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裏方返上!片栗粉 極ウマとろみ術
2007年11月28日放送
中華などでよくお目にかかる、片栗粉(かたくりこ)でつけた“とろみ”。でもこれまで、作り方も適当、できあがりも「まあ、こんなもの?」と、あまり深く考えたことはなかったのではないでしょうか。
ところが、とろみには大誤解がたくさんありました。一般家庭のとろみと、プロのとろみはまったくの別物で、まずいとろみは料理の味をぶち壊しにしていたのです。ガッテンが調べてみると、片栗粉には驚異のパワーがあり、それさえ知ればプロ並みのとろみも簡単に作れます。「たかがとろみ」とあなどると大損ですよ!
「とろみワールド」
とろみは、視覚的に「つや」効果、味覚的に「コク」効果があり、食べ物をおいしくするだけでなく、誤飲も防ぐ人類最高のパートナーだったのです。
ヒトが直立二足歩行するようになると、喉の構造が変化し、誤飲が生じるようになりました。しかし、とろみをつければ食べ物がまとまり、誤飲しにくくなるので、とろみは人類を救ったとさえいえるのかもしれません。現在でも病院などで、とろみによって誤飲を防ぐ工夫がなされています。
「とろみ対決」
料理自慢のお母さんと、料理未経験のお父さん&息子の2チームにわかれ、「八宝菜」でとろみ対決をしてもらいました。分量と調味料は同じです。ところが、中華料理の達人に判定してもらうと、手際よく調理したお母さんが負け、ぐずぐずのろのろの男性陣が勝利しました。いったいなぜでしょうか?
とろみだけを比べてみると、お母さんのとろみはぶつぶつ切れてしまいます。一方、男性陣のものはなめらかで、明らかな違いがありました。
舌の表面には、味を感じる「味蕾(みらい)細胞」があります。男性陣が作ったとろみを食べたときは、味蕾細胞にまとわりついて離れません。つまり、味を長く感じることができ、コクを感じるのです。ところが、お母さんの作ったほうは細胞につかず、味が薄く感じられてしまいました。まずいとろみが、料理の味を壊していたのです。
両者の違いは、加熱時間にありました。お母さんは片栗粉を投入してから30秒しか加熱していなかったのに対し、お父さんチームは1分30秒も加熱していました。お母さんの手際のよさがアダとなり、男性陣のぐずぐずのろのろが功を奏したのです。
とろみ加熱実験
お湯に水溶き片栗粉を投入し、加熱します。とろみがついたと思ったところで半分を取り出し、残りの半分は、さらに加熱を続けました。すると、加熱を途中でやめたものは、ぶつぶつ切れるのに対し、加熱を続けたものは、なめらかなとろみになりました。「加熱をしすぎると、水分が飛んでどろどろになる」という“常識”は、思いこみだったのです!
分量や火加減によっても異なりますが、最初は「中火」くらいで、「最も手に抵抗を感じた段階を過ぎて、少し軽くなった状態」まで加熱をつづけるのが目安です。
なぜ加熱をつづけるとなめらかになる?
片栗粉のでんぷん粒(ジャガイモでんぷん)は、水を加えて加熱すると膨張します。すると、混ぜる手に抵抗を感じるようになります。たいていの人は、この“粒同士のおしくらまんじゅう”を“とろみ”と勘違いしていたのです。しかし、これはいうなれば“ニセモノのとろみ”。実は、加熱を続けると、中から「とろみちゃん」が出てきて、極上のなめらかさをもつ“真のとろみ”になるのです。
※「とろみちゃん」とは、今回の番組でつけた名前で、デンプンに含まれる「アミロース」や「アミロペクチン」といった柔らかな粘りの成分です。
加熱を続けることで、粒の周りの壁が薄くなり、これらのとろみ物質が自由に動きやすくなるため、「手に感じる抵抗がなくなる → とろみがなめらかになる」と考えられています。
デンプン粒は、加熱を続けると50ミクロンのものが3ミリにまで膨張し、顕微鏡でも粒が確認できないほど透明になります。これが“真のとろみ”の状態です。
「徒労に終わらないとろみ術」
料理自慢のお母さんに、今度は8歳の息子Kくんと「中華スープ」作り対決をしてもらいました。Kくんはどろどろの水溶き片栗粉で遊んでいたように見えていましたが、結果は圧勝! 実は、事前に達人にコツを教わっていたのです。
お母さんの中華スープは、あんかけのようにとろみがつきすぎ、味も薄いものでした。一方、Kくんのものは味もちょうどよく、なめらかなとろみになっていました。
今回のポイントは“水溶きの比率”です。お母さんは「水4:片栗粉1」でしたが、Kくんのものは「水1:片栗粉1」でした(重さで比較)。
「水溶きの比率の違いによる温度変化」
大量の水を入れた片栗粉は、投入すると沸騰したお湯の温度を下げるため、なかなかとろみがつきません。そのため、再び水溶き片栗粉を追加してしまうという悪循環をひきおこします。その結果、できあがったものは、どろどろで薄味になってしまうのです。
街頭で聞いてみたところ、水溶きの比率の平均は「水4:片栗粉1」で、お母さんと同じでした。多くの方が、水溶き片栗粉を入れ過ぎる悪循環を引き起こしていたのです。
水を少なくする秘密
水を少なくするとダマになってしまいそうに思えるかもしれませんが、吸水にポイントがありました。デンプンは水につけておくと均一に水を吸うため、少ない水の量でもダマになりにくいという性質があります。片栗粉は、種類にもよりますが、約20分で最大50%の水を吸うため、「水溶き」というよりは、「水ひたし」片栗粉でよいのです。
水ひたし片栗粉の不思議
「片栗粉1:水1」の「水ひたし」片栗粉は、その上を歩くとずぶずぶ沈みますが、走ると沈まずに水面を駆け抜けることができるほど固くなります。
力を入れると固体、力を抜くと液体になるこの現象は「ダイラタンシー現象」といいます。粒子が細かくて、かつ、水に溶けない物質で起きるめずらしい現象です。
とろみの達人が手で片栗粉を入れていたのは、このダイラタンシーを利用したものです。つかんだ瞬間は圧力がかかるため固体になりますが、あとはそのまま手を放せば液体となってゆっくりと下に流れ落ちていくのです。
「とろみ活用料理」
「カレー」「煮魚」「ドレッシング」も、いつものレシピに水溶き片栗粉を加えて加熱するだけで、一段とおいしくなります。
- カレー: 野菜や肉から溶け出したうまみをとろみが包み込むことで、一瞬にして一晩寝かせたようなコクが味わえます。いつものカレーの仕上げに少量の水ひたし片栗粉を加えて加熱してください。とろみの加減は、お好みで。
- 煮魚: 味が短時間でまとうために、煮込みすぎで身がぱさぱさになるのを防止します。これも、いつもの煮汁に水ひたし片栗粉でとろみをつけた後で、魚を入れます。魚に火が通ればできあがり。
- ドレッシング: 水ひたし片栗粉を加熱し、とろみをつけたものを作ります。とろみ加減はお好みですが、きつくつけすぎないほうがよいでしょう。冷ました後、お好みで、お酢、塩、こしょう、オリーブオイルを加えて完成です。ほかにも、すったタマネギを入れたり、しょうゆを入れて和風にしたりと、アレンジできます。

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