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No.32182012年6月25日(月)放送
危険性増す脱法ハーブ どう食い止めるか

危険性増す脱法ハーブ どう食い止めるか

広がり続ける 脱法ハーブ

交番のそばで堂々と看板を掲げる脱法ハーブの販売店。
今、全国でこうした脱法ハーブを扱う店が急増しています。
1袋3グラム入りで4500円程度。

この店では一晩で10万円ほどを売り上げるといいます。
現在の法律で禁止されているのは、吸引目的で販売することだけです。


 

脱法ハーブ店 店長
「当店では、お香として販売していますので、法律に触れてないというのもひとつですし。
使い方は、どんな物でも、購入者の自由。
その辺までは干渉してないですね」

自動販売機も出現。
脱法ハーブが子ども向けのおもちゃのように売られていました。
誰でも買える状況が広がっているのです。


 

脱法ハーブをふだんから吸っているという20代の男性です。

「これは今、何をやっているところなんですか」

男性
「とりあえず、今、ハーブ出して・・・」

毎週のように友達と集まり、脱法ハーブを吸っているといいます。
その様子をビデオで撮影しては、吸引で変わる自分たちの姿を見て楽しんでいます。

「ハーブ出しちゃってよ」

男性が撮影した映像です。
集まったのは、公園にある公衆トイレ。
たばこの葉を抜き取り、脱法ハーブを代わりに詰めています。
手前の若者は、2口ほど吸うと、その場にしゃがみ込みました。

男性
「なんか、すごい酔っ払った感じになるんですよ、心臓がバクバクして。
こいつは、もう立ってられないから、とりあえず座って吸ってるんですよ」

少し前までおとなしかった若者が突然、声を出して笑い始めました。

男性は脱法ハーブを吸い始めておよそ1年。
徐々に強いハーブを求めるようになったといいます。

男性
「最近の新しい効くのが出てきて、もうちょっとぐらいなら、大丈夫だろうみたいな感じで。
どんどん強めのやつやって、みたいな感じです」

危険性増す 脱法ハーブ

強い作用を引き起こすという脱法ハーブ。
どんな成分が含まれているのか。
街で売られているものを集め、専門家に分析を依頼しました。
成分を抽出し、含まれている物質を特定します。
これまで多く出回っているのは、大麻に含まれる成分に似た、合成カンナビノイドと呼ばれる物質。
幻覚などを引き起こすとされています。

ところが今回、これまでに見られなかった物質が検出されました。
αーPVPと呼ばれる、まだ規制されていない新しい物質でした。
体にはどのような影響があるのか。

 

マウスに投与して調べました。
実験を始めて10分。
何も投与しないマウスが落ち着いているのに対して、αーPVPを与えたマウスは止まることなく動き続けています。


 

2時間の運動量を調べると、通常のマウスの実に30倍。
従来の脱法ハーブと違って、高い興奮状態が続くことが分かりました。


 

構造を調べてみると、αーPVPは覚醒剤と非常によく似た物質であることが分かりました。
さらにマウスの脳細胞に投与したところ、多くが死滅。
高い毒性も確認されました。

 

国立精神・神経医療研究センター 舩田正彦室長
「これはもう、すでに覚醒剤を乱用している、その状況とほとんど変わらない。
覚醒剤同様の薬物依存を始め、非常に重篤な健康被害が発生する危険性があるという事です」

脱法ハーブ 製造現場で何が

脱法ハーブはどのように作られているのか。
これまで分かっていなかった国内の製造現場を突き止めることができました。

東京近郊のアパートの一室。
脱法ハーブを作っている男性が取材に応じました。

押し入れの中にあったのは、大量のハーブ。
これはまだ売り物ではないといいます。


男性
「お茶として使用されるハーブです」

「脱法ハーブじゃない?
幻覚成分とか、そういうのは?」

男性
「一切ない、まあミントなので」

脱法ハーブの作り方を見せるという男性。
取り出したのは、白い粉末でした。

「これは何ですか?」

男性
「これは化学物質で、脳に働く効果があります」

「その中身というのは・・・」

男性
「それは企業秘密です」

中国の業者から調達したという化学物質を、刺激臭の強い液体に溶かしていきます。
そして、それをハーブにかけて混ぜ始めました。

男性
「1か所だけ化学物質が、濃くついてしまうところが出てしまうので」

乾燥させたものをパックに詰め、1日に300個から500個店に卸しています。





粉末状の化学物質は、インターネットで海外から購入していました。
仕入れの際、欠かさずチェックするのが国が販売を禁止している薬物の一覧。
すでに規制された、こうした薬物を避けて購入しているといいます。
海外では日本の規制の網にかからない、新しい化学物質が次々と売り出されています。

例えば、AM2201と呼ばれる物質。
人体に危険を及ぼすおそれがあるとして去年、日本では販売などが禁止されました。
ところが、すぐに構造の一部を変えた新しい物質が海外のサイトに登場。
規制をかいくぐる物質が次々と生み出されているのです。

男性
「1個規制されたところで、いくらでも化学式をいじっていけば、全く違うものが出来上がると。
何1000とあります、何1000です」




脱法ハーブによる健康被害や、危険な事故が相次いでいることをどう考えているのか、問いました。

「これ危ないですよね?」

男性
「危なくはないです」

「危なくない?」

男性
「はい。
これ自体は、違法行為には当たりません」

「違法じゃないかもしれないけれども、たくさんの人が健康被害にあっている。
これについては、どう考えている?」

男性
「お香として使ってください。
決して吸引をしないでくださいとしか、我々は言えません」

なぜ急増 脱法ハーブ

ゲスト舩田正彦さん(国立精神・神経医療研究センター)、亀山記者

亀山記者:VTRに登場した業者の男性なんですが、一見、私の第一印象ですと、ごく普通の中年の男性という感じがしました。
これまでも違法薬物、覚醒剤などの違法薬物の製造に関わったことはないと言うんです。

2年ほど前から脱法ハーブの製造に関わったということで、今は関東地方の販売店に卸していて、多額の売り上げがあるということなんです。
覚醒剤などの違法薬物は、主に暴力団の関係者などが扱っていたんですけれども、脱法ハーブの原料となる化学物質はインターネットで買えるため、一般の人がビジネス感覚で関わってしまうという現実に驚きました。

急にまん延したという理由はよく分かっていないんですけれども、日本では数年前から都市部を中心に販売されていまして、去年の秋頃から急速に全国に拡大しました。
日本より先に海外では、大麻の代わりになるものとして乱用が広がっていたんです。
その脱法ハーブを製造するために化学物質を大量に作るようになりました。
こうした化学物質が、インターネットなどで簡単に購入できるということで、国内に大量に流れ込んでいるというふうにみられます。

●脱法ハーブ 高まる危険性

舩田さん:脱法ハーブに含まれております成分につきましては、現在まで合成カンナビノイドという大麻に類似した成分が検出されてまいりました。
ところが今回、αーPVPという成分が検出されました。
この成分は、非常に覚醒剤に類似した効果を示す、こういった特性を持っています。
したがいまして、そういった成分を含んだもの、これを乱用するということは、薬物依存に陥る危険性、これが極めて高いということが分かってきたわけです。

特にαーPVPと類似した成分におきましては、死亡事例、さらには服用に基づく傷害事件、こういったものが諸外国では報告されておりまして、その危険性が指摘されているというものです。

●新しい薬物の出てくる可能性は

舩田さん:現在のところ、全くその効果が確定されていない、そういったものが当然、混入してくる危険性があるということ、すなわち毒物、こういったものが混入してくる危険性が否定できない、そういった状況です。

(強いもの、新しいものを作り出すわけには)販売する側の意図といたしまして、その化学成分は乱用させるということを1つの目的にしております。
すなわち、その使用を繰り返し行えるような、そういった成分に着目して出してきていると、そういった状況があると思います。

●危険性の認識は

亀山記者:気軽に始める若者が多く、危険性というのは認識していないというふうに感じました。
私たちが取材した若者は、たばこのように友達から勧められて断り切れなかったですとか。
あとは覚醒剤のように依存性は強くないというふうに勧められて始めたというふうに話していました。

その一方で、健康被害も相次いでいるんです。
今年に入って、都内で脱法ハーブを吸って病院に運ばれた人がおよそ100人に上ります。
医療関係者によりますと、覚醒剤などの違法薬物は、これまでも治療の経験があって、対処の方法というのがある程度、分かるということなんですけれども、脱法ハーブの場合、どんな有害成分が入っているのか、よく分からない、そのために治療もどのようにやったらいいのか分からないというふうに話していました。
これは実に深刻な問題だと思います。

脱法ハーブ どう規制するか

今月、東京・渋谷で脱法ハーブ店の経営者が逮捕されました。
脱法ハーブの販売だけでは違法行為には当たりません。

今回は、扱っていたものの一部に販売が禁止されている指定薬物が含まれていたため摘発されたのです。
しかし、指定薬物の種類は限られているため、取り締まりは難しいのが現状です。
脱法ハーブの広がりを食い止めるには指定薬物の種類を増やす必要があります。

そのための調査を国と連携して行っている東京都です。
脱法ハーブ店のホームページを調べて、新しいものが出ていないかチェックします。
新しい脱法ハーブを見つけると、店に出向いて買い上げます。
化学物質の分析をするためです。
 

この日、訪れたのは住宅街の中にある店。
1袋4000円余りで売られていたものを2袋買いました。
担当者の人数や予算も限られるため、調査できる数には限界があります。



職員
「これ言っちゃいけないかもしれないんですけど、今はすごい数が増えちゃって、商品数ももすごい数になってるんです。
もう追いつけないですね、はっきり言って」

脱法ハーブの成分分析には、1か月以上かかることもあります。
よく似た構造の化学物質が多いため、特定することが難しいからです。

特定できても、すぐに指定薬物に加えられるわけではありません。
海外の文献の調査や実験を繰り返し、人体への影響を調べなければなりません。
さらに厚生労働省との審議会が有害なおそれがあると判断して、初めて指定薬物になります。
しかし、この審議会は年に1、2回しか開かれません。
こうした指定の方法をどう考えているのか。
厚生労働省に聞きました。

厚生労働省 藤田一枝政務官
「取り締まっても取り締まってもやっぱり、いたちごっこが続いているというのが、この間の現状ではないかと思います。
いろんな問題がどんどん出てきておりますので、よりスピード感を持って、それから、より厳しくやっぱり対応できるようにしていかなければいけないと思っています」
 

規制が追いつかない中で、脱法ハーブの依存患者は増えています。
重度の薬物依存患者を受け入れているこの病院。
去年までは、ほとんどいなかった脱法ハーブの患者が今、1割を超えています。
 

脱法ハーブ依存患者
「各地にいろんな店があって、普通に入れるし、すぐ買えるという。
捕まらないという安心感があるので、やってしまいますね」



治療に当たる医師は、このままでは脱法ハーブの広がりを抑えきれず、危険だと警告しています。

埼玉県立精神医療センター 成瀬暢也副病院長
「幻覚や妄想や意識障害があるようなわけも分からず興奮して、激しい攻撃性を示すような方々があります。
危ないけれども検挙できないっていうような、とんでもないことが今起こっているというふうに思います」

●脱法ハーブ 国の対策は

舩田さん:厚生労働省は、方針といたしまして、指定薬物に指定していく、その薬物の数を積極的に増やしていくという方針を出しております。
これは非常に効果的な方法であると考えられます。
さらに、わが国ではまだ検出がされていないものであっても、例えば海外での検出が確認されている、もしくは健康被害が確認されている、そういった化合物に関しましては、積極的に指定薬物として規制していこうという形で、その対応を取るということで進めているという状況だと思います。
しかしながら、実際に流通している成分につきましては、覚醒剤や麻薬に似た成分、非常に多くのものが出ている。
すなわち、その構造に着目して、一括でそういったものを規制する、包括的な規制というものの導入が必要であると考えられるわけです。

実際に流通が確認されてしまっていて、規制すべき骨格、この黒で示してある部分を規制の、包括規制の(薬物の)骨格とした場合。



 

例えば、この(赤の)位置が変わっても、現状ではそれぞれ別のものとして指定が必要であります。
ところが包括規制が可能であれば、このような構造を持って、この(赤の)位置がどこになっても、規制ができるという形で、その規制の速度というものが、非常に上がるということです。

イギリスにおきましては、すでに包括規制というものが始まっております。
化合物6つの骨格に着目いたしまして、規制をしていく。
6つの指定によって、数100種類の化合物を規制できたということで、一定の効果が得られているということです。

この包括規制の導入に関しましては、どの骨格を中心にするのか、さらにその包括の範囲というものをどのようにしていくのかということが大きな問題になります。
すなわち、包括の範囲が狭ければその効果は弱いものになってしまう。
ところが、網を広げすぎる、包括の範囲を広げすぎますと、医薬品の開発ですとか、試薬の開発、こういったものに不利益が出てきてしまう、こういったこともあるということです。

現状は早急な対応が求められている。
さまざまな課題があるわけなんですが、包括規制を導入し、適切な対応を取る必要があるというところです。

(国や警察などが)厳刑を重要視していく。
そういったところだと思います。

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