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藁谷六朗さん

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『県南写真家のやさしい春』

 

春の訪れを誰よりも首を長くして待っていた男がいる。

藁谷六朗さん、75歳。

県南に住み、県南の写真を30年間撮り続けてきた、アマチュア写真家だ。

 

 

六朗さんの春は、実に忙しい。

あっちで水仙が咲いた、こっちも桜が咲きそうだと、毎朝4時から県南を駆け巡る。

なかでも六朗さん、お気に入りの一つが、棚倉町の一本桜、『花園枝垂れ桜』だ。

樹齢150年。添木を一本も使わずに、力強く咲き誇る姿は一見の価値がある。

さらに、ため池のほとりに咲く花は、風のない日ならば、湖面に映り〝逆さ桜″になる。

夜明け前から深夜まで、粘りに粘って写真を撮ってきた六朗さんの写真は、力作揃いだ。

 

 

 

福島県内のみならず、関東、遠くは静岡からも見物客が訪れるほど、全国的にも人気の桜だ。

地元の人たちも、故郷の自慢の桜を見てほしいと、無償でお茶を配り、客をもてなす。

 

 

一方、六朗さんには気になっている一本桜がある。

それが、花園桜から10分ほどのところにある、手沢地区の桜。

花園の桜と同じように、ため池のほとりに咲いているが、その趣はだいぶ異なる。

 

 

 

太い幹が水に埋もれ、樹勢は弱い。

しかし、それでもけなげに花をつけるところが、六朗さんの心に何かを訴える。

自分と重なるのは、千両役者の花園の桜よりも、むしろ手沢の桜かもしれない。

そんなことを思ったりする。

 

 

六朗さんが、写真をはじめたのは、30年前、45歳の時。

趣味らしい趣味をもたず、仕事一辺倒だったなかで、友人に誘われて撮影した写真が、

いきなりコンテストで優勝。以来、写真の世界にどっぷりとはまりこんだ。

 

 

「地元にこんないいところがあったのか!」ファインダー越しの県南は実に美しかった。

写真は六朗さんに、県南の良さを改めて気づかせるきっかけとなった。

 

県南にこだわって撮影してきた六朗さんだからこそ、知りうる絶景もある。

浅川町の里白石。

国道118号線と水郡線が交差する斜面には、あたり一面、水仙が咲き誇る。

この水仙、実はすぐそばの酒店の店主、緑川進さんが毎年植えて増やしたもの。

8年前、進さんは亡くなってしまったが、六朗さんは今も空から満開の水仙の花を進さんが

見つめているような気がして、毎年欠かさず撮影に訪れる。

 

 

 

夕暮れ時、六朗さんの原点となる場所に連れて行ってもらった。

浅川町を見下ろす、城山公園だ。

六朗さんは、1500回以上この場所に通っては、

田んぼの中を走る水郡線の車窓に想いを馳せてきた。

「電車に乗ってる人がね、夕方移動するのに、どんな気持ちで乗ってるだろうか。

どんな思いして帰ってきたのかとか。いろんな人それぞれの悩みをこう、

一日過ごし帰るとかね。ひとつひとつの物語があるから、色んな感慨をのせていくって奴だよね」

 

 

 

六朗さんがやさしく見つめ続ける県南の絶景。

ぜひ、その目でご覧ください。

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