マンガノゲンバロゴマンガノゲンバ [BS2]火曜日深夜24:00〜24:39  [BShi]水曜日午後6:00〜6:39

過去の放送

■ 第110回 2009年11月16日 放送

<スポーツマンガ 必殺技スペシャル>

スポーツマンガ 必殺技スペシャル

 スポーツ漫画においてキャラクターが繰り出す必殺技は読者を魅了する大きなポイント。
必殺技にあこがれて、そのスポーツを始める子どもたちも多く、連載時に少年時代をすごした同世代にとっては共通の思い出となるなど、時代を象徴する文化ともいえる。
今回、特に人気の高い、サッカー、野球、ボクシングの必殺技に注目。ゲストとともにその魅力と、必殺技が生まれた現場も紹介しながら、漫画における必殺技の意味を考えた。ゲストは、卓球界のアイドル選手・四元奈生美さんと、漫談調のユニークな野球解説でおなじみ元・近鉄球団の金村義明さん。
 まずは、世界のサッカー界に多くのファンを持つ「キャプテン翼」が登場。作者の高橋陽一さんは、いかにして数々の必殺シュートを考え出したのか?仕事場でご本人を直撃インタビューした。
 次に、ボクシング必殺技の宝庫「リングにかけろ!」(車田正美・著)。必殺技のネーミング、習得する無茶な特訓方法にも作者の「車田イズム」があふれている。同作品の大ファンでもある天野ひろゆきが愛のあるツッコミを随所に入れた。
 最後は野球漫画の代表作・水島新司さんの「ドカベン」を紹介。水島先生とも親交のある金村さんがその魅力を語った。

「キャプテン翼」(c)高橋 陽一/集英社  「リングにかけろ!」(c)車田正美/集英社  「ドカベン」(c)水島新司/秋田書店

■ 第109回 2009年11月9日 放送

<これはうまい!グルメマンガスペシャル>

これはうまい!グルメマンガスペシャル

 日本の漫画界で、いまや一大ジャンルを築きあげているのが料理グルメ漫画。その人気の理由には、一体どんなものがあるのだろうか?その秘密を、グルメ漫画の人気作品とその制作現場から探って行った。
 スタジオゲストは、『きょうの料理』の講師としておなじみ、野崎 洋光(のざきひろみつ)さんと女優・紺野美紗子さん。
まずは定番の料理対決!食べた人のリアクション表現に先鞭をつけたといわれ、今や料理漫画の古典となっているのが「ミスター味っ子」。その作者・寺沢大介さんの仕事場を大島麻衣が訪ねた。 また、料理の味は、それを食べたときのシチュエーションに大きく左右される。「思い出の味」の表現を追及する異色のグルメ漫画が「極道めし」。その作者土山しげるさんに‘読んでノドが鳴る物語のつくり方’の極意を聞いた。
さらには人気漫画「クッキングパパ」のレシピページを切り取って、実際に活用している紺野さんが、作者のうえやまとちさんに直接電話でインタビュー。野崎さんには漫画のレシピに従って、実際に料理を再現していただいた。

「ミスター味っ子」(c)寺沢大介/講談社  「クッキングパパ」(c)うえやまとち/講談社  「極道めし」(c)土山しげる/双葉社 協力:大西祥平

■ 第108回 2009年11月2日 放送

<作者ノゲンバ 島本和彦スペシャル>

作者ノゲンバ

「アオイホノオ」

島本和彦 2007〜

今回の作者スペシャルは、「燃えよペン」「吼えよペン」そして映画化されてヒットした「逆境ナイン」など‘熱血青春ギャグ漫画’のジャンルを開拓した島本和彦さんを特集。
 彼の原点は、小さい頃に好きだったヒーロー番組やヒーロー漫画。今回のスタジオでも島本さんは、ヒーローゆずりの熱いトークを披露!
そんな島本さんだが、現在連載中の2つの作品で、新たなチャレンジをしている。
1つは漫画家志望の大学生がプロデビューを目指してあがく半自伝的な話「アオイホノオ」。
もう1つは、オリジナルの正統派SFヒーロー漫画「アスカ@未来系」。かつて石ノ森章太郎さんの描く作品にあこがれていた島本さんにとって、オリジナルの本格ヒーローものに取り組むのは長年の夢。
自らの原点を顧みながら、漫画家として‘脱ギャグ漫画’の新境地に挑む島本さんの創作へのこだわりを聞いた。

(c)島本和彦/小学館

■ 第107回 2009年10月12日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

村上たかし『星守る犬』

村上たかし 2008年〜 (双葉社「漫画アクション」)

 一匹の白い犬を拾った不器用な「お父さん」。彼は、病気・リストラの果てに家族からも見捨てられ、犬だけを相棒に旅に出る。自由で愉快に見えた一人と一匹の旅は、次第に過酷な現実に直面していく…
雑誌に掲載された直後からふだん漫画を読まない中高年の男性を中心に「泣いた」「早く単行本にしてくれ!」と大反響があったという異色作。“真に幸福な時間”とは?作品が突き付ける問いへの答えを、読者への取材やスタジオトークを交えて探った。レビュアーは学習院大学教授で映画評論家でもある中条省平さん。

(c) 村上たかし/双葉社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

井上智徳『コッペリオン』

井上智徳 2008年〜 (講談社「週刊ヤングマガジン」)

 舞台は原発事故のため長年封鎖された近未来の東京。無人のはずの死の街から突然発信されたSOS信号。それに応えるべく送り込まれたのは、遺伝子操作によって放射能抗体を身に着けた女子高校生たちであった。自らの存在意義に悩みつつ活躍する彼女らの姿を描いたこの作品は、大友克洋の「AKIRA」以来の本格SF。
作者は、2008年に、ちばてつや大賞を受賞し、この作品で一躍人気作家の仲間入りを果たした注目の新人・井上智徳さん。アシスタントもなく、たった一人で執筆を続けている井上さんの創作の現場をドキュメントした。

(c) 井上智徳/講談社

■ 第106回 2009年10月5日 放送

<作者ノゲンバ 藤田和日郎スペシャル>

作者ノゲンバ

「月光条例」

藤田和日郎 2008〜 (小学館「週刊少年サンデー」)

現在連載中の『月光条例』の創作の裏側、名作として今も愛読するファンの多い『うしおととら』『からくりサーカス』にこめた熱い想いを大いに語っていただいた。
『月光条例』は、「シンデレラ」「一寸法師」など古今東西の‘お伽話’がモチーフ。主人公が元の話からはなれて勝手に行動、物語の世界を破壊し始める。それを正義感あふれる少年が四苦八苦してもとに戻していく物語。話の決まっている古典を取り入れている分、逆にキャラクターの創り方や絵柄には様々な工夫が必要という。
藤田さんの作品には、一貫して「弱気に負けない、まっすぐな心」「前に進む勇気」「生きていればチャンスがある」というメッセージが込められている。その根底にあるのは、「子どもから大人になっていく途中に出合う少年漫画は彼らの人格形成に大きな影響を与える」という思いであった。

(c)藤田和日郎/小学館

■ 第105回 2009年9月14日 放送

<作者ノゲンバ 一条ゆかりスペシャル>

作者ノゲンバ

「プライド」

一条ゆかり 2002〜 (集英社「コーラス」)

漫画界の大御所に天野ひろゆきが迫る「作者スペシャル」。9月は一条ゆかりさんでした。この夏完成したばかりの新居を天野&大島コンビが訪ね、じっくり話を聞きました。

一条ゆかりさんは1968年デビュー。1974年『デザイナー』が大人気となり、以降も大河ロマン『砂の城』、コメディ『有閑倶楽部』などがドラマ・映画化されてヒット。母親世代から娘世代にまで受け継がれてきた幅広い年齢層の女性ファンを持つ。
 彼女の作品の魅力は、少女マンガの王道をゆくゴージャスな画風と 「主人公の出生の秘密」「親友との対立」「恋の三角関係」といったお約束のストーリー展開である。
2002年から連載中の『プライド』では、美しいヒロインたちが闘う場にふさわしい舞台として「オペラ」の世界を選んだ。作品執筆前は全く縁がなかった世界を魅力的に描くためにどんなことをしたのか?絵にしにくい「歌」の世界をどう「絵」にするのか?漫画家40周年を経てなお「プライドを持って人生を勝ち取る女」というモチーフに挑み続ける彼女の作品への想いを聞く。

(c)一条ゆかり/集英社

■ 第104回 2009年9月7日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

末次由紀『ちはやふる』

末次由紀 2008年〜 (講談社「BE・LOVE」)

今年の春、書店のマンガ担当者等で選ぶマンガ大賞を受賞し、少女マンガながら男女問わず人気を集める 末次由紀さんの『ちはやふる』をとりあげた。
スピード感溢れる競技かるたの試合シーンや、個性的な仲間達がぶつかりあいながら成長していく“熱血スポ根”要素と、自分に夢を与えてくれた少年に夢を取り戻させようとする千早の想いを描く、“少女マンガの王道”の要素とを併せ持つ、さわやかな青春物語。この作品の人気に秘められた戦略を、劇作家で演出家の竹内一郎さんが鋭く分析した。

(c) 末次由紀/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

三宅乱丈『イムリ』

三宅乱丈 2006年〜 (エンターブレイン「コミックビーム」)

ギャグからシリアス長編まで幅広い守備範囲をもつ女流作家・三宅乱丈さんの重厚なSF漫画『イムリ』が登場。
二つの星を舞台に、異民族間の政争、超能力、青年の旅立ち等が盛り込まれた、本格派ファンタジー。「自然を制御し支配する民族」と「自然と友達になり力を借りる民族」の戦いが描かれる。自然とは?人が利用する「道具」とは?人が人の心を支配することとは?など哲学的に問いかける作品。
人物相関図や登場する国の権力の構図など精密な設定資料がつくりこまれた世界を、どうやったら読者にわかってもらえるかに日々悩みながら創作に打ち込む姿を追った。

(c) 三宅乱丈/エンターブレイン

■ 第103回 2009年7月20日 放送

<作者ノゲンバ うえやまとちスペシャル>

作者ノゲンバ

「クッキングパパ」

うえやまとち (講談社「モーニング」)

1985年の連載開始以来世代を超えた幅広い読者に愛され、今年5月で単行本104巻を数える予定のロングセラーマンガ「クッキングパパ」。その作者・うえやまとちさんの仕事場を、天野ひろゆきと大島麻衣が訪ねるスペシャル企画。
「クッキングパパ」は、今や単なるグルメマンガの域を超え、コミック界の「寅さん」ともいうべき人情もの作品と評されるまでになっている。
その物語を生み出す原動力が、出身地である福岡に根を下ろした作者・うえやまさんの日々の暮らしと、「料理は愛」「愛する家族のために料理をする父さんはかっこいい」という信念なのだという。
番組では、2人の司会がうえやまさんにじっくり話を伺い、創作の現場を紹介する一方で、「作品中で紹介する料理のレシピはすべて自宅台所で試作する」と言ううえやまさんに、料理を実際に作っていただいた。

(c)うえやまとち/講談社

■ 第102回 2009年7月13日 放送

<100回超えちゃいましたスペシャル大感謝祭!! 後編 >

「100回突破スペシャル」の後編。 スタジオから漫画家の仕事場へ、直撃電話インタビューも!
さらに前編から引き続いて、出演者からもらったお題でオリジナル描き下ろしマンガを執筆中の上野顕太郎さんの様子を随時紹介。収録終了までに作品は完成するのか?漫画家が悶絶する、締め切り直前の緊迫の仕事場がカメラの前に映し出された!

■ 第101回 2009年7月6日 放送

<100回超えちゃいましたスペシャル大感謝祭!! 前編 >

2006年春から始まった「マンガノゲンバ」も、ついに放送回数100回を突破!そこで101回目と102回目を「100回突破スペシャル」と銘打ち、これまで登場した多くの漫画家の執筆現場や自作を語ったトークなど、より抜きの貴重な映像を再び紹介しながら振り返った。
また、ギャグ漫画家・上野顕太郎さんが収録に並行してNHK内の一室にこもり、スタジオの出演者からもらったお題で、収録中にネーム書きから下絵、ペン入れ〜仕上げまで一気に行い、番組オリジナルの書きおろし漫画を執筆するという企画に挑戦!その進行状況を、リアルタイムで紹介した。

■ 第100回 2009年6月15日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「覇−LORD−」

武論尊・池上遼一 2004年〜 (小学館「ビッグコミックスペリオール」)

超三国志マンガとして話題の作品「覇−LORD−」を画家の山口晃さんがレビュー。
学生の頃から池上遼一さんの絵にほれ込んでいたという山口さん。池上さんの絵のどんな点がすばらしいのか?さまざまな角度から分析した。

(c)武論尊・池上遼一/小学館「ビッグコミックスペリオール」

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「下町鉄工所奮闘記 ナッちゃん 東京編」

たなかじゅん 2007年〜 (集英社「スーパージャンプ」)

街の鉄工所を舞台に、モノつくり大好きの主人公・ナッちゃんが活躍する作品「下町鉄工所奮闘記 ナッちゃん東京編」を連載中のたなかじゅんさん。実家が鉄工所だというたなかさん。家族が実際に体験したエピソードを巧みに作品に取り入れながら、マンガに仕上げている。とかく暗いイメージで扱われがちな鉄工所だが、自分の作品では明るく描き、モノつくりの楽しさ、面白さを伝えていきたいと語るたなかさんの創作ゲンバを紹介した。

(c)たなかじゅん/集英社「スーパージャンプ」

■ 第99回 2009年6月8日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「イノセント・ブローカー」

加藤山羊 2006年〜2008年(2009年7月現在) (小学館「ビッグコミックスピリッツ」)

小学校の教師だった主人公・藤井は、純真と信じていた生徒たちによる悪意のいたずらで死にかけたことから、極度の人間不信になった。再び人を信じることができるようになるため、彼は、危険な情報を提供者から犯罪者に取り次ぐ闇の情報ブローカーになる。藤井は、契約書で縛れないアウトサイダーたちを無邪気に信じることで商売を成立させるが、裏切り者には容赦なく制裁を加えてゆく…「信じる」とはどういうことなのか?を問いかける問題作。レビュアーは精神科医の名越康文さん。

(c)加藤山羊/「イノセントブローカー」/小学館

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「極道めし」

土山しげる 2006年〜 (双葉社「漫画アクション」)

数あるグルメ漫画の中でも異色中の異色、といわれる作品「極道めし」の作者・土山しげるさんを紹介した。
舞台は刑務所の中。年に一度のご馳走「正月のおせち料理」を賭け、囚人たちが「今まで一番旨かった食べ物の思い出」を披露し合うトークバトルを描いている。「語る」だけで、どうやって聞き手のノドからツバを飲み込む音を立てさせることができるのか!?いかにその食べ物を旨そうに描くのか。そこには数々のこだわりが隠されていた。取り上げる料理の選び方、食べる時の口元の描き方、擬音の表現…他とはひと味違う、独特の「土山流グルメマンガ」創作術に密着した。

(c)土山しげる/双葉社

■ 第98回 2009年5月18日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「坂道のアポロン」

小玉ユキ 2007年〜 (小学館「月刊flowers」)

舞台は1960年代後半の九州。友だちを作るのが苦手な秀才・薫と、ジャズドラムが得意な不良少年・千太郎、千太郎の幼なじみ・律子の3人が織りなす、友情と恋と音楽の青春物語。レビュアーは恋愛コラムニストのにらさわあきこさん。

(c)小玉ユキ/小学館フラワーコミックスα

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ぼくらの」

鬼頭莫宏 2004年〜2009年 (小学館「月刊IKKI」)

人気SF作品「ぼくらの」を執筆中の鬼頭莫宏さんを紹介。
ひょんなことから、あるロボットを操縦する「契約」を結んでしまった15人の少年少女たちが、人類を破滅から救うため、1人ずつ謎の敵と戦うことになる。そのロボットは操縦者の生命力で動くため、操縦した人間は戦いの勝敗に関わらず、必ず命を失ってしまうのだ。
「もっと生きていたい」という思いを胸に抱きながら、愛する人を救うため次々とロボットの操縦士となり、倒れてゆく少年少女たちを感動的に描いている。「週刊連載より月刊の方が自分には合っている」と語る鬼頭さん。「ぼくらの」を連載開始するに先立ち、数年前から絵・ストーリーともに周到な準備を重ねていた。いよいよクライマックスが近づく「ぼくらの」に込めた思いを鬼頭さんにうかがった。

(c)鬼頭莫宏/小学館 IKKI

■ 第97回 2009年5月11日 放送

<作者ノゲンバ 江口寿史スペシャル>

作者ノゲンバ

「キャラ者」

江口寿史 (双葉社「weekly漫画アクション」→ぴあ「Weeklyぴあ・関東版」)

「すすめ!!パイレーツ」「ストップ!!ひばりくん!」などのヒット作で知られ、最近では「ゼロの笑点」でも注目を集めた、ギャグマンガ界の巨匠・江口寿史さんがスタジオに登場。
可愛い女の子を描かせたら並ぶものがいない、と定評のある画力でイラストレーターとしても活躍している江口さんが、今なおマンガの執筆に情熱を燃やす理由とは?あまりに何度も原稿を落としたため、次第に「今回は落とさずに描けたかどうか」がネタになってしまったという「白いワニ伝説」の真相とは?江口さんが自らの「マンガ愛」を大いに語った。

(c)江口寿史/双葉社

■ 第96回 2009年5月4日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「青春少年マガジン 1978-1983」

小林まこと 2008年 (講談社「週刊少年マガジン」)

「1・2の三四郎」「What’s Michael?」などのヒット作で知られる小林まことさんが、1978年に漫画家デビューしてから人気マンガ家として締め切りに追われ悪戦苦闘する日々を、仲良し「三馬鹿トリオ」と呼ばれた友人たちの思い出とともに振り返った作品「青春少年マガジン 1978−1983」を取り上げた。レビュアーは書評誌編集長の横里隆さん。

(c)小林まこと/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「大東京トイボックス」

原作・小沢高広 作画・うめ 2006年〜 (幻冬舎「コミックバーズ」)

ゲーム業界を舞台に、仕事に恋に奮闘するクリエイターの情熱を描く「大東京トイボックス」を連載中の男女2人組のユニット「うめ」。実は「うめ」は原作担当・小沢高広さんと作画担当・妹尾朝子さんのユニット名、2人は夫婦でもある。私生活でも常に一緒の2人は、通常の原作者と作画者の関係にとどまらず、製作過程で常に緊密なディスカッションを繰り返しながら作品を作り上げてゆく。仕事と子育てを助け合いながら両立させている「うめ」のゲンバを紹介。

(c)うめ/幻冬舎コミックス

■ 第95回 2009年4月20日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「天体戦士サンレッド」

くぼたまこと 2004年〜 (スクウェア・エニックス「ヤングガンガン」)

川崎市に在住し、市民の中にとけ込んでつつましく生活している悪の組織「フロシャイム」と、正義の味方ながら粗暴な性格で女のヒモとしてグータラ暮らしているサンレッドが織りなす、異色の脱力系ギャグマンガ。
レビュアーは、会社員兼お笑いサイエンスライターの植木不等式さん。

(c)くぼたまこと/スクウェア・エニックス

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ピポチュー」

フェリーペ・スミス 2008年〜 (講談社「モーニング2」)

アメリカで日本のマンガと出会い、自分の表現を求めて昨年来日したフェリーペ・スミスさんを紹介。現在日本の月刊誌で「ピポチュー」を連載しているフェリーペさん、日本の文化や生活に戸惑いながらも、日々の新鮮な発見を採り入れながら執筆しているゲンバに密着。

(c)フェリーペ・スミス/講談社

■ 第94回 2009年4月13日 放送

<作者ノゲンバ 永井豪スペシャル 後編>

作者ノゲンバ

「デビルマン」

永井豪 1972年〜1973年 (講談社「週刊少年マガジン」)

巨匠・永井豪がスタジオに登場!これまで発表してきた数々の名作について、2週にわたりたっぷりと語るスペシャル企画。
後編は、「デビルマン」と「バイオレンスジャック」を中心に取り上げた。

(c)永井豪/ダイナミックプロ 1972-2009

■ 第93回 2009年4月6日 放送

<作者ノゲンバ 永井豪スペシャル 前編>

作者ノゲンバ

「ハレンチ学園」

永井豪 1968年〜1972年 (集英社「週刊少年ジャンプ」)

1967年のデビュー以来今日まで、膨大な作品を発表している巨匠・永井豪がスタジオに登場。2週にわたりたっぷりと自作を語った。
前編のテーマは「ハレンチ学園」を代表とする「ちょっとエッチなギャグマンガ」と、乗り込み型ロボットマンガの先駆けとなった作品「マジンガーZ」。

(c)永井豪/ダイナミックプロ 1968-2009

■ 第92回 2009年3月10日 放送

<恋は少女マンガに教わった!Special>

恋は少女マンガに教わった!Special

少女マンガ大好きのゲスト3人が、イチオシの作品と胸キュンのシーンを熱く語るスペシャル企画。
森下千里さんは『きみはペット』、にしおかすみこさんは『ときめきトゥナイト』、国生さゆりさんは『デザイナー』を選び、“この作品から恋愛を学んだ”と熱いトークを展開。少年マンガ好きの天野さんは、語りだすと止まらない女性陣の勢いに押されながらも、今までとは違う形で少女マンガの魅力を感じた、と感心。「女心を知る上では僕も勉強になった、かもしれません 。

(c)小川彌生/講談社 (c)池野恋/集英社 (c)一条ゆかり/集英社

■ 第91回 2009年2月17日 放送

<2008年度下半期作者スペシャル総集編『麻衣・セレクション』>

麻衣・セレクション

番組アシスタント・大島麻衣さんが選んだ、“もう一度みたい作者スペシャルセレクション”下半期編。
『蒼天の拳』の作者・原哲夫さん、『ガラスの仮面』の作者・美内すずえさん、『マネーの拳』の作者・三田紀房さん、さらに司会の天野さんが仕事場を訪れた『リングにかけろ2』の作者・車田正美さんが登場。作者の熱いトークをたっぷりと振り返った。

■ 第90回 2009年2月10日 放送

<作者ノゲンバ 総集編>

司会の天野ひろゆきが選んだ「作者ノゲンバ」コーナーのセレクション。
『ジナス』の作者・吉田聡さん、『パギャル!』の作者・浜田ブリトニーさん、『鈴木先生』の作者・武富健治さん、『ホタルノヒカリ』の作者・ひうらさとるさん、『かむろば村へ』の作者・いがらしみきおさん、『ラブラドール・和田ラヂヲ』の作者・和田ラヂヲさん、『ホーリーランド』の作者・森恒二さんを紹介。仕事現場の密着取材、作品へのこだわり、最終回執筆の現場などを振り返った。

■ 第89回 2009年1月27日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「海街diary」

吉田秋生 2006年〜 (小学館「フラワーズ」)

鎌倉に暮らす四姉妹を通して、家族のあり方を問いかける叙情的な物語。
レビュアーはフランス文学者の中条省平さん。「小津安二郎の映画に描かれる、“昔あった家族に戻れない”悲しみに、この作品と通じるものを感じる」と読み解いた。また、吉田秋生作品について、中条さんは「透明感の強い絵で、見せてやろうという気持ちが無いからこそ、読む側がすーっと入っていける」と魅力を語った。
さらに、中条さんは四姉妹が暮らす“家”そのものに注目する。作中では母親が家の処分を提案すると、長女が激しく反発する。ここに、中条さんは“家”の本質が描かれていると分析する。「近代的な核家族にとって、家はただの入れ物だけど、家というのは自分ひとりの家ではなく、家族たちが同じ空間で暮らして、同じ四季を味わってきた感覚がこもっていて、時間や歴史性が一軒家の中にはこもっている。一軒家というのは、家族の歴史そのものなんです」。

(c)吉田秋生/小学館

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「おれはキャプテン」

コージィ城倉 2003年〜 (講談社「週刊少年マガジン」→「マガジンSPECIAL」)

古き良きマンガへのオマージュを込めた、異色の野球少年マンガ「おれはキャプテン」の作者コージィ城倉さんが登場。
独自の視点を元にさまざまな野球漫画を描いてきた城倉さんが「野球漫画は時代とともに洗練されて、いろんな表現も出てきた中で、“王道”というより“伝統的な”野球漫画が描きたい」という想いで取り組んでいるこの作品には、『キャプテン』『おれは鉄平』などコージィさん自身が熱愛する名作マンガへのオマージュが込められている。「難しいことを考えなくて読める分かりやすいマンガを描きたい」「好感度を狙うようなキャラではなく、反逆的だったり斜めに構えたりしていても読者を魅了してしまう強烈な個性の主人公を描きたい」異色の野球マンガを生み出したコージィさんの思いに迫った。

(c)コージィ城倉/講談社

■ 第88回 2009年1月20日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「壬生義士伝」

原作・浅田次郎 漫画・ながやす巧 2007年〜 (角川書店「コミックチャージ」)

一人の新撰組隊士の生涯を描いた、本格的時代小説の漫画化作品。
レビュアーは劇作家・演出家の竹内一郎さん。この作品を「漫画固有の表現の極み」が現れていると絶賛。登場人物の感情表現について分析する。「(感情の変化というのは)小説では読み流す。映画ではゆるやかに変化していく。マンガというのは一瞬一瞬をストップモーションで見る。(ながやすさんは)感情の変化の、核の部分を捉えるのが上手い。良い役者を使ってるな、と思ってしまう」。
竹内さんは、作中に出てくる橋の上のシーンにも注目、その魅力を熱く語った。「原作では2行で表現されているが、“生きて故郷に帰りたい”という主人公の強い思いを伝えるために、故郷の風景を見開きでバーっと描いた。マンガは小説を分かりやすく読み解くためのものではない。小説家が小説家固有の才能から作品を生むように、漫画家は漫画家固有の才能から、自分の表現方法を見つけていく」。

(c)浅田次郎・ながやす巧/角川書店

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「モテかわ★ハピネス」

青木光恵 2007年〜2009年 (祥伝社「フィールヤング」)

売れっ子モデルなのに、プライベートではオシャレにも男の子にも興味無し、ただ漫画家になる夢に向かって驀進する不思議少女モネが繰り広げるラブコメディ「モテかわ★ハピネス」の作者青木光恵さんが登場。 「女の子をかわいく描くのが、最初から今まで掲げているテーマ」と語る青木さんは、街に出て、かわいい女の子を見たりファッションを観察するのは休日の楽しみのひとつ。気に入ったかわいい子やファッションの着こなしは「自分の目で見て感じたカワイさを、どれだけ線にできるかが勝負」と仕事ぬきで絵に描いてしまうという。
「いろんなマンガを描くマンガ家がいて、その中で私は『明るい話係』」と語る青木さん。「疲れてるけど軽い感じで読めて、“楽しいし、カワイイし、ええな”と思ってくれるくらいがいい。そういった、読んだ人がプラスの感情を引き出せて、いい気分になってもらえたらいいな、と思う。

(c)青木光恵/祥伝社フィールコミックス

■ 第87回 2009年1月13日 放送

<作者ノゲンバ 森田まさのりスペシャル>

作者ノゲンバ

「べしゃり暮らし」

森田まさのり 2005年〜 (集英社「ヤングジャンプ」)

森田まさのりスペシャル!
『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』などのヒット作を描いてきた森田まさのりさんの仕事場を、天野さんが突撃!
机の前に置かれた大きな鏡に自分で表情を作って映して絵作りの参考にすることで作品に登場するキャラクターの豊かな表情を生み出すことや、人物から背景にいたるまで緻密に描くスタイルは、原哲夫さんのアシスタント時代に受けた影響が大きい、など森田作品の魅力の源泉を探った。
また現在連載中のお笑いにかける高校生たちが活躍する「べしゃり暮らしの中では「漫才の『相方感』」を描きたい、という森田さん。「キャイーンの天野ひろゆき」に興味津々で逆取材。天野の答えに「ヒント満載。聞かせてもらった話は形を変えて漫画に出てくるかも!?」と語っていた。

(c)森田まさのり・スタジオヒットマン/集英社

■ 第86回 2008年12月23日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「町でウワサの天狗の子」

岩本ナオ 2007年〜 (小学館「フラワーズ」)

天狗の娘として生まれた主人公が一人の女の子として恋愛や友情に一喜一憂する姿を描いたユニークなラブコメディ。
レビュアーは恋愛コラムニストのにらさわあきこさん。「すごく新しい世界観が描かれていて秀逸」と絶賛。さらに、「ファンタジーで天狗が描かれることはあったけど、普通のファンタジーは、読者側がその世界に入っていかなければいけない。でもこの作品では、普通の高校生活の中に天狗が入ってくる。そういう意味でも、ファンタジーとリアルな世界がうまくミックスされている」と作品の魅力を読み解いた。
また、にらさわさんは主人公の恋愛に対するポジティブな妄想にも注目。「デートをする前までの段階は、妄想、自分磨きのチャンス。相手が分からないから自分はこうしよう、と考える、一番“女子力”を上げるんです。この作品の場合、主人公の妄想が実際の行動にまで結び付いている。それが、全国の妄想女子に勇気を与えてくれる。

(c)岩本ナオ/小学館フラワーコミックスα

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ノノノノ」

岡本倫 2007年〜 (集英社「ヤングジャンプ」)

女子が出場できないはずのオリンピック・スキージャンプ競技で金メダル獲得を目指す少女の奮闘を描いた物語。
作者の岡本さんは、『ノノノノ』を描くにあたって、岡本さんは前作の『エルフェンリート』とは全く違う世界を描こうと思っていたという。「前作は暗い話が多かったので、もっと明るい話、読んでいて気持ち良いと思えるようなマンガを描こうと思った。主人公は強いけど、参加する資格が無くて才能が燻っている、という設定を思いついた岡本さんは、スキージャンプに女子は出場できないというのを知り、1から取材を始めた。実際に、しばしばスキージャンプ台などの施設へと足を運ぶ。「高さとか怖さとかが漫画で出ればいいなと思って取材している」。
岡本さんは、いかに読者をひきつけるか、そのストーリー作りにもこだわり抜いている。二転三転するスリリングな物語について、岡本さんは「読者に次の展開を悟られたくないと思っているので、いつもこういうオチにしようと思ったら、逆の方に話を振っていく」という。「自分も映画や漫画を見ていて、裏切られたりするのが気持ちいい。自分が描くマンガでも、読んでいる人の考えを裏切るような話にしたい」。

(c)岡本 倫/集英社「ヤングジャンプ」

■ 第85回 2008年12月16日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ワンダフルライフ?」

ケイケイ 2005年〜 (講談社「Kiss」)

OLの日常と本音をリアルかつコミカルに描いた作品。
精神科医の名越康文さんは、作品に登場するような2,30代の女性は「非常に増えてきている」と語る。「作中のキャラを見ていると、性格が変わらないと思っていて、性格が変わらないようにしている。こういった、見えない枠から抜け出せない人が、現実でも増えている。読者は、自分を作品の中に見つけてしまうというくらい、スケールの大きなマンガだと思う」。
また、名越さんはダイエットと恋愛のジレンマに陥るキャラに、「幸福と自由の選択が描かれている」と読み解いた。「幸福感を得るためにはある程度妥協したり、相手に合わせるなど、自由はある程度拘束される。このポイントが、実に端的に描かれている」。

(c)ケイケイ/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「罪と罰 A falsified Romance」

落合尚之 2007年〜 (双葉社「漫画アクション」)

ドストエフスキーの名作『罪と罰』の舞台を現代の日本に置き換え、独自の視点で現代の若者を描いた問題作。
落合さんが作品を描くきっかけになったのは、アメリカ同時多発テロだった。その後、アメリカがテロ撲滅のスローガンを掲げてアフガンを空爆し、誤爆などで多くの民間人を死なせていたことを知り、『罪と罰』に出てくる「一つの罪悪は百の善行によって償われる」という言葉を思い出したという。そして原作を読むうちに、落合さん自身が、主人公に共感していった。「引きこもり、ニートといった生き方に通じる何かがある。そうした人に訴える何かが『罪と罰』にはあるんじゃないか」。 原作では、主人公に自首をすすめるソーニャという人物が登場し、神への信仰心に基づいて無償の愛を貫き、主人公を説得する。だが、ソーニャにあたる漫画の登場人物・園山英知香が、信仰心に基づいて主人公を説得するのでは、現代の読者は共感を得にくいのでは、と落合さんは悩んでいた。「生々しい感覚を持った人間として描きたい。その生々しさが人間らしさであり、その人間らしさが、理屈に囚われて孤独に自分を追い込んでいる主人公を救うのでは、と思っている。原作を元にしているとは言っても別の作品であり別の表現。僕の漫画版にとって正しい表現をその都度選んでいく中で、自分の信じるところを強く出していきたい 。

(c)落合尚之/双葉社

■ 第84回 2008年12月9日 放送

<作者ノゲンバ 寺沢武一スペシャル>

作者ノゲンバ

「コブラ」

寺沢武一 1978年〜1984年「週刊少年ジャンプ」 1986年〜2002年「スーパージャンプ」
2005年〜2006年「コミックフラッパー」 現在メディアファクトリーよりカラー版刊行中

『コブラ』で世界的人気を獲得した漫画家、寺沢武一さんがスタジオに登場。 寺沢さんにとって、『コブラ』とは何なのか? という問いに、「子どもの頃の夢だった、マジシャン、船乗り、プロレスラー、この3つが合わさった、自分の願望の全て」と答えてくれた。
『コブラ』には舞台設定から武器、生物まで、独自のSF的世界観が表現されている。「歯医者に行ってもずっと横を向いて道具を見ていたりして、覚えてるうちにメモに残すと、その中の1つが重要なピースとなって、一挙にバーっと繋がっていく」と、寺沢ワールドが作られる過程を語ってくれた。
『コブラ』を始めとする作品を、フルカラーCGでリメイクする作業に取り組んでいる寺沢さん。大変な労力がかかるが、その裏には世界展開への意識があった。「退色もしないし、吹き出しや描き文字をデータ化すれば、絵を消さずに各国の言葉に対応できる。様々な分野に挑戦し続ける寺沢さんだが、「漫画家が天職」と力強く宣言する。「コブラを続けていくのは、一本の柱」。

(c)BUICHI TERASAWA/A-GIRL RIGHTS

■ 第83回 2008年11月25日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「聖☆おにいさん」

中村光 2007年〜 (講談社「モーニング2」)

ブッダとイエスが現代の東京を舞台にバカンスを満喫する、人気沸騰中のギャグ漫画。
レビュアーは書評誌編集長の横里隆さん。「ギャグマンガなのに優しくて思いやりにあふれた作品。優しさでくるむことによって、破壊的な要素が排除されていて、“ボケとツッコミ”じゃなくて、“ボケと思いやり”で成立しているのが新しいと読み解いた。
横里さんは、「平和的メッセージがほのかに感じられる」点にも注目した。「イエスとブッダが仲睦まじく暮らしてるのが、どの宗教も目指す理想の世界にも通じている」。さらに横里さんは、主人公の2人に、現代日本の若い男性との共通点を見出す。それは「草食系男子」というキーワードだった。「彼らは年代の上の人から見たら、“何を考えているか分からない”“エネルギー、やる気が感じられない”と言われてしまうが、実は平和の形の一つではないか」と作品に描かれた魅力を読み解いた。

(c)中村 光/ 講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「宇宙兄弟」

小山宙哉 2008年〜 (講談社「モーニング」)

エリート宇宙飛行士の弟を持ちながら、会社からリストラされたダメ兄貴が、幼い頃の夢を思い出してもう一度宇宙を目指し、悪戦苦闘する物語。
作者の小山さんは、元々宇宙に詳しいわけではなく、取材を重ねることで作品へのイメージを作り上げていったという。
「ちょっとカッコ悪い部分をあえて描きたい。そこにリアリティがあると言われるし、そこを楽しんで描いていきたい」と語る小山さんは、国際航空宇宙イベントのトークショーに参加したときも「宇宙でひげをそるときはどうやって?」など日常の疑問を追及していた。
また、地元で会社勤めをしながら作品を描き、コンクールで道を開いてから脱サラした小山さんは、漫画家の夢を諦めなかった当時を思い出しながら作品に込めた思いを語ってくれた。「一番やりたいことが出来てないのが、何より辛い時だと思う。主人公みたいに好きな所へ向かって行ける、というのは自分に重ねている。前向きな気持ちになれるものが描きたいし、読んでくれた方がそうなってくれれば、良かったなと思う」。

(c)小山宙哉/講談社

■ 第82回 2008年11月18日 放送

<作者ノゲンバ 美内すずえスペシャル>

作者ノゲンバ

「ガラスの仮面」

美内すずえ 1976年〜 (白泉社「花とゆめ」)

大人気少女マンガ『ガラスの仮面』連載再開を祝して、作者の美内すずえさんがスタジオに登場。
ファンから「死ぬまでに完結させて欲しい」というメッセージが多く、美内さん自身、「最近は私もあせっている」と告白。
「連載マンガ第一回のお手本」とマンガ界でいわれている「ガラスの仮面」第一回では、マヤという女の子の普通じゃないキャラクターに納得させることに力を注いだという。さらに「自分がずっと締め切りと戦っているから、時間との追いかけっこに緊張感を感じるため、1回目の仕掛けに「タイムリミット」を用いたという。
番組では、執筆に時間がかかる理由も追求!作中の劇を自ら書き下ろし舞台セット、演出プランまで考えること、単行本化にあたってほとんど描き直すことなど、独自のこだわりを語った美内さんは「読者が待ってくれているのは本当にありがたい。私自身、諦めたことは一回も無い。ラストシーンのセリフや構成は十数年前にしっかりできています」と語った。

(c)美内すずえ/白泉社

■ 第81回 2008年10月28日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「FRONT MISSION DOG LIFE & DOG STYLE」

原作:太田垣康男 作画:C.H.LINE 2007年〜 (スクウェア・エニックス「ヤングガンガン」)

人気ゲームの世界観を元に、近未来のある島で、紛争に巻き込まれる人々の生き様を描いた物語。
レビュアーは作家/プロデューサーの竹内義和さん。「日常に生きている人々が、突然危険に巻き込まれる恐怖が描かれている」点に注目する。街に巨大兵器が登場しても驚かない人々の姿に、「日常と非日常のコントラストが、胸騒ぎを起こさせる。マンガは娯楽で癒しだと思っている人も多いけど、マンガの表現は癒しを超えた部分にも存在する。このマンガを読んで胸騒ぎや怖さを実感することも楽しみの1つ」と読み解いた。
また、「このマンガは非常に珍しい」ポイントがあると竹内さんは分析。「全ての人間が感情移入できないような設定になっている。だが一方で、作品そのものの空気感、戦場の雰囲気がキャラクターになっているので、自分も作品の空気感に入ってしまうような感覚になるので、読者にも緊張感が生まれる。女性が撃たれるシーンでは、思わず体が動いた」。

(c)太田垣康男・C.H.LINE/SQUARE ENIX (c)SQUARE ENIX CO.,LTD.All Rights Reserved.

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「鈴木先生」

武富健治 2005年〜 (双葉社「漫画アクション」)

中学校を舞台に、一人の教師が悩み奮闘する姿を描いた異色の学園ドラマ。
武富さんの作品にはセリフが多い。その理由について、「シンプルなやり取りだと、1か2か、になる。僕が言いたいのは、1.211…、といった細かい部分。短い言葉にしてしまうと重大な誤解が積み重なっていくので、誤解を生まないようにするとどうしてもセリフが長くなってしまう」。
武富さんは中学時代、「いろんなグループに出入りしていた」生徒だったという。生徒同士の葛藤の間で悩まされていた武富さんは、自分の複雑な心情を表現しているものを探し、ドストエフスキーの小説と出会う。「気持ち悪いところを見ないと先に進めない、という実感は、この作品にも影響している」。
武富さんは、作品に込めた思いを熱く語ってくれた。「現在は多様性の時代だけど、一人ひとりを見れば、単一性の時代になっていると思う。でも、10人いたとして一人が他の9人のことを考えれば、それまで1つの意見だったのが、そこに多様性が生まれる。最終的に意見は分かれたとしても、同じ葛藤を抱えた仲間同士になれる。全部はうまくいかないとしても、そういう雰囲気があれば、世の中はもう少し気持ちよくなるんじゃないかな。これが作品最大のテーマかもしれない。

(c)武富健治/双葉社

■ 第80回 2008年10月21日 放送

<作者ノゲンバ 三田紀房スペシャル>

作者ノゲンバ

「エンゼルバンク ―ドラゴン桜外伝」

三田紀房 2007年〜 (講談社「モーニング」)

代表作『ドラゴン桜』が社会現象にまでなったヒットメーカー・三田紀房さんがスタジオに登場。「マンガはビジネス」と言い切る三田さんが、独自のマンガ観を余すところ無く語ってくれた。
最新連載作『エンゼルバンク』を通して、三田さん流のマンガ術を教えてくれた。どんなマンガがウケるかを考えるための「マーケティング」、1話目から引っ張るため、今後に期待を持たせるためにも説得力のある「キャラクター」、“転職”という動きが無い場面の「演出」。この3つを三田さんは重視していた。 三田さんは出世作『クロカン』を「自分の原点」と語った。「最初はリアルな高校野球を描こうとしていたけど、作品を変えるために、思い切った演出をしなきゃいけない、と、思い切った特訓を取り入れた。その回を境に、読者人気が変わって、『読者にサービスをしないと商品として良いものにならない』と初めて気づいた 。以後、三田さんは客観的に自分の作品・描き方を分析し、ヒット作を次々と生み出すこととなる。
「どんな仕事でも成功しそう」と語る天野さんに対し、三田さんは「マンガが一番良い」と即答。「マンガは完全に実力主義。読者が決めることは我々がコントロールできないので、ダメなときは自分の実力が無かったと諦めがつく。(マンガの世界は)非常に良い世界。オススメしたい」。

(c)三田紀房/講談社

■ 第79回 2008年9月30日 放送

<2008年度上半期作者スペシャル総集編『麻衣・セレクション』>

番組アシスタントの大島麻衣ちゃんが「もう1度見たい!」と選んだ、08年度上半期、スタジオに登場した作者トークを一挙に振り返る。未公開シーンも満載。
武論尊さんは、悪役を描くのが得意だと告白。『北斗の拳』の裏話についても暴露、作品の大ファンだった天野さんがショックを受ける場面も。
西原理恵子さんは「息子の子育てを通して、“男は女の話を聞いてない”」という真理に気づいたという。さらに、高知県の漫画家の特徴について分析。
楳図かずおさんは“グワシ”に続く新しいポーズを披露。『わたしは真悟』の誕生秘話を余すところ無く語ってくれた。

■ 第78回 2008年9月23日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「オトメン(乙男)」

菅野文 2006年〜 (白泉社「別冊花とゆめ」)

男らしくイケメンだが、実は乙女チックな趣味・内面を持っている男子高校生を描いたラブコメディー。
レビュアーは恋愛コラムニストのにらさわあきこさん。「キャラクターが秀逸」と絶賛するにらさわさんは、少女マンガに登場する男子のタイプを分析、『オトメン』の新しさ、魅力を読み解いた。「最近の少女マンガに登場する男子といえば、オレ様系キャラか友達タイプのキャラが多いけど、両方とも女子としてはついていけない部分がある。これは現実ともリンクしていて、女性は今、恋に疲れている。“乙女心が分かりつつ、カッコイイ人はいないの?”と思っていたところに、この作品が登場した」という。
「絵が綺麗」なことも重要な要素になっているという。「カッコイイ主人公が、時折きれいな笑顔を見せてくれる。この笑顔が、『女性の心も分かってくれる』と思わせてくれる」。
さらに、にらさわさんは新たなキャラクターが次々と登場する点にも注目した。「主人公が女性と同じ悩みを抱えているため、“自分に近い”男性だけだと徐々にトキメキが減っていくけど、そうすると今度はキュンとするキャラを投入してくる。作者が読者の気持ちを分かっていて、次々と新しい要素を入れていくところが凄い。

(c)菅野 文/白泉社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「パギャル!」

浜田ブリトニー 2007年〜 (小学館「ビッグコミックスピリッツ」)

渋谷に生息する中途半端なギャル(パギャル)たちの日常を描いた作品。
現役渋谷ギャルのブリトニーさんは、作品中にギャル用語をそのまま取り入れ、枠外には全てのギャル語に注訳をつけている。「注訳を読まないと読めないギャル漫画っていうのが新しかったらしいんで、やってみよう、と」。漫画を描く場所は、カラオケボックスやマンガ喫茶、ファミリーレストランなど。「時間の無いときは路上や電車の中で描いて、チョー迷惑がられました」。
ネタは、自分自身の勘違いや普段の会話が元になっているという。担当編集者は「彼女しか書けない、予想外のネタが来るんで、受ける方としては大変」と語ってくれた。
いまどきのギャルを描くため、ファッションにもこだわる。「私のマンガを読んで、こういうのが渋谷で流行ってんだ、て思って欲しいんすよ。古い服が載ってたりすると、“これ古くね?”とか思うじゃないですか。画力にはまだ自信が無いけど、そういうとこにはこだわってます」。 初めての連載に取り組んでいるブリトニーさんは、今後の夢についても語ってくれた。「単行本をチョー売ってセレブになることなんですけど、身近な目標は、雑誌の表紙を“パギャル!”の絵で飾って、グラビアを浜田ブリトニーで飾りたい」。

(c)浜田ブリトニー/小学館「ビッグコミックスピリッツ」

■ 第77回 2008年9月9日 放送

<作者ノゲンバ 原哲夫スペシャル>

作者ノゲンバ

「蒼天の拳」

原哲夫(監修:武論尊) 2001年〜 (新潮社「コミックバンチ」)

『北斗の拳』『花の慶次』など、硬派なヒット作を次々と描いてきた、原哲夫さんがスタジオに登場。
1983年、原さんが22歳のときに連載を始めたのが今なお人気を誇る『北斗の拳』。番組では連載が始まる五ヶ月前に描かれていた、読み切り版の『北斗の拳』も紹介。「元々は現代を舞台にした、必殺仕事人のようなアイデアだった」と告白。主人公のケンシロウは、原さんが幼い頃に憧れて描いていた「ブルース・リーや、松田優作のような、散り際のカッコ良さ」に原点があった。また、『北斗の拳』にはギャグの要素があると指摘された原さんは、擬音を始めとした笑える場面は、ねらって入れていたと告白してくれた。
歴史小説を原作に描いた『花の慶次』では、前田慶次という傾奇者(かぶきもの)を「命がけで遊ぶ姿がいい」と語り、「着物も陣羽織も実際に自分で着てみて、描けるようになった」と振り返った。
最新連載作『蒼天の拳』について、「20代の頃、ケンシロウを理想像として描いていた。今は現実における生き方が主人公に投影されている」という。また、コミカルな描写については「思いついた悪ふざけは描かずにはいられない」と本音を語った。今でも描く際は修正を繰り返しながら時間をかけて描きこんでいく。「僕の場合は書き込んで、感情をペンで込めていく。それで絵が生きたものになっていく。絵はウソつけない。描いている人の気持ちが全部出ているから、ごまかしがきかない」。

(c)原 哲夫・武論尊 2001

■ 第76回 2008年8月26日 放送

<作者ノゲンバ 車田正美スペシャル>

作者ノゲンバ

「リングにかけろ2」

車田正美 2000年〜 (集英社「スーパージャンプ」)

今回は司会の天野さんが大ファンであるという、『リングにかけろ』『聖闘士聖矢』など数々のヒット作を生み出してきた漫画家・車田正美さんを訪問。
仕事場を訪れた天野さんに、車田さんは「今から“ジョさんぽ(ジョギングと散歩の良い所を合わせた、車田さん流の歩行術)”をするから、君もついてこい!」と提案。二人は田んぼの側を“ジョさんぽ”しながらトーク。「子供の頃から、先生の作品を読んで“男”とは何かを教わった」と語る天野さんに、車田さんは「マンガは娯楽だから、言われているほどメッセージは込めていないけど、そこまで思い入れを込めて読んでくれているのは、作家冥利に尽きて嬉しい」と語った。
車田さんは仕事場で、漫画家としてのルーツからデビューしてからの苦労、秘話をたっぷり語ってくれた。「『リングにかけろ』連載当時は、連載でも毎週が読み切り、という思いで描いていた」と自作へのこだわりを語った。その後、「本を読んでいて、星座の本と出合い、女子でも読めるエレガントさを取り入れて、新しい世界を作ろう、言葉も全て新しく作ろう」と考えて生まれたのが、『聖闘士聖矢』だった。現在、車田さんは前作キャラの子供たちが活躍する『リングにかけろ2』を連載中。
「ちょうどいい時期だと思った」と連載のきっかけを語った車田さんは、現在の作品から過去作に至るまでをこう振り返った。「車田マンガは、どれをとっても完全な完結は無い。終わりは無い」。

(c)車田正美/集英社「スーパージャンプ」

■ 第75回 2008年8月19日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ライスショルダー」

なかいま強 2007年〜 (講談社「モーニング」)

身長193cmの心やさしい女の子・おこめちゃんがボクシングに挑む、異色スポーツもの。
レビュアーは、漫画の原作も手掛ける演出家の竹内一郎さん。「スポ根ものとギャグマンガの良さを併せ持つ作品」と絶賛する。「普通なら193cmの女性と、ながしのお父さんというバランスの悪さを成り立たせるのが、“なかいまワールド”の素晴らしさ。また、東北出身のおこめちゃんを描く際の方言にも注目。「クサいセリフも東北の方言でビシッと決めている。最近減った、“ダサかっこいい”ところが非常に上手く出ているマンガ」。
また、竹内さんはマンガ原作を書くときに読者の予想できない方向へどう持っていくか、どうひねるかを悩むというが、そこをあえてひねらないなかいま作品の魅力に注目。「なかいまさんは敢えてひねらないけど、なかいまさんがやると、絵もあいまって、読む人を納得させてしまう。絵も純朴だし、言葉も純朴だから、読んでて優しい気持ちになれる」。

(c)なかいま強/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ナチュン」

都留泰作 2007年〜 (講談社「アフタヌー」)

沖縄を舞台にした近未来海洋SF作品。
作者の都留さんは、文化人類学者と漫画家という2足のわらじを履く、異色の作者。『ナチュン』について、藤子F不二雄さんが定義した“SF=すこし不思議”というイメージがあると語った都留さんは、「そこから少し変えて、日常の気分でいたらSFのような世界が広がっていく。現実のもう一つの見方が出てくれば」と作品に込めた思いを語った。
大学の休日を利用してマンガを描いている作者は、24歳のとき、沖縄の離島に半年間住み込み、漁村の文化を調査していたが、そのときの経験が作品に活かされている。「その土地にしかない人間の物の見方を明らかにするのが文化人類学だと思っていて、それを何かの形で物語に活かしていけたら面白いなと思っている」。 細かく描き込んだ緻密な背景にもこだわりが。「シーンが転換する大きなコマは細かく描くので、かなり時間はかかるが、ただモノがあるのではなく、別の世界がそこに現れてくるような雰囲気を出したい」。
作品の舞台である海について、作者は「日本が1つの星だと考えたら、周りの海は宇宙のような、未知の世界」と捉えているという。「隣にある、まだ分かっていない世界だけど、ひょっとしたら人間は未来、宇宙や海に出ていくかもしれない。そういった、未知の未来を感じさせる空間」。

(c)都留泰作/講談社

■ 第74回 2008年8月5日 放送

<エムズ・カフェ祭り「高橋留美子が大好き!!スペシャル」>

エムズ・カフェ祭り「高橋留美子が大好き!!スペシャル」

「犬夜叉」1996年〜2008年

小学館「週刊少年サンデー」

「らんま1/2」1987年〜1996年

小学館「週刊少年サンデー」

「うる星やつら」1978年〜1987年

小学館「週刊少年サンデー」

高橋留美子作品を愛してやまないゲストがスタジオに集結、その魅力を語りつくす、M’sカフェ祭りスペシャル企画!
喜屋武ちあきさんが選んだ作品は、『犬夜叉』。「殺生丸だけで24時間語りたい!」とアピールした喜屋武さんは、異世界に行くという設定自体にも惹かれているという。主人公の犬夜叉についても「バカなのでかわいい」という。犬夜叉が2人のヒロインで揺れ動くシーンについても思い入れを語った。「時空を超えた三角関係こそ、犬夜叉の魅力」。
吉井怜さんが選んだのは『らんま1/2』。「シャンプーには可愛さ、切なさ、憎らしさ、全てが詰まってる」と好きなキャラにシャンプーを挙げた。また、登場人物のリアクションで必ず皆があるポーズをとっていることに気付いた吉井さんは、「自分も自然とやってしまっていた。すごい細かい部分までクセがある」ところにも魅力があるという。
声優・古川登志夫さんが選んだのは、アニメで主人公の諸星あたるを演じた『うる星やつら』。最初に作品を読んだとき、「男心がよく描かれているので、男性が描いていると思った」と振り返った。アニメで演じる際に大変だったのは、ラムちゃんに電撃のおしおきを受けるシーンだという。スタジオでは喜屋武さんと吉井さんがラムちゃんとなり、マンガの1シーンを実際に演じて頂いた。

(c)高橋留美子/小学館・少年サンデーコミックス

■ 第73回 2008年7月22日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「夜、海へ還るバス」

森下裕美 2007年〜 (双葉社「漫画アクション」)

大阪で働くOL・夏子が婚約を棚上げし、女性同士の恋愛関係にのめり込み、本当の自分を探す物語。
レビュアーは、精神科医の名越康文さん。「婚約者の男性と新たな女性の恋人、この二人の間で悩む主人公の姿には、意識と無意識の葛藤で揺れ動くさまが表現されている」と読み解いた。
「出会いには二種類あって、社会生活・義理の世界における出会いは、縁が無くなればいずれ忘れてしまう。どんどん忘却するのが意識の世界。一方で、瞬間が無意識に入るような出会いは、その一瞬の記憶が一生続く」と、意識・無意識の違いを解説。「結婚生活は社会生活なので、主人公たちの本来の孤独や渇きは、別のところで癒さないといけない」という状況が描かれているという。
また、主人公が幼い記憶に悩まされるシーンは、「記憶の成長」が描かれていると分析。「人間の記憶はデータベースではない。記憶自体は成長していくが、より自分の本質的な問題、なぜ自分が存在しているか、という問題に近づいていく。この作品では、その蓋を開いたのが、女性の恋人だったのでは」。

(c)森下裕美/双葉社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「かむろば村へ」

いがらしみきお 2007年〜 (小学館「ビッグコミック」)

農業をするため田舎にやってきた青年が住むことになったのは、少し異様な雰囲気をもつ村だった。不思議で、どこか怖い農村ファンタジー。
24歳のときに漫画家としてデビューしたいがらしさんは、1986年から4コマ漫画の傑作「ぼのぼの」の連載をスタート。哲学的な笑いが評価され、現在も連載が続く大ヒットとなった。様々な画風、ジャンルを描いてきた作者は、「一回描いちゃうと、もう一回描きたいとは思わない。絵に関しては一貫性が無く、いつまでたっても完成されないが、違う絵を描く方が楽しい、という考えがある」という。当作品は「限定した場所でおきるファンタジー、というお題を頂いた形で始めた」と連載当初を振り返った。
宮城県にある生まれ故郷の川や農村の風景をモチーフに選び、扉絵などには懐かしい川の風景を元にして描いている。 作中でこだわったのは、登場人物のキャラクターだという。「私が知っている東北の人は、東京の人よりも強烈。隅に置けない人物が多い」と語る作者は、アクの強いキャラを次々と生み出した。
里帰りするたびに複雑な思いを抱くという作者は、「田舎の町がどれだけ悲惨になっても、必ず何とかなる、というのがこの作品における1つのテーマだと思う。それが伝われば…、たぶん何とかなるんじゃないかな」と語ってくれた。

(c)いがらしみきお/小学館「ビッグコミック」

■ 第72回 2008年7月15日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「くままごと」

黄島点心 2007年〜 (徳間書店「コミックリュウ」)

個性豊かなクマたちが繰りひろげる、少しブラックなギャグマンガ。
レビュアーは、書評誌編集長の横里隆さん。作品最大の魅力について、「“クマ”というキャラ設定に尽きる」と語ってくれた。「可愛らしさと凶暴さの二面性がパッケージされている。大グマは劇画調に、小熊はぬいぐるみのように描かれていたりする、その落差ある設定が非常に面白い」。
横里さんは、タイトルの“ままごと”というキーワードにも注目。「リアルな生態を描くのではなく、クマたちが毎回ある設定の中で演じているので、ブラックな展開でも安心して読める」と分析。
また、「ギャグの進化が起こっている」点にも目を見張った。“胃がゴロゴロ”という回を読んだ横里さんは、「台本的なネームを詰めて設定する、コントのようにやり取りが緻密に描かれているのが作者の特徴だったが、絵を見せて間を見せたり、アドリブの要素などを取り入れるなど、レベルが上がっている。今後、ギャグはもっと進化していくのでは」と作者のさらなる進化に大きな期待を寄せた。

(c)黄島点心/徳間書店

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ホーリーランド」

森恒二 2000年〜2008年 (白泉社「ヤングアニマル」)

ストリートファイトに自らの居場所を見つけた少年たちの成長物語。
この作品には、作者の森さん自身が、少年時代にストリートファイトをしていた時の経験が活かされていた。「自分が経験した感覚を忠実に描こう」としたという。
森さんが漫画家を目指し始めた高校時代。同級生に、現在は『ベルセルク』を連載する三浦建太郎さんがいた。共に漫画家の夢を追いかけていたが、ある時、森さんはスランプに陥ってひとコマも描けなくなり、漫画家の夢を諦めた。そんな折、バイクの事故で瀕死の重症を負う。「もう終わったな」と死を覚悟した森さんは、三浦さんの姿を思い浮かべたという。「今も三浦はマンガを描いてるんだろうな。もし生きて病院から出られたら、マンガを描こう」と思ったという。
今回、森さんが8年かけて描いてきた初連載の最終回を描くゲンバに密着。最後のコマを描きあげた森さんは「不思議な感じ」と感想を漏らす。「この8年間、毎日ずっと主人公のことを考えて生活してた。まだまだ描きたい気持ちもちょっとある」と告白。さらに、作品に込められた想いも語ってくれた。「いろいろな人とのコミュニケーションによって生まれる経験は、自分の中に積もっていく。後から振り返って、経験や時間が心の中に濃いものとして残っているならば、それが聖地(=ホーリーランド)なんじゃないかなと思う」。

(c)森 恒二/ヤングアニマル

■ 第71回 2008年7月8日 放送

<作者ノゲンバ 楳図かずおスペシャル>

作者ノゲンバ

「おろち」

楳図かずお 1969年〜1970年 (小学館「週刊少年サンデー」)

『14歳』『おろち』『漂流教室』など、数々の名作を生み出した、恐怖マンガのパイオニア・楳図かずおさんがスタジオに登場。
楳図さんは恐怖を描く上で最も大事なことに“閉塞感”を挙げた。「閉じ込められた空間じゃないと“怖さ”は出てこない」。さらに、アングルなどの細かいポイントから“口が怖い”など、独自の考えを次々と語ってくれた。
楳図さんは恐怖マンガだけでなく、『まことちゃん』というギャグ漫画でも人気を獲得してきたが、「ギャグと恐怖は表裏一体。近くで見ると恐怖なのが、遠くから見るとギャグになったりする」と、恐怖とギャグの関連性について独自の理論を展開。
最後の連載作『14歳』について楳図さんは、「鶏は食用以外に意味があるのかな、何のために生まれたのかな」と想像を膨らませ、「全ての生物は、どこかで復讐する力を持っている。食べられてからの復讐が、病気なんだと思う。自然界は単純にやられるだけでは済まない」という思いを『14歳』に込めたという。
楳図さんは「マンガを描く気は無いけど、代わりに映画の仕事を進めている。しぐさなど、マンガで表せない微妙な部分を表現していきたい」と、今後についても意欲的に語ってくれた。

(c)楳図かずお/小学館

■ 第70回 2008年6月24日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ライドバック」

カサハラテツロー 2003年〜 (小学館「IKKI」)

近未来の日本を舞台に、ライドバックという乗り込み型ロボットと出会った少女が、争いの渦に巻き込まれていく物語。
レビュアーは、作家・プロデューサーの竹内義和さん。竹内さんは、かっこよさよりリアリティ重視、変形も技術的なメカ描写に加えて主人公の人物像について「ニュータイプのような突出した才能という描かれ方ではなく、使命感を持たずに巻き込まれて仕方なく乗っている主人公が魅力的。マンガはどこか等身大じゃないものを描くけど、この作品はどこをどう切り取っても等身大」と語る。
ゲストの水野裕子さんも、「本当に自分の意志なのか、周りに流されているのか、その自覚が無い人が、私たちの世代に多いのかもしれない。どうしていいのか分からないざわつきが、マンガの中にずっと流れている」と感じたという。 「そんな気もないのにデモに参加し、命を落としてしまう」という近未来の学生運動の物語が今の若者の心をとらえるのは、確たるものを持たないためフットワークは軽いが、逆に何かに巻き込まれやすい世の中になった現代社会の空気感とマッチしているのでは、と語り合った。

(c)カサハラテツロー/小学館 IKKI

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ラブラドール和田ラヂヲ」

和田ラヂヲ 2006年〜 (集英社「ビジネスジャンプ」)

独特の絵で展開される、脱力系ギャグマンガの作者和田ラヂヲさんの愛媛県松山市の仕事場を訪ねた。「最初の担当の人がすごい犬好きだったんで、『犬の名前にしましょう!』といろんな犬の名前と和田ラヂヲをくっつけてみたら『ラブラドール』が一番収まりが良かった(笑)
和田さんのネタ帳には、オチになるモノの名前や単語がずらりと並んでいる。「『オチ』から前後のストーリーをひっつけていく感じ」で描かれていくという。「絵的に面白いのが1つあると、自分の中ではOK。あとはつけたし。しょうもないネタをちゃんと描いてるな、というところで笑ってもらいたい」。
デビューは27歳の時、少し遅めのデビューだった。「それまでずっとやっていたバンドを辞めたとき、次はマンガかな、と考えた。それまでマンガは全然描いてなかった」という。「ネタが面白ければ、絵は何でもいいなじゃないか、という考えが根本にある」というポリシーがあり、松山市の仕事場から東京の雑誌編集部へFAXで原稿を送り、そのまま雑誌に掲載されていたこともあるという。「普通のFAXの方が、割と荒れて出たり歪んだりするのが、かえって味になる」。
「ギャグは、方向性がどうにでもなる。そういう自由なところが好きなのかもしれない。ツッコミを入れるとそれで終わるワンパターンしかない。10人いたら10人取り方が違う漫画の方が面白いのでは」と、ギャグ漫画へのこだわりを語ってくれた。

(c)和田ラヂヲ/集英社 ビジネスジャンプ

■ 第69回 2008年6月10日 放送

<作者ノゲンバ 武論尊スペシャル>

作者ノゲンバ

「覇 ―LORD―」

原作:武論尊 作画:池上遼一 2004年〜 (小学館「ビッグコミックスペリオール」)

『ドーベルマン刑事』『北斗の拳』『覇―LORD―』など、数々の名作を生み続けるマンガ原作の第一人者、武論尊さんがスタジオに登場。
三国志を描いた最新作『覇―LORD―』は、劉備が日本人という大胆な設定で始まる。武論尊さんにとって歴史ものははじめてだったが、「記録に書かれていることを書くだけだったら、マンガの意味が無い」「資料を読み込むほど発想にブレーキがかかる」と、あえて三国志の資料はムック本2冊しか読まなかったという。また、「先のことを考えると、それに引っ張られて、伏線だけの回ができてしまう。毎回毎回おもしろくするには先のことを考えてはダメ」というこだわりも。
「感情で書くところがあって、泣くところは文字が小さくなったりするんで、作画する池上先生に伝わりやすい」という手書き直筆原稿には司会者天野も感動!「池上先生は、いい原作を書くと、びっくりするくらい良い画を描いてくれる。良い意味での戦いのようなもの」。
また、連載開始前に訪れた内戦後のカンボジアを目にしたことが、世界観に大きな影響を与えたという「北斗の拳」の中で、武論尊さん自身が特に気に入っているキャラクターがラオウだという。「ラオウは生き方にウソが無い。確信犯的に生きる、ぶれない強さがある」。「男にとって大事なものは?」という質問には、「弱さや脆さも含めて、自分自身と正対できる勇気があるかどうか」と答えてくれた。

(c)武論尊・池上遼一/小学館「ビッグコミックスペリオール」

■ 第68回 2008年5月27日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「おやすみプンプン」

浅野いにお 2007年〜 (小学館「ヤングサンデー」)

ごく普通の町に暮らす、鳥のような姿をした謎の小学生・プンプンの成長と身の回りに起こる出来事を描いた物語。
レビュアーはフランス文学者の中条省平さん。「カフカの『変身』では、主人公が毒虫に変身するという不条理が描かれているが、この作品では級友が鳥でも全く驚かない。ここに、20世紀より21世紀の方が異常になっていることが現れている」と分析した。級友が鳥の姿をしていても受け入れられるのは、「心の余裕ではなく、他者への無関心さではないか。異常を(異常と思わずに)受け入れてしまう私たちの精神状態が集約されている」と読み解いた。作中には家庭内暴力を始め、暗い現実や悲惨な状況がリアルに描かれているが、「それを子供の目から見ることで、非現実・幻想のような世界に見えてくるし、それが救いにもなっている」という。
背景や他のキャラクターのリアルさに比べ、プンプンは非常にシンプルに描かれているが、足の描写などディテールに対する工夫で「表情が見えないのに表情を出すことに成功していて、リアルに描かれた周りと、極端に単純化されて描かれたプンプンが見事に溶け合っている」と作者の表現力を絶賛した。さらに、中条さんは登場人物の会話にも注目した。「作者は耳が良い。子供たちの会話に耳をすませていて、それをマンガの言葉として取り入れられている」。

(c)浅野いにお/小学館 週刊ヤングサンデー

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ジナス」

吉田聡 2005年〜 (講談社「モーニング」)

大きな飛行船が浮かぶとき、6日間だけ死者が蘇る・・・、謎が謎を呼ぶヒューマン・ホラー。 「大きな飛行船が空を飛んでいて、それを見たときに自分が泣いていて、とてもとても悲しかった」と、実際に見た夢を語った作者の吉田聡さん。この夢が『ジナス』連載のきっかけになったと振り返った。
吉田さんは、連載一回分ごとに膨大なメモを作って物語の展開を整理すると、ネームを作らずにいきなり原稿に下書きを始める。セリフを決めてペン入れをした段階でも、違うと思ったら1から描き直すこともあるという。また、重要なシーンで敢えて背景を描かず、人物の表情のみを描く、というこだわりがあった。「ネット裏で野球を見るとき、最初はネットが気になるけど、ゲームに熱中すると気にならなくなる。それと同じように、人物が大事な場所では背景は邪魔だし、記憶から無くなるはず。この感覚を読者にも共有してもらいたいんです」と意図を語った。
作品タイトル『ジナス(天頂、天の一番高いところ)』には、吉田さんの漫画に対する想い、理想が込められている。「天頂は、絶対届かないけど皆が行こうとしてる場所。絶対届かないところを人が見て、心の中に感じて、という思いを描くわけだから、こういうテーマは、吉田聡の身包みを剥がされているようなもの。『おまえそういうこと考えてるのかよ』というのが出る。でも、読んでくれた人に伝わるといいな、と思う」。

(c)吉田 聡/講談社

■ 第67回 2008年5月20日 放送

<作者ノゲンバ 西原理恵子スペシャル>

作者ノゲンバ

「毎日かあさん」

西原理恵子 2002年〜 (毎日新聞社「毎日新聞」)

「ぼくんち」「毎日かあさん」「まあじゃんほうろうき」など、全てをさらけ出すエッセーマンガから思わず涙を誘う作品まで、幅広い作風が支持される西原理恵子さんがスタジオ出演!
最新連載『毎日かあさん』は、「育児も出産も描く気が無かったけど、そのうち、子供が想像つかない行動と言い訳をし始めた」のがきっかけで生まれた。「雑誌やテレビは良い子ばかり出ているけど、(そんなふうに育てなければならないなら)私なんか困ってしまう。死ななきゃいいじゃない、元気でいいじゃない」という西原さんの考えに共感した読者からの手紙も多いという。
「私はお笑い漫画家。人様の不愉快にならないように、笑って頂けるものを描きたい」という西原さん。「自分は仕出し屋さんだというイメージがある。余った場所におしんこを入れておくように、マス目がちょっと余ったらそこに何かを描きたい。それで読んだ人が得した気分になれたら」。
また、高知県出身の西原さんは、代表作『ぼくんち』については「東南アジアから沖縄、高知に流れて紀伊半島で止まる、マグロと共にやってきた黒潮文化の笑い」と表現した。「登場人物のモデルは全体的に私なんじゃないかと思う。局面ごとに、心の中にある『悔しかったレポート』『悲しかったノート』からほじくり出して描いていた」。

(c)西原理恵子/毎日新聞社

■ 第66回 2008年4月29日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「GIANT KILLING」

作:綱本将也 画:ツジトモ 2007年〜 (講談社「モーニング」)

サッカークラブの監督を主人公に、監督や経営側、ファンなどさまざまな視点から描いた新しいタイプのサッカー漫画。
レビュアーはスポーツジャーナリストの中西哲生さん。「サッカー選手から見ても、作品全般に渡ってリアル。蹴っているフォームから、ドリブルのリアリティ、ワンツーパスのリアリティなど、よくここまでディテールを再現しているなと思う」と感嘆した。
「サッカーにおいて、監督は絶大な影響力を持っている」と語る中西さんは、自身が名古屋グランパスに在籍していた当時、チームを指揮した世界的名将・ベンゲル監督を敬愛する。「監督一人であれだけ変わるんだな、と驚いた」と当時を振り返り、作品の主人公との共通点を見出す。「『一試合ごとに切り替えられないと、シーズンは闘えない』というセリフからも、メンタルの部分が変わらないといけない、と考えることの重要性は、(ベンゲルの元でプレーした)自分の経験からもよく分かるし、彼の監督としての才能が上手く描けているなと感じた」。
中西さんは、この作品を通してサッカーの魅力をより深く知ることができると語る。「実際のサッカーの試合でも、監督がどう考えているのか、普段いかに多くのことをやっているのかが分かる。よりサッカーの魅力にハマれる作品だと思う」。

(c)綱本将也・ツジトモ/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「アベックパンチ」

タイム涼介 2007年〜 (エンターブレイン「コミックビーム」)

女の子と無縁の高校生2人、ヒラマサとイサキが、“アベック”という謎の格闘技と出会うことで始まる、熱くて不器用な男たちの青春物語。
作者のタイム涼介さんは、「恋愛をメインのテーマに描きたいと考えたけど、恋愛はそう簡単に始まるもんじゃない、という思いがあった」「恋愛に遠ざかっていた二人が、やや強引に、恋愛にこぎつけるまでを詳しく描きたかった」と語った。その思いから生み出されたのが、男女が手を握りながら闘う架空の格闘技“アベック”だった。タイムさんは「アベックという格闘技から、単純に強い者同士が、本当に愛し合っている二人に勝てるのか、といた恋愛の絆が描けるのかな」と思ったという。
デビュー以来、作者のタイムさんは短編ギャグを描いてきたが、ヒットに結びつかなかった。ところが、『アベックパンチ』の前作『あしたの弱音』の連載中、タイムさんは大きな転機を迎えた。「これで生きていくなら、言い訳できないくらいに全てを出す。それができないなら、辞めるしかないな、と考えた。そこから、描き方やマンガに対する気持ちが変わっていった」。『あしたの弱音』の中盤以降は、1話読み切りのギャグからストーリー仕立ての青春ドラマへと変化。こうして自らの方向性をつかんだタイムさんが、次に描いた作品こそ『アベックパンチ』だった。
タイムさんはマンガを描くにあたり、このキャラはどう考え、どう行動するかを常に頭の中で探り、1コマずつノートに描いて物語を組み立てる。今では「主人公の二人に描かされている感じ。彼らの人格が、自分の中で本当にいるような感覚ができあがってきた」という。今後の展開についてタイムさんは・・・「主人公の2人に頑張ってもらって・・・、ヒラマサにはとことん突っ走ってもらって、後はイサキに任せます」。

(c)タイム涼介/エンターブレイン

■ 第65回 2008年4月22日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「エマ」

森薫 2002年〜 (エンターブレイン「コミックビーム」)

19世紀末のイギリスを舞台に、根強く残る階級社会の中に生きる、清楚で魅力的なメイド・エマの恋と波乱に満ちた人生を描いた作品。
レビュアーは恋愛コラムニストのにらさわあきこさん。にらさわさんは、19世紀イギリスの細やかな描写や骨太のストーリーに加えてこの作品ならではの魅力を「ヒロインはセリフや独白で心情を多く語らないが、美しいシーンの1つ1つから学び取れることが多い。“女子力”がアップする作品」と語る。「女性は恋をすると、そのことで頭がいっぱいになって日常生活に自分らしさが出せなくなり、恋がトーンダウンしてしまう。しかしエマではセリフが少ない分、日常のシーンが丁寧に描かれ、恋愛もしているけれど、どんな状態になっても毎日の日常をしっかりと生きる凛とした姿を感じる。実は恋愛以外の日常を丁寧に生きるのが女子力を高めることが、この作品を読むと自然と伝わってくる」と語るにらさわさん。
さらに、にらさわさんはエマの1つ1つの行動から恋愛に効果のあるものをチェック!例えば「エマは、ウィリアムのそばに忍び寄るように、急に現れる。こういう行動に男性はドキッとするのでは」。にらさわさんが行ったという恋愛調査でも、「男性は、半径1m以内、手を伸ばせば届く範囲内にいる女性を意識するという結果が出ている」そういう恋愛力学にもかなった行動を「エマは無意識にやっているので、読む側も素直に勉強できる」。エマがメガネを外したり、結わえた髪を解くシーンもしかり。「一回会っている間の中でさりげなく変化をつける。これも覚えておきたい効果的な行動! と語った。

(c)森薫/エンターブレイン

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ホタルノヒカリ」

ひうらさとる 2004年〜 (講談社「KISS」)

恋愛するより家で寝ていたい、という現代の若い女性の本音を赤裸々に描き、“干物女”という流行語を産んだ、20代OLの恋と仕事、日常を描いた物語。
ひうらさんは、「連載前、恋愛や合コンにやる気が無いけど、そのことに悲壮感も無い20代の女性が多い。そういう価値観が新鮮で、魅力を感じた」と語る。そこから生まれたのが、主人公・蛍というキャラクターだった。
18歳でプロデビューし、少女漫画の王道物語を描いてきたひうらさんだが、今回の作品はリアルな現代女性の生活観に重きを置いている。「家で女の子がダラダラしているのは、マンガやドラマで描かれてきたけど、まだまだ生ぬるいと私は思っていた。どうせ描くなら徹底的にリアルを追求しよう、と。描いたら、『私もこうしてる』という反響が多かった」。
エピソードは、主人公・蛍と同年代の女性友達との会話の中からヒントを得ている。「リアルな会話の場で聞いて『こういう子もいるんだ』と感じると、心が動くし、発想が広がる」。 これからの“干物女”・蛍について、ひうらさんは展望を語ってくれた。「恋愛を通して、人の気持ちを考えたり、他人に心を配ることに頑張り、学んでいければ」。

(c)ひうらさとる/講談社

■ 第64回 2008年4月15日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「蔵人 ―クロード―」

尾瀬あきら 2005年〜 (小学館「ビッグコミックオリジナル」)

日本人の曽祖父を持つアメリカ人、クロードが、幻の日本酒を復活させようと島根県・松江市の酒蔵で奮闘する物語。
レビュアーの、精神科医・名越康文さんは利き酒会で、登場人物たちが日本酒を飲み比べ、一等賞から最下位まで順位をつけるが、品評のあとの懇親会で料理を食べていると最下位の酒が好んで飲まれていたシーンに注目。料理によって変化する口の中の環境で、魅力を発揮する味、そしてそれを感じ取る人の感覚。賞で絶対的に評価できない、相対的な味の世界をこの作品が説得力をもって表現していることに感心した。さらに、最下位の酒をねだる男性が“どんくさい酒がほしい”と表現する場面で、「頭ではまだ『どんくさい酒』と思っているのに、体が無意識的にその酒を求める」姿は、本当の自分探しが何かを考えるヒントになるという。
“自分はこんな人間なんだ”と頭で紋切り型に判断しがちだが、「例えば、今まで不味いと思っていたものを美味いと感じるようになるなど、(頭よりも)感覚の方が先に成長し、自分の感性・感覚が成長するにしたがって、自分というものが分かっていく」ことがこの作品にはうまく表現されている。だから「自分探しとは何なのか、それを上手く表現しているマンガかもしれない」と名越さん。
また、「いまどきここまで誠実な日本人はいない」と苦笑するほどひたむきな外国人クロードの姿に、「外国人の目を通すことで逆に日本、日本酒をきちんと描いていけるのかもしれない」「ジェットコースターのように激しく動く物語ではないが、いつのまにか日本酒に詳しくなり、飲みたくなるマンガ」とゲスト室井佑月さんらと盛り上がった。

(c)尾瀬あきら/小学館 ビッグコミックオリジナル

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「単身花日」

いわしげ孝 2006年〜 (小学館「ビッグコミック」)

単身赴任先で初恋の人と再会した30代男の、切なくも危ない恋模様をスリリングに描いた作品。
作品のテーマ“初恋”を「鳥や動物の刷り込みに近いと思う。初恋の女性が、男のその後の女性観を決定づけてるような気がする」と語るいわしげさん。
大人の恋愛を描くにあたり、「30代40台の青春って何だろう、と考えたとき、初恋の人との再会がまず浮かんだ」という。「男にとって、初恋の人は神様。かつての神様が悪魔になったり、また神様になったりと印象が二転三転する女性ならドラマができる」。
描く際に最もこだわるのはヒロインの花。気に入らない部分は何度でも手を加え、いかに憂いのある雰囲気を出すかにも心を砕く。「喜びの中に憂いがあったり、一筋縄ではいかない女性にしたいという思いがある」。女性読者からは、花に共感できない、という意見が多いそうだが、「女性には嫌われて欲しいという狙いがあったから嬉しい。最後、大逆転の展開を考えているから、いったん思い切り嫌われてくれた方がいい」と語った。「歌やドラマで“愛されるよりも愛したい”という言葉があるが、愛するためには愛される喜びの実感が無いと愛せないんじゃないか、という思いがある。そのことを、桐野花に託して描いたところもある」。

(c)いわしげ孝/小学館 ビッグコミックス

■ 第63回 2008年4月8日 放送

<作者ノゲンバ 細野不二彦スペシャル>

作者ノゲンバ

「電波の城」

細野不二彦 2006年〜 (小学館「ビッグコミックスピリッツ」)

「Gu-Guガンモ」「ギャラリーフェイク」などの大人気作を生み出し、最新連載「電波の城」でもお馴染みのヒットメーカー・細野不二彦さんがスタジオに登場!
最新作「電波の城」では、「城」という言葉にテレビ局の巨大さと、「中でいろいろ戦いがあるんじゃないかな」というイメージを込めたという。城の中で闘いに勝ち抜いていくヒロイン。「生放送で河童の川流れをしながら天気予報をする」など無理難題をヒロインが与えられるシーンを描くときには、その解決方法は全く考えていない、むしろ自分でも解決方法が思いつかない困難な設定を先に連載で描いてしまう、という細野さん。「読者が読んでいて、こうなるのかな、と思う予想を外していくには、それが一番。」また、「感情の高ぶりを出す大事な表現」としてキャラクターに膨大な汗や涙を描きこむのもこだわりだという。
「編集部からのファミリーのギャグ漫画という発注からはじまった」という大ヒット作「Gu-Guガンモ」は「コロコロしたキャラが好き。そういうキャラをつくってヘンなことをさせていこう」という発想のもと、キャラクターに引っ張られて物語はできていった。その後、青年誌へと進出し、ストーリーものマンガの新境地へと挑戦。画廊のオーナーが活躍する代表作「ギャラリーフェイク」では、名画の特徴や背景を調べ、自ら何かを発見することでストーリーを生み出していた・・・等々創作法もかわっていったという。根底にあるのは「今までやっていないものを描きたい」という気持ち。
「今後、時代劇など、これまでやっていないジャンルにもチャレンジできたら。」

(c)細野不二彦/小学館

■ 第62回 2008年3月4日 放送

2008年「作者ノゲンバ」総集編(後)

■ 第61回 2008年2月26日 放送

2008年「作者ノゲンバ」総集編(前)

■ 第60回 2008年2月12日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「よつばと!」

あずまきよひこ 2003年〜 (メディアワークス「電撃大王」)

天真爛漫な女の子・よつばが毎日、何かを発見しながら過ごす、ご近所の人たちや父親、友達らとの何気ない日常を描いた物語。
レビュアーの書評誌編集長・横里隆さんは、「1巻から5巻までをかけて夏休みという日常をすごく丁寧に描いているので、話に入り込むことができる」と語る。さらに、背景の描写の緻密さ、丁寧さは、「よつばとという箱庭を作者が丁寧に作って、そこに読者を導いてくれる。読者はよつばと一緒に、その美しい箱庭を楽しめる」。さらに、「よつばの住んでる世界が美しい、ということを表現していると思う。そこに入ることで、美しい世界を一緒にじんわり体感できる」と絶賛した。
また、「作者は、意図的によつばの視点だけでは描いていない」ことにも注目する。この作品には、「主人公・よつばと周囲の大人、2つの視点があり、発見の喜びと、ノスタルジックな切なさ、その両方を同時に持つことができる」と読み解いた。

(c)KIYOHIKO AZUMA/YOTUBA SUTAZIO

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「Real Clothes リアル・クローズ」

槇村さとる 2006年〜 (集英社「YOU」)

デパートの婦人服売り場を舞台に、主人公・天野絹恵が仕事に恋に悩みながらも成長していく物語。
デビューして35年を迎える槇村さとるさんは、作品を描く際、「自分を知ってください」というテーマをいつも持っていると語る。リアルクローズを描くにあたって、現場の空気を肌で感じるため、デパートの婦人服売り場を訪れる。そこで働く人と接したり、女性バイヤーに取材を行ったりして、現場で働く女性の本音を聞きだしている。
槇村さんの代表作「愛のアランフェス」は、巧みなセリフやモノローグが読者から支持された。リアルクローズでも鋭く読者の心に響くセリフが多い。「煮詰まっているな、爆発したいんだな、という女性を見ると、『読んでね』、という感じ。もっと自由に、自分自身で選んで人生を切り開いていく、そういう人だけのために描いています」。
槇村さんは、洋服が女性に力を与えていると信じ、そして女性の内面と服装は切り離せないことを気づいて欲しい、という思いを込めて描いている。「自分を表現するために服を使うことができる。自分と合うデザイン、色、もっと広げると、自分と合う部屋、男性、ライフスタイルとか・・、そういうものを力まないでまとえる女性というのが、私の理想なんです」。

(c)槇村さとる/集英社

■ 第59回 2008年2月5日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「昴 ―スバル―」

曽田正人 1999年〜2002年

「『MOON』昴 ソリチュード スタンディング」

2007年〜 (小学館「ビッグコミックスピリッツ」)

さまざまな悲しみを背負ったバレエの天才少女が、運命に翻弄されながらも生きていく物語。
レビュアーは舞台演出家の竹内一郎さん。作者の曽田さんを「“天才”を描く天才」と評する。「能力の高さではなく、主人公の感情に移入してマンガを読むからこそ、主人公の絶望の底、慟哭の状況をまず見せてほしい」と語る竹内さんは、作者について「絶望を描くところに特徴がある。絶望のどん底から這い上がる、触れ幅の大きさに目をつけたのではないか」と分析。主人公・すばるが泣き叫ぶ姿に、「骨格、輪郭さえも変えて、作者固有の慟哭の表現に至っている。この絶望があまりにもどん底だから、才能の頂点に達したとき、突き抜けた天才になっていく」と読み解いた。
また、作者・曽田さんの特徴として「他の人がやってないことをやろうとし続けている」ところに魅力を感じるという。「本来音楽の無いマンガに音楽を注入している。(コマ割り、コマの)『タン、タタタン』というようなテンポが、私たちの心にリズムを呼び覚ます。それをネームに込めているのも新しいのではないかと思う」。

(c)曽田正人/小学館「ビッグコミックスピリッツ」

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「レッド 1969〜1972」

山本直樹 2006年〜 (講談社「イブニング」)

1970年代、学生運動に没頭し革命を目指した若者たちの生き様を描いた物語。
作者の山本直樹さんは、「世の中をマシにしようと思っている内に、逆のことをやってしまう、その心理はスゴいな、と。自分の中では結論が出ていて、理屈が地面から足が離れると、人間は“狂気”の方向へ行ってしまう」と、およそ40年前のできごとを今描く思いを語った。山本さんはこれまで、エロスを通して人間を描いてきたが、レッドでも、「人の生き死にやグロテスクな暴力が描かれる時、今までエロをやっていて出てきた(人の心に棲む)化け物が出てくる、かもしれない」という。
山本さんは作品を描く際にパソコンしか使わず、人物から背景まで全て1人で描いている。細く均一な線が特徴だったが、レッドでは、丁寧に描かれた背景に人物が負けないよう、線の太さに強弱をつける新しい試みを行っている。また、作中の登場人物には、活動を行う中で死んでいく順番がふられている。これは、「こんなに楽しそうに仲間と笑っているのに、何番目に死ぬという予告を出すことで、より残酷に出来る」ためだという。
時に山本さんは、レッドの時代をよく知るフォークシンガー・三上寛さんのライブを楽しみ、当時のことを語り合う。

(c)山本直樹/講談社

■ 第58回 2008年1月22日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「俺はまだ本気出してないだけ」

青野春秋 2006年〜 (小学館「IKKI」)

会社を辞め、アルバイトをしながら漫画家を目指す中年男の物語。
レビュアーは精神科医の名越康文さん。主人公・シズオのキャラクターを「すごくリアルだし、しかも自然体だから読む人をゾッとさせる」と分析。「人間ってムダに生きてるだけじゃないか、という思いをうまく引き出してくれる作品はなかなか無い」。また、社会に適合できない若者・市野沢がシズオに惹かれてしまったり、家族がシズオをしょうがないな、と認めてしまっている点に注目する。「シズオがいることで醸し出されている『人生の踊り場感』がある。一旦停止して、ここでなら休憩できる、と感じさせる」と読み解いた。さらに、この作品には哲学的な深い問いかけをも感じるという。「僕たちは、ここで生存しているだけでは何の意味も無いのだろうか、そういう不安に心の深いところで苛まれている気がする。でも、人間は存在しているだけで、周りの人間に影響を与えうる。そういうものを描こうとしているんじゃないだろうか」。

(c)青野春秋/小学館 IKKI

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ZOO KEEPER」

青木幸子 2006年〜 (講談社「モーニング」)

舞台はとある人気動物園。新米女性飼育委員を軸に、動物と人との関係から人間社会までを幅広く描いた物語。
作者の青木幸子さんは、編集長が口にした「問題提起」というキーワードから、「生き物が生き物を飼うことのエゴ」をテーマにしようと考え、この作品が生まれたという。作者自身が気に入っているというエピソードの1つ、チーター編は、「誰でも知っているチーターがすごく速い、っていうのが見たことない、見たいな」という発想が元になっている。取材では、動物園にも足を運び、飼育員にも話を聞く。さらに、躍動感溢れる動物の絵を描くため、青木さんは1つのシリーズに取り掛かる前に、必ずスケッチをする。「骨格と筋肉のつき方を分かってから描き始める」ことで、動物のあらゆる動作が描けるようになるという。
「野生動物を見て綺麗、美しいと想うけど、では惹きつけられるのは何でだ、という部分。『命より惹きつけられる未知はない』というものを頭に置いて描いている」と作品に込めた想いを語った。

(c)青木幸子/講談社

■ 第57回 2008年1月15日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「7SEEDS」

田村由美 2001年〜 (小学館「月刊flowers」)

人類の存続をかけ壊滅した地球で生きようとする若者たちを描いたSF作品。
レビュアーは恋愛コラムニスト・にらさわあきこさん。作品中の“冬の章”に登場する男性キャラ2人の関係に、「頼るだけでなく、守られる側の存在の大切さが描かれている」と分析。さらに、恋愛の場合は「男性は守る側、女性は守られる側から入るのがスムーズで、最初から女性が守る側だと、男性の守りたい本能を刺激しなくなってしまう」と、恋愛の秘訣まで読み解いた。
また、登場人物の美鶴が、愛する人を想って舞うシーンに「恋愛の美しさが表現されている」と注目する。「少女マンガには珍しく、全体的に“黒”の割合が多い中で、このシーンが際立つ“白”で描かれることによって、『こんなに恋愛って素敵なんだ』と気づかせてくれる」。

(c)田村由美/小学館フラワーコミックス

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ライアーゲーム」

甲斐谷忍 2005年〜 (集英社「ヤングジャンプ」)

巨額の金を賭けたマネーゲームで、騙し騙される、行き詰る心理戦が展開されるサスペンス作品。
作者の甲斐谷忍さんは「僕は基本的に心理戦は苦手」と告白。「駆け引きに強い人間になりたいという願望が培われてきた」と自己分析し、駆け引きを利用するオリジナルのゲームをいくつも作り出した。ドライブやプールでのウォーキング、時にはソファーで横になって睡魔と闘いながらアイデアを生み出している。また、大学の工学部でプログラムを学んだ甲斐谷さんは、“リストラゲーム”を作る際、「主人公が不利な場面からどうやって逆転できるか、フローチャートを作って考える。こういう作業が、マンガを作る中で一番楽しい」という。心理の駆け引きが問われる作品で、一見向いていないような正直者の直を主人公として描いたのには理由があった。「最終的には『直のような人間が本当は強いんだ』と読者に思わせられれば、このマンガは成功だと思う」。

(c)甲斐谷 忍/集英社

■ 第56回 2008年1月8日 放送

<エムズ・カフェ祭り>

エムズ・カフェ祭り

「リングにかけろ」

車田正美 1977年〜1983年 (集英社「週刊少年ジャンプ」) (c)車田正美/集英社

「鉄子の旅」

菊池直恵 2002年〜2006年 (小学館「IKKI」) (c)菊池直恵・横見浩彦/小学館IKKI

「最強伝説黒沢」

福本伸行 2003年〜2006年 (小学館「ビッグコミックオリジナル」) (c)福本伸行/小学館「ビッグコミックオリジナル」

 08年最初の放送は、司会の2人とゲストの関根勤さんがそれぞれ思い入れのある作品を語る“エムズ・カフェ祭り”。
天野ひろゆきさんが選んだ作品は、迫力ある戦いに必殺パンチが飛び出す大人気ボクシング漫画「リングにかけろ」。主人公ら中学生ボクサーと神が戦う壮絶な展開に、「ここまでいったボクシング漫画は他にあるでしょうか!?」と力説。必殺技を身につけるための特訓や、愛する女性のために戦うシーンからは「ずいぶん男気を学んだ」という。
豊岡真澄さんは、「鉄道好き」にスポットを当てた鉄道旅行ルポ漫画「鉄子の旅」を紹介。自他共に認める鉄道好きの豊岡さんは、作品に描かれた鉄道旅行の魅力を熱くプレゼンする。実は豊岡さん自身も作中にゲストとして登場しており、「脚色しているかと思ったけど、マンガ通りの熱い人だった」と案内人・横見さんとの思い出を振り返った。
関根勤さんが挙げた一作は、冴えない中年男性が辛く悲しい日常を奮闘する「最強伝説黒沢」。福本作品のファンで、「読むときは入り込んで読んじゃう、いつも汗がびっしょりになる」と語る関根さんは、人望が欲しいと叫ぶ黒沢の『アジフライ作戦』を思いいれたっぷりに紹介。「いろんなマンガを読んできたけど、こんなダサい主人公は初めて」と唸る。主人公・黒沢が叫ぶ数々のメッセージに「福本先生はいろんな人にメッセージを送ってると思う」と語った。

■ 第55回 2007年12月18日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「とめはねっ! 鈴里高校書道部」

河合克敏 2006年〜 (小学館「ヤングサンデー」)

半ば無理やり書道部へと入部させられた、帰国子女で達筆の男子高校生・大江縁と、縁を怪我させてしまったため書道部に入部するはめになった柔道部のホープで字がド下手の望月結希。2人は書道の基本を学びながら、奥の深い書の世界にのめりこんでいく。
レビュアーは書道家の武田双雲さん。「書道が『なんだかよくわからないもの』というところから物語が始まっているのが、個人的にが面白かった」と武田さん。書道を高校生の日常に落とし込むストーリー作りのうまさを評価する。一方で、大きな書を書き上げるシーンに注目。「書く時の身体の動きが見事に表現されている」。

(c)河合克敏/小学館・週刊ヤングサンデー

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「神の雫」

亜樹直&オキモト・シュウ 2004年〜 (講談社「モーニング」)

世界的なワイン評論家・神咲豊多香の遺言状には、彼が選んだ12本のワイン「十二使徒」と、その頂点に立つワイン「神の雫」が言葉で表現されていた。その銘柄と年代を当てた者に豊多香の遺産が譲られると記されていたため、彼の息子・神咲雫と若手のワイン評論家・遠峰一青の戦いが始まる。「作者ノゲンバ」にマンガ原作者が初登場。亜樹直さんは、実は姉弟のユニット名。2人の共同作業で原作を書いている。「作品を始める前からワインに入れ込んでいた」という2人。ワインを保管するためだけにアパートを一室借りるほどだった2人は、ある日ワインについて様々な言葉で語りあううちに、「言葉と絵によって、ワインの中にある不思議な物語を秘めた世界観を表現することができるんじゃないか」と閃いたという。実際のストーリー作りは、2人がワインを飲みながら味を表現しあい、その言葉を拾うところから始まる。作画を担当するオキモト・シュウさんとの打ち合わせでは、人物の表情に細かいこだわりを見せる。「ワインという生き物のような飲み物を通して、人生のあり方を捜し求めたい」。

(c)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社

■ 第54回 2007年12月11日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「アレルヤ」

能條純一 2006年〜 (小学館「ビッグコミックオリジナル」)

人気絶頂のバイオリニスト・有馬公平は、ある日天才的な才能を持つ路上バイオリニスト・響と出会う。響に嫉妬心を燃え上がらせる有馬。二人は世界的指揮者と競演するためのオーディションでしのぎを削る。
レビュアーは劇作家・演出家の竹内一郎さん。「一般的にマンガは音楽を表現するのが苦手だが、この作品は演奏するさまで音楽を思い描くことができる」と評価する。バイオリンの共鳴穴から音符が湧き上がってくる描写は、「作者ならではの新しいマンガ表現。聞こえない音楽を想像させるのが、この作品の豊かさ」と語る。さらに竹内さんは、作者能條さんが一貫して描き続けてきた主人公像にも注目。「アウトローの天才が、正規の教育を受けた秀才を破っていく。世に見捨てられた人たちへのエール。それが能條作品、『アレルヤ』の魅力になっている」。

(c)能條純一/小学館「ビッグコミックオリジナル」

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「TOUGH」

猿渡哲也2003年〜(集英社「ヤングジャンプ」)

1993年から連載が始まったヒット作「高校鉄拳伝タフ」の続編。最強の実践的古武術として名高い灘神影流の継承者の家庭に生まれた高校生、宮沢熹一が主人公。再起不能の重症を負った父親の治療費を稼ぐため、闇の賭け試合で戦っていた主人公に、最大の格闘技イベントに出場するチャンスが訪れる…。
熱い男の戦いを描き続けてきた作者の猿渡哲也さん。「マンガは読者との勝負。作品で読者をねじ伏せたい。いい意味で裏切りたい」と語る。デビューした頃、女性を描くのが苦手だったため、「女性が出てこないマンガを描こう」と、男たちのハードな戦いを描く路線に転じて人気を獲得した。格闘技を題材にするにあたって、主人公の肉体をいかに表現するかに強くこだわった猿渡さん。格闘家の船木誠勝さんに出会い、「船木さんの体はすごく綺麗。オレのマンガの理想みたいな所がある」と感動したという。その後プロの格闘家との交流も広がり、プライベートで彼らに技を掛け合ってもらいながら、リアルな動きや技のかけ方の参考にしている。原稿の完成度を上げるため、まず絵を全て完成させてから吹き出しとセリフを入れるというこだわりを持つ猿渡さん。「ある程度リアルなものを描けるから、大げさな表現も説得力が出てくる」。

(c)猿渡哲也/集英社「ヤングジャンプ」

■ 第53回 2007年12月4日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「GANTZ」

奥浩哉 2000年〜 (集英社「ヤングジャンプ」)

電車に轢かれ、死んだはずの主人公・計。しかし計は不思議なマンションの一室に「転送」される。そこには計のように一度死んだ人間が集められていた。計たちは謎の物体から身体能力を高めるスーツや武器を与えられ、目的も分からないまま強制的に宇宙人と戦わされることになる…。
レビュアーは作家・プロデューサーの竹内義和さん。「テーマは『不条理』そのもの」と語る竹内さんは、主人公が暴力に覚醒していくシーンに「人間としての『成長』ではなく『後退』が描かれている」と見る。さらに「作者は、このマンガに登場するゲーム的格闘シーンがいかに虚無的か、現代社会へのアンチテーゼとして描いているのでは」と読み解く。また、竹内さんは作者の画力を絶賛。「まるでハリウッド映画のような緻密な絵づくりがすごい」。

(c)奥 浩哉/集英社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「夜は千の眼を持つ」

上野顕太郎1998年〜(エンターブレイン「コミックビーム」)

さまざまな実験的手段を試み、ありとあらゆるものをギャグとして描いた異色のギャグマンガ家・上野顕太郎の巨大短編集。
作者の上野顕太郎さんは、作品のほぼ全てを1人でコツコツ描いている。手間のかかることであっても面白ければ試すという上野さん、見開きページに5万人の群集を手書きで描いた時は、完成まで半年かかったという。「“喫茶店に5万人"みたいなアイデアは、思いつく人は他にもいると思うんですけど、やる人がいなかった。だったらやられる前にオレがやろう、と」。さまざまなパロディを作品に織り交ぜる上野さんの原点は、自宅にある膨大なマンガコレクション。名作の単行本だけでなく、様々な漫画家が出した「マンガの描き方」本までコレクションするのが上野さんらしい。パロディ作品を描く時は、ネタ元となる漫画家の絵のタッチを細かく研究。自分のものにしてから描き始める凝りようだ。「ストーリーマンガと比べてページ数が少なく、なかなか単行本が出ない中、頑張っているギャグ作家は偉い。…偉いとあまり言ってくれないから自分で言うしかない(笑)」。

(c)上野顕太郎/エンターブレイン

■ 第52回 2007年11月13日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ぼくらの」

鬼頭莫宏 2004年〜(小学館「IKKI」)

夏休みに自然学校で海にやってきた15人の少年少女たちが、探検に繰り出した洞窟で、ココペリと名乗る謎の人物と出会う。ココペリと15人は契約を結び、巨大ロボット「ジアース」に乗り込んで、地球を守るために闘うことに。しかし、その闘いが命を懸けたものであるとは、15人の少年少女たちはまったく気付いていなかった…。
レビュアーは書評誌編集長の横里隆さん。「スケールの大きな戦闘シーンと、まるで『中学生日記』のような少年少女の細やかな日常の描写が見事に融合している」と絶賛する。特に、幼い弟や妹を守るために戦う決意をするダイチのエピソードに感涙したという横里さん。「自分が死ぬかもしれないと実感したときに、こんなに周囲がかけがえのないものだった、と気づく過程が丁寧に描かれている」。しかしこれは「戦争に赴く若い兵士たちを説き伏せるレトリックと同じものを感じた」とも指摘。「そのレトリックに巻き込まれてはいけない、との思いもある。自己犠牲の美しいエピソードで終わりではなく、そこから始まるものがもっとたくさんある。タイトルの『ぼくらの…』の後に何が続くのか?は、作者から読者へと投げかけられた問いかけだと思う」。

(c)鬼頭莫宏/小学館 IKKI

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「センゴク」

宮下英樹2004年〜 (講談社「ヤングマガジン」)

舞台は戦国時代。主人公は美濃斎藤家の家臣、仙石権兵衛秀久。織田信長に敗れた仙石は、信長の家臣となり、戦国時代を生き抜いていく。
戦国武将では織田信長が一番好きだと語る宮下さん。センゴクを主人公にしたのは「外から見た方が信長の苦悩や孤独感を描ける」からだという。この作品は、登場する戦国武将たちを独自の解釈で描いているのも話題となった。例えば、老練な人物として描かれることが多い徳川家康の若き日を、豪快で情に厚い血気盛んな若者として描いている。これは、負け戦で恐怖におののく自らの姿を描かせたという家康の肖像画を見て、「老年になって、若い家臣たちに『俺も昔は失敗した』と説いているエピソードが浮かんだ」のがきっかけ。「人間は変わるもの、という思いが強いので、定説と真逆の家康像を描いてみた」。また、合戦の描写にもこだわりをみせる。イメージを膨らませるため、実際に古戦場に赴いて地形や周囲の環境を体感してゆく。「読者を歴史の舞台に立たせて、武将たちと同じ気持ちにさせて、熱い気持ちにさせるのが僕の一番の目的」。

(c)宮下英樹/講談社 ヤングマガジン

■ 第51回 2007年11月6日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「潔く柔く」

いくえみ綾 2004年〜 (集英社「クッキー」)

オムニバス風の恋愛短編集だが、共通する登場人物が各話で意外な接点を持ちながらストーリーがつながっていくという、ユニークな作品。
レビュアーの恋愛コラムニスト・にらさわあきこさんがスタジオで解説。作中に登場する女の子たちが「No」を言わず、とりあえず恋愛に飛び込んでしまう部分に「思春期ならではの気持ちの揺れ」が見事に描かれていると指摘。大人の立場で読むと、「こういう『飛び込む勇気』を忘れちゃいけない、と気づかされる」。様々な登場人物が間違ったり失敗を重ねることで正解に近づいていくストーリーは、にらさわさんの自論でもある「女性は恋愛で成長する」を見事に描いているという。また、「女性が男性の手を見るシーン」にも注目。「女性は触れ合いたいと思うので、手をよく見るものだ」とにらさわさん。「作者の描く絵は、手の表情が豊か」だと評価する。

(c)いくえみ綾/集英社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「花よりも花の如く」

成田美名子2001年〜 (白泉社「メロディ」)

主人公は23歳の若き能楽師・榊原憲人。神主・弓道一家の父方と能楽師一家の母方という家族に生まれ、2歳から修行を始めた憲人は、師匠や内弟子仲間、家族、新しく出会う人を通じ、能楽師として、また、人間として一歩ずつ成長していく。
以前から能が好きだったという作者の成田さんは、最初に能楽を鑑賞した際に「無駄をそぎ落とした最低限の表現」に圧倒されたと語る。作品には「能を知らなかった人に、能って面白いのかな?と思ってもらえたら」との思いを込めているという。作品を描き始めるにあたり、能の装束の柄や能楽師の細かい所作などを一から全て勉強。能の装束は特殊な柄なので、既存のスクリーントーンは使えず、オリジナルのスクリーントーンを作るなどの工夫を重ねている。今でも執筆の合間を縫って年間100番の舞台を鑑賞する成田さん。能楽師との交流からも意外なエピソードが生まれ、作品のディテールに活かされているとのこと。「人間ってこんなことまで出来るんだ、と思いたい。そういう気持ちを読んだ方に持ってもらいたい」。

(c)成田美名子/白泉社

■ 第50回 2007年10月16日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「山へ行く(シリーズ ここではない★どこか[1])」

萩尾望都 2006年〜(小学館「月刊フラワーズ」)

パラレルワールドや“普通には見えないもの"をテーマに綴られた短編集。レビュアーはフランス文学者の中条省平さん。「この短編シリーズを貫くテーマ『見えないものへの恐れ、畏怖の念』が各作品に表現されている」と指摘。「萩尾望都の技法の全て、創作を貫く重要なテーマがくっきりと浮かび上がった1冊」と語る。特に、巻末に収められた『柳の下』という作品に強い感銘を受けたという中条さんは、「題材としては伝統的なものを扱いながら、コマ割りが革新的」と絶賛する。各ページに上下2段ずつという非常にシンプルなコマ割りの狙い、各コマの画面構成の狙いを解説。柳の木が季節と共に変化する姿にヒロインの心情を重ね合わせているなど、「結末に至るまで様々な計算が積み重ねられている」という。「結末が分かった後も、2度3度と読んで色々な発見がある。作者の短編の中でも代表作に値する傑作」。

(c)萩尾望都/小学館

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「JIN ―仁―」

村上もとか2000年〜 (集英社「スーパージャンプ」)

病院に勤務する脳外科医・南方仁は、ある日幕末の江戸へとタイムスリップしてしまう。仁は戸惑いながらも、現代医学の知識を生かして、江戸時代の人々を救っていく…。
村上もとかさんは、子供の頃、歴史好きだった父親の影響で、時代物への関心を持つようになった。ある日江戸時代の性病に関する本を読み、遊女の寿命の短さに驚いたのがきっかけで「JIN」を書き始めたとのこと。「寿命の短い江戸の人たちの人生観はどんなものだったんだろう、とすごく興味がわいてきた。さらに、そこに現代の医者がいたら、何を感じるだろう」。村上さんが特に作画で力を入れているのが、各話冒頭の見開きページ。そのエピソードの舞台となる江戸の情景を、いかにリアルに、印象的に描くか腐心している。「高度な医療も薬も無い中で、現代より寿命ははるかに短いが、江戸の人々は人生を謳歌しているように思える。そうした江戸の人々の暮らしを描いていきたい」。

(c)村上もとか/集英社「スーパージャンプ」

■ 第49回 2007年10月9日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「預言者ピッピ」

地下沢中也 1999年〜 (イースト・プレス「コミックキュー」)

災害を予知し、回避するために開発された人間型スーパーコンピューター「ピッピ」。しかし、ピッピの友だちだった少年・タミオが事故死したことから事態は急展開をみせる。世界中の情報にアクセスすることを許されたピッピはあらゆることを予測・予言し始め、人類はピッピの予言に振り回されていく…。
レビュアーは精神科医の名越康文さん。作中に登場する「人の人生や生きざま、才能、可能性すらコンピューターで分析可能ではないか」という考えに対し、「そうした考えは人類を縛るけれど、逆に予想できない未来は僕らにとって怖すぎる。だから人間は自ら縛られることを望んでいる…」と分析。こうした、これまでの近未来SFに通じるテーマを前面に押し出していると語る。さらに、過去のSF映画の名シーンを確信犯的に挿入しているとも指摘。「一見、人類の未来を予見するマンガのように思えるが、そうではない。SF、童話、サスペンス仕立てといった様々な要素が取り入れられていることで、自由な発想で物語が七色に展開していく。そのストーリーの展開を楽しむ作品」と読み解く。

(c)地下沢中也/イースト・プレス

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「Odds」

石渡治2006年〜(小学館「ヤングサンデー」)

高校時代は自転車ロードレースのトップ選手だった麟太郎は、ある日交通事故で母妹を亡くし、父親も意識の戻らない寝たきり状態に。莫大な借金と父親の治療費を稼ぐために、ロードを捨て競輪選手となることを決意する麟太郎。戸惑いながらも一歩一歩を競輪の道を進んでいく。
これまで多くの熱血マンガを描いてきた石渡治さん。元々自転車競技が好きで、以前から描きたいと思っていたという。これまでの作品のように、面白さ追求で荒唐無稽な描写をすることはない。「今回はまずそういうのを排除して、ちゃんと一個一個、段階を踏んで描こうと決めた」。競輪学校に足繁く通いながら、実際の競輪選手が生まれる過程を細かく取材し、ロードレーサーだった主人公が自らの欠点を克服してゆくさまをきちんと描いていった。作画でこだわっているのが、脚の筋肉の描写。「筋肉質に描こうとしたら、硬い筋肉になってしまう」と、競輪選手の観察を重ねる石渡さん。競輪学校の体育祭なども取材し、生徒たちの素顔も描きたいと意欲を語った。

(c)石渡 治/小学館

■ 第48回 2007年10月2日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ゴルゴ13」

さいとう・たかを 1968年〜 (小学館「ビッグコミック」/リイド社)

主人公はゴルゴ13というコードネームのスナイパー(殺し屋)。本名、年齢、国籍などは一切不明という世界最高のスナイパーが、様々な人間からの依頼を受け、超人的な肉体と明晰な頭脳、強靱な精神力で世界の要人を次々と仕留めてゆく。
レビュアーはニュースキャスターの鳥越俊太郎さん。連載当初からファンとして読み続けているという鳥越さんは、「専門家並みの情報を仕入れて描いている」ことに感心。「報道の世界に生きている自分にとっても勉強になる」と語る。中東問題や民族紛争から最先端のバイオテクノロジーまで様々な出来事が作品のテーマとなるが、「ゴルゴ13が動くことで、それぞれのニュースの裏側に横たわっている問題が浮かび上がってくる」と指摘する。特に鳥越さんは、「通信傍受システム・エシュロン」の登場するエピソードに注目。「私たちの日常ではなかなか分からないことを噛み砕きながら、見事にストーリーとして描いている。そこにゴルゴ13が絡むことで、さらにワクワクドキドキする」。

(c)さいとう・たかを/さいとう・プロ/リイド社刊

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ゴルゴ13」

さいとう・たかを 1968年〜 (小学館「ビッグコミック」/リイド社)

今回は「読み手ノゲンバ」「作者ノゲンバ」ともに「ゴルゴ13」を取り上げるスペシャル企画。「作者ノゲンバ」では、さいとう・たかをさんの仕事場を司会の天野ひろゆきが訪問した。まずは脚本家が書いたストーリーを元に、さいとうさんが構成・コマ割りを行い、出来上がったネームを作画スタッフに渡す。作画スタッフは役割分担に従って絵を描き上げていく、というさいとう・プロの分業システムを紹介。後半はさいとうさんと天野のスペシャル対談。元々映画の大ファンだったというさいとうさん。「黒沢監督の『用心棒』を見て、自分もこういう時代劇を描きたいと思った」のが、劇画を生み出した原点になっていると語る。男の生き様や美学については「男の美学とは『我慢』しかない」と持論を展開。これまで一度も原稿を落としたことがない、というさいとうさんは、「『締め切りを守るのはプロとしての最低条件だ!』と若い頃に言ってしまったため、締め切りを守らなきゃいけなくなった」と冗談を交えて語る。「『ゴルゴ13』は、主人公のゴルゴが考えた善悪で描いてきた。だから、39年前の作品を今でも読んでもらえるのだろう」。

(c)さいとう・たかを/さいとう・プロ/リイド社刊

■ 第47回 2007年9月11日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「キャットストリート」

神尾葉子 2004年〜 (集英社「別冊マーガレット」)

天才子役だった主人公・ケイトは、ある日舞台の本番で大失敗し、芸能界を引退する。以来、通っていた小学校も不登校になり、ひきこもり状態の生活を長年送っていたケイトだったが、ひょんなことからフリースクールに通い始める。新たな仲間たちとの出会いや恋愛を通してケイトは引きこもりを脱し、成長していく。
レビュアーは、恋愛コラムニストのにらさわあきこさん。にらさわさんは、いろんなタイプの男性と出会って成長していく主人公に注目。「家族や自分と同じような人の言葉よりも、恋人だったり全然違うタイプの人の言葉の方がスーッと入ってくることがある。だから、恋愛は人を成長させる」と語る。現代は「自分を否定し、変わりたいと思っている」人が多いと語るにらさわさん。「この作品の主人公を見ていると、人は何歳からでも必ず再スタートできると思えてくる。『貴方は変われるし、変わる力は自分で持て』と言ってくれる、勇気付けられる作品。今の自分に自信が無かったり、自分が好きじゃないと思っている人に、積極的に読んで欲しい作品」。

(c)神尾葉子/集英社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「まいあ ~SWAN actII~」

有吉京子2005年〜(平凡社「SWANマガジン」)

1970年代から80年代にかけて描かれ、大ヒットしたバレエマンガ「SWAN」の続編。前作の主人公の娘“まいあ"が今回の主人公。幼い頃から舞台で踊ることを夢見てきたまいあは、14歳で憧れのパリオペラ座バレエ学校に編入する。悩みながらまいあはバレエの道を進んでゆく…。
はじめてバレエを見た小学校3年生の時からバレエに魅せられた有吉京子さん。デビュー作の題材もバレエだったという。前作「SWAN」の連載時は、「自分の力で表現していけるのか、伝えていけるのか、という迷いがあった」と振り返る。そんな時、著名なダンサー、ジョルジュ・ドンの舞台を見たことが転機となった。「すごいショックを受けました。『私は何をしているんだろう、まだまだ人生を表現していない』と気づかされ、勇気付けられた」と語る。 2005年に続編「まいあ」の連載を始めた有吉さんは、執筆の合間を縫ってバレエの公演や練習を見学に訪れる。生身のダンサーを見ることで、ダンサーの強さや美しさをリアルに表現できるからだ。「SWAN」では細身のダンサーを美しく描いたが、「まいあ」ではよりリアルに、姿勢を支える筋肉をしっかりと意識して描くようになった。「前作は自分自身のバレエに対する思いを描いた。今回は、主人公たちがそれぞれバレエへの思いを抱き、踊っている姿を描きたい」。

(c)有吉京子/平凡社

■ 第46回 2007年9月4日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「機動旅団八福神」

福島聡 2004年〜 (エンターブレイン「コミックビーム」)

舞台は近未来、戦時下にある日本。国を占領され、家族や友、故郷を失った少年少女の兵士たちが、「福神」と名付けられた戦闘兵器に乗り込み、戦場へと出撃する。
レビュアーはサイエンスライターの竹内薫さん。ゼリーでできた福神が強度を誇る、という発想は、「科学的見地から言うと、今後こういう素材が開発されてもおかしくない」と作品のリアリティーを賞賛する。さらに、主人公が“ヒト殺しをしない"と宣言して戦場に行くというシーンに着目。「絶対防御という受身で待ちの姿勢には、現代社会の若者が置かれている閉塞状況が現れている」と分析する。また、絶対防御のはずの福神に弱点が描かれている点にも注目。「絶対防御は理想であって、現実には人間は死んでしまう。人が死なない戦争というテーマを描いていながら、生と死の問題に対するアンチテーゼが描かれている、思想的に深い作品」と語る。

(c)福島 聡/エンターブレイン

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「実録!関東昭和軍」

田中誠2006年〜 (講談社「モーニング」)

舞台は関東昭和高校の野球部。まるで軍隊のような部活動で、厳しい監督は手段を選ばず命がけで生徒を鍛え上げる。球児たちは理不尽な上下関係、しごき、体罰に耐えながら甲子園を目指してゆく…。
高校野球を見るのが好きな田中誠さんは、架空の野球部を描くため、綿密な下準備を欠かさない。作中に描かれた野球の試合は、マンガに出てこないイニングを含めて最初から最後までシミュレーションし、架空のスコアブックを作成、試合の流れを決めてから描くという凝りようだ。クセのあるキャラクターにもこだわりがある。「理想像を描くのではなく、実際にはこんな子もいる。完璧な人間はいない」。そんなキャラクターたちが「現実と同じ条件の中で成長していく。それを追っかけるのが楽しくもあり、大変でもある」

(c)田中 誠/講談社

■ 第45回 2007年8月28日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ファイブスター物語」

永野護 1986年〜 (角川書店「月刊ニュータイプ」)

舞台となる「ジョーカー太陽星団」では、いくつもの惑星に人類が無数の国家を形成し、互いの勢力を競っていた。戦いの表舞台に立つのは「モーターヘッド」と呼ばれる巨大ロボットと、それを操る「ヘッドライナー」、そして、その両者の架け橋となる人工生命体「ファティマ」。彼らが活躍する12000年もの歴史が描かれてゆく。
レビュアーは書評誌編集長の横里隆さん。「先鋭的な作品世界と、王道的な物語がマッチしたときに生み出す計り知れない相乗効果が実現している作品」と絶賛。登場人物が成長していく過程にカタルシスがあり、そこからまた戦いへと身を投じる展開にも期待しているという。また、12000年に及ぶ歴史が記された「年表」にも注目。これから先に起こることが大まかにでも分かっていることに驚きを覚えながらも、そこに想像力をかきたてられると語る。

(c)EDIT

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「あずみ」

小山ゆう1994年〜 (小学館「ビッグコミック スペリオール」)

主人公は幼い時から刺客として育てられた美少女剣士・あずみ。仲間を失っても振り返ることを許されない過酷な使命に葛藤し、苦しみながらも、非情で厳しい忍者の世界を生き抜いていく。「女剣士といえば“あずみ"となるような、後世に残るヒーローを作りたい」という思いから作品を描き始めたと語る小山ゆうさん。母親に連れられて見に行ったチャンバラ映画にのめりこんだのが、あずみの原点だという。特にこだわっているというアクションシーンでは、あずみの体の動かし方を計算し、「理にかなってるかどうか、必ず納得した動きで描いている」。あずみは悲惨な運命に次々と襲われるが、「読者が気になって読んでくれることにつながると思うから、冷酷なまでに、あずみに悲劇性を負わせていく」。「名前の残るヒーローに、まだなったとは思ってないけど、近づきつつあるのはとても嬉しい」。

(c)小山ゆう/小学館

■ 第44回 2007年8月21日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ハチワンダイバー」

柴田ヨクサル 2006年〜 (集英社「ヤングジャンプ」)

賭け将棋を生業にする「真剣師」の青年・菅田。プロの棋士になれず、アマ最強を自負して賭け将棋で日銭を稼ぐ菅田はある日、眼鏡をかけた巨乳の美女に完敗してしまう。女真剣師でありながら、メイド姿でお掃除代行サービスもしている謎の美女・そよに連れられ、菅田はいろんな真剣師たちと対局してゆく…。
レビュアーは経済アナリストの森永卓郎さん。「メイドというのは他の人からも嫌われないキャラクターなので、他のビジネスと相性がいい」と語る森永さんは、「秋葉原を飛び出して、メイドから大きく離れた将棋とくっつける大胆さがスゴい」と称賛する。また、伝説の棋士と賭け将棋を行うシーンに注目。「目の前の現金100万円より、女性の胸を揉むことに価値を見出すところは、時代を象徴している」と分析する。「以前は立身出世を描いたマンガが多く、それが若者の夢だったが、今は必ずしもそうではなくなった。もっと場当たり的に目の前の幸せをつかみ取っていく。それが現代の幸せの形だと思う」。

(c)柴田ヨクサル/集英社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「喰いタン」

寺沢大介 2002年〜 (講談社「イブニング」)

主人公は警察からも信頼の厚い名探偵、高野聖也。人一倍食いしん坊の探偵が、美味しいものを食べまくり、その食べっぷりを武器にして次々と難事件を解決してゆく。「ミスター味っ子」「将太の寿司」など、グルメマンガを描き続けてきた寺沢大介さん。「今は料理だけでは成り立たない。新しい料理マンガを作ろう」という思いから、この作品が生まれたという。寺沢さんはこれまで、美味しいと感じたときのリアクションに力を注いできた。その原点は、「カワハギを肝しょう油で初めて食べたとき“うま~い"と言って踊ってしまった」という、自身の体験。マンガのキャラクターはみな大げさに手を打つ、鳥肌が立つ、といった形で美味しさの感動を表現している。歌舞伎が好きでよく見に行くという寺沢さん。「観客はリアルなものが見たいわけじゃない。面白いものが見たい」と言い、大仰な動きで演じる歌舞伎の芝居が、マンガにも生かされていると語る。「表現は、発せられた時からどんどん古びていく。だからこそ、もっと大げさにいってみよう、もっと別の角度でいってやろう、というバリエーションが芸につながってゆく。次はどんなことをやってやろう、と考えると楽しい」。

(c)寺沢大介/講談社

■ 第43回 2007年7月31日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「鈴木先生」

武富健治 2005年〜(双葉社「週刊漫画アクション」)

中学校の2年生を受け持つ、非常にマジメな男性教師・鈴木先生が、生徒の家庭問題から恋愛相談まで、学校で起きるさまざまな問題に真っ正面から取り組んでいく、異色の学園マンガ。レビュアーはノンフィクションライターの最相葉月さん。作品の舞台は学校だが、「学校という場所を借りた、ある種の哲学マンガ」であると指摘する。「鈴木先生という思慮深い人物を借りて、作者が思考実験をしている。絵を注意深く見ていくと、鈴木先生がどの場面でどんな苦悩を抱えているのか、必ずヒントがある」と語る。作中に登場する「足子先生」というキャラクターにも注目。「瞳が描かれていない足子先生は、『他人の目を気にせず、正論を語る』象徴的存在。他人のまなざしを気にしながら生きざるを得ない現代社会において、この作品は、『他人の視線に打ち勝っていかに自分をコントロールできるか』を試行錯誤した哲学マンガである」と読み解く。

(c)武富健治/双葉社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「新・花のあすか組!」

高口里純2003年〜(祥伝社「フィールヤング」)

1980年代から90年代にかけて大ヒットした「花のあすか組!」の続編。主人公は前作と同じく、中学2年生の少女・九楽あすか。誰にも媚びず強く生きるあすかと悩みを抱えた少女たちとの出会いや、敵との戦いが描かれてゆく。
以前は正統派の少女マンガを描いていた高口里純さん。「アウトローっぽいキャラクターを作りたいと模索しながら描き始めた」のが「花のあすか組!」の始まりだった。「男の子のケンカと違って血が吹いたり足が折れたりしないので、ケンカのシーンを考えるのは大変だけど力を入れている」と語る。新シリーズを始めるにあたり、今時の中学生とあすかをどう向き合わせるのか悩んだが、高校生の娘の存在に大きく助けられたと語る高口さん。娘との会話は、携帯電話のエピソードにも反映されているという。「あすかはいつの時代も『その世代の道しるべ』のような存在になって欲しい。あすかは傷ついたりして、皆の痛い思いを肩代わりしてきた。だから、あすかの言葉に耳を傾けて欲しい」。

(c)高口組/祥伝社

■ 第42回 2007年7月10日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「EDEN」

遠藤浩輝 1997年〜 (講談社「アフタヌーン」)

謎のウイルスが大流行し、人類が危機に直面した近未来の世界。南米最大の麻薬カルテルのボスを父に持つ少年・エリヤは、母と妹を「原父連邦」と呼ばれる巨大な政府組織に奪われ、逃亡生活を続ける。エリヤは、ゲリラ組織との旅や原父連邦との戦い、マフィアとの争い、母と妹の奪還作戦などを経て、世界の理不尽さに直面してゆく。
レビュアーは中条省平さん。マンガは普通「主人公の成長物語」を描いてゆくが、この作品は「主人公が世界を遍歴するにつれ、自分も世界も分からなくなってしまう」点に注目。既存のマンガとは「根本的に目指しているものが違う」と指摘する。この作品は、「成長したくてもできない」という現在の社会状況との類似性があり、今の日本に閉塞感を感じる読者に受け入れられているのでは、と分析する中条さん。「主人公が次々と袋小路に追い詰められていく姿を見て共感し、それでも戦う主人公に、“戦える人がここにいた"と感情移入するのではないか」。

(c)遠藤浩輝/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「新吼えろペン」

島本和彦2004年〜 (小学館「サンデーGX」)

主人公は、月に2本の連載を持つ熱血漫画家、炎尾燃。炎尾は自らの信念、こだわりを熱く叫びながら、魂をマンガに込めていく…。ラジオのパーソナリティーもつとめる島本さんは、ラジオもマンガも「笑ったあとに元気が出る笑い」をテーマにしているという。ネームを描く際に、一枚紙ではなく必ずノートに描いている島本さん。「マンガを読むように描いているんです。ページをめくらないと面白くない。めくった“パラッ"という音が無いとイヤなんです!」とこだわりを語る。島本さんは、作品に「既成概念を打ち破る」という熱い思いを注ぎ込んでいる。「今まで以上に良い切り口で、いい意味で期待を裏切りたい」。

(c)島本和彦/小学館 サンデーGX

■ 第41回 2007年7月3日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「べしゃり暮らし」

森田まさのり 2005年〜 (集英社「ヤングジャンプ」)

主人公の上妻圭右は自称「学園の爆笑王」。お昼の校内放送でも笑いをとる人気者だったが、大阪から転校してきた辻本潤に「笑い」で完敗する。辻本は、実は天才高校生漫才師だった…。
レビュアーは精神科医の名越康文さん。ストーリーマンガで「お笑い」の世界を真正面から取り上げる、という難しい試みを見事に成功させていると評価する。名越さんは、辻本と静代という、かつての漫才コンビが久々にネタを披露するシーンに注目。互いに恋心を抱きながら始める漫才に、「二人の関係性を描くにはこれしかない、というネタを選んでいる」と感心。笑いを取るか、愛情を取るか、という緊張感あふれるシーンになっていると指摘する。

(c)森田まさのり・スタジオヒットマン/集英社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「MOONLIGHT MILE」

太田垣康男2001年〜 (小学館「ビッグコミック スペリオール」)

2005年、化石燃料に替わる天然資源「ヘリウム3」が月で発見されたことで、人類の目は再び月へと向けられる。NASAは次世代エネルギー開発計画を発表し、宇宙空間での建設作業員を募集。主人公・吾郎は、宇宙飛行士候補として、月への一歩を踏み出す…。作者の太田垣康男さんは「機動戦士ガンダム」を見て育ち、SFが大好きだったため高校時代から宇宙服やロボットの絵を描いていたという。この作品について「SFだけど、現実の宇宙開発も描いているつもり」と語り、メカや衣服などのデザインにリアリティーをもたせるべくこだわっている。現在の科学技術を踏まえ、その一歩先を行くメカを作り出そうと腐心する太田垣さん、「現実の宇宙開発とSF世界をつなぐ橋渡し」を作品で実現させたいと願っている。さらに「物語の世界に読者がいるような錯覚を感じる絵をマンガで描きたい」と、何枚もの絵をコンピューターで重ね、緻密かつ迫力ある絵に仕上げている。宇宙開発のカッコ良さを伝えたいと熱い思いを語る太田垣さん、「マンガを読んで、宇宙開発に対して夢とか憧れだけじゃなく、実際に関わってみようという人が増えて欲しい」

(c)太田垣康男/小学館「ビッグコミックスペリオール」

■ 第40回 2007年6月12日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「高校デビュー」

河原和音 2004年〜 (集英社「別冊マーガレット」)

中学時代、ソフトボール部に所属していた体育会系少女の主人公・晴菜。実は晴菜は少女マンガが大好きで、高校では恋にすべてを賭けようと決めていた。ある日、一年先輩のイケメン男子に、どうすればモテるかについて、コーチをお願いする晴菜だったが…。
レビュアーは恋愛コラムニストのにらさわあきこさん。今の恋愛本でも“モテ"というキーワードが主流だと分析するにらさわさんは、「魅力的な女性になるためのバイブル」だと作品を賞賛する。最初は恋愛素人の主人公を高みの目線で見ながらも、「一生懸命やれば恋だって失敗しないんだ、という晴菜ちゃんのブレない姿勢に、逆に教えられ、ひきこまれていく」と展開の妙を語る。「恋愛の素晴らしさがすごく爽やかに描かれていて、私ももう1回恋愛してみようと素直に思える作品」。

(c)河原和音/集英社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「THE 3名様」

石原まこちん2000年〜 (小学館「ビッグコミック スピリッツ」)

主人公は夜な夜なファミレスで無為な時間を過ごす3人のフリーター、「ミッキー」「ふとし」「まっつん」。3人が繰り広げるファミレス・トークが全て、という新感覚のギャグマンガ。作者の石原まこちんさん自身、高校卒業後に就いた仕事を辞め、夜にファミレスで友人とたわいもないおしゃべりに花を咲かせていたという。今でも週に3日はファミレスに通い、そこで作品のネタをまとめている石原さん。この作品は「会話が命」だと語る。「自分が思ったことを、3人に投げ分けた感じ」で会話を組み立てるという石原さん。新しいギャグマンガとして読者に支持されたが、「僕の中ではそんなにギャグマンガではなく、日常マンガ。あれが僕の青春だった」とフリーター時代を振り返る。「3人に感情移入できなくなるまで、ずっと描き続けたい」。

(c)石原まこちん/小学館

■ 第39回 2007年6月5日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「耳かきお蝶」

湯浅ヒトシ 2004年〜 (双葉社「週刊漫画アクション」)

江戸時代。下町で、耳かきを生業としている女性、お蝶さんが主人公。お蝶さんのもとへ、強面の侍や、悩みを抱えた町人が耳掃除と癒しを求めて訪れる。レビュアーは浮世絵師のみはし・まりさん。作者の絵の構成に着目。「白が多く、空間がある」と、空間を表現の上手さに感心する。「日本伝統の浮世絵の技法に通じるものがある。この作品はマンガ界の浮世絵」と語るみはしさん。「絵の白い部分が活きている。それゆえ読者はホッとして読めるのでは。ゆとりを持って癒される」。

(c)湯浅ヒトシ/双葉社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「うさぎドロップ」

宇仁田ゆみ2005年〜 (祥伝社「フィールヤング」)

30歳の独身男・大吉は、祖父の葬式で、祖父の隠し子だった6歳の女の子、りんと出会う。大吉は、引き取り手のいない“りん"と一緒に暮らすことに。それまで子どもに縁がなかった男が、一人の女の子を育てることに真正面から向き合っていく…。
作者の宇仁田ゆみさんは、2児の母親でもある。家事と育児をこなしながら、マンガの連載も両立させる毎日。「子育てとマンガ、どちらの時間も足りない」という宇仁田さん。家の中でもデッサン道具を持ち歩き、わずかな時間を見つけては描いているという。作品には、「子供と関わることで大人が変わるし、関わる大人によって、子供も変わっていく。その部分を大事にしたい」という思いを込めていると語る。

(c)宇仁田ゆみ/祥伝社

■ 第38回 2007年5月22日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「岳」

石塚真一 2003年〜 (小学館「ビッグコミックオリジナル」)

世界の名峰をいくつも登り、日本に帰って山岳救助のボランティアをしている主人公・島崎三歩と救助隊員たち、遭難者たちのドラマを描いた山岳救助マンガ。レビュアーは書評誌編集長の横里隆さん。学生時代に登山をして、多くの山男にも出会ってきた横里さんは、主人公の遭難者に対する視点に注目する。瀕死の遭難者を背負いながら、食事の話をして元気付ける主人公のシーンを「スゴい」と絶賛。「確かに日常の食事を思い起こさせることが、人に気力を与えてくれることもある」と語る。また、主人公が何度も口にする「良く頑張った」というセリフに、「命が助かるわけじゃないけど、遭難者も、そして読者も報われるような気持ちになれる」と語る。

(c)石塚真一/小学館

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「銀牙伝説ウィード」

高橋よしひろ 1999年〜 (日本文芸社「漫画ゴラク」)

前作「銀牙」の主人公で、伝説のカリスマだった、まだ見ぬ父“銀”と会うため、主人公の秋田犬・ウィードは旅に出る。道中、多くの仲間と出会い、そして敵と闘う中でウィードは成長していく。 子供の頃、村にいた非常に賢い秋田犬・ポチへの憧れが、マンガを描く上で大きな影響になっていると語る高橋よしひろさん。前作・銀牙で、犬にセリフをつけたことで、「いろんな犬の個性が出てきた」ことが転機に。「人間が失いかけた情感を犬に投影すると描きやすい。人間が人間に説教する話になると、人間には届かない」と犬マンガならではの魅力を語る。普段から犬と共に暮らす高橋さんは、愛犬がじゃれる他の犬の姿を見て、新しいキャラクターの着想を得ることもある。犬を描き続けた高橋さんだが、それでも「ぱっとひと目で分かるような犬を描けたら」と、さらなる理想を追い求めている。

(c)高橋よしひろ/日本文芸社

■ 第37回 2007年5月15日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「パラパル」

石田拓実 2005年〜 (集英社「クッキー」)

主人公は普通の女子高生・池野小牧。ある日、小牧の脳内に小さな宇宙人が棲みついてしまう。そのせいで小牧は嗅覚が異常に鋭くなってしまい、普通の人が感知できない、発情やウソの匂いが分かるようになる…。レビュアーは感性アナリストの黒川伊保子さん。「専門書を読んでいるくらいの深さを感じた」と語る黒川さんは、「無意識の内に感じる感覚を、上手に言語化してデフォルメして伝えている」と作品の魅力を指摘。「気持ち良さ」と「好き」という、感覚と認識の“際"の出来事が鮮やかに描かれていると語る。

(c)石田拓実/集英社 クッキー

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「土星マンション」

岩岡ヒサエ2006年〜 (小学館「IKKI」)

地球全体が自然保護区域となり、人間は35,000メートル上空に作られたリング状の建造物で暮らすようになった時代。主人公・ミツは、亡き父と同じ職業「リングシステムの窓を拭く仕事」に就く…。作者の岩岡ヒサエさんがストーリーを考える場所は、喫茶店。そこから窓拭きをする人が見えたことがこの作品を思いつくきっかけだったと語る。「自分の気持ちを気取らず、素直に描ける」ため、等身が低く丸みのある独特の造型でキャラクターを描く岩岡さん。その一方で、地球儀を使って、主人公たちに近い目線で上空から眺めた地球の姿をリアルに描き出すことにもこだわっている。この作品は、自分の故郷に対する思いを映し出しているという岩岡さん。「帰る場所を見つける、居る場所を見つけるという感覚を『土星マンション』の中で描きたい」。

(c)岩岡ヒサエ/小学館 IKKI

■ 第36回 2007年5月8日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ムーたち」

榎本俊二 2006年〜2007年(講談社「モーニング」)

小学生のムー夫とその両親、時には小学校のクラスメイトや、果ては通行人をも巻き込んで、不思議な日常をシュールに描いたギャグ作品。レビュアーの精神科医・名越康文さんは、主人公の父子関係に注目。何でも知っているという父親の願望、理想像が描かれつつも、「父と子の関係が描かれれば描かれるほど、真の関係はどんどん逆転していく」部分に魅力があるという。父親が子供にやり込められていく大人と子供の心理戦は「イタいけど、本当に面白い」と絶賛。「今時の父親が持っている、潜在的な焦燥感が透けて見える」

(c)榎本俊二/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「RIN」

新井英樹2006年〜 (講談社「別冊ヤングマガジン」)

主人公は19歳の青年・石川リン。自らの力を全く疑わない天才ボクサーであるリンは、圧倒的な才能と傍若無人たる態度で世界王者へ羽ばたいていく…。子供の頃読んだ梶原一騎作品に登場する、「群れないヒーロー」に憧れた新井英樹さん。「一人でどれだけのことができるか」に興味を持ち、思うままに動くヒーローや天才的な主人公を描いてきた。天才とは「今まであった文脈を一変させる人だ」と語る新井さん。これまでにない新たなボクサー像を描くべく、さまざまな挑戦をしている。パンチを打つ手をムチのようにしならせたり、対戦相手をぼやけさせる表現は、プロボクサーへの取材・証言をもとに、リアリティを追求して描かれているという。

(c)新井英樹/講談社

■ 第35回 2007年4月17日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「竹光侍」

原作・永福一成 漫画・松本大洋 2006年〜 (小学館「ビッグコミック スピリッツ」)

江戸のとある長屋に謎の侍が引っ越してきた。不審な行動を取る侍を、隣家の少年が興味津々で観察するが…。レビュアーは学習院大学教授・中条省平さん。以前から松本大洋作品のファンだという中条さんは、「(作者は)少年の心の震えを覚えている」と魅力を語る。少年の目を通じて世界を見ることで、「超自然的なものと現実との間がうまく描かれている」という。また、見開き2ページに少年の世界の広がりを鮮やかに対比させた表現を取り上げ、「松本大洋は非常に優れたアーティストだ」と絶賛する。

(c)松本大洋・永福一成/小学館

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「チェーザレ」

惣領冬実2005年〜 (講談社「モーニング」)

舞台は15世紀のイタリア。実在した人物、チェーザレ・ボルジアを主人公に、謀略・暗殺・戦争で政敵を次々に打倒する、歴史ドラマが描かれてゆく。かねてからルネサンス時代にスポットを当てたかったという惣領さん。中でも、謎の多い人物チェーザレに興味を持ったと語る。これまでずっと描いてきた少女マンガの世界から離れ、「恋愛中心でなく、いろんな角度から人間を描きたかった」と青年誌に活動の舞台を移してこの作品を発表した。歴史ものに初めて挑戦する惣領さんは、作品を描くにあたり綿密な取材を重ねた。まだ日本に紹介されていない現地の資料を翻訳したり、図版を調べて貴族の衣服の細部までこだわって描き込んだとのこと。読者がタイムスリップして本当にその場にいるような絵作りを目指している。「1つこだわったら、10全部こだわらないと」。

(c)惣領冬実/講談社

■ 第34回 2007年4月10日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「栞と紙魚子シリーズ」

諸星大二郎 1995年〜2003年(朝日ソノラマ「ネムキ」)

主人公の女子高生・栞と紙魚子は、周囲に現れる奇妙な生き物や、不条理な怪奇現象に次々と巻き込まれていく…。レビュアーは歌人・笹公人さん。笹さんはまず主人公の名前に注目。「物語にも頻繁に登場する古本がキーワードになっている」と語る。僧侶が美しい姫に一目惚れし400年間恋焦がれる、というエピソードを絶賛し「よく小野小町が美しいと言われるが、記録には無い。贈答歌の上手さが理由なのでは?と思う。そういう妄想やわからない部分が恋心に火をつけるのは古典の王道」と指摘する。

(c)諸星大二郎/朝日ソノラマ

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「キングダム」

原泰久2006年〜 (集英社「ヤングジャンプ」)

舞台は中国の春秋戦国時代。戦争孤児の信は、政争をめぐる陰謀で親友の漂を失う。悲しみと怒りにくれた信は、漂とうり二つの少年に出会う。その少年は、後に始皇帝として中国全土を支配する秦王・政であった…。「あまり日本人に知られていない時代の物語を、三国志並みに広めるパイオニアになれたら」と語る原泰久さん。春秋戦国時代は非常に資料が少ないため、歴史書「史記」に描かれた小さなエピソードからヒントを得て、自らの想像を膨らませて描いていく作業に魅力を感じると言う。「現実とは違う世界を見られるのはすごく面白いし、作る側にいられるのはすごく嬉しい」。

(c)原 泰久/集英社「ヤングジャンプ」

■ 第33回 2007年4月3日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「王家の紋章」

細川智栄子&芙〜みん 1976年〜 (秋田書店「プリンセス」)

アメリカの女子大生・キャロルはエジプト留学中にタイムスリップし、古代エジプトの若き王・メンフィスと出会う。二人は恋におちるが、キャロルの存在を憎む者の妨害や古代エジプトの権力争いに翻弄されてゆく…。 レビュアーは映像作家の大宮エリーさん。物語の世界観が単調でなく、スピード感があるため「ジェットコースターのような感じ。だからこれだけ続いても面白い」と絶賛。30年以上連載が続く人気作となった秘密は、巧みな人物設定にあると指摘。「キャラクターがかぶらず、端的で分かりやすい。今読んでも新しい」。

(c)細川智栄子&芙〜みん/プリンセス・コミックス/秋田書店

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「蒼天の拳」

原哲夫(原案:武論尊) 2001年〜 (新潮社「コミックバンチ」)

1980年代の大ヒット作『北斗の拳』の続編。時代は前作から遡り、北斗神拳の伝承者・霞拳志郎が、昭和の激動期における日本や中国で活躍する物語。 司会の天野ひろゆきが以前から大ファンだという原哲夫さんの仕事場を訪問。アメリカのファンタジーアートの巨匠、フランク・フラゼッタに大きな影響を受けたという原さん。フラゼッタのように、闘う男を筋肉の細部まで緻密に描き込んだ迫力ある絵で表現した。下書きの段階から絵画のデッサンのように何度も何度も納得いくまで線を描く原さんは「マンガのコマ全部を絵で埋めて、一冊の本にするのが夢だった」と言う。 長年にわたって“男の生きざま"を描いてきた原さんは、天野に対して「宿命は変えられないが、運命は変えられる」と持論を展開。「何か起こった時の受け止め方、反応の仕方に、男の魅力を感じる」。

(c)原哲夫・武論尊

■ 第32回 2007年3月13日 放送

2007年度「作者ノゲンバ」総集編(下半期)

■ 第31回 2007年3月6日 放送

2007年度「作者ノゲンバ」総集編(上半期)

■ 第30回 2007年2月20日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「とりぱん」

とりのなん子 2005年〜 (講談社「モーニング」)

自宅の庭や周囲に現れる野鳥を鋭く観察。そのなにげない生態や、野鳥と触れ合う作者自身の日常をコミカルに描いた“野鳥エッセイマンガ”。
レビュアーは新進気鋭の俳人大高翔さん。 大高さんは、とりのさんの季節の感じ方に注目。「春なら早春、中春、晩春というように季節と季節の間を表現した言葉は歳時記にもたくさんあり、その微妙うつろいを暮らしの中で感じていくのは俳句に似ている。日本ならではの四季のあるマンガで、日本人らしさを思い出させてくれる」

(c)とりのなん子/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「はるか17」

山崎さやか 2003年〜 (講談社「モーニング」)

小さな芸能事務所にマネージャーとして入社した主人公・はるかは、一年間の期限付きで“17歳のアイドル”と年齢を偽って芸能活動を始めることに。様々な困難を乗り越えて成長する強い女性を描いたサクセス・ストーリー。
デビュー以来一貫して青年誌で作品を発表してきた山崎さん。一本筋の通った、しゃんとした女性を描き続けてきたと言う。 この作品は、いつか描きたいと夢見ていた女優の物語。「1回1回の連載ごとに一番描きたいコマを決め、それに向けてストーリーを練っていく。可愛いタイプのはるかが女優として美しくなるのを描くのが自分でも楽しみ」。

(c)山崎さやか/講談社

■ 第29回 2007年2月13日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「RAINBOW 二舎六房の七人」

原作・安部譲二 作画・柿崎正澄 2001年〜 (小学館「週刊ヤングサンデー」)

時代は戦後間もない日本。特別少年院の一室で出会った少年たちは、収容された二舎六房で、良き兄貴分である桜木六郎太と出会う。それぞれが絶望的な現実と向き合いながらも、淡い希望を目指して生き抜く青春群像劇。
レビュアーはノンフィクションライターの北尾トロさん。北尾さんは、安部さんと柿崎さんの世代を超えたコラボレーションに注目。「“友情”“仲間”という安部さんならではのストレートなメッセージが、柿崎さんの絵によって若い読者でも受け取りやすく描かれている。文字だけだとクサく思えるほどのセリフも、マンガだと素直に届く」

(c)安部譲二 柿崎正澄/小学館 週刊ヤングサンデー

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「おせん」

きくち正太 2000年〜 (講談社「モーニング」→「イブニング」)

舞台は東京の下町にある、江戸時代から続く老舗料亭。そこの名物女将「おせん」を主人公に、酒、料理、器などへのこだわりやウンチクを絡めたストーリーを、粋に描いた作品。「日本人である以上、持っていて当たり前の“和”の心を、日常から拾い集めて紡ぎたい」と語るきくちさん。主人公が創作する料理は描く前に自分で作り、主人公が使う器は自分で愛用し日常感覚に取りこんでから描くという。また、浮世絵に学んだ筆致を生かすため、「線は一発で決めるくらいの命がけの覚悟で描く」。

(c)きくち正太/講談社

■ 第28回 2007年2月6日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「少女ファイト」

日本橋ヨヲコ 2006年〜 (講談社「イブニング」)

仲間の目を気にして、バレーボールの圧倒的な才能を隠す主人公・ネリ。彼女を中心に、姉の死、友の裏切り、才能への嫉妬、友情への飢えなど、悩みもがく少年少女を真正面から描いた、熱いバレーボールマンガ。
レビュアーは学習院大学教授の中条省平さん。「スポコンは突出した天才という“個”と“共同体”の葛藤という、日本人好みのテーマを描いた日本独特のジャンルといえる。この作品はそれにとどまらず、人間が孤独を乗り越え互いに溶け合う可能性を、“エロティシズム”や“死”と同様に“スポーツ”が持っていることを描いている。ジョルジュ・バタイユの哲学を思わせる深さを持つ作品」

(c)日本橋ヨヲコ/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「暁!!男塾 青年よ、大死を抱け」

宮下あきら 2001年〜 (集英社「スーパージャンプ」)

「魁!男塾」の続編。舞台は都内にある架空の私立学校「男塾」。前作の主人公の息子・剣獅子丸が平成の男塾に入塾し、塾内で内部闘争が巻き起こる。そして前作同様、格闘トーナメントが開催される。硬派な男の生き様を熱く描いた作品。なんと宮下さんは「ネーム」を描かず、細かい流れは出たとこ勝負でいきなり作画に突入。絵は「見せ場のインパクト命」、セリフは「短く切れのあるもの」が信条の宮下あきらさん。その言葉そのもののライブ感溢れる執筆ゲンバを紹介する。
「マンガは紙1枚で世界が無限に広がるのが魅力。千の言葉より1枚の絵で魅せたい」

(c)宮下あきら/集英社

■ 第27回 2007年1月23日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ホーリーランド」

森恒二 2000年〜 (白泉社「ヤングアニマル」)

いじめられっ子だった主人公、神代ユウは、家にも学校にも居場所を見つけられず、夜の街を彷徨うのが日課になっていた。ある時ボクシングのワン・ツーを覚えたユウは、天才的な格闘センスを目覚めさせ、絡んできた不良たちを返り討ちに…以後ユウは「ヤンキー狩り」と恐れられるようになる。夜の街を舞台に居場所の無い少年たちを描いた路上格闘マンガ。
レビュアーは精神科医の名越康文さん。「今、日本人は自分の居場所がないと感じ、強烈な孤独感、虚無感に悩む人が多い。暴力を肯定する気はないが、ぶつかり合いを通して奥行きのある成長をとげるこの主人公の物語を細胞レベルで必要としている人々がいると思う」

(c)森 恒二/白泉社(ヤングアニマル)

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「真・異種格闘大戦」

相原コージ 2004年〜 (双葉社「漫画アクション」→ 「FUTABASYA Webマガジン」)

人間界の格闘王となった強矢鋼は、地球上のあらゆる地域から厳選された生物たちが「地上最強の生物」の座をかけるトーナメントに参加する。アナコンダやライオン、インドサイなど名だたる猛獣たちが命を懸けて闘い、死力を尽くして技を掛け合ってゆく…「異種格闘技」を動物たちの世界に広げ、各動物が自らの特長を生かして強さを競い合うという、異色の格闘ギャグマンガ。
「勝手にシロクマ」「コージ苑」など、常に斬新なギャグマンガに挑み続けてきた相原コージさん。今回の作品は「マンガでしかできない荒唐無稽さを出したい」と、熱い企画書を書き編集者を口説いてスタートしたもの。闘う動物たちの「気持ち」をつかむため、自ら格闘技も習い始めた。「誰に頼まれたわけでもないのに漫画界を立て直すと考え、マンガルネサンスを一人で勝手にやってる(苦笑)」

(c)相原コージ/双葉社

■ 第26回 2007年1月16日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「いけちゃんとぼく」

西原理恵子 2004年〜2006年 (角川書店「野性時代」)

ある日、主人公の“ぼく”は、不思議な生きもの“いけちゃん”に出会った。いつも“ぼく”のことを見守り、落ち込んでるとなぐさめてくれる“いけちゃん”。実は、その正体は…。
“いけちゃん”と少年の心の交流が暖かく描かれた、作者初の「絵本」。 レビュアーは書評誌編集長の横里隆さん。 「たとえ別れても、その人を大切に思えば、その人のそばに実感を持って寄り添うことができることを感じさせてくれる作品。人生経験を経た大人にはぐっとくると思う。」

(c)西原理恵子/角川書店

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「キス&ネバークライ」

小川 彌生 2006年〜 (講談社「KISS」)

幼い頃、アメリカのスケートリンクでアイスダンスを習っていた主人公のみちるは、ある事件を目撃して心を閉ざしてしまう。その後日本に帰国したみちるは、再びアイスダンスを始めるが…アイスダンスの世界を舞台に、ミステリー的な要素を取り入れた作品。
「きみはペット」で若い女性に絶大な人気を得た小川さんが、初めて挑んだスポーツもの。実際のアイスダンスの競技映像をヒントに、マンガの絵としても美しく、キャラクターの心情にもふさわしいポーズを創りだしていく。「スポーツものだけど、マンガなのでロマンティックでなければならず、想像力が必要。人が人との関わりで変化していくところを描いていきたい」

(c)小川 彌生/講談社

■ 第25回 2007年1月9日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「君に届け」

椎名軽穂 2005年〜 (集英社「別冊マーガレット」)

友達のいない陰気な女子高生・爽子。その風貌からホラー映画の「貞子」と呼ばれ、クラスメートから敬遠されていた。そんな爽子に初めて分け隔てなく接してくれる男の子・風早くんが現れる。クラスの人気者・風早くんとの交流を通じて、爽子と周囲が変わってくる・・・
レビュアーは、感性アナリストの黒川伊保子さん。いじめられても全く被害者意識のない新しいヒロイン像の魅力を指摘。加えて「お互い小さなことでも役に立ち、感謝を言葉にして存在価値を確かめ合うことが、どれだけ人を成長させるか。社会にちょっと疲れた大人にも、人間関係の基本を作るヒントとなる作品」。

(c)椎名軽穂/集英社 マーガレットコミックス

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「彼女を守る51の方法」

古屋兎丸 2006年〜 (新潮社「コミックバンチ」)

就職活動中の主人公・三島ジンは、お台場で元同級生の岡野なな子と出会う。その時、東京をマグニチュード8の直下型大地震が襲った・・・崩壊した東京を舞台に、震災からのサバイバルを描いた大地震シミュレーションマンガ。
これまで、イマジネーションを駆使した幻想的な作品を描いてきた古屋兎丸さん。「それだけでは作家としての限界が見えてしまう」と、今回の作品では初めて緻密な取材を行い、震災のリアリティーを徹底的に追及したという。その一方で、「阪神大震災から復興しているのを見ると、人間って強いんだって思う。災害の怖さだけでなく、そうした人間の強さを描きたい」。

(c)古屋兎丸/新潮社 COAMIX

■ 第24回 2006年12月12日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「わにとかげぎす」

古谷実 2006年〜 (講談社「週刊ヤングマガジン」)

主人公はスーパーの深夜警備員をしている32歳・富岡ゆうじ。これまで友達や恋人と呼べる存在がいなかった彼は、ある日得体の知れない不安に襲われて「友達が欲しい」と星に願う・・・
レビュアーは、マンガ評論でも知られる大学教授・中条省平さん。「今の日本で、若い人は不安というものを非常に重要な感覚として持っている。その不安を笑いの中に封じ込め、最先端のギャグとして描いている」。

(c)古谷実/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「太陽の黙示録」

かわぐちかいじ 2002年〜 (小学館「ビッグコミック」)

2002年8月、大地震が引き起こした地割れで本州が2つに分裂する。復興のためサウスエリアをアメリカに、ノースエリアを中国に管理され、分断国家となってしまった日本。その時まだ幼い少年だった柳舷一郎は、後に立派な青年として登場。分断した日本の再統一や離散した日本人の再結集を誓う。
「国家が分断されるほどの打撃から日本人は立ち直れるのか?」という壮大なテーマに挑むかわぐちかいじさん。書斎の本棚にある蔵書の中で、特別に思い入れのあるのがレオナルド・ダ・ヴィンチの画集だと言う。「ダ・ヴィンチが絵を描くために調べるエネルギー、理解できるまで絶対やめない探究心はすごい。自分は時間に追われると、たまにエイヤで描いてしまうことがある。そんな自分への戒めとして、折に触れて眺めている」。

(c)かわぐちかいじ/小学館・ビッグコミック

■ 第23回 2006年12月5日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「Astral Project 月の光」

原作:marginal 作画:竹谷州史 2004年〜 (エンターブレイン「コミックビーム」)

姉の死をきっかけに、魂が体から抜け出す「幽体離脱」ができるようになった主人公・柾彦。幽体離脱を繰り返し、夜空を飛ぶ柾彦は、姉の死の真相や「幽体世界」の謎に迫ってゆく。
レビュアーは美術評論家の布施英利さん。 幽体離脱した者同士が天空で出会うシーンから「それぞれ現実の社会ではしがない人間なのに、天空では別人のような輝きをもっている。遠く離れたところにいる人たちが、どこか共通の時空に集まって交流する・・・そんな幽体世界の描き方は、現代のインターネット上のコミュニケーション空間を象徴しているようだ」。

(c)marginal×竹谷州史/エンターブレイン

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「マネーの拳」

三田紀房 2005年〜 (小学館「ビッグコミックスペリオール」)

ボクシング元世界チャンピオンの花岡拳は引退後、居酒屋を経営するも、客入りは今ひとつ。ある日、拳は事業に成功したリッチマン・塚原会長に出会い、ビジネスの極意を学んでいく・・・
マンガ家になる前に、洋品店経営で苦労した経験がある三田紀房さんにとっては、格別の思い入れがあるというこの作品。「3倍大げさに」「わかりやすく」「大胆な決めセリフ」という「三田流ヒットの法則」をここでも貫く。「ベタでださいことに自分は拒絶反応がない。むしろ気持ちいいくらい」。

(c)三田紀房/小学館・ビッグコミックスペリオール

■ 第22回 2006年11月28日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「イカロスの山」

塀内夏子 2005年〜 (講談社「モーニング」)

大学時代、数々の山を制覇した名コンビ・平岡と三上。卒業後別々の道を歩んでいた二人が、新たに発見された未踏の8000m級の山に挑み始める。学生時代からの二人の友人で、今は三上の妻になっている靖子は、本当は平岡を愛していたことに気づく・・・
レビュアーは精神科医の名越康文さん。「激しい愛ゆえに怖くなってしまい、その感情を無意識に抑圧してしまうことが女性心理ではよくある。三上を選択してから何年も過ぎて自分の真の愛に気づく場面、二人の男が山から生還したときに自分は二人とも失うだろうと予感する場面など、女性作家ならではの深い表現がある」。

(c)塀内夏子/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「はじめの一歩」

森川ジョージ 1989年〜 (講談社「週刊少年マガジン」)

気弱な少年だった幕之内一歩はある日、後の世界チャンピオン・鷹村守と出会い、ボクサーの道を歩み始める。ライバルとの激闘、仲間たちとの友情を通じて日本を代表するボクサーに成長してゆく一歩を描いた、長編ボクシングマンガ。
ボクシングへの深い愛情を作品に込めた森川さん。この作品の連載中に、自らボクシングジムのオーナーになってしまったという。 様々なボクサーとの交流を通じて感じた「ボクサーが倒れずに頑張れる理由」が作品の根底に流れている。実直に描くのが信条という森川さん。「自分もマンガに頑張る。他の職業の人も頑張る。その『頑張る』を伝えたい」。

(c)森川ジョージ/講談社

■ 第21回 2006年11月14日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「無頼侍」

鈴木マサカズ 2004年〜2006年 (エンターブレイン「コミックビーム」)

時代は幕末。あてもなくぶらぶらしている、少し間抜けな浪人・鈴森岩十郎。賞金首・寛壱に遭遇した岩十郎は、百両目当てに寛壱をつけ狙い始める・・・
レビュアーは書評誌編集長・横里隆さん。ほんの端役にまで延々とモノローグを語らせる斬新さを指摘。「読者を次々と登場人物に感情移入させてジェットコースターのように翻弄する」。「人の愚かさ、情けなさをエンターテイメントとして笑い飛ばす域に達している」。

(c)鈴木マサカズ/エンターブレイン

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「瀕死のタウンガイド オーイ・メメントモリ」

しりあがり寿 1999年〜 (メディアファクトリー「ダ・ヴィンチ」)

生と死の狭間をさまよう「瀕死のエッセイスト」が、「いま話題のスポット」を訪れては生と死について考え、悩み、「メメントモリ!(死を想え)」と叫ぶ。タウンガイド形式を取りながら、時に鋭い視点から生と死を捉える異色の作品。
一見ヘタだけどウマい「ヘタウマ」な絵に自分の可能性を見出し、そのスタイルを貫いてきたしりあがりさん。「オーイ・メメントモリ」では、死に直面する人間の悲壮感をラフなタッチの細い線で描く手法を編み出した。「笑うことで、死ぬことそのものが、ちょっとでも恐くなくなれば」。

(c)しりあがり寿/メディアファクトリー

■ 第20回 2006年11月7日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「リストランテ・パラディーゾ」

オノ・ナツメ 2005年〜2006年 (太田出版「マンガ・エロティクスF」)

舞台はローマ。主人公の若い女性・ニコレッタは、「雇用条件が老眼鏡着用」という風変わりなレストランで働き始める。そして給仕長の老紳士・クラウディオに恋心を抱き始める・・・
レビュアーは、恋する男女の心理を脳機能研究の立場から分析する、感性アナリスト・黒川伊保子さん。「老眼鏡紳士の魅力に目をつけたところが素晴らしい。老眼鏡の男性が、近い距離の相手にゆっくりと目線を合わせるのはとてもセクシー。初老の男性は男性ホルモン分泌量が減ってきて、じっくりと目の前の女性の話が聞けるようになってくる。そこがまた魅力。現実の40代、50代の男性もぜひこんな大人の男を目指してほしい」。

(c)オノ・ナツメ/太田出版

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「マエストロ」

さそうあきら 2003年〜 (双葉社「週刊漫画アクション」→双葉社Webマガジン)

一旦解散したオーケストラが再結成することになった。練習会場に現れた指揮者は、メンバーが誰も知らない怪しげな老人・天道。半信半疑で始まった練習だったが、天道の指揮によってオーケストラの音が見違えるように変わってゆく・・・
天才ピアニストを描いた作品「神童」で、音楽マンガの扉を開いたと評価されるさそうさん。「マエストロ」では、少年の頃からあこがれの存在だった「指揮者」を描くことに挑戦。「演奏者から優れた音を引き出し、かつ主人公のキャラに合った破天荒な一言」を生み出すことに心血を注いでいる。

(c)さそうあきら/双葉社

■ 第19回 2006年10月31日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「らぶきょん〜LOVE in 景福宮」

パク・ソヒ(翻訳・佐島顕子) 2006年〜 (新書館「ウンポコ」)

韓国で2002年から連載され、大ヒットとなったマンガの日本翻訳版。「韓国にまだ王室が続いていたら」という架空の設定で、ごく普通の女子高生と皇太子の結婚生活を描いた王宮恋愛コメディ。
レビュアーは、韓国のエンターテイメントに詳しいライター&ナビゲーターの田代親代さん。「究極のシンデレラストーリーに、愛や権力に対する一途なまでの思い、韓国独特の感情・恨(ハン)が見事に凝縮されている。『韓流ドラマの王道』をマンガで満喫できる作品」。

(c)パク・ソヒ/新書館 2006

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「金魚屋古書店」

芳崎せいむ 2004年〜 (小学館「月刊IKKI」)

2003年に連載が始まった「金魚屋古書店出納帳」の続編。「そこを訪ねれば見つからないマンガは無い」と言われるマンガ専門古書店・金魚屋。老若男女を問わず様々な人たちが、思い入れのあるマンガを求めてこの店を訪れる・・・さまざまな名作マンガが実名で登場する、異色の心暖まる人間ドラマ。
芳崎さんは、作品に登場するマンガ作品の選定やエピソード作りのため、足を運んでマンガ収集家やファンの生の声を取材している。 「『マンガが人と人、人と世の中をつなぐ絆になる』ということを描いていきたい」。

(c)芳崎せいむ/小学館・IKKIコミックス

■ 第18回 2006年10月17日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「イキガミ」

間瀬元朗 2005年〜 (小学館「週刊ヤングサンデー」)

人間を間引く法律が制定されている20××年の日本。突然の死亡予告証“イキガミ”を受け取り、24時間後の死を宣告された若者の、最後の生き様を描いた物語。
レビュアーは精神科医の名越康文さん。「青年誌掲載のマンガだが、30代40代の人にも勧めたい。その年代になると自分の人生を想像力の中で振り返ることができる。登場人物にシンクロするうちに、自分がなぜ生きているのか、何が本当に大切なのかにはっと気づく瞬間があると思う」。

(c)間瀬元朗/小学館・週刊ヤングサンデー

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「アタゴオルは猫の森」

ますむらひろし 1999年〜 (メディアファクトリー「コミックフラッパー」)

1976年から描き続けられている「アタゴオル」シリーズの最新作。
舞台は自然豊かな土地、ヨネザアド大陸のアタゴオル。陽気なデブ猫・ヒデヨシと、常識的な人間の青年・テンプラたちの何気ない日常や冒険を描いた、メルヘンファンタジー。 「人間中心でしか描かれないマンガを、自然代表、声なき声の代表として猫の側から描いてみたかった」と、さまざまな猫のファンタジーを描いてきたますむらひろしさん。 「銀河鉄道の夜」など、宮沢賢治の世界のマンガ化でも知られている。「アタゴオル」シリーズでは30年間にわたり、「自然と人間の共存」というテーマを文学ではできない表現で描こうとしている。

(c)ますむら・ひろし/メディアファクトリー

■ 第17回 2006年10月10日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「宗像教授異考録」

星野之宣 2004年〜 (小学館「ビッグコミック」)

世界各地に伝わる神話・伝承。それらの裏に隠されている歴史の真実を、異端の民俗学者・宗像教授が解き明かしてゆく伝奇ロマン。
レビュアーは小説家の夢枕獏さん。古代史の事実の隙間にフィクションを入れていく作者の手腕に感服。「小説なら描くのに何十枚もかかるような登場人物の人生や想いを、たった1コマで感じさせてしまう。マンガ表現の素晴らしさを実感させてくれる作品」。

(c)星野之宣/小学館

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「妖魅変成夜話」

岡野玲子 1995年〜 (扶桑社「PANJA」→平凡社「月刊百科」)

古代中国。科挙に合格し都で役人になった秀才・李成潭は、なぜか国家機密の神仙調査機関に配属される。上司の龍玉将軍にこき使われながら、妖怪退治に奔走する李成潭であったが・・・
「陰陽師」など、常に斬新な手法でマンガを描き続けている岡野さん。この作品では毛筆だけで絵を描いている。墨の微妙な濃淡と、躍動感溢れる筆遣いによって、幽玄な神仙たちの世界を創りあげた。「読み手に元気を与えるエネルギーを発するような絵を描きたい」。

(c)岡野玲子/平凡社

■ 第16回 2006年10月3日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「JIN ―仁―」

村上もとか 2001年〜 (集英社「スーパージャンプ」)

幕末の江戸へワープしてしまった現代の脳外科医・南方仁。南方は、現代最先端の医術を駆使して江戸時代の人々を救ってゆく。
レビュアーは、世界60カ国で医療援助活動を行ってきた医師・山本敏晴さん。 山本さんは海外で、道具も何も無い状況で手術をした経験から南方仁の行動に共感。「限られた器具や環境でも、この主人公のように最善の努力をして目の前の人を救っていくのが間違いなく大切なこと。医療関係者を目指す人に読んでほしい作品」。

(c)村上もとか/集英社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「寿町美女御殿」

山下和美 2003年〜 (集英社「YOU」)

大学1年生の菅平くんが下宿を始めた家は、女性ばかり4世代5人暮らしの古いお屋敷。何やら怪しげな雰囲気の漂うこの屋敷に君臨するのは、102歳の老女・エリザベスだった・・・強烈なキャラのエリザベスを中心に展開する、破天荒なコメディマンガ。
21歳の時脳梗塞で視野の一部を失いながらも、「マンガ家は天職」と生き生きしたキャラを描き続ける山下和美さん。「40代以上の女性読者もまだまだいける!と元気が出るように」生み出した、前代未聞のパワフルヒロイン・エリザベスを描くときは、豪快ながら可愛げのある表情作りに苦心する。

(c)山下和美/集英社

■ 第15回 2006年9月19日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「青い花」

志村貴子 2004年〜 (太田出版「マンガ・エロティクスF」)

鎌倉の女子高を舞台に、「恋人」だった従妹との別離、先輩への憧れなど、女の子同士の感情の揺れを繊細に描いた物語。
レビュアーは感性アナリストの黒川伊保子さん。「可愛い、憧れる、一緒にいたい・・・そんな感覚を学校へ行く糧にする。誰でも少女の頃はそういう時期があるもの。思春期の女の子はいろいろな悩みを抱えて自分が好きになれなくなりがちだけど、そういう人こそこのマンガを読んで、等身大の自分を愛してほしい」。

(c)志村貴子/太田出版

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「SOIL」

カネコアツシ 2003年〜 (エンターブレイン「コミックビーム」)

舞台は一見平和な「そいるニュータウン」。奇妙な一家失踪事件をきっかけに、人々の悪意、昔の大量殺人事件など、町の闇が表出してゆく・・・
高校時代に出会ったロウブロウアートの力強い線に憧れ、試行錯誤の末、人物から背景まですべてを筆ペンだけで描きあげる独特の画風を完成させたカネコアツシさん。「面より、線で描く絵が好き。線の強弱やリズムで酔えるような絵が描きたい」。

(c)カネコアツシ/エンターブレイン

■ 第14回 2006年9月12日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「大阪ハムレット」

森下裕美 2005年〜 (双葉社「漫画アクション」)

大阪を舞台に、恋愛や人生など、様々な悩みを抱えた人たちの喜怒哀楽が描かれた連作短編集。
レビュアーは精神科医の名越康文さん。一癖も二癖もある登場人物が見せる優しさこそ現代の日本に欠けているものと指摘、「『自分の中にいる得体の知れない自分』を受け入れる過程の中でこそ、他人への優しさは身につくもの。それを見事にドラマとして描き切っている」。

(c)志村志保子/集英社 クッキー

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「でろでろ」

押切蓮介 2003年〜 (講談社「週刊ヤングマガジン」)

主人公は、少しアウトローで霊感の強い少年・日野耳雄。彼の周りには、怖いながらもどこか面白い、ヘンな妖怪ばかり現れる・・・
ちょっと怖いけど笑える「ホラーギャグ」マンガを確立したといわれる押切蓮介さん。 自ら結成したテクノバンド「カイギドロップ」のライブでも、歌や映像を使ったホラーギャグの仕掛けを用意。自分の笑いの感性が観客とずれていないかチェックしている。「何でも妖怪のせいにしてみる」ため、パソコンには思いついたお茶目な妖怪ネタが大量にストックされている。

(c)押切蓮介/講談社

■ 第13回 2006年9月5日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「あひるの空」

日向武史 2004年〜 (講談社「週刊少年マガジン」)

身長149cmの高校生・車谷空が、高校のバスケ部で仲間やライバルと共に成長していく物語。
レビュアー、教育評論家の尾木直樹さん。「10年前なら大人や教師が夢やモラルを話すことができたが、今は嘘くさいと思われてしまう。でも思春期の子供たちには、今でもそういうテキストは必要。この作品の登場人物の言葉は、読者の少年たちにメッセージを届ける力を持っている」。

(c)日向武史/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ひかりの空」

かざま鋭二(監修:坂田信弘) 2001年〜 (小学館「週刊ヤングサンデー」)

事故のため自らのゴルフ人生を閉ざした、かつての天才ゴルファー・杉本真がゴルフの才能あふれる少女・ひかりと出会う。杉本はひかりを育て、ともに世界の頂点を目指してゆく。
「あまりゴルフに興味が無い青年誌の読者に、いかにマンガとして読ませるかを考えている」と言うかざま鋭二さん。プロゴルファー・坂田信弘氏との仕事を通じてスイングの重要性を知り、リアルなスイングの絵を追求。肩のバランスやドライバーとアイアンショットの描き分けなどは、ゴルフ通をも唸らせるものとなった。「この作品を読んで、ゴルファーを夢見る女の子が増えてくれるとうれしい」。

(c)坂田信弘 作画 かざま鋭二/小学館・ヤングサンデーコミックス

■ 第12回 2006年7月18日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「コーヒーもう一杯」

山川直人 2004年〜 (エンターブレイン「コミックビーム」)

普通の人々の甘くもあり苦くもある様々な人生の断片が、コーヒーを通して暖かく優しく綴られる、連作短編集。
レビュアーは、美術解剖学を研究している評論家の布施英利さん。この作品に見られる様々な仕掛けが右脳と左脳の働きの違いに見事に呼応していると指摘。「全編を通して静かな時間の流れがあり、脳を常にフル回転させて疲れている現代の人にこそ読んでほしい作品」。

(c)山川直人/エンターブレイン

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

カペタ capeta」

曽田正人 2003年〜 (講談社「月刊少年マガジン」)

主人公は小学4年生の平勝平太。ある日、父が仕事先から持ち帰った材料でレーシングカートを作り、勝平太に与える。まっすぐに走らないカートを乗りこなす勝平太はみるみるドライバーの才能を発揮してゆく・・・
これまで様々な「天才」を描いてきた曽田正人さん。「ただ天才だから速い、というマンガにはしたくない」と語る。そのため、速さの裏付けを技術も含めて丁寧に描写する。また、レースそのものだけでなく、普段は見られない舞台裏のドラマなども描くため、サーキット場のあらゆる場所を取材している。

(c)曽田正人/講談社

■ 第11回 2006年7月11日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「へうげもの」

山田芳裕 2005年〜 (講談社「モーニング」)

戦国時代に立身出世を目指しながら、茶の湯と物欲に魂を奪われた男、織田信長の家臣・古田左介。左介を中心に、数々の戦国武将たちが茶の湯の名物に執着する姿を描いた異色の歴史マンガ。
レビュアーは精神科医・名越康文さん。「美の世界に徹することもできず、上昇志向だが出世するには器が小さい主人公・左介の姿は、21世紀の日本人の姿そのもの。だから共感する。豊かでも空虚感が蔓延する現代を生きるヒントが、茶の湯の名物の『質や深み』に魅せられる人を描くこの物語にあるのではないか」。

(c)山田芳裕/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「おいピータン!!」

伊藤理佐 1998年〜 (講談社「KISS」)

食べ物を巧みに織り込んだ、8ページ1話完結のショートストーリー。太めでメガネの中年男・大森さん、通称「ピータン」を軸に、恋や仕事など、日常のありふれた出来事をコミカルかつ時に切なく描いた作品。
「楽しいことは特別な日ではなく、普段の暮らしの中にある」と語る伊藤理佐さん。散歩に出かけながらネタを考え、何気ない行動や言葉をストーリー作りのヒントにしている。

(c)伊藤理佐/講談社

■ 第10回 2006年7月4日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「団地ともお」

小田 扉 2003年〜 (小学館「ビッグコミックスピリッツ」)

主人公は大きな団地に住む小学生・ともお。ともおと家族や友だちが織りなす、ほのぼのとした日常を描いた物語。
レビュアーは、児童文学の翻訳家・金原瑞人さん。極上の短編小説のような、何気ないセリフを効果的に響かせる使い方に驚くとともに、「ともおは取り柄がなくても幸せそうだし楽しそう。こういう子どもっていいよな、自分の子はこんな風に育ってるかな、とふと考えさせる作品」。

(c)小田 扉/小学館・ビッグコミックスピリッツ

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ジョジョの奇妙な冒険」

荒木飛呂彦 1987年〜 (集英社「週刊少年ジャンプ」→「ウルトラジャンプ」)

1987年より連載が続いている大河ロマン。ジョースター家とディオの確執を、シリーズごとに時代や場所を変えながら描いてゆく。
「かっこよさではなく、美しさを追求したい」と語る荒木飛呂彦さん。ミケランジェロに影響を受けた登場人物の独特のポーズは後に「ジョジョ立ち」と呼ばれ、振動や気配まで伝える擬音表現も荒木さんならでは。独創的でスケールの大きい荒木ワールドを展開し、後進のアーティストたちに多大な影響を与えている。

(c)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

■ 第9回 2006年6月20日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ワイルドライフ」

藤崎聖人 2003年〜 (小学館「週刊少年サンデー」)

絶対音感と熱いハートをもつ獣医・岩城鉄生が、様々な困難を乗り越えて動物たちの命を救う、熱血獣医師の物語。
レビュアーは、命の尊さを科学的な視点から研究している大学教授・高木美也子さん。「主人公が『この世の中に生きている意味がないものなんてない!』と言い切るセリフが作品を象徴している。また、ペットも子供も深く愛しているようで実は相手に投影した自分を愛しているだけ、というエピソードなど、考えさせられるところの多い作品」。

(c)藤崎聖人/小学館・少年サンデーコミックス

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「雨柳堂夢咄」

波津彬子 1991年〜 (朝日ソノラマ「ネムキ」)

大正時代、骨董屋「雨柳堂」店主の孫息子・蓮は「物に込められた想いを知る力」を持っていた。“もの”に宿る想いを通して、その所有者の愛憎や時代に翻弄された運命を描いた幻想譚。
歴史ある街・金沢で、大好きな工芸品に触れながら生まれ育った波津彬子さん。若くしてこの世を去ったマンガ家の姉・花郁悠紀子さんのアシスタントをしながら、点描やかけ網といった技術を受け継ぎ、「どのコマも大事なんだ」という精神を学んだという。手書きのニュアンスを究め、背景や細やかなデザインの骨董品を丁寧に描いていく。

(c)波津彬子/朝日ソノラマ

■ 第8回 2006年6月13日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ヘブン・・・」

鈴木志保 2004年〜2005年 (秋田書店「月刊プリンセス」)

世界の果てのゴミ捨て場。ぬいぐるみ、ラブレターなど、捨てられた「もの」たちの切ない思いが詩的に描かれる。
レビュアーは書評誌編集長・横里隆さん。「この作品は現代の寓話。『落ちこぼれていることは生きる価値がないことなのか』と問いかけてくれる。自分の居場所がない、息苦しいと感じている人に読んでもらいたい作品」。

(c)鈴木志保/秋田書店(月刊プリンセス)

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「きせかえユカちゃん」

東村アキコ 2001年〜 (集英社「Cookie」)

小学6年生のユカは、おしゃれが大好きでスタイル抜群。見た目はモデル並みだが、中身は子供そのもの。天真爛漫なユカを中心に繰り広げられる数々の騒動を描いたコメディーマンガ。 「子供の時の感覚のまま描いている」と言う東村アキコさんの周囲には、普段から笑いが絶えない。そのユーモアの原点は、父の健一さん。「子供の頃の実体験や父とのエピソードがそのまま作品に活かされている」と語る。

(c)東村アキコ/集英社 クッキー

■ 第7回 2006年6月6日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「ピアノの森」

一色まこと1998年〜 (講談社「ヤングマガジンアッパーズ」→「モーニング」)

幼い頃、森に放置されたピアノと出会った主人公のカイ。指導者やライバルと出会い、徐々にピアニストとしての才能を開花させていく・・・
レビュアーは音楽構成作家・新井鴎子さん。「カイが初めてショパンを弾きこなせたときに擬音もピアノを歌わせているような表現に変えるなど、ピアノの音表現へのこだわりを感じる。2人の少年を使って芸術家の心の中の矛盾や葛藤を描いているようで目が離せない」。

(c)一色まこと/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「BECK」

ハロルド作石 1999年〜 (講談社「月刊少年マガジン」)

普通の中学生だった主人公のコユキは、ある日、帰国子女の天才ギタリスト・竜介と出会う。コユキは竜介らとバンド“BECK”を結成し、さまざまな試練を乗り越えてゆく。
「マンガは音が出ないから、読者に音を想像してもらえるのが武器になる」とあえて音楽マンガに挑んだハロルド作石さん。楽器や演奏者の動きのディテールにこだわる一方で、コマの流れやテンポに非常に気を使っている。

(c)ハロルド作石/講談社

■ 第6回 2006年5月30日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「おおきく振りかぶって」

ひぐちアサ 2003年〜 (講談社「アフタヌーン」)

球は遅いがコントロールは素晴らしいという卑屈なエースを筆頭に、個性豊かなナインが新設された野球部で甲子園を目指す。新感覚の野球マンガ。
レビュアーはスポーツライター・生島淳さん。野球マンガでは珍しい、女性作者ならではの繊細なキャラ描写に驚くとともに、緻密な取材に基づいていると思われる、日常のトレーニングシーンの描き方に感心。「現状に即した知識や情報がすごくあって、流行のメンタルトレーニングにもまっすぐに取り組んでいるところが興味深い」。

(c)ひぐちアサ/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「キャプテン翼」シリーズ

高橋陽一 1981年〜 (集英社「週刊少年ジャンプ」→「週刊ヤングジャンプ」)

1981年から始まり、現在も「キャプテン翼 GOLDEN23」として連載が続けられている人気サッカーマンガ。
主人公はサッカー大好き少年・大空翼。日向小次郎、若林源三、岬太郎といった個性あふれる仲間たちと世界の頂点を目指していく。サッカーマンガの草分けといえるこの作品、 「連載初期はマンガの中で読者にサッカーのルールを説明していた」と言う高橋陽一さん。翼やライバルの「必殺技」などで読者の子どもたちを引きつけ、現在のサッカー人気の礎を作った。

(c)高橋陽一/集英社

■ 第5回 2006年5月16日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「もやしもん」

石川雅之 2004年〜 (講談社「イブニング」)

細菌を直接目で見ることができるという特殊能力を持った主人公がある農業大学に入学。擬人化された様々な菌たちと、農大の学生たちで展開するユニークな学園物語。
レビュアーは精神科医・名越康文さん。ユーモラスな細菌たちの表情に注目。「天気がいいだけで幸せな気分になったような、『ご機嫌』な表情をしている。それは現代人が最も忘れてしまった表情かもしれない。心も体もほだされて、なごまされる」。

(c)石川雅之/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「サプリ」

おかざき真里 2004年〜 (祥伝社「フィールヤング」)

主人公は広告代理店で働くミナミ、27歳。恋に仕事に揺れ動き、悩みながらも少しずつ前に進んでいく。働く女性の葛藤、生き様を鮮やかに描いた作品。 作者のおかざき真里さんは、かつて広告代理店でCMプランナーとして活躍していた。CM制作のため、1日10枚、年間3千枚画コンテを描いた経験をマンガに生かし、「浮きゴマ」と呼ばれる独自のコマ割りを生み出す。

(c)おかざき真里「サプリ」/祥伝社フィールコミックス

■ 第4回 2006年5月9日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「女の子の食卓」

志村志保子 2005年〜 (集英社「Cookie」)

登場人物の心に深く刻まれている「食べ物」をキーワードに、様々な女性の切なさを切り取った連作短編集。
レビュアーは、語感を通して人間の感性を分析する感性アナリスト・黒川伊保子さん。ヒロインが「おかえり」という言葉に支えられるエピソードから、「男社会の中で頑張り過ぎてしまう女性を癒してくれる作品。こういう切ないマンガにふれて、たまにはワンワン泣くのも大事」。

(c)志村志保子/集英社 クッキー

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ソラニン」

浅野いにお 2005年〜2006年 (小学館「週刊ヤングサンデー」)

大学卒業後もバンドを続けるが、音楽に本気になれないフリーターの種田と、そんな種田にいら立つOLの芽衣子。バンドを軸に描かれた、少しほろ苦い青春物語。
「個性的なキャラで引っ張るより、普通の話をマンガ的に見せたい」と語る浅野いにおさん。高校時代に不条理なギャグで注目されるも、その後長いスランプを経験。スランプ突破の鍵は「マンガ漬けで社交性がなかった自分を変えて友達をつくったこと」。

(c)浅野いにお/小学館・ヤングサンデーコミックス

■ 第3回 2006年4月18日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「大使閣下の料理人」

原作・西村ミツル 漫画・かわすみひろし 1998年〜 (講談社「モーニング」)

実際に大使館で料理人として働いていた西村ミツル氏の回想記が原作。「公邸料理人」を通して外交の最前線を描いた物語。
レビュアーは銀座のクラブのママであり作家の、ますい志保さん。「常連客が外国からの商談相手を接待するために店にやって来ることも多い」と言うますいさんは、「一番大切なのは相手を理解しようとする気持ち。単なるイエスマンにはならない懐の大きさも必要、とこのマンガから学んだ」。

(c)西村ミツル・かわすみひろし/講談社

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「範馬刃牙」

板垣恵介 2005年〜 (秋田書店「週刊少年チャンピオン」)

1991年に連載が始まった大ヒット格闘マンガ「グラップラー刃牙」の第3シリーズにして完結編。
主人公・範馬刃牙は、父親であり地上最強の生物として君臨する範馬勇次郎と、長年の争いに決着をつける最後の闘いに挑んでいく。 1コマの絵の迫力にこだわるため、コマごとに切り離して描く手法をとる板垣さん。いったん作画に入ると途中に休みも入れず、極限まで自分を追い込みながら一気に描き上げる。「僕にとっての強さは、わがままを通す力」。

(c)板垣恵介(週刊少年チャンピオン)

■ 第2回 2006年4月11日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「銭」

鈴木みそ 2002年〜 (エンターブレイン「コミックビーム」)

「お金」という切り口から様々な業界を徹底取材し、各業界の「儲かる仕組み」を描いた、オトナ向けの社会科見学マンガ。
レビュアーは「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者、公認会計士の山田真哉さん。「実社会ではピンチになったら大抵ダメになるもの。だから経済マンガはピンチを切り抜けすぎると嘘臭くなってしまう。この作品は、『ダメになるけど別の希望を見出す』という結末のつけ方が上手い」。

(c)鈴木みそ/エンターブレイン

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」

秋本治 1976年〜 (集英社「週刊少年ジャンプ」)

破天荒な警察官・両津勘吉が、旺盛な好奇心と驚異的な行動力で周囲の人間を巻き込み、大騒動を巻き起こす、一話完結型のドタバタギャグマンガ。
週1回の連載を、30年間休むことなく続けてきた秋本治さん。両さんは出世せず、主な登場人物も変化させないかわりに、エピソードに時代の流行と薀蓄を注ぎ込む。そのため常に取材のアンテナを張り巡らしている。「主人公・両津の顔は50万回以上描いたけど、いまだにうまく描けないし、何度描いても飽きない」。

(c)秋本治/集英社

■ 第1回 2006年4月4日 放送

<読み手ノゲンバ>

読み手ノゲンバ

「バガボンド」

井上雄彦 1998年〜 (講談社「モーニング」)

吉川英治の「宮本武蔵」を原作にして、作者の大胆で斬新な解釈から宮本武蔵、佐々木小次郎ら剣客たちの姿を生き生きと描く。
レビュアーは、古武術研究家・甲野善紀さん。原作には書かれてない幼少期から丁寧に描いて創り上げた「井上版小次郎」像や、命を懸けて斬り合う中で、自分と相手が一体化するような武術の達人の身体感覚の描写に注目。「武士という、日本の風土が生んだ人間の有様が描かれている」。

原作 吉川英治『宮本武蔵』より (c)I.T.Planning,Inc

<作者ノゲンバ>

作者ノゲンバ

「ヘルプマン!」

くさか里樹 2003年〜 (講談社「イブニング」)

主人公・百太郎は老人介護の現場で、在宅痴呆、介護虐待といったシリアスな問題に立ち向かう。これまで誰も描かなかった「老人介護」というテーマに正面から取り組んだ作品。介護の大変さが言葉だけでなく絵で伝わるよう、表現にギリギリまで工夫を凝らしている。「人間の強さと弱さに直面するドラマが凝縮されているから、このジャンルに挑みました」。

(c)くさか里樹/講談社

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