広い音域と豊かな音色から“楽器の王”と称されるピアノ。その300年以上に及ぶ歴史に左手一本で新たなページを刻み続けるピアニストがいる。舘野泉さん75歳。10年前脳出血で倒れ右半身不随になったが、その後2年かけて左手だけの奏法を習得し「左手のピアニスト」として復活した。左手だけで弾くという制約から、舘野さんは左手の親指と人差し指でメロディ、残りの指で和音を弾き分けるなど常識を覆す奏法で、独特の“うねり”を生む。そして、音楽の世界に身をゆだね、その深い本質を紡ぎだす。その音楽に魅了された国内外の作曲家たちが舘野さんのために「左手の曲」を次々と制作、今世界で最も豊かで多彩な「左手の音楽」は日本にあると国際的に注目されるまでになった。この5月から2年かけて、左手の音楽の集大成のツアーに挑む館野さん。更に、新しい境地を切り拓こうとしている舘野さんの生き様とその音楽の魅力に迫る。
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