クローズアップ現代

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No.31492012年1月30日(月)放送
“和の心”を輸出せよ ~世界に広がるBONSAI~

“和の心”を輸出せよ ~世界に広がるBONSAI~

世界に広がるBONSAI

高松市で行われた盆栽の産地見学会です。

「こんにちは。」

参加者のほとんどは外国人。
松の盆栽日本一の生産量を誇る高松ならではの作品を次々と購入していきました。

「50個以上買いました
コンテナでたくさん持って帰ります」

盆栽は今ローマ字の「BONSAI」として欧米やアジアで大流行しています。

盆栽の流行発信地の一つが、芸術とファッションの街、イタリア・ミラノです。

この店は花屋から盆栽の専門店に衣がえしました。
親しい人への贈り物として人気が高まっているからです。

「多いときは100~150本も売れるんだ」

盆栽は東洋的な神秘さとアートとしての高い芸術性を備えたものとして欧米で評価されています。
ミラノでは愛好者の盆栽を披露するパーティーが行われるほどです。

「まるで自然がミニチュアになったみたいで
小さいのにとても大きく見えるんです とても綺麗で感動します」

そもそも盆栽がヨーロッパに伝わったのは1900年に開催されたパリ万博だといわれています。
その2年後にフランスで出版された専門書です。
アートとしての盆栽の楽しみ方が写真と共に語られていました。
以後ヨーロッパで盆栽が静かなブームとなります。

「乾杯。」

それをはやりの趣味にまで発展させたのは欧米を拠点とする企業のしたたかな戦略でした。

●流行を作り出すBONSAIビジネス

ミラノ市郊外にある盆栽の輸入と販売を行う会社です。
社長のルカ・クレスピさん。
2ヘクタールの施設に10万本の盆栽を展示しているのが自慢です。
クレスピさんは初心者でも盆栽に取り組みやすくする戦略を次々と編み出しています。

「気軽に盆栽の世界に入ってもらうためです。
理解すると愛することができます。
そしてコレクターになってくれるんです。」

戦略の一つが1鉢100ユーロおよそ1万円以下と安い価格の盆栽を充実させていることです。
この価格なら初心者でも購入しやすいと考えました。

二つ目の戦略が、愛好者の積極的な育成です。
「盆栽大学」という市民講座を開設し購入者に盆栽作りの基礎から応用までを教えます。

「奥行きを与えてくれる枝を探しましょう」

専門の訓練を受けた講師が、枝の美しい配置や剪定のしかたなどを実技指導するのです。

「たくさん枝があり過ぎてどれを切ったらいいのかわからないんです」

「大きい枝さえあれば小さい枝は重要ではありません」

三つ目の戦略は、熟練度の増した顧客に初めて高級な盆栽を紹介するということです。
顧客の優越感と愛着心をくすぐり盆栽の世界にのめり込んでもらいます。

「植木がもともと好きだったので1つ買ったのです
そうしたら次々と買うようになったのです
盆栽をやっている時には他のことは一切考えず没頭したいです」

取り組みから30年。
クレスピさんはこの戦略で会社を年商3億円の規模にまで成長させました。

「もはや流行ではありません。
既に知識として知られているんです。」

更に事業の拡大をねらうクレスピさんは、盆栽を安定して確保する体制の強化に乗り出しています。
今回高松市で行われた盆栽の世界大会に参加し、地元の農家と交渉しました。
今後お互いに協力し合う方向で交渉は成立。
来日は事業の追い風となりました。

クレスピさんは新たな戦略に取り組んでいました。
8~14歳を対象にした盆栽キッズ講座です。
幼いうちから盆栽の愛好者になってもらうとともに親にもアピールし、市場の拡大を図ります。

「日本は宣伝が不十分すぎると思います。
全方位へのアピールが成功の秘けつだと思います。」

世界を魅了するBONSAIの美

ゲスト柏木博さん(武蔵野美術大学教授)、森隆宏さん(盆栽技師)

●盆栽の魅力とは

柏木さん:大自然が圧縮されているというのをやっぱり感じますね。
海外でこういうものを好むっていうのは日本の庭の風景を理解し始めてるという事だと思うんですね。
庭は自然を圧縮していますし、それからそれをもっと圧縮すると坪庭になるし、それをもっと圧縮すると盆栽になりますよね。
ですから盆栽を見て日本の庭園っていう感じを受け入れているんじゃないでしょうかね。
多分日本の庭園のミニチュアなんかも作られているし、写真でいっぱい紹介されるようになってきてるからだと思いますね。

森さん:山にある自然の景色をそのまま切り取って鉢の上に上げて「盆栽です」っていうわけではないんですね。
やはり自分が今まで見てきた景色だったりだとかこういう景色があったらいいなこういう大木感が得られたらいいなというものを自分のフィルターを通してこの鉢の上で表現していくのが盆栽になってくるんです。
盆栽を観賞して頂く時に必ず正面ていうのがあるんですけれども、鉢のちょうど真ん中からご覧になって頂けますか。
そうするとですね…。
この下が回転台になっているんで回しますね。
正面以外の所をちょっとご覧頂きます。

先ほどの幹の動きとは全然違いますよね。
枝つきも違います。
じゃあ今度逆にいってみます。
先ほどの幹の動きが一直線に消えてしまって足元がぽっかり穴が開いてしまっている。
力がなくなっちゃいましたね。

やはり今ここに戻した正面というのが根っこの張り方であったりあとは幹の動きであるとかあと枝のつき方。
その風雪に耐えた自然界の厳しさというものがですね盆栽として表現されているんじゃないかなと思っています。

●衰退する日本の愛好者

柏木さん:多分ね、魅力的だなとは思ってるんだけれどどうやって育てていいのか分からない。
入り口がないんですよね。
それとどうやって飾っていいか分からない。
だから…何だろうな、盆栽に関する教育みたいなものがだんだんだんだん消えていっているのかなという感じがしますね。

森さん:一番の原因として挙げられるのがやはり今おっしゃったような住環境の変化というのが挙げられると思います。
例えば飾る場所もそうなんですけれども管理するための庭がなかったりだとか。
今は大体マンション住まいの方アパート住まいの方も多くいらっしゃいますからそういう方たちがベランダで管理をするのはなかなか難しい面があると思うんですね。
そういったところからちょっと手を出しづらいものになってきているのかなと感じますね。

盆栽を扱っている業者たちもどちらかというとお金を持ってる人相手、お年寄り相手でやってきたんですね。
なのでそういったことから若者への普及活動、中年層への普及活動がどうしても後回しになってしまったのではないかと思います。

海外に活路 変わるBONSAI農家

高松市の盆栽農家、山地宏美(やまじ ひろよし)さんです。
日本を代表する盆栽職人として今ヨーロッパ各地に招かれ講演することが多くなっています。
この日はフランス西部にある農村で盆栽を美しく仕立てるための実演を行いました。
山地さんにとって、海外の盆栽ブームの実情を知る良い機会となっています。

今回参加者の度肝を抜く技術を披露しました。
根を装飾に使う技です。
土を掘り起こし鉢に埋もれていた根をあらわにします。
荒々しい自然の中でたくましく生きる盆栽の生命力を表現するためでした。

「あなたは巨匠だ」

「あなた方は一部しか見ていない
私は木の全体を見ている
木の歴史 生まれに注目しているんです」

「メルシー。」

山地さんはフランスの盆栽人気の成熟を実感しました。

「私たちは職人ということで とどまって一生懸命創造し続けるんですが 今どういうような変化が訪れているかということを知る必要があると思いますね」

高松市の農協の盆栽部会長も務める山地さんは、国内市場の深刻な現状に危機感を感じています。

「3万円!」

競りに立ち会う度、品質が高いにもかかわらず安く買いたたかれるさまを目の当たりにするからです。

「2000円2000円2000円…なり!
5番。」

仲間の中には盆栽の栽培をやめる人も続出。

山地さんの地区では200軒あった農家が、60軒と激減しました。
産地の生き残りを懸け山地さんが率先して取り組んでいるのが海外への輸出事業です。
畑の3割をEUの輸出基準を満たす栽培法に切り替えました。

例えば盆栽一本一本に生産地や植え付けた年などを書いた標識を付ける。
棚を50cm以上の高さにして、害虫が混入しにくい環境を作り出す。
その他、土の消毒や年6回の公的な検査を行うなど大きく7つの基準があります。
投資額は100万円を超えましたが、海外の現状を踏まえ十分に採算がとれると判断しました。

「海外の人たちの眼は肥えている
もっといい物をみせろ もっといい物が欲しいと
宣伝をうってより多く売りたい 売り上げを伸ばしたいというのがありますね」

更に山地さんは、海外への輸出を業者任せにせず直接行うことも検討しています。
中間マージンをなくし、収益率を高める事ができるからです。

フランスに滞在中、高松の盆栽に興味があるという小売り業者と交渉する機会を得ました。
自分が栽培する盆栽の品質の高さを必死にアピールします。
結果、日本に行って質の高さを確認したいという思わぬ答えを引き出しました。
取り組みが軌道に乗れば山地さんは他の栽培農家にも働きかけ事業を拡大させる予定です。

「まことに予想を超える収穫があったと思いますね
将来、明るい希望が私の方でも持てたと思います」

 

“和の心”BONSAIを輸出せよ

柏木さん:(海外に積極的に活路を見いだそうとしていることは)とてもいい事だと思いますね。
喜ばしいなあと思います。
海外の人たちが日本の文化を理解するしまたビジネスとして成立するわけですよね。
ビジネスとして成立しなくなっちゃうとほんとに元も子もなくなってしまう。
でもちょっと気になるのは300年400年というあの貴重なものがやがて流れ出ていってしまう。
これをどうするか。
何とか保護する事ができないだろうかという事もありますね。
ともあれ海外で元気になって、それがUターンしてこの盆栽の趣味が日本でも広がってくれるといいですよね。

●“和の心”盆栽 日本での復活は

森さん:あそこの「真の間」に今回飾らせて頂いている飾りですが、あそこにもうギュッと自然をですね、広~い自然を凝縮してしまおうという事からなっているんですね。

掛け軸には山々が連なってその山の中にスッと立つ一本の木が一つの盆栽として飾られています。
そして左の方に目をずらしていくとそこには水石が飾られていてそこで海岸沿いの海の様子を描いているという世界観ですね。

日本人の気質の中に「自然と共に成長する。
共生していく」というのが古くから根づいているものだと思うんです。
そういったものが季節を感じる事であったり、自然への尊さを感じるものだったり。
まあヨーロッパ、欧米などではどちらかというと、自然を支配するような文化が長く続いてきたんですけれども、日本というのは、もともと本来ある自然と共存するというような事がありますから、盆栽というものがですね、今忘れられかけていますが、またもう一度、新しい価値観と共に復活してくれればいいかなというふうに思っています。

柏木さん:(日本で衰退させないためには)やっぱり手軽に盆栽が作れるような環境を整備していく。
なかなか大変ですけどね。
それとこういう美術館の中では割と形式的に、きちっとした日本風の展示のしかたしてますけれど、日常生活の中で和洋折衷型の生活をしてますから、そういう生活の中に盆栽を入れて飾っても全然大丈夫だっていうような、そういう海外で見られるような展示のしかたとか楽しみ方とかそういうものも受け入れていいんじゃないかと思いますよね。

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