンペを仕掛けたのは、低迷する日本の経済に強い危機感を抱いたからだといいます。

日本政策投資銀行 橋本徹社長
「既成概念にとらわれない新しい視点を持ち込む。
女性の起業を起爆剤にして、社会全体の変革につなげていこうと。」
 

最終審査会が始まりました。
審査をするのは、経済同友会の副代表幹事や経営コンサルタント。
そして、エコノミスト。
そのほか、大手サービス業の経営者などそうそうたる顔ぶれです。
まず挑んだのはグローバルな人材育成を行う学校を作りたいという女性。

「間違いなくこの学校は、日本の教育を変えていけるし、アジアの未来を担える人材を育成していくと確信します。」


 

そして、何かをしたい人がその資金をネットで集めるという新しい金融ビジネスを始めた若者。
お年寄りの介護が楽になる介護機器を開発中の学生。
中でも審査員をうならせた人がいました。

「私はいま広島で広島の企業と人を元気にしたいという思いで、広島にあったらいいなを形にするビジネスを立ち上げております。」

 

広島市からやって来た牛来(ごらい)千鶴さんです。
ユニークな方法で新商品を開発しヒットを生み出そうと意気込んでいました。

牛来千鶴さん
「商品が世にある限り(報酬を)いただくという契約にしています。」

審査員
「全国展開で爆発的に売れたらすごい。10パーセントって。」

密着!女性起業コンペ ヒット商品を生め

牛来さんが武器にしようとしているのは、地域の起業家のネットワークです。
医療や食品などさまざまな分野の起業家の中から意外な人や物を組み合わせることで、新しい商品を生み出せるのではないか。
これまでも、食べる竹炭という健康管理士のアイデアと老舗菓子メーカーの技術力を組み合わせて作ったまんじゅうで年間3000万円を売り上げました。
牛来さんが、ネットワークの可能性を身をもって知ったのは、子育てが一段落し、自宅で一人仕事を始めたころのことです。
仕事の依頼は、ほとんどなく不安ばかりが募りました。
せめて話し相手でも作ろうと起業家の集まりに顔を出すうち牛来さんはあることに気付きます。

“一人で何かを生み出すのは難しいが、人と人を結べば、新しいものが生まれる”


 

牛来千鶴さん
「起業家たちというのは、もうとにかく、何かの専門家なので何か一人一人能力があるわけでそこを生かしてそのことによってみんな、仕事もうまくもっと、今以上にいくでしょうし地域も元気になると。」

今回、コンペの賞金1000万円を使って、さらにネットワークを広げ開発スタッフも新たに雇用したいと考えています。

密着!1千万円コンペ 困難に挑むママ社長

一方、どうすれば顧客を増やすことができるのか。
コンペを、その突破口にしたいと応募したのが加藤百合子さんです。

加藤百合子さん
「農業にイノベーションを起こし農業が楽しくてもうかる産業になればいいなと思って今、活動しています。
その中で主に取り組んでいるのが流通改革。
このような農家さんの笑顔とわれわれへの期待を支えにチャレンジをし続けていきたいと思っております。」

新たな参入が難しいとされる農業分野への挑戦。
加藤さんは、正社員5人アルバイト2人の体制でITを駆使し、農産物の流通を変えようとしています。
目をつけたのは、カット野菜や総菜などに使われる加工用の野菜です。
野菜は天候しだいで収穫の時期や量が大きく変動します。
そのため、加工業者は計画的に商品を作れないという悩みを抱えていました。
そこで、加藤さんたちは専門スタッフに加え、独自に開発したシステムを使い野菜の生育状況を詳細に把握。
加工業者は、ネットで24時間その様子をチェックでき製造計画が立てやすくなりました。
農家にもメリットがあります。
野菜も直接加工業者に納入することになり、これまで市場や卸業者に支払ってきた中間手数料がいらなくなったのです。

生産者
「(加藤さんは)農家のことを思って営業に行ってくれるのですごい助かります。」

 

しかし、起業して3年会社経営はまだ、黒字化できていません。
契約農家の数が、いまだ8軒と取り引き量がなかなか増えないためです。

加藤百合子さん
「本当に(野菜が)足りなくて。
レタス、キャベツ、レッドキャベツ。
作れるところがあれば是非。」

農家の中には長年、農協や市場を通じて野菜を売ってきたため、加藤さんの新しいやり方に不安を感じる人も多いのです。

生産者
「普通に売ってくれるのかという契約してもそういう不安感が出てくる。
安心感をどうやって持たせてもらえるか。」

しかし落ち込んでなどいられません。
何があっても夕方6時には退社し保育園へ向かいます。
夫は、いつも仕事で帰りが遅いため、子どもの送り迎えや食事の準備もすべて加藤さんの仕事です。
子育てを、しっかりやりながら子どもたちのためになる仕事をしたい。
そう考えて勤めていた会社を辞め、みずから起業した加藤さん。
それでも子どもを置き去りにして仕事ばかりしていると周囲から言われる日々。
気持ちが折れそうになったとき、いつも支えてくれるのは子どもたちのことばです。

“働くママは、かっこいい”

加藤百合子さん
「これは本当涙、出てきちゃいますけどね。
ママみたいな社長になりたいってぼそって上の娘が言ったんですよ。
楽しそうだし、かっこいいからと。
ああ、これでいいんだと思って。
もう、そこからちょっと吹っ切れましたね。
何を言われても、いいこれでいいんだと。
子どもに直接的に還元できる仕事はないかと…。」

顧客を増やし事業を軌道に乗せるためなんとしても1000万円の大賞を取りたい。
ひときわ強い決意で審査員の質疑応答に臨みました。

ベンチャー企業経営者
「このプランで(売上げ)3億円突破するとき、どういう体制が必要だとイメージしていますか?」

 

加藤百合子さん
「現在は私含めて(社員)5名でやっています。
システム、ぺジプロ(専門スタッフ)管理のチームで20名ぐらいで計算しているところです。」

大手サービス業・経営者
「消費者にとっては何の特別なメリットが出てくるんですか?」

 

加藤百合子さん
「狙っている市場、流通が違いまして、我々は加工業者さんと生産者としては大規模農業をしている方を対象にこのサービスが当てはまると考えています。」

10人のプレゼンのあと大賞を決める審査会議が始まりました。
審査のポイントは3つ。
ビジネスの革新性実現可能かどうかという事業性そして、リーダーシップや人を引き付ける力といった経営者力です。

経済同友会 副代表幹事
「着眼点はすごくいいと思う。
ただすでにビジネスを展開されてきた方としては、数字を詰めたり(ビジネス)モデルが甘いなと。」
 

議論が交わされる中、広島で起業家を募る牛来さんについて意外なポイントが評価されました。

大手サービス業・経営者
「地域の中に根ざして、こういうことが出来るよと他の方々(女性たち)がああいうことだったら出来るかもというひとつのモデルになってほしい。
触発剤みたいな。」

一方、評価が分かれたのが加藤さんでした。

ビジネス誌編集長
「この分野の事業性がよくわからなかった。
競争力がどの程度あのビジネスモデルにあるのか。」

 

確実に結果を出せるか分からない農業分野で本当に、やっていけるのか。
議論が平行線となったとき、一人の審査員が話し始めました。

経営コンサルタント
「事前資料ではこんなに高い評価はしていなかった。
実際に話を聞いて、この人やるなという感じを受けた。」


 

大学教授
「加藤さんご自身の経営者としてのポテンシャルに強く重きを置きまして、ある種の落ち着きと信頼とこの方だったらラーニング(学習)できる。」
 

甲乙つけがたい10人の候補者から誰を選ぶのか。
最終審査は夜遅くまで続けられました。
3週間後。
審査結果発表の日が来ました。
全国から集まった、600人にも及ぶ女性起業家たち。
その頂点が発表されます。

「皆様、審査結果の発表表彰が始まります。
女性起業大賞は加藤百合子さんです。」


 

革新性や事業性以上に困難に挑み続ける経営者としての姿勢が創業期のビジネスには最も重要だとされた結果でした。


 

そして優秀賞に選ばれたのは牛来さん。
ゼロから作るのではなく、人や物をつなぎ新たな価値を生み出すという発想が多くの女性のロールモデルになるという評価でした。
 

加藤百合子さん
「うれしいですね。
こんなうれしいのはなんだろうな出産のあとぐらいほっとしたのと産みの苦しみというかそのあとの解放感ですね。」
 

加藤さんは賞金1000万円と、今後1年間銀行による経営相談を受けられることになります。

ゲスト本荘修二さん(新事業コンサルタント)

●最後は人なのか

経営者力以外にもいくつかの判定基準があったようなんですけれども、事業は人なりと申します。
それに従ったよい判定だったと思います。

●なぜ人が一番大事なのか

成功しているベンチャー経営者、見てますと、人を引き付ける力、お客様、ビジネスパートナー、社員の方、そういった方が成功していることが多いと思います。

●人を見て投資は行われるのか

ベンチャー、なかなか全部のビジネスが成功するわけではありません。
ベンチャー起業家に求められるのが、粘りと柔軟性です。
よくありますのが、最初のアイデアにしがみついて何年もたって、低空飛行してしまうと、これ、もったいない話ですよね。
ですが最近、アメリカ・シリコンバレーですと、フェイル・ファスト、つまり早く諦めろと申します。
いったんテストしてみて、やはりお客様のニーズに合わない、あるいは製品の設計がよくないということでしたら、そこはもう諦めて、方向転換をすると、しかしながら、これはいいかげんにやれという話ではなくて、自分が持っているビジョン、ミッション、使命感ですね、志、夢といったものは粘り強く追いかけていくと、そういった中で具体的な事業については、方向転換もよしとするという話なんですね。

●今回の事業どう見たのか

さまざまなタイプのベンチャーがあって、非常によかったんじゃないかと思います。
といいますのが、よくベンチャーといいますと、大きくしていって株式上場というのはですね、スケールを求めるようなお話に思われる方も多いかもしれませんけれども、ご覧になったように、起業といいますと、いろんなタイプがあるんですね。
ですから、アメリカでもスモールビジネスを非常に重視しています。
小さい会社ですよね。
小さい会社がたくさん出てくると、経済の活動が増します、これすばらしいことですよね。
それから先ほど拝見してて思ったのが、恐らく私にもできるんじゃないかと、そういうふうに思った起業家予備軍といいますか、視聴者の方、女性の方ですね、少なからずいらっしゃったんじゃないかと思います。

●ご自身のお知り合いも

私が知っている女性起業家も、実はこれに応募した方々もいらっしゃるんですけども、何人かは、私も負けてないと、悔しいというふうにおっしゃっている方もいらっしゃいます。
そういった方々が次も、また次もチャレンジしていくというふうになるといいんではないかと思います。

●企業は女性にとってハードルが高い

ですから成功するためのなんて言いますかね、育む仕組みといいますか、そういったものが整備されていく必要があるかなというふうには思います。

●女性の起業家向けに行った意義

非常にいいことだと思います。
といいますのが、これは就業人口の問題もありますし。
女性のビジネスへの進出、そして起業ということに対してのニーズは非常に高いというふうに思います。
そういった中で、政府系のあれだけ非常にブランドもある機関が、こういった大々的に取り組んだということは、とてもよいことだと思います。

●ベンチャーと政府系金融機関

ベンチャーのコミュニティだけで騒いでても、広がらないわけですね。
こういった、新しくこういったイベントをされたということ自体が、非常にいいと思います。
ただ、今回だけで終わってはだめで、次も、また次もということで、改善をしていって、ほかの活動ともつながっていくということが大切だと思います。

●新しいビジネスは女性から生まれるのか

そもそも消費財に関しては女性、半分のお客様は女性ですよね。
かつ女性が8割方の買う意思決定をしているというような調査結果もあります。
それに成熟化経済の中では昔ですと、男性が作っても女性が作っても同じようなものが多かったと思うんですけれども、サービスですとか、かなり高度なものですね、こちらはやはり女性が生活者として、それこそ育児ですとかいろんなことをやっています。
そういった中で気がついた当事者として分かった問題とか、それに取り組んでいくということで、さらによいサービスが生まれると思います。

●女性企業家 どう育てるか

私がメンター、つまり相談相手の1人に入っているシリコンバレーの投資育成会社があるんですけれども、そこは100人以上いるんですよね。
どういう意味かといいますと、1人の先生がいて、それについてというような、そういった関係では依存しているわけですよね。
それでは本人が自立しないということになりますから、やはり本人が成長して、イノベーションを起こすと、それにベンチャーやっていきますと、人の採用から、お金から、マーケティング技術、いろんな問題が毎日出てきます。
それについて一人から聞くというのは難しいんですね。
やはり、その場その場で経験のある方、専門性のある方、あるいはベンチャーの経験者の方にアドバイスをいただくということで、そういう面から見ると、政策投資銀行も自分から使い倒すぐらいの気持ちでやっていただければと思います。

●起業家がはばたける社会

そういう意味では今まで孤立していたのではないかなと思います。
ですから人のつながりが大切です。
これは起業家どうしもあれば、われわれのような応援団、そしてこれから消費者の方、あるいは企業の方も、試しに女性の起業家と話してみるとか、サービスを買うと、商品を買うということをやっていただきたいなと思います。

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス