1970年代後半、カンボジアで虐殺や強制労働によって150万人を死に追いやったとされるポル・ポト政権。その指導者の罪を裁くため2年前に設置された特別法廷が、存続の危機に立っている。事前の捜査すら終わらず、予定期限の3年を大幅に越える見込みだ。最大の原因は捜査の難航。旧ポル・ポト派の元幹部や兵士たちの多くは今もポル・ポト元首相らを信奉しており、捜査陣はほとんど証言を得られていない。一方、被害者や遺族たちも、裁判を機に重い口を開き始めているが、加害者と被害者が同居するカンボジア社会で「過去を蒸し返す」ことに強い抵抗を感じる人々も少なくない。30年前の虐殺に国民はどう向き合うのか。危機に瀕する国際法廷の実情と課題に迫る。
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