2012年02月28日 (火) 「初音ミク特集」の放送を終えて・・・
こんばんは。ディレクターのDです。
番組はいかがだったでしょうか?
放送直前に、この記事を書いているので、視聴者の方たちの反応が分からず、非常に緊張しています...。
(ネットの中が活気づいてきているのは感じていますが...)
なんで放送前に放送後の記事を書いているかというと、
放送を終えた瞬間にアップしたい動画があるからです!
番組では一部しか紹介出来なかった
初音ミクの歌「FREELY TOMORROW」
のロングバージョンです。
番組での紹介用なので、曲の途中で終わりますが、それはご容赦を。
動画を作成してくれたまさたかPさんと、
FREELY TOMORROWを制作したMitchie Mさんのご好意によって、
公開する事が出来ました。
この場を借りて、お礼を申し上げます。
ありがとうございます!
それでは、
"ただでさえ天使のミクさん"
がクロ現のスタジオで熱唱する様子をお楽しみ下さい!
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2011年10月16日 (日) 「スティーブ・ジョブズさんは"徹底的に考え抜いた"」前刀禎明さん
前刀禎明さんインタビュー
「スティーブ・ジョブズさんは"徹底的に考え抜いた"」
前刀禎明(さきとう・よしあき)さん,2004年アップル本社マーケティング・バイスプレジデント(VP/副社長))兼 日本法人代表取締役就任,06年退社
現在は株式会社リアルディア代表取締役社長,ngi group株式会社代表執行役会長
10月12日の放送「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズの素顔」では、2004年から06年までジョブズさんとともに仕事をした前刀禎明さんにインタビュー取材をさせていただきました。ジョブズさんの人物像に迫るあまりにも貴重なインタビューのため、放送で紹介できなかった部分も含めて、前刀さんの許可を得て特別に掲載させていただきます。
ジョブズさんとの出会いは緊張感があった
もともとアップルの大ファンになったのは、もう今から、約20年ぐらい前ですかね。Macintosh SEを自分で買ったときで、当時は、60万円ぐらいしたのですけれども、非常に、高価なもので、非常にかわいらしいデザインで、使い勝手もよかったということで、その時以来すっかりアップルのとりこになって、ずっとアップルファンでいて、応援してきていたと。それで私が前職の後に、たまたまヘッドハンターのほうから、アップルで仕事しないかという話を貰ったときに、日本においてアップルというのは全く、iPodも全く売れていませんでしたし、Macintoshもちょっと勢いがなかったし。ちょうど銀座のアップルストアはオープンしたところだったのですけれども、今ひとつ、ぱっとしないような状態があって。なんとか、日本におけるアップルを復活させるということをお手伝いできたらな、ということで、最終的に、現在CEOになりましたティム・クック、その他エグゼクティブの方々から、インタビュー面接を受けて、最終面接がスティーブ・ジョブズということで、ついにあこがれのスティーブ・ジョブズと会うことになったわけですけれども。そこで、先にアメリカのほうで発表になっていましたけれども、iPod mini、これを使って日本でアップルブランドを絶対復活させようということで、いろいろな提案をしました。その面接のときはスティーブ・ジョブズと始めて出会って、初めて話したときでしたね。今でもそのときの記憶というのは、もう鮮烈に残っていますね。十分に自分なりに準備をしていって、無駄なこと話したら絶対だめだなってわかっていましたし、非常に端的に「日本でどうしたらいいと思うのだ?」と言うので、もう絶対にiPod miniで、ファッション戦略を展開して、日本でブランドを再復活させるのだということですね、復活させようという気持ちで提案をして、非常に彼は納得してくれましたね。ジョブズさんの印象は、本当に明確なビジョンがあって、迷いがなくて、そしてズバッと質問してくるタイプ、鋭い人間だなっていう感じはしましたね。ピーンと張りつめた感があって、なごんだ感じではなかったですね。もちろん面接ということもありますけれども、でもそれがまた気持ちいい緊張感で、非常に好印象でしたね。
ジョブズさんは 妥協せずに 楽しいライフスタイルを追求し続けた
スティーブが仕事する上で最も大事にしていたことは、もう絶対に最高のものを常に提供したいということで、絶対に妥協しないということですね。そのためにはすべての力を使って、それを追求して、実現させるということですね。その働き方、継続的にイノベーションを行うと、決して現状に満足をしない。次へ次へということで先を見ながら仕事をしていくというところですね。言葉でいうのは簡単だけど、なかなかそれはできませんよね。言葉で、継続的にイノベーションだとか、チャレンジだとか言っても、かなり強い意志と、精神力がなければ実現できないことだと思いますけれども。彼は天才といわれるゆえんで、そういうものを持ち得ていたということですね。そしてまたそれを支えるまわりの幹部、そして社員が、彼のことを信じて、それをサポートしていったということだと思います。間近で見ていてもすごいですね。本当に迷いがないですし。まわりの人間の彼への信頼も絶大なものでしたから。とにかくみんなで決めたところへ向かって一直線に向かっていくという形でしたね。そういう姿勢を続けていられたのは、彼はデジタルというものを使って、人々の生活を豊かに、楽しくすることを実現しようということで、そのための手段として、いろいろなものを発表して、世に送り出してきたということで、あくなき追求があったからということですね。ですからおそらくまだまだ、彼のやりたかったことはたくさんあったと思うのですよ。もっとできることは、彼ができることはたくさんあったと思うのですけれども、やりきれなかったところもあるのかなっていう、ちょっと残念だなってところがありますよね。本人が一番悔しがっているかもしれませんね。商品だけじゃないですね、製品の機能とかそういうことではなくて、機能というよりは、製品そのものが生み出す人々への本質的な価値ですね。その価値提供ということで、もうどんな広がりがあるかっていうことは、彼の頭のなかで大きく夢があってそれを実現しようとしていたということだと思います。結局、メ-カ-というのはどうしても技術が開発されると、その技術をすべて詰め込もうと、例えば機能であるならば多機能のほうがいいとか、どうしても機能優先になってしまいがちだと。ただ使う側にとっては必要のない機能というものもありますしね。あくまでも手段、ツールとして使って、どんなことが得られるのか、どんな楽しみが得られるのか、どんなことが便利になるのか、どんなことで心が満たされるのかということ、そこをスティーブは常々考えていたということですね。
集中力で最高のパフォーマンスを見せる発表会
製品を世に送り出していくときに、単に機能発表のような新製品発表会というのはないですね。彼の場合は、キーノート、つまり基調講演というもので人々がそれを使うとどんなに楽しくなるのだ、どんなに幸せになるのだっていうことを想像させるような、わくわくさせるような、そういう発表の仕方で世の中に送り出しているということですから。それは製品にとどまることなく、人々の感動を大きく呼び起こす新製品を送り出すということでしたね。本当につくりたかったものというのは、やはり人々の笑顔であったりとか、夢であったりとか、多くのひとにアップルの製品を使って、持ってもらいたいということだったと思います。あくまでも製品はツールだと思います。そう考えると、彼がやってきたこと、いろいろなことがつながってくると思うのですね。アップルを表面的な見方をすると、確かにデザインも素晴らしいですし、製品やプロダクトにフォーカスされがちですけれども、よく考えてみると、それによってどうしてあれほどシンプルなものができるのかと考えていくと、実はそれによってどんなことが実現できるのかということが、もっと重要だってことが見えてくるのですね。ですから、やはり単なる工業製品、単なるメ-カ-ではないということですね。デジタルというものを使ってデジタルなライフスタイルを実現させるべく、いろいろなものを世に送り出していたと言っていいと思います。毎年、一番大きな発表が、1月のマックワールド・サンフランシスコだったのですね。前年の10月に、私は本社に行ってスティーブとのミーティングに参加していたのですけれども。10月の段階で「もう今後、発表があるまでスティーブに難しいことを相談しちゃいけない」と言われましたね。なんでだ?と聞いたら「彼はもう集中するから」と。その集中ぶりはすごかったですね。もうほかのものは一切目に入らないといいますか、ずっと考えている感じですから、邪魔はしないでおこうというような状態ですね。雰囲気はさほど変わるということではなくて、いつも彼はいろいろなことを考えて集中していますから、見るからに顔が引きつるとか、そういうことはないのです。ただ、とにかくそこを考えているのだなっていうのは伝わってきましたね。ですから常に考えている姿勢が、非常に好印象、好ましいなと。本来、経営者として、世に送り出す人間としてそうあるべきだなと。そこまで思い入れのあるものを出していく。そこまで考えて、みなさんに伝えていくということで、社内に、いい緊張感を漂わせていくことになったのですね。スティーブの場合は完璧に全部覚えていて、ステージに立ったらいかに伝えるかということに集中していくということですね。人にものを伝えるというのはそういうことだと思います。最高のものを最高の形で送り出そうというスティーブの気持ちだと思うのです。
製品だけでなく、箱まで、こだわる
製品そのものもデザインとか作り方とかそういうところに対してのこだわりは強かったことは、みなさんよくご存じだと思いますけれども。例えば、製品のパッケージ、箱ですよね。パッケージのデザインなんか、ものすごいこだわり、箱を見ただけでわくわくするような、側面すべてのデザインに対して、上がってきたクリエイティブを事細かにチェックして、ここはこうすべきじゃないか、ああするべきじゃないかって注文を出して、納得いくまで、デザインを作り直させていましたね。箱のデザインが上がってくるじゃないですか、提案として社内のクリエイティブチームから。これをですね、すべての側面をくるくる回しながら見て「うーん、うーん」ってうなりながら見てですね、「うん、こっちのほうがいい」って言って、しかもすぐOK出ずに「ここをこういうふうにして、もっとこういうふうにしてくれ」とリクエストを細かく、出していくということですね。持って帰る姿を想定した上で。それを持ち歩くのがまた、かっこよく見えるような、持ち歩く姿を想定してデザインをさせていると。どこまでこだわるのだって話ですけど、そういうこだわりをしてでも、最高のものを作った以上は最高のパッケージで、それを使い始めるプロセスそのもの、その過程そのものも楽しませようというエンターテイメントの思想がそこにも入っていると。それを使う人をいかに楽しませるか、目に浮かぶようですよね、これを買って、うれしそうに持ち帰って、家に帰って、それをあけてまたうれしいっていうね。何重にもうれしさが重なっていくと、楽しさが重なっていくという演出ですよね。たとえばiMac G5っていう薄いものが出てきたわけですけれども、あれを箱のなかでどう表現するのだっていうことですよね。箱を持ったときに中に入っているものがわくわくするようなデザインでなくてはいけませんし、それがすごくイメージできるものになっていなければいけないですから。どの角度にどういうものを乗せるのだっていうもののこだわりがすごくありました。初代のiPod miniは、箱が一番象徴的だったと思うのですけれども、ボックスのスリーブっていうのですか、それを取って、中がポコッとわかれるのですけれども、片方には、「Designed by Apple in California」という、「アップルがカリフォルニアでデザインしたものだ」ってことをまず伝えて、ふたを開けるとiPod miniがあって、片方にマニュアルとか入っている側があるのですけど、そこをあけると「Enjoy」と、楽しんでねと書いてあるわけです。そのあけるプロセスですよね。その段階で人々を楽しませている。あけるほうも、とにかくわくわくしながら、開けていって、使い始めるということです。そこまで考えたパッケージってあんまりないですよね。箱はどうでもいいって感じで、箱の外にいろいろな機能とか細かいことを、デザインを無視して書いてあるパッケージが多いなか、箱そのものも非常にデザインされていると。アートのひとつだと言っていいと思うのです。全部見ているのですよ。そんな箱も、細かいところまで全部見ている経営者はいないですよね。そのすべてが、彼が実現したかったこと。最高のものを届けたい、最高の感動を与えたい、本当に喜んでほしいというために、とにかくあらゆる局面でベストを尽くしていたいということのあらわれだと思うのです。
ジョブズさん自身が「使う側」に立ち続けている
彼は感性、自分の感性を信じているのですね。常に、ユーザーの思考とか、ユーザーの目線というものではなくて、もっと彼自身がコンシューマー、使う側の立場になって、どういったものが出てきたら、どういったメッセージがあったら、自分は納得するのだろうか、自分はうれしいのだろうかということを徹底的に考えぬいて、その指示を出していると思いますね。たぶん彼は、彼自身が未来のコンシューマーといいますか、ひとが先々どんなものを欲するのかというのが見えているのでしょうね。彼の場合はそれを四六時中考えているようなタイプですから。1つのことをずっとつきつめて、おそらくアップルを創業して以来ずっと考えているのではないですか。特に1回追放されて戻ってからのスティーブというのは、そこから学んだこともありますから、かつての鼻持ちならぬ若造ではなくて、経営者としての自覚もあったでしょうし。そして新たに戻ってきたアップルを最高のものにしようと、最高の価値を提供しようということでずっと考えていたと思いますね。普通の経営者なんか絶対に、そもそも決めるっていうことができない人が多いっていうことと、自分の感覚を持ち得ていないですよね、本質的に何が大切かってこと、普通の人ってそこまで考えてないですから。スティーブほど、考えて、決定をしている、指示を出している経営者っていないですね。そもそもそこまで見ないですからね、普通の経営者は。自社広告がどんなものか、自社のCMがどんなものかなんて。たぶん「じゃあ任せたから君やっといてくれ」みたいな感じですよね。
お客様の期待を上回ることを追求する
彼はアップルストアをオープンするときにディズニーストアからも人をとっているのですね。ラルフローレンなどの素晴らしいサービスをしているお店からも人をとっていますけれども。ディズニーの場合、ゲストの期待を超えろと、「Exceed Expectations」っていう言葉があるのですけれども、まさにそのアプローチを、彼は実現しようとしていましたね。ですから、いわゆるコンシューマーとかお客様のニーズにこたえるってレベルではないのですよ。常に期待を大きく上回って、さらに満足してもらって、感動してもらうということですね。そこを徹底的に追求する。それが彼の姿勢であり、それがものづくりにもあらわれているということですね。妥協を許さない追求で最高のものを世に送り出していくと。それを一緒に送り出していって期待を超えるものを実現していこうというふうに僕は受け止めて、常に妥協をゆるさないアプローチというのを自分なりに考えていましたね。すべて彼がやっていることのすべてはそこにつながるのですよ。最高のものを送り出して、人々が幸せになり、豊になるものを実現させたい。そのためにあらゆることをやった。
ジョブズさんも アップル製品が好きで 楽しんでいた
ひとに愛されるものっていう意味では、当時、車のミニってありますよね、よくアップルっていう会社は、大きなベンツとかそういうものを作っている会社ではなくて、ミニとか、ポルシェとか、本当に、好きな人のためのものを作っているっていうことをすごく言っていましたよね。いまとなってはむしろ自分たちが巨人になっちゃいましたけど、当時まだチャレンジャーだったこともありますから。彼は、今度、こんなものが出てくるよってことを、限られた人のミーティングのなかで話するときに、めちゃめちゃ楽しそうなのですよ。「こんなのが、今度出すんだ、こんなことができるんだ、最高だ、素晴らしいだろ」みたいな。そこの喜びってすごいですよね。ですから彼自身がまず、送り出す本人が最高に満足して喜ぶ。それがそのまんま、それを出てきたときに、受け取るユーザーといいますか、コンシューマーが、そこで感動して喜ぶさま、そのものですよね。自慢げに話をしていました。うれしそうに、「こんなの出すんだ」って。彼自身は、プレッシャーは感じていないでしょうね、むしろ楽しんでいたと思いますよ。一手先っていう、一手とか、二手とかそういうことじゃなくてとにかく、何がいいのかってことをずっと考えているということですね。それが、時が来て、それが世に送り出されていくという感じだと思いますね。
人生は限られているから 自分のやりたいことをやれ
スタンフォード大学でのスピーチのときに「Stay Hungly. Stay Foolish」というのは有名な言葉ですけれども、それ以外に「人生は限られているから自分のやりたいことをやれと、ひとのために時間を使っている場合じゃないと、自分のやりたいことは自分の心に聞け」というメッセージを送っています。まさに彼自身が、夢を追い続けてそれを自分で体験して、あくなき追求している人間が、大病を患って、命っていいますか、自分の人生っていうものに対して、改めて考え直すときがあったと思うのですね。ですから、自分のやりたいことをやれ、ということをより多くの人たちに伝えたかったのかなって気がしますね。そういう、いわゆるちょっと重いようなことは、社内では言わないですね、社員に対してはそういう不安を与えないように、彼は気丈にふるまっていたと言っていいと思います。自分の人生っていうものを改めて見つめ直す。時間というものの大切さをあれほど充実して生きている人間ですらそういうことを思うわけですから。およそ世の中で時間を無駄にしてだらだら人生過ごしている人から見たら、もっと自分のことを考え直すべきなのではないのかなってなりますよね。スタンフォードの学生たちに、アップルのCEOってことよりも、スティーブ・ジョブズというひとりの人間として、伝えたかったことをあそこでしっかり述べたのだなってことで感動しました。ただ社内では「おれのために働け」って、思いっきり言っていましたけれどね。結局、アップルという会社においては、アップルの製品を世に送り出していく、いろいろなサービスを展開することで世の中の多くの人たちにメッセージを発信していたと言っていいと思うのですね。その彼が病気をして、やはりまた違う形でこれからの時代を担っていくスタンフォードの卒業生たちに、1人でも多くの卒業生たちに自分のメッセージを自分のナマの言葉、ナマの声で聞かせたかったのかなってことが、いま振り返ってみれば、そういう意識だったのではないかなと思うのです。生きる時間、その時間の限られた、人生のなかで、最高に、自分自身の人生を幸せに送るためには、自分自身で素直に情熱をもって夢を追いかけていくべきだと、夢を追っていくべきだということを再度自分自身にも言い聞かせていたと思うのですね。ひょっとしたら、彼は、あと何年生きられるのだろうということをあのときに考えていたかもしれないです。
「ひと」の楽しさを追い続けた男
夢を追って、とことんそれに突き進む、情熱の男、ですね。本当に、尊敬してやまない、絶対に負けたくない、心のライバルとして。いつまでも自分自身も、彼のやってきたことを、たくさん学んで生かしていきたいという存在ですね。まさに彼が生きざまとして「夢をあきらめるな」っていうこと、「絶対妥協するな、常に挑戦を続けろ」という強烈なメッセージを残してくれた。彼がそれを体現すると同時に、経営者としてリードしてきて、それを実現してきた会社がアップルですから。多くの企業も学ぶところたくさんあると思いますし、個人個人が彼の生きざまから学ぶことがあると言っていいと思います。そういう、非常に貴重なことをこれからの21世紀にも残していった人だなということですね。ぼくは会えたことを誇りに思いますし、彼がいろいろ機会を与えてくれたことにも感謝しますし、そしてこれからも忘れずにいたいなと思っています。単なる天才だとかそういうことでは語り尽くせないですよね。いろいろなことを、彼が本当に成し遂げたかったことから考えていくと、「ひと」を幸せにするとか、夢を与えるとか、感動させるためには、ここまで徹底的にこだわってやらないと実現できないのかなって。本当に、私が今まで働いていたかつてのソニー、ウォルトディズニー、こういったところに通じるものってたくさんありますからね。こうした、ある種、狂人的と言ってもいいような、徹底したこだわり。こうしたものはスティーブ・ジョブズも、とても強く持っていた人間ですよね。あくまでも、「ひと」、なんですよね、技術ではなくて。ライフスタイルということで、あくまでも、どんな人たちが使うのか、どんなシーンで使うのか。どんなにアップルのものを使って楽しくできるのかってことを常に頭の上において、こういうことを人々に伝えていくということ。あくまでも「ひと」が中心で、アップルが提供するものは手段と言っていいと思います。ジョブズさんの考えでいうと「自分たちが、ひとのために、ユーザのために提供しているものは何なのかってことを常に考えろ」っていうのがポイントですよね。「どんな価値を提供しているのだ?どんな楽しみを提供しているのだ?どんなことを便利にしているのだ?」ってことですよね。ですから、アップルの製品が人々に与える本質的な価値を常に考えるというのがメッセージだと私は理解しています。商品って、作り手のエゴになるじゃないですか。この商品、この製品はこんな機能があって、こんなことができますよ。ではなくて、あくまでも人々がそれをやって、うれしいかどうかってことが重要なんですね。「ひと」ありき、まず。その本質、人々が喜ぶ、楽しむ、すごく便利だと思うとか、使って感動するものを提供している、その手段がアップルの製品。あくまでも「手段」だと。最高のものを人々に提供するために、人々を幸せにするための、すべて、手段であってプロセスだということですね。
まだまだ、先を走っていてほしかった
スティーブが亡くなったというニュースを初めて聞いたときには、悲しいというよりは本当に悔しいと。どうしてもういっちゃったんだ?という気持ちがあったのですけど、数日たってみて、彼が残したこと、彼がやってきたことをどう世の中に広めていったらいいのかということを自分なりに考えてみました。悔しいというのは、やはりものすごく尊敬していたのですね、天才の経営者、創業者として。自分の心のなかで、ライバルとして、スティーブ・ジョブズに負けたくない彼に負けたくないという気持ちで頑張っていますので、まだまだ、先を走っていてほしかったなという気持ちで悔しいということですね。
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2011年10月16日 (日) 「スティーブ・ジョブズさんのスピリットは生き続ける」福田尚久さん
福田尚久さんインタビュー
「スティーブ・ジョブズさんのスピリットは生き続ける」
福田尚久さん,93年アップルコンピュータ入社,97年同社事業推進本部長,99年同社マーケティング本部長,01年米国本社副社長,02年退社 現在は日本通信株式会社専務
10月12日の放送「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズの素顔」では、97年から2002年までジョブズさんとともに仕事をした福田尚久さんにインタビュー取材をさせていただきました。ジョブズさんの人物像に迫るあまりにも貴重なインタビューのため、放送で紹介できなかった部分も含めて、福田さんの許可を得て特別に掲載させていただきます。
理想と現実がちがうことを悔いていたジョブズさん
2人で話しているときに、彼が「自分には1つだけ悔いの残ることがある」と言ったことがありました。それは「85年にアップルを辞めてしまったことだ」と。「もしあのときに自分が辞めなかったら、今の世界は全然別のものになっている」とすごく明確に言っていて。「コンピューターとは、こういうものなのだ」という彼としての思いがあるのですよね。その思いと全然違うところに現実はあると。これをどうにかしたいのだと。お前も手伝えみたいな。そういうメッセージなのですけれどね。彼がその話をしてくれて、「あっ、これ頑張らないと」という思いになったという感じなのですよね。
「情報によって "人間中心の世界"を実現したい」
彼がよく言っていた話として「みんな、人は死んだら自分の財産というのは全部国に還して、生まれたときに全部同じ金額をもらって、ゼロスタートでいい」って。人生の中で差がつくのはしょうがないと。これはもう頑張る人頑張らない人、能力ある人ない人、スキルある人ない人、いろいろいるからそれはしょうがないと。けれども、ほんとにフェアな社会っていうのは、ゼロスタートで最後死んだときはもうチャラになるという人生なのだと。そういうふうに世界全体をしていこうとしたときにいちばん大事なのは情報なのだと。情報を知っている人と知らない人がいるのがおかしいのだと。その知っている人と知らない人の差をなくすというのが、パーソナルコンピューターの元々の発想なのだと。「だからマッキントッシュは最初からネットワークがついていたろう?」なのですよね。昔のグーテンベルグの発明によって、ある意味では、中世社会がだんだん崩れていったと。今、インターネットによって、世界の国々が、体制が崩壊していっていると。あれと同じようなことが彼のイメージにはあると思うのですよね。その先に、ほんとうに平和で、みんながエンジョイした生活をできる社会ができるのだと。当時の彼と同世代のロックスターがいますよね。自分たちが言葉で、あるいは歌で、平和を訴える、フェアな社会を訴えると。それと形は違うのですけれど、やっていることは同じなのだなと。彼がよく言っていたのは、1984年にマックを出したときに、たった一回スーパーボールで出したテレビコマーシャル。『1984』っていうタイトルのものですけれど。「あれが結局10何年たって、また同じになっている」と。当時はいわゆるIBMのメインフレーム全盛の時代のときに、コンピューターに支配されている、人間が支配されているという映像なのですよね。ジョージ・オーウェルが書いた「1984」になぞられて作ったテレビコマーシャルですけれども。マッキントッシュは違うのだと。メインフレーム全盛の時代から、自分たちが、すごくヒューマンな、人間的な、そういったものを表現するための道具として、マックを作ったと。で、それがいつの間にか、気づいてみたら、97年当時、ウィンドウズ全盛になっている。ウィンドウズが圧倒的にシェアを持ってしまって、アップルは非常に追い込まれたところに行ってしまったと。だからそのときと状況は実は同じだなと。IBMがマイクロソフトにかわっただけで、世の中何もかわっていない。「今『1984』をやっても、結局受けるだろうな」とは言っていましたけれども。『1984』という彼が描いた機械文明で人間が従属している感じの世界ではなくて、やはり人間中心の世界をすごく実現したいと。そういう思いはすごく強かったと思いますね。パーソナル・コンピューターはもっとパーソナルに自分に寄り添うものだという感じ。当時のパソコンを見たときにとても寄り添っている感じはないということだと思うのですよね。
「ライバルが何をしているかを考えたら、その時点で負け」
彼はライバルとか競合のことはとにかく考えない人なのですよ。いろんな人が聞いていて、僕も何度も聞きましたけれど。目の前にきれいな女性がいて、口説こうと思ったときに「実はライバルはその女性にこんなものをプレゼントした」なんていう発想をした時点でお前負けだろうと。要するに目の前の人に自分の思いをぶつければいいじゃないかと。人がどうする、ライバルがどうするなんて関係ないのだと。当時、マイクロソフトや他の会社がどういう製品を出してくるかなんてどうでもいいと。そうではなくて、我々アップルがどうやってお客さんにいちばん満足していただける製品をつくるのだと。みんなが競争して、勝ったときは勝つ、負けたときは負ける。負けたらまた頑張ろうと。その繰り返しでいいのではないかと。相手がどうした、あっちが、こっちがどうした、ということというのは考えてはいけないのだと。競合戦略、ライバルのことは、ほんとに、意識的に会社から遮断していた部分は強いですね。
たったひとことで チームの"文化"を変える
マックワールドを当時幕張メッセでやっていまして。スティーブが、成田に着くと、成田から近いですから、直接、オープンする前の日か何かに来て。チェックに入るわけですね。ずっとブースとかを見て回った。もうほとんど準備万端ですよね、当然。CEOが来るわけですから。全部、準備整っている状態。あとは明日のオープンを待つだけという状態。その会場に非常に大きな飾り物があって。そこにぶらさがっている、針金っていうか、ピアノ線があって。相当の高さですから普通気づかないのですけれども。そのピアノ線が「輝きすぎている」ということを、ひとことポツっと言ったのですよね。別にそれ以上、何も言っているわけではないのです。わたしとしては、どうしようかなあと。当時の責任者として、どうしようと。随分迷ったのですよね。今からもう一回、おろしてやり直したら、時間が間に合わないなと。だけれども彼が指摘している。だとしたら、これはもう一回きちっとやるべきじゃないかなあと、実はそれをやったのです。やり直したのです。で、すごく大変だったのですけど、やり直しましたと。製作にあたっている方々も、もう大変な文句でしたけれどね。けれども僕が思ったのは、いろいろなところに気づくはずなのだけれども、その中を「あ、そこか」というところを、ほんとにその一点だけを指摘しているのですよね。で、そこに対して、ちゃんと受け止めて変えた方がいいと思って変えたと。で、その時点で、わたしは気づかなかったけれども、それから翌年、またその翌年、もうマックワールドとかのイベントをやるのはすごく楽になりまして。なぜかというと、その一点によって製作に関わるすべての人がほんとに細心の注意を払うのですよね。ほんとに細かいところまできちっと注意をして、ちょっとでもだめだったらやり直す。要するに妥協しないということを、その1つの、ひとことの言葉だけで伝える。あとはそれを実行したことによってもう浸透している。浸透している状態で何百人も関わりますから。何百人ひとりひとりが全神経を払って作り上げると、やっぱりいいイベントができるのですよね。
人間の感性をリスペクトする
当時でも、製品のいろいろなデザインのレビューというと、ほんとに数人なのですよね。会議室で数人だけが見てやるわけです。そのときに、この表面のざらざら感とか、この部分の色がとか、このプラスチックの素材のこの透明度がとか、ほんとに細かいところを、すごく打ち合わせするのですよね。そのときに、まあこれも1つの口癖のように言っていたのが「人はそれに気づく」。「人は、人間は気づくのだ」と。要するに人間の感性に対しての、人間に対してのリスペクトなのですよね。「この差は気づかないだろう。我々は作っている人たちだ。我々は気づくけれども、買ってくれるお客さんは気づかないよね」という考えではないのです。お客さんひとりひとりは、絶対気づくと。気づくっていうのは「あ、これは、こうした方が、ほんとは良かったのに」っていうふうに気づく人もいるし。一方で「んー、なんとなく、んー、ちょっと、あの、いまいちだよな」という気づき方もあると思うのです。気づき方にいろいろ幅があると思うのだけれども。とにかくその「気づく」ということは、アップルが作る製品の良さにつながっているのだと思うのですけど。基本は、ちょっとでもベストじゃなかったら気づかれてしまう。だから自分たちは芸術作品を作るように、1つ1つ仕上げていくのだっていう考えなのですよね。人によっては、会社の中でも「彼のわがままが来た。満たしてやる必要はないよ」という人も大勢いたのですよ。そういう人がいたとしても、お客さんのために何がベストなのかを尽くそうと考えていくと、ほんとに細部のところにこだわるのはすごく重要だと思うのですよね。そのへんを徹底して、周りの人間に、わたしも含めてですけども、彼のスピリットを埋め込んでいくのですよね。ほんとに細かいことに対して、あるいは非常に大きな考え、いろいろなことに対して。それを周りに、一緒に働く者に、いろいろな形でスピリットを埋め込む。埋め込もうと随分していましたね。わたしが一緒に仕事をしていた時期は、まだほんとに立て直していくどん底のところでしたから。社内でも、わかる人、わからない人...、わからない人の方が多かったですよね、実際はね。でもだんだんとわかる人が増えていったのかなあと思いますね。
「お客様に失礼だから アップルを"日本化"させない」
彼が「カリフォルニアの会社のイメージを作りたい」と。日本法人があるのですけれども「決して"日本化したアップル"ではない」とすごく強く言っていたのですね。海外の会社は日本に来ると、日本というある種独特な部分がありますので、日本にアジャストする、日本化するっていうことを皆さんおっしゃるのですよね。だけど彼は明確に「そうではないのだ」と。元をただすと、何かというと、「それは失礼だ」なのですよね。「自分は日本人じゃない。だから、お前の言うことはわからないことはないけれども、やはり自分はカリフォルニアの人間で、アップルという会社もカリフォルニアの会社なのだ」と。「だから変に表面的に日本化するというのは偽りだろう」と。「それは紳士的ではない。とるべき姿勢ではない」と。「それは必ずお客さんにわかってしまうし、伝わる」と。「だからそういうことはしないのだ」という、もうほんとに1つ1つのことが人間に対してのリスペクトの念というか、そこなのだと思うのですね。それはどこから来ているのかはわたしもそこまで聞いたことないしわからないですけれども。彼のそういった、ひとりひとりに対してのリスペクトの念は非常に強いのですよね。
「企業は製品やサービスをお客様に買っていただいて存在している」
自分の絶対こうだと思うところについては曲げないですよね。ベースになるのは、お客様に対してご提供するものが妥協の産物では絶対だめだと。最善の最高のものを作った上で、お客様に見てもらって、使ってもらって、その反応によって、いいものだったらいいと言ってくれるし。だめだったらだめと言ってくれる。そうしたらもっと頑張らなきゃいけない。もう基本的にその繰り返しだろうと。彼はCEOという立場ですけれども、要するに企業のベースというのは、製品かサービスのどちらかをお客様に買っていただいて存続しているのだと。というか、それだけなのですよね。だからそれ以外の、サポートが大事だ、いろいろなことが大事だけれども、根本は製品やサービスで、それをお客様にご提供する、そこが最大のお客様との接点だと。そこを妥協してどうするのだ、なのですよね。そこにこだわらない会社はおかしいのだと。だから、自分がこだわっているのではなくて、もし自分がこだわりすぎだというやつがいるのだったら、こだわってない、そっちがおかしいと。そこはもうとにかくこだわって、最高のものを作ってご提供しようと。ご提供していたって、これはだめだとか、売れない製品だってできると。そしたらくやしいけれども次に頑張るしかない。その繰り返しだという考え方ですよね。例えば、アップルストアという直営店を作っていたわけですけれども、これは元々日本の販売店さんの中に、ストアインストアを作りまして、これが原型なのですね。それを今度は直営店としてやろうと。アメリカからやろうということで、わたしもアメリカに行ったわけですが。本社の近くの倉庫の中に実物大のお店を何度も何度も作って準備していたのですね。トップシークレットでずっとやっていました。そのときに、例えばドアノブであるとか、カウンターであるとか、使っているテーブルのウッドの素材であるとか、そういった1つ1つについて、例えばたぶんドアノブを作るだけでも何ミリオンドルか、日本円でいうと何億円か、かかっていると思うのです。そのくらいの数の試作を延々と続けて。形、色、素材、ほんとに最高のものを作り上げていくと。そこまでいろいろなところに細部に目を配って、神経を注いで作ったものは、人がお店の中に入って来て受け止めたときに、必ずそれを感じとってもらえると。確かにいろいろな芸術の作品とかで、芸術家の考え方だとか、エネルギーとか、時間も含めて、いろいろなものが凝縮されて入っているものを見ていて非常に感動を受けますよね。感銘を受けますよね。それと同じ感じを、お店においても作るのだと。だからそのためには妥協はまったくないし、とことん追求すると。で、もうこれで、もうこれ以上はできないってところまでやるのですよね。当然、周りからすると予算の問題とか、当時はそんなに財力がなかったから「そこまで投資して大丈夫なのか」という人も随分いました。けれども、それだけのものを作って、今度は店員がひとりひとりが、それだけのエネルギー、精神、スピリットが埋め込まれている場所でお客様に接しようと思ったら、お客様ひとりひとりに対してきちっと受け答えをしなければいけないという考え方が生まれるのだと思うのですね。
日本の茶懐石に通じる"おもてなしの心"
ある意味では日本の茶懐石みたいなもの。お客様がいらっしゃいますと、今の時代だと「またいつか会うかな」ですけれども、茶懐石が生まれた時代であれば「一期一会」という言葉に表れているように、今日が最初で最後。そうしたときに、この方は、出身地はここで、こういうものは好みではないかなあと。だとしたらこういうものを、こういう料理の仕方で、こう出そうと。...みたいなことを、おもてなしをするために考えますよね。そのおもてなしの心なのですよね。アップルストアのコンセプトもそうだし、製品サービスもそうですけれども。日本でいう、おもてなしの心は万国共通だと思うのですよね。どこの国に行ってもお客様は来る。お客様にいかに喜んでもらえるのか。その方のことを考えて、どうしたらベストのことができるのだろうと考えていく。それを製品として、メーカーとしてやっているということで。それをサービスでやっていれば最高のホテルになるでしょうし、最高のレストランになるだろうし。それがアップルではたまたまコンピューター、iPhoneのような製品だと思うのですね。
世界中で満足される製品を"ひとつだけ"作る戦略
スティーブ・ジョブズが97年に戻ってきていちばん最初にプレゼンしたことは「グローバル戦略」なのですよね。その前の時代、例えば日本は日本向けの製品を作っていたのですね。あのアップルが。アメリカはアメリカ向け、ヨーロッパはヨーロッパ向け、国にあわせて最適な製品を作る戦略をとっていたと。ただそれをやっていると、アップルという差別化が重要な会社にとっては、R&Dコスト、研究開発コストがすごく高いわけです。研究開発コストの高いものを作って、小さい市場向けに製品を作ったらコストとしては最適化できないと。そういう話をしまして。彼が言ったのは「ポルシェみたいな会社にするのだ」と。それはどういうことかというと「ポルシェはドイツのスポーツカーだよね」と。「だけどあのスポーツカーは東京の暑い中でも大丈夫だし、砂漠の中で暑い中でも大丈夫だし、カナダの雪の上でも大丈夫だし」と。「そういう世界中のニーズを満たしたものをひとつ作って、それを世界に、ドイツの車として売っている」と。そういう考え方なのだと。だから日本なら日本のお客様のニーズがあるだろうと。それはお前がちゃんと俺に伝えろと。ヨーロッパの人間はヨーロッパのニーズを自分に伝えろと。そういう製品は日本のお客様にも満足いただけるし、もちろんヨーロッパの人、あるいは中国、インド、アジアの方にも満足いただける。その上で、かつアメリカでも満足いただける製品をみんなで作って、作ったものを、同じものを、世界に売っていこうと。それをやらない限りコスト競争力では勝てないと。だからそういう会社になるのだと。おもてなしをする、1つ1つに妥協しないことは、コスト増なのですよね。コストが高くなる要素なわけです。だけど一方で戦略として見たときに、グローバルな製品を作っていくと戦略を決めた時点で、それをきちっとやりさえすれば、相当いいものを作ってもコスト競争力は保つことができるという考えなのですよね。そういったところは、きちっと整合性をもたせるように、どっかではちゃんと考えてやっていると。それをしないで目の前にいるお客様に一生懸命、最高のものを作ろうと思って作ったら、バカ高いものになっちゃって売れないか、安くして売ったら損してしまう、成り立たないという話になりますから。きちっとグローバル製品をつくることによってコスト競争力を持ちつつ、製品は最高のものをつくるのだというやり方ですね。
「Think Different」は「ちがうものになる」という意味
彼が戻ってきた当時は、彼がやること1つ1つについて、社内の非常に多くの方、圧倒的に多くの方が「ああ、やっぱりだめだ」という感じだったのですよね。例えばThink Differentというキャンペーンをうちましたと。これは製品が売れなくて困っているときに、Think Differentというメッセージで、いわゆるブランドキャンペーンというか、製品広告ではなくアップルという会社はこういう会社だと、こういう考えだということを打ち出す広告をしたわけです。そこに基本的にお金を全部つぎ込んだと。世界的にお金がないときに全部つぎこんでやりましたと。それをやっているのを見ていても「いや、売れないときには、製品のキャンペーン、この製品はこれだけ安いよと言っていかないとだめじゃないか」と言っていた人たちが多かったですよね。ところがThink Differentのキャンペーンを流し始めたら、もう本当に1週間2週間で、あっという間に製品が売れた。本当にV字回復というのは、こういうことだなと。売れなくなったものがいきなり売れ始めたのですよね。で、それを見た多くの人たちが、「え、どうなっているんだ?」と。でも考えてみたら、アップルという会社のファンであり好きな人たちは、やっぱり全世界にすごくいたのですよね。そこに対して自分たちはこうしていくぞという宣言をする広告だったので非常に感銘を受けた。本当に涙を流してそのテレビコマーシャルを見ていただいた方、すごく多いのですよね。それはやはりベースになっていまして。で、そのThink Differentも「スティーブはやっぱりよく知らない。あれはThink Differentlyが正しい」と言って「Think Differentは英語としておかしい」とか言うのですね。で、わたしが、日本だと文法をやっているので、それはSVCの構文でThinkが動詞だとするとDifferentは補語だと。それは結果を示す補語なのだと説明して。要はThink を重ねてどうあるべきかを考えていくと、考えた結果があるわけですね。その結果と現実の世の中を見たら絶対異なっているはずだという概念ですよね。だからやはり世界でいろいろなものを発明して革新を起こした人は、世の中の常識にとらわれるわけではなくて、考えて、考えて、考えていった結果はここにあると。あれ、世の中を見ると違うぞと。だからそれは考えたことが違うのではなくて、実は世の中が違っている、おかしいっていうことなのですよね。だから、世の中を変えなきゃだめだ、なのです。だからThink Differentは、結構、突飛なことを考えるとか、ユニークなこと考えるというふうにとられた人も結構いるのですが、本当のメッセージはそうではないのですよね。世の中がやはりおかしいぞというメッセージで、それを本当に改革していく、実現していく人たち。この人たちは、昔からクレイジーな人たちと言われてるよね、というメッセージなんですね。それは社内に対してのメッセージでもあったし、社外に対してもメッセージであったし。Think Differentというキャンペーン1つとっても反対の方が圧倒的に多かったですよね。だけどもそれが1つ1つ、彼からすると狙い通り、ちゃんと成功してくのですよね。
先にコマーシャルを作ってから 製品を作る
製品を作っていくときに「製品が出来上がりました。ではこれをどうやって売っていこうか」と言って、広告代理店を入れて広告を作る方法があると思うのですが、彼の場合は最初から「お客様にどうやって問いかけるのだ」というところからスタートするので。ものによっては、最初にテレビコマーシャルをつくっちゃって。例えばテレビコマーシャルを作って、そこと同じ製品を作る感じですよね。デザインも、まずデザインがあって「もうこの中に必ず入れろ」なのですよね。「基盤を作って、具体的にこうなって、大きさとしてこうなる。そうするともう、形は、これ以上どうにもなりません」という発想ではなくて、とにかくここまでこう薄くしろとか、この大きさにしろとか、あるいは、ファンの音はうるさいから、ファンがなくていいように熱を通すようにしろとかいう、そこから入る。極端なケースは、まずテレビコマーシャルを作る。あるいはプレスリリースを作る。そこから製品を形にしていく順番ですよね。全部が全部の製品でやっていたわけではないですが、そういう製品作りもあって。iMacは最初のボンダイブルーという色から5色のカラーを作ったのですね。あれは典型的にテレビコマーシャルを先に作って、このカラーの組み合わせがきれいだと。で、あの形を製品に作っているのですけどね。お客様に対して何をご提供するのだという視点から発想をスタートさせるとすると、確かに、プレスリリースやテレビコマーシャルから発想するのはある意味で自然ですよね。要するにできたものを売っている会社ではないのですよね。できたものを売るという発想ではなくて、お客様に対して何がベストなのかを考えてそれを実現化していくと。で、とにかくパーフェクトに実行してくのだと。だから戦略はシンプルにして独特なことをやる必要はないと。戦略よりもいかにパーフェクトに実行できるかがやはりキーなのだと。まあそういうことですね。
「みんな意見を全部入れたらいい製品になるわけではない」
例えばどういう製品が発表されるかというのも、当時は本当にごく一部の人しか知らない形でやっていると。理由は、担当している人たちが本当に自分のベストだと思うものを作らせることなのですよね。要するに、例えば周りの社員に「これどう思う?」と言ったら、いろんな人がいろいろ意見を言うのですよね。だけどその意見を全部取り入れたらいい製品になるかというと決してそうではなくて、担当している人がずっと考えて作って、これがベストだというものを作る方がいいものになると。だからそこを邪魔させないと。例えばこれから新しい製品が出ますと事前に表に出すことによって、認知度を高めるマーケティング手法がありますよね。それをとっている会社であれば別なのですが、スティーブはそういう考え方よりはとにかくベストなものをちゃんと作り上げると。その環境を自分は作るのだと。だから邪魔はさせないという感じですよね。だから雑音が入ってこなかったと思いますね。作っている人たちは雑音入らずにそこに集中することができたと。
2001年、クローズアップ現代のインタビュー収録のためにNHKスタジオを訪れたジョブズさん。右が福田さん
本気の度合いをあえて試す
ある意味で「試す」のですよね。「この人間がどのくらい、それが本当にベストだと思っているのか?」と。10年前のクローズアップ現代の収録も、前の日になって「行かない」と言い始めた。収録を実現しようとした人はもう2年近く頑張ってやってきていたのに、前の日になって「行かない」と。別に理由があるわけでなくて、行きたくないみたいな感じなのですよね。しょうがないから、前の晩にホテルの車寄せで待ち構えて、「どうしても出てほしいのだ」と「僕はやってほしいのだ」という話をして。3回目ぐらいだったですけど。で、前の晩には「OK」と。「じゃ行く」みたいな感じでね。ある意味では、わたしとか、それをやろうとしていた人たちがどのくらい本気なのかを試しているところはきっとあったと思うのですけどね。記者会見をやるときにえらい怒られたことがあって。東京に来て記者会見をやったときに「とにかくそこではビデオや写真を撮ることはやめてください」と皆さんにアナウンスしてやっていたのですね。ところが途中で撮る方が端の方から出てきちゃって、わたしも気づいてはいたのですが結構遠く離れていたので、まあそのままだったのです。そうしたら結局、彼が「やめてくれ」と自分で止めさせたのですよね。で、記者会見としては普通に終わりましたと。終わったあと、わたしと本社の広報の責任者が呼ばれて、ほんとに烈火のごとくしかられました。何に怒っているかというと、要するに「自分が記者会見の場で、その人を注意しないといけない」と。「自分はI feel sorryなのだ」と。申し訳ないと思うのだと。そう思った瞬間、質問に対して、気持ちよくお答えできなくなってしまうと。この記者会見を最高のコンディションでやるのがお前たちの仕事だろうと。それをやらなかったことに、すごくしかられましたね。「もうお前はYou are not in chargeだ」と言われて、出ていけみたいな感じで。ですが、まあそれはそれで「確かにそうだな」と言って、で「ところでスティーブ、次の打ち合わせ、次はこういうスケジュールだけれど」と言って、まあそれで別に次にいっているのですよ。だから、彼は非常に強くそういったところは注意もしますし。それはやっぱり教えているのですよね。教えているのだけれども、言葉として非常に厳しいとか、怖いというのはあると思うのですが。ただそこで言っているのは「お前たちがちゃんとやる気だったら、ちゃんとやれ」と。「やる気がないのだったら出ていけ」なのですよね。だけど言葉尻からすると「もう見たくない」となるわけです。僕は自分でわかったので「もうしょうがない、次の日程」と言っていくと「OK、もう急がないと間に合わないな」と言いながら次に行くのですよ。だから別に怒りたくて怒っているわけでもないし、それはやはりスピリットを埋め込もうという気持ちなのですよね。これはこうだろとちゃんと教える。そこなのですね。
短いメールで考えさせる
彼が戻ってきて間もない時期だと思うのですけれど、全世界の中心的なメンバーに対して2行ぐらいの非常に短いメールが出ましてね。だいたい2行のメールが多いのですけれど「世界中の倉庫を全部キャンセルしろ」と。当時、日本ではシンガポールの工場から船便で持ってきて、千葉などに倉庫があって、そこからトラックで日本中に送っていたわけですね。とにかく倉庫は絶対必要だと。その倉庫に対して「倉庫をなくせ」という指示なのですね。それだけなのです。そこで、特に物流関係の人たちの間では「ああ、彼は物流のことわかっていない」と。「倉庫がなくて、できるわけない」と。「いや、きっと倉庫にいくらいくらお金がかかっている、だからやめろと言っているだけじゃないの」という感じだったのですけど。ただ僕自身は「そんなわけないなあ、何が言いたいのだろう」と思って。メッセージが短くて明確なのですよね。だからそこには何かあるに違いないと思って、ずっと考えて、1週間ぐらいかかりましたけれども。これは「なんでそもそも、倉庫がいるのだろう」と考え始めると、ものを大量に作って、船で運んで、ためて、そこから出荷していくからだなと。考えてみたら、大量に、一気に処理をしないで、少しずつ出せばいいじゃないかと。でも船で少しずつ出すことできないなと。あ、だったら、飛行機で飛ばせばいいやと。というので、実はiMacのときからスタートしたのですが、シンガポールから直接飛行機で日本中のあちこちの空港に飛ばしたのですね。飛ばしたときに、置く場所がないので、直接販売店に持っていくと。でも販売店さんに倉庫がないのですよね。店頭に置き場所はないですから。で、どうしたかというと、販売店さんで売れた数だけを報告をいただいて、それをシンガポールで作って、その日の夜に飛ばして翌日の夕方までには届けるというサイクルを作ったのですね。それをやったところ、倉庫はいらなくなったのです。で、彼にあとから「なぜ、物流のこととか、販売のこととか詳しいのだ?」と聞いたことあるのです。すると「アップルができたときは、パソコンの販売店とか流通とか1つもなかったと。だから俺は自分で作ったのだと。だから他の誰よりも販売のこととか物流のこととか詳しいぞ」と言われて。あと、ディズニーストアにDVDとか昔のビデオテープとかありますよね。それはそういう方式をとっていたらしいのです。で、彼はそれを知っているのですよね。だから答えを知っているのですよ。それで2行のメールで「倉庫をなくせ」と。何をしたら倉庫をなくせるかは実はわかっているのですね。わかっているのだけれども、全部教えて、やっても、そこにはスピリッツが入っていかないのですよね。単に、表面的に、言われたことをやりましたになってしまって。そうではなくて、2行のメールから考え抜いて「こうやったらできる」となったら、その中には、例えばわたしは、それを考えたときに明確にイメージがあるわけですね。こうやったらできるという。その人が実行した方が、実行がパーフェクトにできるということなのですね。ですから、そういった意味で、非常にわかりやすい短い命令をポンと出すのですよね。
熱い思いを受けとめる人間関係が大事
彼は人をリスペクトするし、逆に自分の言うこともリスペクトをちゃんとしてほしいと。だから彼の命令を真剣に考えて、よくよく考えたら、実はそうむずかしくないのですよね。むずかしくないのだけど、最初言われたときには、えっと思うと。それは今の常識と違うから、えっと思うのだけれども「だけど、この人が言っているからには、何かあるに違いない」みたいなリスペクトというのか、そのへんのところがお互いにできる人たちとは非常に信頼関係が厚いのですよね。彼が言うことをちゃんと正面から受け止めてくれない人とは、彼はもう話もしたくないという感じになりますし。それは誰でもそうだと思うのですよ。一生懸命こちらが言っているのに全然相手にしてくれなかったら誰でもそうなのですよね。iMacが出た直後のミーティングを日本でやりまして、そのときにわたしは「iMacの次にビデオ編集ができるiMacを作ろう」という話をしたのですね。ソニーのテレビコマーシャルなどを放映しながらやったら、当時来ていたエグゼクティブな人たちみんなに「そんなのナンセンスだ」と相当言われましてね。そのためのハードディスクがどれだけ必要だとか、メモリーがどれだけ必要だ、と随分言われまして。ぼろぼろになって「お前もう出ていけ」みたいなことを相当言われたのですよね。で、1週間ぐらいしたときに家に電話があって「来られるか?」と。行きますと言って、カリフォルニアに行きました。周りの人は「お前クビになるのか」と。「でもクビにするのに呼ばないだろう」と言って行ったのですけれども。で、行ったら、彼がホワイトボードにバッと書き始めて「お前が言っていたのは、これか?」と。イメージを明確にして、ビデオ編集ができるiMacです。結局、表面的に何を言っても聞くことは聞いているのですよね。それを受け止めて1週間、ハワイのキヘイという場所で休暇をとって、そのキヘイで考えたのでしょうね。コードネームはキヘイという名前で。正式名称はiMac DVになったのですが。そういうふうに、相当ネガティブに、相当強く言っても、そこに対して言い返していく人に対しては、それはそれできちっとリスペクトするというか、考えは考え方で聞いて。最終的にはそれはありだなと思ったのだと思うのですけどね。
ジョブズさんからの「アイムソーリー」の意味
99年のマックワールド東京の基調講演のときにiMac40何台を壁のように並べて、最後でいっぺんにネットワークコンピュータとして立ち上げるデモを用意していて。リハーサルで何度かやってうまくいって、本番になったのですが、そのデモに失敗したのですよね。結局動かなかったのです。失敗といっても、彼が悪いわけではなくて、技術的にやろうとしたものがその通りにいかなかったのですが。で、会場から出たあと、しょげて、ちょっと手を付けられない状態だったのですね。終わったあとの食事の場で、ちょうどわたしの真向かいに座って。言葉のかけようのない、なんて言っていいかわからない、非常に緊張したその場面で、彼が顔をあげて言った言葉が、僕はもう信じられなかったのだけれども、「I'm sorry」なんですよね。彼が僕に対してですよ。「I'm sorry」なの。それは何かというと「マックワールド東京は、お前が中心で責任者としてやっているのだろう」と。「基調講演は1つのイベントで、自分はCEOとして、その役割を演じているのだ」と。そこで失敗しちゃった。だからごめんなさい、なんですよね。そこはやはり「この件はお前が責任者だろう」というのは非常に強いのですね。だから出てくる言葉は「I'm sorry」で。だから例えば、彼が非常に強く言おうが何をしようが、その人が本気で「自分が最終的に責任もってやっているのだ」という人たちに対しては、彼は非常に全面的にサポートしてくれるし、そういうふうにやり続けない人に対しては、非常に厳しいというか、一緒にいること自体いやみたいなところはあったと思うのですよね。だから、そこのスタンダードは非常に高いのですよね。
「チャレンジ精神」を評価する"教育者"
例えば「製品をここまで薄くしろ」とか「この薄さに持っていけ」ということは言っていると思います。言って、チャレンジして、最終的にそこへ届いたか届いていないかは、ある意味では彼にとってどうでもいいのですよね。「チームで、みんなでやっているのだ」というのが非常に強いので、ベストを尽くして持っていったとしたら、本当に限界だと思えば別にそれ以上を要求するわけでもないですし。だけど明確な指針を与えなければいけない。だから「薄さはここまでだ」と、ある意味で常識的には限界を超える薄さを言いますよね。そこでチャレンジをさせる。多くの人が常識的に無理だというところを言わない限りチャレンジしないですよ。だからチャレンジをさせ続ける。常識的にはできないレベルを要求し続ける。そこに対してとにかく安易には絶対妥協しない。だけどその数値そのものが絶対のことなのですかと言ったら、そうではないと思うのですね。あくまでそういうスピリットをしっかりとひとりひとりの人に埋め込んでいきたい、たたき込みたいのだと思うのですね。ひとつひとつやるからにはパーフェクトをやる。じゃあパーフェクトって何ですかと言ったら、相手のことを考えて、相手にとってベストだと思うことをやりなさい、なんです。叩き込まれたなという感じですね。知らず知らずに叩き込まれたという感じ。そのへんはいろんな意味で教育者ですよね。
現アップル経営陣はジョブズさんのスピリットを継承したチーム
僕は5年くらいですよ、ジョブズさんのスピリットを叩き込まれたのは。いまのアップルのマネジメントって、それが10何年叩き込まれている人たちがゴロゴロいる。すごい力だと思いますよ。だから次の課題は、その人たちが次の世代に同じように伝えられるかですよね、精神を。だいたいどこでもよく、徳川じゃないけど3代目が重要だと言うのと同じで。創業者がいて、それを直接サポートした人たちがいる間はスピリットが通っているでしょうと。そこはいいのだけれども、その後伝わっているかというのは、いろんな意味でチャレンジであると思いますけどね。だけどやっぱりスティーブは非常にシンプルな人なので。一貫しているのはシンプルなことなのですよね。あれだけのマネジメントチームが10何年、同じチームでやってこられないですよね。やっぱり、とことんどうにかするぞという気持ちをすごく強く持った人しかあそこにいないのですよ。あのマネジメントチームの人たちの話ですけどね。それはスティーブの人間性があって初めて成り立っているわけで、それを恐怖でとかでは、続かないですよ、いまの世の中。だって国で恐怖政治やったらすぐ出て行っちゃうわけで。会社だったら残るわけはなくてね。あんなに書かれたりしていますけれども、絶対違うなと思いますよね。
自分もジョブズさんのスピリット継承者として頑張っていく
僕がアップルを離れて、何年か前になりますけれども「戻ってこい」と声をかけられたりしましたけど、僕自身はいま日本通信という会社でね、ある意味では世の中で常識だと思ったことを「そうではない、こうあるべきだ、こうすればよりよい世界が築ける」と、心底思っているのですよね。心底思ってそれをやろうとしていると。だからそれについては、会社はもちろん違うし、離れているのですけれども、私が彼からたたき込まれたスピリットをいまそのまま生かしているつもりでいるし、僕自身は残りの生涯というか、それを生かしていかないといけないと思うぐらい、叩き込まれたというのはありますよね。だから戻ってこいと言われたときも、別に仕事が云々ということではなくて、そこで一緒かどうかに限らず、違う世界ではありますけれども。違う世界と言っていて、実は結構接点があったりもするのですけれども、そういうなかでね、その思い、そのスピリットを叩き込まれた人たちが、いろんな世界で活躍していると、それこそが本当の彼の望みなのじゃないかなと思うのですよね。決してアップルだけがよくなればいいという発想の持ち主ではないですからね。やっぱり本当に世の中をどうにかしたいという気持ちがすごく強いのですよね。だから、本当に外に出ないですけれども、彼は個人的に、いろんなところに何かあったときにすごくサポートしてやるのですよね。それを絶対に表に出さない、表に出たことはないと、僕も思いますけれども、私が知っているだけでもそういうことがたくさんありますし、そこは気持ちというか、人間というものに対しての興味とリスペクトの念と、そのなかで自分は恵まれている、その分何かをしないといけないのだという気持ちは、非常に強いですし。それをいろんな人たちがその精神、スピリットをいろんな場面で生かすと、もっともっと広がりのある世界になるかなと思っているので。
「「ジョブズさん、もう十分じゃないの」という思い
最後のiCloudとかの発表のときですかね。あれはさすがに、ちょっと体力的にというか「もういいんじゃないの」という感じでしたよね。やはり、自分がキーノートスピーチをする、それによるインパクトってよく分かっているのですよね。だからひとつひとつの製品とか成功させようと思った時に自分がどうにかしないとっていう気持ちがすごく強いのですよね。それを相当病気の間も含めてやり続けたのだと思いますけどね。見ていて「もうこれ以上は難しいんじゃないの」って思っていたらやっぱり、CEO交代というニュースを見て、あああのときにやっぱり限界だったなという感じがしますよね。ただ、やっぱりあれだけ自分のスピリットを、まわりの人間や一緒に働いている人たち、あるいは働いた経験がある私みたいな人に植え付けたと。それが製品とかサービスを通して、世界中の非常に多くの人にスピリットを残しているという感じでいうと、何か生み出したもの、生み出したスピリットは、もう基本的に生き続けるのだなという感じですかね。だから彼がそこまで押してやらなくても、もう生きているよという意味で「もういいんじゃないの」という感じ。自分がやらなくても、そのスピリットはちゃんとまわりの人たちが反映していってくれるよ、という感じかな。だから、もういいよっていう感じでしたね・・・。ちょっと...、すみません。
投稿時間:15:05 | 固定リンク
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