ふるカフェ系 ハルさんの休日

古民家や古建築のカフェを紹介するブログです。

本放送:毎週水曜 午後11時00分~ NHK Eテレ

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2017年07月19日 (水)

埼玉・川口のふるカフェ

埼玉県川口市へ。

なにやら「広大な敷地を生かしたいっぷう変わったカフェ」があるとのこと。むむ。

訪ねてみたらそこは、築50年の民家。

よく見たら、今では珍しくなった鉄骨のベランダがあったりや、

さまざまな時代の建具を巧妙にはめこんでいたりと、味わい深い。

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実はここは、もともと植木屋さんの一家が住み慣れた家。

広い敷地には自動車修理工場やコーヒー豆店が建ち並ぶ不思議な空間が。

そこからは、明暦の大火後、植木の出荷地として隆盛を極め、

今また往年の技術を後生に残そうと努力を続ける

川口400年の物語が浮かび上がってきた。

隠れた地元の名産・ハマボウフウも!

kawaguchi_cafeyasai.png

 

 

 

こぼれ話

だいぶ前のことになるんだけど、太宰治の生家、斜陽館を訪ねたことがある。大金持ちの家らしく、二階建てなのに屋根の最も高いところで高さ10メートルくらいもあって、驚いたことを覚えている。斜陽館について印象的なものを全部語りだすと止まらなくなってしまうので、そのうちの一つを。庭に面したところにガラスが何枚もはめ込まれた戸があるんだけど、このガラスをよく見ると、あるものは今のガラスのようにきれいに透明、またあるものは透明だけど表面が少し波打っていて、向こうの景色がゆがんで見えた。そのとき思ったんだけど、古い家を訪ねると、たまにそういう「ゆがんだガラス」にお目にかかることがあるなぁと。調べてみると、なるほどと思った。
今の「きれいに向こうが見えるガラス」は、てっきり何度も磨いて平らにして作るものだと思っていたけど、もっとシンプルかつうまい方法のようだ。イメージとしては・・・水槽に水と油を混ぜて入れ、しばらく放置しておくと、水と油はきれいにわかれるよね。その油の部分を固めて取り出したら、きっと上面と下面は真っ平らになる。きれいなガラスの製法は、まさにそれ。大きな水槽のようなものに、スズなどの合金を溶かしたものを入れまして、その上に溶けたガラスを流し込む。合金とガラスは、水と油のように混ざることなくきれいにわかれる。ガラスの方が軽いので、固まったガラスを取り出せば、真っ平らなものができあがる、というわけ。これを考えた人は、頭いいよね。
これをフロート法というけれど、1959年にイギリスの会社で開発され、1965年頃に日本に導入された。ということは、僕が見た斜陽館のガラスは、一部が1965年以降のものだったという事になるのかな。誰かが、もとのガラスを割っちゃったのかもね。

最近見ることが少なくなったガラスといえば、今回出てきた、模様が入った板ガラス。型板ガラスといって、ロールアウト法で製造されたものだ。水平のロールに、あらかじめ型をほりこんでおいて、そこに溶けたガラスを流し込むと、模様がうつしこまれるというわけ。表面にいろいろな模様が施された型板ガラスは、光はとおすけれど、視線はとおさない。また表面の凹凸が光を拡散して、模様によって様々なパターンの光をつくりだして、優れた光の装飾効果をうみだすんだ。型模様は、柄の大小や、ほりの深さによって、視線の遮断効果(ようはガラス越しの像のボケ具合)にも変化がつく。その装飾性から玄関や応接室とだけでなく、視線の遮断効果から浴室や洗面所、トイレのガラスや、オフィスの間仕切壁など、ちょっと視線を遮りたいところに使われることが多かった。1960年代の高度経済成長期の日本では大量の住宅需要とアルミサッシの普及によって、型板ガラスが競って売りに出された。とくに1961年から75年ごろまでは「型模様戦争」といわれるくらい激しい商戦が繰り広げられ、実にいろいろなガラスが発売されていたんだ。そのなかには短命なものも多かったけれど、「クロス」や「モール」のような幾何学的なものから、「かすり」や「ささ」なんていう和風の雰囲気を意識した具象的なものまで、色々な模様が発売された。いちばんわかりやすいのは「銀河」かな。これは1967年に発売されたもので、文字どおり大小の星の模様が写し込まれた、少し写実的なところが、ぐっとレトロな雰囲気を漂わしている。ゆがんだガラスや型板ガラスは、いま新築される住宅ではほとんど見かけることがない。きっと昔は、当たり前すぎて特に思い入れはなかったんだろうけど、今となってみれば、ゆがんだガラスには個性を感じるし、型板ガラスには作った人の趣味やセンスが感じられるよね。きれい、清潔、便利、安全、効率的…モノはこうした方向に進化することが多いけど、そうした進化だけだと寂しさを感じるのは、僕だけかな?


参考文献
作花済夫他『ガラスハンドブック』朝倉書店、1975
『光を装飾する ガラスと建築』INAX BOOKLET Vol.9, No.4, 1990
日本板硝子(株)『日本板硝子株式会社五十年史』(1968.11)(渋沢社史データベース)閲覧日:2017年7月17日
https://shashi.shibusawa.or.jp/details_basic.php?sid=4280
産業技術史資料データベース(国立科学博物館産業技術史資料情報センター)閲覧日:2017年7月17日
http://sts.kahaku.go.jp/sts/index.php