クローズアップ現代

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No.31482012年1月26日(木)放送
日本メーカー テレビ復活のカギは

日本メーカー テレビ復活のカギは

瀬戸際に立つ 日本のテレビメーカー

白黒テレビがカラーテレビに変わったときの驚き。
初めてこのリモコン付きのテレビやハイビジョンテレビがわが家に来たときの喜び。
皆さん覚えている方も多いと思います。
かつてテレビは日本の家電業界の花形でした。
そのテレビが今曲がり角を迎えています。

こちらは大手電機メーカーのテレビ事業の現状です。
ソニーの7年連続の赤字をはじめとして日立製作所やパナソニックも赤字が続いています。
メーカーにとって大黒柱だったテレビの低迷は深刻です。
世界のテレビ市場を見ても日本の苦しい立場が分かります。

去年の売り上げ1位、2位は韓国のサムスン電子とLG電子。
これまでトップシェアを誇ってきた日本のメーカーからその座を奪っています。
皆さんの今ご覧になっているテレビはどこの国のメーカーでしょうか。
世界を席けんする韓国メーカー。
その強さの秘密はなんなのか、まずは探っていきます。

世界市場で躍進 韓国テレビメーカー

アメリカ・ラスベガス。
今月、世界最大の家電ショーが開かれました。
注目されたのは韓国メーカーが発表した次世代のテレビでした。

厚さ、僅か4ミリ。
色鮮やかな有機ELテレビ。
難しいとされた大型化を世界で初めて実現しました。
先を越された日本メーカー。
視察した各社の幹部は技術の高さに目を見張りました。

韓国勢の躍進で日本メーカーは苦境に追い込まれています。
パナソニックはプラズマテレビの生産を大幅に縮小。
日立製作所はテレビの自社生産を断念。

ソニーは世界市場での販売目標を半分に引き下げました。
この半年、日本メーカーは相次いで事業の見直しを迫られました。

「(テレビ事業で)7期連続 赤字を出し続けているという事実に対して
マネジメント全員が大変な危機感を持っており
早急に赤字体質から脱却したいと」

「重要なテレビという商品に対して
我々はなかなか収益を上げることができなかった」

日本の大手メーカーのちょう落。
その要因はテレビの作り方が大きく変わったことにありました。
薄型テレビの主な部品は電源と基板、そしてパネルです。
この3つを組み立てるとテレビが映ります。

いわばプラモデルのように組み立てられるのです。

パソコンの周辺機器を作っていた、この会社。
5年前、テレビの製造に参入し65万台以上を販売しました。

「弊社のような会社でもデジタルテレビが作れるようになった」

多くのメーカーが競って作るようになったテレビ。
価格競争は年々激しくなり大手メーカーの収益は急激に悪化しました。

「ソニーが性能の良い5000ドルのテレビを出しても
あまり画質の良くない3000ドルのテレビが出回れば 売り上げを失うのが現実です」

「参入障壁が非常に低くなって そんなに大きな技術を持っていなくても商品化していける
そういった時代になってきた」

シェアを急速に失っていった日本メーカー。
4年前、世界トップの座を韓国に奪われました。
日本を追い越した韓国メーカーその強みはどこにあるのか。

世界第2位のLG電子です。
LGの強み、その一つは積極的な設備投資です。

最新型のテレビを生産するこの工場。
広さは東京ドームのおよそ3倍。
7年前、日本円にして660億円かけて建設しました。
工場では若い人たちがテレビを次々と組み立てていました。
ここから日本やアジアに輸出。
全世界での生産台数は年間3400万台に上ります。

もう一つの強み。
それは、いち早く新興国市場を開拓したことです。

その先頭に立ったのがキム・ヒョンイル部長、46歳。
キム部長が狙ったのは日本メーカーが重視しなかった国々です。

「この製品は、テレビからコーランが流れるんです。」

イスラム諸国では礼拝の時刻に合わせてコーランが流れるテレビを開発。
インドでは音楽好きな国民性に合わせてスピーカーの大きさを2倍にしたテレビを販売しました。

「先進国で販売するには私たちのブランドの認知度は低かったので先進国のメーカーがあまり進出していない国で販売を展開することにしたのです。」

新興国の急成長とともに売り上げを伸ばし、世界でのシェアも拡大しました。
その収益を研究開発に振り向け、新製品の投入でも日本の先を行くことになったのです。

ライバルの製品を分析するこの部屋。
研究しているのは同じ韓国のサムスン電子のテレビです。

日本のテレビはありませんでした。

「3、4年前まではソニーやシャープを研究していました。
日本メーカーの製品はもう置いていません。」

世界のテレビ市場をリードする韓国メーカー。
しかし、新たなライバルが迫っています。
それは中国です。
LGは今、中国のテレビメーカーの動きに警戒感を強めています。

「デザインはよくないが画質はいいですね。
中国でたくさん売れたようです。」

世界トップ10には中国メーカーがすでに3社入っています。

「中国メーカーはわが社にとって非常に脅威です。
誰にもまねされない独自の技術を開発するためにもっと努力しなければなりません。」

存在感を増す韓国と中国のメーカー。
日本メーカーを取り巻く環境はますます厳しくなっています。

「非常に厳しい時代になっていることは間違いない
次のテレビがいったい何ものかというのを模索しなければいけないですね」

韓国テレビメーカー 躍進の背景

ゲスト森本博行さん(首都大学東京教授)、井村記者(経済部)

井村記者:これは大きな環境の変化が背景にはあります。
一つは、急激に進んだ円高と、韓国の通貨のウォン安です。
リーマンショックが起きた4年前から、円はドルに対して30%以上円高になりました。
これに対して韓国のウォンは20%下落しています。
この結果、輸出、収益の面でも、韓国にとっては有利に、日本にとってはハンデとなってしまっているということなんです。
もう一つは国の支援です。
これは韓国ではテレビなど、IT関連産業に対して、補助金などさまざまな優遇制度があります。
そして法人税率も日本の半分程度に抑えられています。
ある日本の電機メーカーの幹部は、この日本と韓国の差について、2000億円かかるような大規模な工場が毎年1つずつただで作れてしまう、そのぐらいの差だと言っているんです。

●ブラウン管から薄型テレビへ

森本さん:ブラウン管の時代、日本企業は画(え)の巧みさにこだわって、製品開発を行ってきたんです。
液晶等の薄型テレビに変わっても同様に、画質のよさというものにこだわってきました。
ところが、それが日本企業の強みだったんですけども、ところが、薄型テレビというのはそれほど画質の差というのが、消費者は感じなくなったんですね。
ですから、結局は価格競争にならざるをえなかった。
どれだけ安いかという、そういうことでテレビが買われるようになったんです。
ですから、日本企業としてはなるべく安い値段で提供せざるをえなくなって、本来の日本企業の強みの部分が薄れてしまったんです。

ちょうど2000年以降、日本企業はリストラを断行したんですね。
そうすると早期退職の技術者、あるいはデザイナーが韓国企業に雇用されるようになったんです。
その結果として、技術が流出していったんです。
同時に韓国企業は、大規模な設備投資を行って、規模の経済と、それから為替のメリットを享受できるようになったんですね。

価格競争ではなかなか難しいです。
国内で生産して、それを海外に輸出して、それで競争力を持つというのは、価格の競争力がないので、なかなか難しいと、市場ではなかなか戦えないと思います。

日本メーカー テレビ復活のカギは

日本メーカーのテレビの新技術の発表会です。
この液晶パネル。
画素数はハイビジョンのおよそ4倍。
将来、高精細のテレビに使われると期待されています。
有機ELテレビの大型化では韓国に後れを取った日本メーカー。
有機ELよりもきめ細かい画像で対抗しようとしています。

ただ、画質を高めるだけでは再び価格競争に巻き込まれる可能性があります。
そこで競争に巻き込まれないよう日本メーカーはテレビに独自の付加価値をつけようとしています。

ソニーの発表会。
現れたのはハリウッドスターのウィル・スミス。
主演映画をテレビで楽しんでもらおうとアピールしました。

ソニーはゲーム映画、音楽などの制作をみずから手がけています。
こうしたコンテンツをインターネットで配信し、高画質のテレビで楽しめるようにする、これがソニーの戦略です。

「我々は顧客がソニー製品を買いたいと思うように技術の重要性を明確にしなければならない
すべてのソニーのテレビがわくわくするものになるようなコンテンツをネットワークから配信しなければならない」

テレビをほかの家電製品とつなごうというのがパナソニックです。

このテレビ、家庭の省エネを進めるため家じゅうの家電製品を操作する機能を持っています。
画面には照明やエアコン。
それにテレビなどの消費電力がリアルタイムで表示されます。
むだに使っている機器があればテレビから電源を遠隔操作で切ることができます。
テレビを、あらゆる家電製品をコントロールする窓口にしようというのです。

「韓国の、たとえばサムスンさんですとかね、あんまり 我々のそういったビジネスはやっていませんよね
テレビでモニターの役目をしてもらおうという考え方」

シャープの戦略は画面の大型化です。
その鍵を握る工場に初めてカメラが入りました。

「こちらがパネル検査工程になります」

生産しているのは60型以上の大型テレビ用の液晶パネルです。
「こちら ご覧いただいているのが70インチ、60インチクラスのパネルを効率よく作れる世界で唯一の工場となっております」

他社にない大型の液晶パネル。
これを生かしてテレビの付加価値を高めようとしています。

開発したのがタッチディスプレイと呼ばれる製品です。
テレビを見られるだけではありません。
ホワイトボードのように画面に直接、書き込みができます。
顧客の要望に応じてさまざまな機能を組み込めるこの製品。
オフィスや病院学校などの需要を見込んでいます。
ただ、要望に応えるのは簡単ではありません。

営業担当の岩渕浩昭さんです。

「お忙しいところすみません。
ありがとうございます。」

この日CGの制作会社との商談に臨みました。

「ちょっとだけ見ていただきたいものがありまして
このソフトペンを使うことによって」

動画も表示できることをアピールする岩渕さん。
ところが。

「動画にはものを書き込めるんですか」

「いったん 静止画として取り込んで そこの上に書くという形になります」

「動画を作る過程で制作のチェックを これでできたら良いと思ったんですけど
動画にはまだ書けないってことなんですね」

思わぬ要望を突きつけられた岩渕さん。
解決策を考えなければなりません。
早速、開発部門に相談しました。

「普通止めて こうやってまた動画を動かそうとしたら消えちゃうよね
ついていって欲しいんだって 赤いマル」

「技術の詳しいところは私わからないんですけど
その分ぜひ皆様のお力を借りて何とかそれをやりたいんですよね」

テレビにどんな価値を加えられるのか。
それが日本メーカーの復活の鍵を握っています。

「ただ単にマーケットがあるから
少し変わった商品を出すだけではだめ
そういった商品を作りながら新規な需要を構築していくんだと
それが今の日本のメーカー この非常に厳しい状況の中での製造業のあるべき姿だろう というふうに我々はいま思っています」

日本メーカー テレビ復活のカギは

井村記者:画質や価格といったこれまでの競争とは異なる競争に突入しています。
いわばテレビをどう使うかという競争なんです。
特にインターネットとつながるようになったことで、その可能性は広がってきています。
例えば、携帯電話の世界では、アップルがiPhoneという新しい使い方の製品を投入して、新しい市場を作りましたが、こうしたことがそのテレビの世界でも起きる可能性があるということです。
そのアップル、今度はテレビ市場に打って出てくるのではないかという観測もメーカーの間からは出てまして、そういう意味では、各社の戦略が今ほど問われているときはないといえると思います。

●日本のメーカーが挽回するには

森本さん:テレビというのは、家庭にとっては必需品なんです。
家電メーカーにとっては、これは顔になるビジネスなんです。

売り上げ規模も1兆円近くあります。
そうしますと、そこには多数の人が雇用されております。
ですから、これをやめるということは、結局、家庭から撤退するということになるわけですね。
大変重要なビジネスなんです。

それ(日本のメーカーが挽回する方法)は2つの方法があると思うんですね。
1つには、家庭用のテレビなんですけど、これは大変な価格競争の中にあるわけですね。
そうすると、これはより安く作ることが必要になってくるわけです。
そうしますと、台湾メーカー等連携して、より安いメーカーを世界に普及させるということが必要になってくるわけですね。
それが1つ。
そして、もう一つは、ハイビジョンの4倍という高画質のテレビを日本企業は開発しているわけです。
これは高画質のテレビは、あるいはそのモニターとして必要な産業に組み合わせることが必要だと思うんですね。

例えば医療診断システム。
これは日本では大変国際的に優位なビジネスなんですけれども、これと高画質のテレビを組み合わせることによって、今までにない新たな仕組みができるわけですね。
そうすると、なかなか他の外国企業はなかなかそれをまねすることはできないはずなんですね。
ですから日本の企業の優位に立っている産業と組み合わせていくことによって、新たな市場を作り出していくわけです。
それによって日本企業の強みが発揮できる分野が必ずあるはずです。
日本企業は、日本企業にはここに強い産業、電子部品であったり、化学部材であったり、医療システムであったり、そういうビジネスがたくさんまだ残ってるんですね。
それとこの高画質の映像モニターを組み合わせることによって、より強いビジネスがそこに生まれるはずなんです。
ですから、今、家庭用テレビは価格競争に入ってますけど、これは日本国内で生産できる高付加価値のビジネスなんです。
ですからそれを強めていけば、必ず日本は貿易赤字にはならないで、新たな輸出国になるはずです。

日本は高齢化社会を迎えて、こういうものがノウハウを蓄積できてるはずです。
ですから、これから高齢化社会に向かうにあたってはぜひ必要になるはずなんです。

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