クローズアップ現代

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No.32042012年5月28日(月)放送
社会を変える“ビッグデータ”革命

社会を変える“ビッグデータ”革命

“ビッグデータ”が 災害時の人口を予測

東京都内のリアルタイムの人口マップです。
地域ごとの人口が刻々と変わる様子が詳しく分かります。
マップのもとになったのが、携帯電話やスマートフォンが発信する利用者の居場所の情報です。
NTTドコモではおよそ6000万回線の携帯電話などが生み出すビッグデータを別の用途に活用しようと考えました。
例えば、大規模な地震が東京で起きた場合、帰宅困難になる人は午後3時ごろが最も多く、425万人にも上ると見られることが分かりました。

NTTドコモ 先進技術研究所 岡島一郎主幹研究員
「通信サービスのためではなくて、人口統計という、全く今までとは違う用途の情報を作ると。
新しい、その付加価値を生み出すためにも、ビッグデータというのは活用されていくんではないかなと」
 

●加速する “ビッグデータ”ビジネス

東京都内で開かれたビッグデータのセミナーです。
さまざまな企業から1000人以上が参加しました。


 

IBM インヒ チョン スン役員
「消費者を迅速に、正確に把握するためには、ビッグデータが不可欠なのです」

膨大なデータを商品開発などに活用できないか。
企業の激しい競争が始まっています。

●あなたは「これ」を買う “ビッグデータ”が予測

ビッグデータの活用を進めるコンビニチェーンのローソンです。
東京本社の分析チームのもとには毎日、全国の店舗から販売データが届きます。
その数、1日2500万件。

「お預かりします」

「はい、ありがとうございます」

膨大なデータを生んでいるのはおととし導入したこのポイントカード。
4000万人が利用しています。
これまで、レジの販売データでは、商品を誰が買ったかまではつかめませんでした。
 

このポイントカードには年齢や住所などを登録するため個人を特定できます。
その人がいつ、何を買ったのかさらに、繰り返し買うお気に入りの商品は何かまで分かります。


例えば、人気商品のコロッケはどんな人が繰り返し買っているのか。
意外な結果が出ました。

最もリピーターになっていたのは実は、60歳以上。
コンビニにとって課題のシニア層を呼び込める商品と分かったのです。
そこでシニア層の客などを狙う店では、夕飯用にコロッケを大量に並べました。

さらに、この店ではカードのデータから徒歩5分圏内の客が多いことが分かりました。

「生鮮品とかを使って、リピートしてもらえるようになるというのが、1つのキーポイントになる」

近くに住む客が繰り返し来てくれるように品ぞろえを変え、新鮮な野菜などを大幅に増やしました。

「野菜とかが充実してるので。
普通のスーパーで買うようなものを買ってます」

ローソン マーケティング企画部 佐藤大信マネジャー
「こういったビッグデータを使うことによって、欲しいものが欲しいときに欲しい所にあるというのをやっぱり実現したいと」

 

●“ビッグデータ”で予測 未来の交通事故

ビッグデータはあらゆる電子機器から生み出されています。
多くの車に搭載されたカーナビ。
走行データを細かく記録しています。

全国の100万台の車の走行データをまとめた地図です。
合わせると、1日で地球700周分にもなります。
このデータに注目したのが、埼玉県の道路政策課です。
県では、年間3万7000件に上る人身事故を防ぐことができないかと考えていました。

カーナビのデータを細かく分析していくと、車のスピードが急に落ちている場所が数多くあることが分かりました。

ドライバーが危険を感じて、急ブレーキを踏んだのではないか。
速度が急に落ちた車をすべて抽出し、矢印にして県道マップと重ねます。
1年間で急ブレーキは50万回も起きていました。
 

「これ密集してますよね」

「多いね」

「その辺も通学路」

「これ7時ですね」

「これも思いっきり7時57分だったり」

ひとつきに5回以上急ブレーキがあった特に危険な場所を特定。
合わせて160か所の交通事故予測マップが出来上がりました。



 

事故が予測された地点の一つです。
片側1車線の緩やかなカーブ。
中学生や高校生も多く通る道です。


 

県では、ドライバーに道の狭さを意識させるため、道路にラインを書きました。
急ブレーキの回数は3分の1に減りました。
ほかの現場でもドライバーの視界を妨げていた街路樹を伐採。
こうした安全対策を進めた結果人身事故を前の年度より2割減らすことができました。

埼玉県 道路政策課 小沢亮二主査
「今、データがなければですね、どこに対策をしたらいいか分からないわけで。
データがあるからこそ、どこに危険性があるかということが分かってきますので。
未然に事故を防いでいるということはいえるのではないかと思います」

社会を変える “ビッグデータ”革命

ゲスト鈴木良介さん(野村総合研究所)

(人身事故が2割も減ったのは)非常に興味深い事例だと思います。
前半でレジのデータに基づく分析を行いましょうという事例もありましたけれども、単純にビジネスへの活用だけではなくて、公益に資するような活用についても、活用の意義が大きいと、ビッグデータの一つのおもしろいところだというふうに考えています。

まだ非常に先進的な例でございますけれども、アメリカでは犯罪予測に活用しようというケースも出てきています。
具体的に申し上げますと、過去、犯罪が起きた場所であったりとか、犯罪が起きたときに、ある店舗が開いていたのか、開いてなかったのか、営業時間だったのかどうなのかというデータに基づいて、このエリアであれば犯罪が起こりやすいだろうとか、そういう予測を行うような事例というのも出ているところです。

行政機関が保有している資源、人員的な資源というのは、限定的なものでございますので、一番最適な形で配置する必要があると思います。
ですので、今の事例は警察官のケースですけれども、救急車であったりとか消防車であったりとか、そういったリソースの最適配置にビッグデータというのは活用されています。

コロッケの例、一つ見ましても、結局、ビジネスで使おうとしている人は、お客様が何を求めているのかという、お客様をより深く理解していきたいよねと、ニーズを常に持っているものでございます。
なので、例えばほかにどういう事例があるのかというふうに申し上げますと、やはり陳列棚の最適化。
そのものを並べている、商店の中でものを並べているたなの最適化をしましょうというような事例もあります。
具体的に申し上げますと、当然ですけれども、お客様が棚に対して手を伸ばすわけなんですね。
で、例えば土曜日の朝から晩までカウントしてみたところ、棚のこの部分に関しては、この商品に関しては、非常に多く手が伸ばされているよねとか、そうではない、この商品に関してはあまり手が伸びてないようだねというようなことを、もちろん、従前に人がカウントするという方法では分析されていたところでありますが、機械的に、モーションキャプチャーと呼ばれるセンサー類を活用することによって、極めて低いコストで、データの収集・活用をしようというケースは増えているところです。

●加速する “ビッグデータ”の活用

(そのほかには)例えば、営業行為ですね。
あるお客様に対して、商品の売り込みをしたいという話になったときに、先ほどの公的機関の例と同じように、営業マンのリソースというのも当然限定的なものになっています。
ですので、優先順位をつけてですね、より打率の高い、よりものを買ってくれそうなお客様は誰なんだろうかという分析を行うような事業主さんも出てきています。

例えば、店舗でものを売っている事業者さんだったとしても、最近であれば当然、ウェブサイトを保有されていることになります。
その保有されてるウェブサイト上でお客様がどういうページを好んで閲覧されているのか。
つまり、より長い時間、そのページを閲覧しているかというような情報を重ね合わせることによって、このお客様はこういう商品に関心を持つに違いない。
なので、営業リソースをそちらに割り振りましょうというような施策が講じられ始めています。

●ツイッターなどの分析は

先ほど申し上げましたような、そもそも事業会社さんが保有されているデータだけではなくて、外部のツイッターのようなところが保有しているデータですね。
自社の商材について、どういうようなつぶやきが行われているのか、どういうような、いいコメント、悪いコメントが寄せられているだろうかというようなデータを重ね合わせることによって、よりよい商品開発であったりとか、販売促進につなげていこうというケースもどんどんどんどん増えているところでございます。

医療“ビッグデータ” 未知の病因を探れ

アメリカ・テキサス州にある地域の拠点病院です。
ここでは、病気の治療や予防にビッグデータを活用しています。
患者の病名や診察の結果などをコンピューターに入力します。



さらに、カルテのメモなどから患者が何時に起きて一日をどう過ごすかや住んでいる環境、家族構成などあらゆるデータを収集します。
2000人以上の患者のこうしたデータを手書きの文字も読み取れる最新のスーパーコンピューターで分析していきます。

この病院がまず解明に取り組んだのが「うっ血性心不全」という病気です。
心臓の機能の低下で血液が肺などにたまり、時に、呼吸困難になります。


この病院ではいったん退院したあと、再び悪化して入院する患者が多いことが課題になっていました。

シートン病院 クリストファー ジーベル医師
「状態は似ているのに悪化する人もいれば、全く悪化しない人もいて再入院する患者の特定は困難でした」



再入院する可能性が高いのはどんな患者なのか。
分析の結果、18の要素が分かりました。
血圧やコレステロールが高いなど、予想された原因が並ぶ中で意外な要素も浮かんできました。
老人ホームで暮らす人がとりわけ目立ったのです。
施設によって介護の状況に差があり、患者の健康状態への目配りが不十分なことがうかがえました。
そこで、病院では老人ホームを定期的に訪問するチームを結成。
再発の可能性が高い患者の支援を始めています。

シートン病院 クリストファー ジーベル医師
「ビッグデータを分析することで、患者の姿が見えてきました。
これを生かせばその人にとってベストな治療を行っていけるのです」

●活用進む遺伝子 人体の“ビッグデータ”

こうした医療のビッグデータの活用で今、最も動きが活発なのが遺伝情報の分野です。
ネット販売最大手のアマゾンなどの巨大IT企業が相次いで参入。
先月(2012年4月)開いた大規模なセミナーでもビジネスの可能性を訴えました。

アマゾン ウェブ サービス マット ウッドマネージャー
「DNAの解析費用は劇的に下がっています。
私たちはこれまでと全く違う方法で取り組む必要があります」


ヒトの体の設計図に当たる遺伝情報は1人で30億もの塩基の配列があります。
1人分すべての解読にかつては、数年かかりましたが今では、1時間ほどで読むことができるため、扱うデータの量が飛躍的に増えています。
遺伝子との関わりを調べる研究の対象も大幅に広がっています。

病気だけでなく目鼻立ちなどの外見的な特徴まで対象になっています。
これまでの研究では一部の遺伝情報と、がんなどとの関係しか分かっていませんでした。
すべての遺伝情報の解析が可能になったことで、人体のあらゆる要素との関わりを調べる研究が加速しています。

遺伝子解析関連企業 ジェイソン ストーCEO
「分析にかかる時間が短縮したことで、治療法の開発が進み、新たな薬の開発にもつながると期待しています」

 

こうした遺伝情報のビジネスを積極的に展開しているのが、検索サイト最大手のグーグルです。
去年、遺伝子の解析技術で最先端のベンチャー企業に出資しました。

共同で始めたのが遺伝情報のクラウドサービスです。
インターネット上の巨大なサーバーに各国の研究機関が集めた2000人近い遺伝情報を保管。
これまで、一部の研究者に限られていた情報に誰でもアクセスすることができます。

病気の名前を入力すると、該当する人の遺伝情報が一覧で表示されます。
多くの人の情報を比較、分析することで、特定の遺伝子の問題などを従来より迅速に調べることができるのです。

グーグル ベンチャーズ ビル マリス業務執行担当
「現在、DNAデータは爆発的に増えています。
こうしたビッグデータを整理し、保管し、役立てるのがわれわれグーグルの使命です」
 

●人体の“ビッグデータ” 問われるルール

一方で究極の個人情報ともいわれる遺伝情報のビッグデータがインターネットで多くの人に共有されることに懸念の声も上がっています。

「DNAデータを集める段階では、誰がどう使うか、説明が難しくなっています」

「民間企業が扱っている以上、DNAデータも売買される可能性があります」


ことし(2012年)開かれたアメリカ大統領の諮問委員会では、遺伝情報の提供者が特定されるリスクが高まっているという意見が出ました。
遺伝情報の保管や提供者への説明の在り方などについて議論が続いています。

ワシントン大学 ダニエル マシス客員教授
「価値の高い情報は正しい目的以外にも使われやすいものです。
これから、ますます大きな成果を得ていくには、分析の技術だけではなくデータを提供する個人の権利や考えを尊重するルールを作っていくことが重要なのです」

“ビッグデータ” どう守るプライバシー

遺伝情報、大きな活用が期待できる一方で、遺伝情報ならではの怖さというものがあると思っています。
なぜなら遺伝子情報というのは私の情報であると同時に、私の子どもであったり、孫であったり親であったり、そういうさまざまな血縁者に対して影響を及ぼしてしまうデータだからです。
このようにデータ、数年前まではなかなか取ること自体、困難だったわけですけれども、それが非常に取りやすくなっている中で、ちゃんとその情報が不適切に使われないように管理をしていきましょう、活用するうえでの管理をしていきましょうという取り組み、制度作りが必要になると考えています。

●社会を変える “ビッグデータ”革命

ビッグデータは世界中で使われている、活用が進んでいる領域ではありますけれども、特に日本においては人口も経済規模もこれから縮小していってしまうという背景があります。
そうなったときに、世の中のさまざまな社会課題であったりとか、不合理に動いている部分、むだが多い部分に関して、ビッグデータを活用することによって社会全体をうまく回していくことが必要になっていくだろうというふうに考えています。
ごく一例になってしまいますけれども、例えば、日本では人口が減っている中でも、14年間にわたって3万人の自殺者が出ていますけれども、こういったものに対しても、ビッグデータを活用することによって、どういう人が自殺をしてしまうんだろうかとか、それを予知回避するためにはどうしたいんだろうかとか、そういう点について研究であったりとか、実施を行っていくことが求められるのではないかというふうに考えます。

●今後のデータ量は

データだけは間違いなく増えていくものでございますので、例えば今、ソーシャルデータというふうに呼ばれている、つぶやきデータのようなものだけではなくて、これからはセンサーデータ、きょうのVTRでいいますと、自動車由来のデータであったりとか、機械由来のデータといったものが、どんどんどんどん増えていく、それはしばらく続く傾向というふうに言っても間違いないと考えています。

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