ふるカフェ系 ハルさんの休日

古民家や古建築のカフェを紹介するブログです。

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にて放送中。ドラマも合わせてお楽しみください!

2017年05月03日 (水)

群馬・桐生のふるカフェ

東京から電車で2時間半。群馬県の桐生市にやって来ました!

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桐生は、ちょっと路地に入ると蔵や町家がある風情のある街だ。

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(ノコギリ屋根。明治や大正時代によくあった工場の屋根)

 

何か音が聞こえると思ったら、ここは桐生織の工場だった。

「西の西陣、東の桐生」と言われるほど、桐生は昔から織物産業の中心だったのだ。

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なんだ、これは!年季の入った古民家ではあるが、なんか変・・・。

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(コンクリートの丸いオブジェは、井戸を横にしたもの)

 そして、店内に入ると、もっと変!

無数の民芸品で埋め尽くされた不思議な空間だった。

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cafe_kiryuu_007.jpg(家の中に、庭?)

 それでは、探検といきますか!

半地下あり、2階あり、中2階あり、見れば見るほど、違和感だらけだ!

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いろいろな空間が迷路のようになっていて・・・迷子になってしまいました!

 

何が何だか分からない僕に、常連客の山鹿さんが教えてくれました。

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(常連客の山鹿英助さん)

 

初代当主で料理人だった小池魚心さんが、

「家の中に家を作る」というコンセプトのもと、

古民家を徹底的に改造して作ったのが、このカフェだったのです。

 

そして、僕がオーダーしたスパイスのきいた本格的なカレーが登場。

これは昭和12年にこのカフェがオープンしたときからのメニューで、

レシピも当時のままだそうだ。

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(辛いルーの中からじっくり煮込まれた玉ねぎの甘さが、たまりません!)

 

 

こちらは、二代目店主の妻、小池敏子さん。

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そして敏子さんの計らいで三代目店主の一弘さんに

魚心さんの部屋を見せていただくことに。

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(このカフェの生みの親、小池魚心さん)

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(これは、魚心さんが描いたこのカフェの設計図)

 

 

さらなる驚きが、このカフェにはあった。

なんと、20世紀の世界的な巨匠、棟方志功が描いた壁画があるのだ!

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しかし、この壁画が発見されたのは今から10年ほど前だったという。

熱烈な棟方志功のファンだった魚心さんは、店の壁に絵を描いてもらった。

ところが、その絵が気に入らなかった魚心さんは、

その日のうちに漆喰(しっくい)で塗りつぶしてしまったのだ。

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(地元新聞記者の蓑﨑昭子さん)

 

しかーし、2008年、地元新聞記者の蓑﨑さんが

三代目の一弘さんにお願いして、絵をよみがえらせた。

『花なら何でも好きという人は、花の美しさがわからない人だ』by魚心さん

世間の評価かどうあれ、自分の美意識にあわないものは、

そばに置きたくなかったのだろう。魚心さん、かっこよすぎます!

 

こちらは、金子さんと、新井さんご夫婦。

魚心さんも造詣が深かった桐生織について話を聞かせてくれました。

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(衣料品店 店主の金子由美彦さん)

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(染織史研究家の新井正直さんと、アクセサリー作家の求美さん)

 みなさん、桐生の織物文化に深い愛情をもつ人たちでした。

 

今回のカフェは、ただのカフェではなかった。

小池魚心という偉大なマルチクリエーターが、

こだわって、こだわって、こだわり抜いて作り上げた、ひとつの作品なのだ。

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魚心さんと会って、話を聞いてみたかったなあ・・・。

 

 

 

こぼれ話

産業革命は織物から!
イギリスの機織業で、織機を収容するための工場に使われたのが今回出てきた「ノコギリ屋根」だ。
英語ではSaw Tooth Roof、直訳すれば「ノコギリ歯の屋根」。こちらの方が、ギザギザの屋根の形をよくあらわしてるかも。というわけで、せめてカタカナで書いてみました。ノコギリにした目的はブログにも書いた通り、採光。屋根を小さな三角形で分け、短い辺にガラスをはめてある。採光面は北向き。南から入る太陽の直射日光は時間や方角によって一定しないけど、北からの光は比較的安定しているからだ。
現在でも、とくに完成品の検査には北からの採光が重要だと考えられているんだよ。こうしたノコギリ屋根の工場は1880年代末頃から作られ始める。桐生以外にも、同じ群馬県の足利、愛知県の名古屋・一宮、岐阜県の岐阜・大垣などに多い。桐生では1960年代後半まで作られていたというから、驚きだね。

参考文献
野口三郎「鋸屋根の調査・研究報告 (その1 群馬県桐生市境野町の場合)」『日本建築学会関東支部研究報告集』1990
野口三郎「織物工場鋸屋根について(桐生市の場合)」『日本建築学会大会学術講演梗概集』1992
野口三郎「鋸屋根工場について その6 桐生の調査から歴史と語意」『日本建築学会関東支部研究報告集』1995