クローズアップ現代

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No.32222012年7月2日(月)放送
アイデアが世界を変える ~TED 究極のプレゼン~

アイデアが世界を変える ~TED 究極のプレゼン~

世界を魅了 究極のプレゼン TED

斬新なアイデアが力強い言葉で語られるTEDの舞台。

作家
「社交的なリーダーより、内向的なリーダーが、良い結果を出す」



起業家

「社会に変化をもたらしたいなら、行動している人についていく勇気を持ち、ほかの人にもそのことを教えよ。
TEDならそれができるはずだ」

人気の秘密は、18分以内という限られた時間の中で、自分のアイデアを観客に伝える真剣勝負にあります。
話し手は内容をとことん突き詰め、表現方法にさまざまな工夫を凝らさなければなりません。

スウェーデン人の医師は、世界規模で広がる人口増加の推移をグラフを使わずに説明しました。

「ホームセンターで買った箱です。
1箱=10億人です」

先進国は青、発展途上国は緑色の箱。
人口増加がもたらす役割の変化について視覚的に伝えました。



 

「こんなところに青い箱が。
これまで世界をリードしてきた欧米ですが、今後そうならないのは明白でしょう。
今後の役割は、このように土台となって、世界を支えることです」
 

TEDが人気を集める、もう1つの理由。
それは、取り上げるテーマの幅広さにあります。
科学技術、医療芸術、環境問題。
TEDを見れば、あらゆる分野の第一人者が語る、最先端のアイデアや英知に触れることができるのです。
 

視聴回数860万回のこのプレゼン。
最も人気を集めているうちの1つです。

「本物の脳を持ってきました」


 

脳卒中を患ったことのある世界的な脳科学者が、左脳の機能を失った体験を語り、感性をつかさどる右脳の機能向上が世界の平和につながるというアイデアを伝えました。


 

「右脳だけで感じた世界は美しく、平和で思いやりに満ちたものでした。
私は気付いたのです。
左脳に頼るのはやめ、右脳をもっと使えば、誰もがこの世界を見ることができるのだと。
そしてこれは広める価値のあるアイデアだと思ったのです」

見直される 言葉の力

ゲストクリス・アンダーソンさん(TED代表)

今の人たちは、インターネットで過ごす時間が多く、家に引きこもって人との関わりが少なくなっています。
疎外感を感じている人も少なくありません。
そうした中で、人々を1つの場所に集め、TEDのような体験をすることはむしろ新鮮で力強いものなんです。
社会が近代化するにつれ、次第に、人間と人間のコミュニケーションが持つ力を忘れてしまっていると思うんです。
とりわけ、印刷機が発明されて文字に頼るようになり、この傾向はますます強まったと思います。

●アイデアの共鳴が 未来を変える

そのこと(TEDの新たな可能性)をお話しするにはまず、たき火の話をしなければなりません。

太古の人類は火を発明し、危険な動物から身を守るすべを身につけました。
そして、その火は、たき火となり、人々が集う場を作り出しました。
漆黒の夜空の中、炎が音を立てるたき火。
そこにリーダーが立ち、人々を前に物語を語りだすのです。
その瞬間、人々の視線はリーダーに注がれ、彼が言うことに集中するんです。
それは特別な瞬間です。
人々の心は共鳴し合い、リーダーの中にあった感情やアイデアがそのままの形で伝わるんです。

(聴衆がその言葉を聞いているときに起こる化学反応とは?)人々の好奇心が突き動かされているんです。
話し手が伝えるさまざまなアイデアを聞くと、人は好奇心をかきたてられ、知れば知るほど興奮するんです。
なぜなら、未来に対する考え方が変わるからです。
これこそがTEDの中心にあるものです。
ほとんどの人は、未来に対して暗いイメージを持っています。
まるで、猛スピードで走る列車のように止めることも方向を変えることもできないと感じているんです。
しかし、TEDで話を聞くと、違う未来が見えてきます。
未来はまだ白紙で、これからまさに、自分たちの手で作り上げていくものだと気付く瞬間が訪れるのです。
この経験に人は力をもらえるんです。

世界に広がる TEDのプレゼン術

TEDのプレゼンは日本でも注目を集めています。
このIT関連企業では、TEDを教材に講習会を開いています。
この日、取り上げたのは見せ方に工夫を凝らしたTEDのプレゼン術。
視覚的に分かりやすく伝えることを学びます。
 

こちらは学校給食に含まれる糖分が肥満の原因になっていることを、実際の砂糖で示したプレゼンです。

「これがアメリカの小学生が5年間に、給食の牛乳から摂取する砂糖です」

 

加藤あかりさんです。
講習会に参加し、みずからのプレゼンの見せ方を見直しました。



 

加藤さんが以前、使っていたプレゼン用のスライドです。
複数提供しているサービスのすべてを売り込もうと、あらゆる情報を文字で書き込んでいましたが、なかなか伝わりませんでした。

 

講習会後に作り直したスライドです。
提供するサービスの共通点を突き詰め、1枚の写真を選びました。
パソコンさえあれば、どこでも仕事ができる技術を提供するという会社のビジョンを視覚的に訴えることにしたのです。
加藤さんは分かりやすい伝え方ができるようになり、取引先と自然な会話も生まれるようになったと言います。

IT企業システムエンジニア 加藤あかりさん
「あまり多くの情報を出さずに、本当に伝えたいことだけ伝えると、こっちからの一方通行ではなくて、お客様からお声をいただいたりということで、お互いにコミュニケーションが出来るようになったなとは思いますね」

人を動かし始めた TEDのアイデア

TEDで語られるアイデアそのものに触発され、人生が大きく変わったという人もいます。

スマートフォン向けのアプリ制作会社の役員を務める伊勢修(いせ・おさむ)さんです。
伊勢さんが、友人と会社を立ち上げたのは4年前。
当初は営業ノルマを月ごとに決め、成果に応じた報酬を支払っていました。
しかし、ノルマはほとんど達成できず、赤字が続いていました。

厳しい状況を抜け出すきっかけとなったのが、その頃、偶然見たあるTEDのプレゼン。
ノルマや成果報酬が業績を悪化させるという最新の研究に基づく内容でした。

「21世紀的な(創造的な)仕事には、“アメとムチ”は機能しません。
全く新しいアプローチが必要なのです。
それは内的な動機づけです。
重要だから、好きだから、面白いからやる」

プレゼンでは大手検索サイト、グーグルが従業員が好きに使える時間を設けた結果、多くの人気サービスが生まれた事例も紹介されていました。

アプリ制作会社役員 伊勢修さん
「僕も仕事を選ぶというか、何の仕事をするかを考えたときに、自分がまずやりたいものがありきで、その後にお金がついてきたら理想だなあというのは思ってたんですね。
何となく思っていたことを、彼は事例をもって、証明してプレゼンしてくれた」

伊勢さんは、早速このアイデアを職場で実践。
その結果、次々とヒット商品が生まれ、会社の売り上げは、設立当初の2.5倍に成長しました。

伊勢さん
「TEDを見てる方って、まだまだ意外と少なくて、そこにはすごいヒントがあるんですよね、『21世紀はこうなる』という、もう21世紀になってますけど・・・僕はそこに期待して見てますね」

“科学反応”が生み出す 新たなアイデア

アイデアや新しい考え方はどこから生まれるのか、と考えたとき、よく、こうイメージします。
1人の天才が部屋の中に籠もって、考えて考え抜いて突然ピーンと電気がつくようにひらめくと。
しかし、実際はそういうものではありません。
新しい考え方は、人と人、さまざまなテーマのやり取りの中から生まれるものなんです。
TEDがうまくいっているのは、ありとあらゆるテーマが登場するからだと思います。
私たちの脳はそういう状態には慣れていません。
ですから、TEDを見て、あるときは建築、次は科学、その次は芸術やデザインと、さまざまなものを見ていくとそこに、なんのつながりがあるのだろうかと考えるようになるのです。
まさに、ここに鍵があるんです。
すべての知識というのは、つながっていて、そこに一見、無関係と思われるような考えが飛び込んできたときに、アイデアがひらめいたりするんです。
つまり、自分の世界観を乱すような要因が入ることで、物事が組み変わり、新たな考えが生まれるのです。

●アイデアこそが 世界を変える

TEDは、アイデアをシェアしたい人々をつなぐグローバルなコミュニティーに育っています。
そこで語られる言葉や話題は、私たちが慣れ親しんできたものとは大きく異なります。
従来のメディアや国民の議論では、紛争や対立、政治など、昔から変わらない話題ばかりが続いています。
ニュースを見ても、暴力や殺りく、そのたぐいの話ばかりで憂うつな気分になります。
しかし、アイデアの世界に目を向けてみると、全く違う世界が浮かび上がってきます。
TEDで、人々がよく口にする言葉があります。
政治家はすぐ変わるが、アイデアは永遠に残る、と。
世界の歴史は、ある特定の個人の行動の積み重ねではなく、アイデアが積み上がってきた歴史なのです。
アイデアこそが世界を形作ってきたのです。

アイデアを広げたい 日本から世界へ

自分のアイデアを世界に伝えたい。
日本でもTEDの舞台を目指す人たちが増えています。

5月末、東京都内で開かれたオーディションです。
研究者や建築家、NPOの代表など、23組が参加。
来年(2013年)2月に本場アメリカで開かれるTEDへの出場を目指します。
クリス・アンダーソンさんも審査員の1人として参加しました。

オーディションに参加した齋藤立(さいとう・りつ)さんです。
齋藤さんは、20歳まで海外に行ったこともなく、英語で全世界に向けてメッセージを発信するのは初めてです。
東京都内で経営コンサルタントとして、企業の立て直しや組織変革を手がける齋藤さん。
TEDで話すテーマは絵を描くことの可能性についてです。
齋藤さんは、論理と数字だけで企業を変えようとする、従来のコンサルティング手法に限界を感じていました。

そこで3年前、企業の幹部や社員に絵を描かせる新たな取り組みを始めました。
テーマは働く上で大切にしていること。
参加者たちは働く上で大切にしていることを必死に表現しようとします。
絵と向き合う中で、日頃、会社を変えたいと思っていた潜在的な思いに気付き、会社を変革する方向性が明確になってくると言います。

大手メーカーの社長が描いたのは、高い山の先にある希望の光へ歩んでいく決意。
会社の中期計画のビジョンが、社長の中で明確になったと言います。


 

経営コンサルタント 齋藤立さん
「“描く”ことの価値というのは、確信していて。
描くということの感動とか、そういう可能性。
人間はみんな創造性を持っているという可能性を伝えたいと思ったんですね」
 

オーディション当日。
絵が持つ力を伝えようと齋藤さんはこんな言葉から始めました。

「人類はどれくらい昔から、絵を描いていたかご存知ですか?
3万年以上も前からなんです。
今日ご紹介するのは、こちらの公式です。
“企業幹部×手で描く=変革!”」
 

絵を描くことが自分自身の新たな発見につながる。
齋藤さんは、さまざまな現場で活用してほしいと訴えました。

「職場や学校で試してみて下さい。
きっとあなたのためになります」

齋藤立さん
「プレッシャーの中で自分を追いつめて、エッセンスを投げることができた。
まず一歩の発信はできたかなと思いますね」

ネットが加速 アイデアの進化

出場者を見てよく思うんです。
ネット動画が当たり前となった現代では、誰もが世界最高のパフォーマンスを見ることができます。
これは、すごいことです。
優れたパフォーマンスを自分と見比べながら、工夫を重ねてよりよいものを作り出していける時代なんです。
それは、TEDのプレゼンも同じです。
このプレゼンはなぜ1000万回も再生されているんだろう。
そう思いながら動画を見ることで、どうやったら観客に、より上手に伝えられるか真剣に考えるようになるんです。
そして、人々はなるほど、分かった自分もできる、と気付くんです。
まさに、一石二鳥です。
人々のモチベーションが高まるだけでなく、優れた手法が次々と生まれるのです。

●大衆がイノベーションを加速させるとは

世界中の人たちが世界最高レベルのものを、動画で見られるようになったことで、さまざまなイノベーションのスピードが速くなっています。
それは、まさにインターネット時代だからこそ起きている現象です。
インターネットの値段はどんどん安くなり、動画を世界に送るのもお金は、ほとんどかかりません。
そうなったことで人々の考えが変わり、アイデアを広めたいと思う人たちは、インターネットで世界中に情報を共有するようになっているのです。
事実、動画のほうが文字よりも簡単に伝わるパワーを秘めています。
科学のような分野でさえも動画によって進歩が速くなっています。
昔ならば、論文に書いていたような複雑なことも、動画で公開すれば誰でも簡単に理解できるようになり、それを見たほかの科学者がなるほど、そういうことならばこういうやり方もあるのではないか、という具合に次々と研究が発展していくことが可能になりました。
ですから動画は、イノベーションを加速させているんです。

●アイデアが世界を変える TED 究極のプレゼン

私は、世界の難しい問題が解決されるとすれば、それは国と国による対話ではなく、人々のグローバルな対話によってだと思います。
貧困の問題、テロの問題、温暖化にせよ、戦争にせよそうです。
そうした難問の多くはグローバルな問題です。
国という枠に縛られている政治家同士では解決できないと思います。
国や宗教といったものに縛られない、1人の人間として参加した世界中の市民が、グローバルな対話の中で解決していくしかないと思っています。
私がワクワクするのは、若い世代の多くは実際に、このことができると信じていることです。
難しい問題の多くは実際は、解決が可能です。
必要なのは、正しい枠組みで正しい対話を持つことです。

確かにそう(考えが理想主義)かもしれませんね。
しかし、最終的に世界を動かすのはアイデアです。
アイデアこそが歴史を作ってきたんです。
しばらくはこの考えを大切にします。


参考リンク:
「TEDカンファレンス」を題材にプレゼンと英語を学ぶ語学教養番組
スーパープレゼンテーション|Eテレ NHKオンライン(毎週月曜日放送)

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